| 2004年02月02日(月) |
■八方目について・２ |
■私が少年の頃、周囲には戦争の実戦体験を語ってくれた人々が、まだまだ多かったのです。
砲兵で従軍した為、耳が悪くなった人…。軍艦に載って主要な海戦を経験した人は、「船が撃沈され海に放り出される。しかし救出が遅れると皆サメにやられてしまい、それが怖くて仕方がなかった。よく還って来られたものだ」と、しみじみ述懐しました…。「突撃！なんて言われたって、誰も飛び出すヤツなんかいなかった。それで隊長が出て行って、やっとその後にみんな続いたんだ」。小学六年時、担任の先生の話…。
誰であったか、そんな話の中の一つです。あるいは…、何かの本に書いてあったものと混同しているのかも知れません…。
■銃剣突撃/白兵戦では異常な心理状態となり、「ウワーとばかりに銃を構えて突進するが、もう自分の前にいる敵兵しか見えない。目の前のヤツとは死に物狂いでやり合うが、相手が１ｍも横にズレると、お互い見向きもしないですれ違ってしまった」そうなんです。つまり「殺される！」というような極限状態では、目は狭視的になるというのです。
現代の日本人で、そんな“生き死に”の経験を常にする人はあまり居ないでしょう。せいぜいケンカか、武道では試合です。しかし開祖は、どうもこのような体験を幾度？もしているようです。（先生が人を殺した、という意味では全然ありませんことをお断わりしておきます）。
前回、書き忘れましたが、「何人いるか？」というお言葉から、開祖の求める八方目と我々が対応しようとする八方目とは、大きな隔たりを感じます。想定している実戦が違うようなのです。教義的＝心的な意味は、今は触れません。
この八方目という言葉が、武術史的にいつごろ頃使われ出したのか興味深いです。我が国の大方の武道家＝剣術家は、「目付き」について触れています。
私は、目には攻撃の目と防御の目があり、八方目は主に防御の目の使い方だと考えます。多分、中国という国には古来から多種多様の武技武術が存在し、様々な異種攻撃から身を守る防御術が武術修行の出発点だった為、と考えるからです。八方目はこれに含まれます。
■さて、先ほどの狭視的な目に関連します。昨日、「ＮＨＫアーカイブス/１９６５年・昭和４０年放映」の番組。あるベテランのスリ担当刑事の話からです。
登場する５１歳の刑事は「鬼の○○」と異名を取った人で、当時、全国のスリから顔写真に２万円の値が付いたといいます。
彼が人込みの中からスリを探す話が面白かったです。まず相手の気持ちになって考え、スリ易い格好をした人/得物を見つけます。そして、得物に「奇妙な目」を注ぎ続けるヤツが居ないか…!? 居たらそいつを張り、番組では「艶/つやのある目(？)」とすれ違い、鮮やかに逮捕します。
何か別の話だったと思いますが、「スリ目」という目があり、スリは得物に目が張り付いて離れないから、ベテラン刑事はすぐ分かるというものでした。いずれにせよ、これは攻撃時の集中力と目に関係があるようです。
■攻撃は集中的であり、一点的であり、マイペースといえます。対して防御は、集中的では疲れ、一点的では他方を付かれ、マイペースではなく相手に合わせなければなりません。その要請に答えるのが八方目という目の使い方といえます。しかし「言うは易く行うは難し」。
書きたい放題の「2003年08月14日(木) ＰＲＩＤＥ観戦(1)/打撃系の逆襲」で触れましたように、プロの格闘家でも八方目は難しいようです。
「…ボブチャンチン選手、不可解な動きをします。まずミルコ選手の右手が横に上がるにつれ、眼球がそれにつられ画面ではっきり動きます。自分が右フック(ロシアン・フックというらしい)が得意なので、それを一番警戒したのでしょうか…。」
もうテープは消してしまいましたが、画面に向かって右方向、両方の黒目が目の端まで動きました。…この目の動きを不可解と表現しました。
■目の玉を動かさない八方目の訓練法を述べます。
我、左右中段に構える。例は左中段構え。
�＿罎話羆�に構え、左方にＡをおき、右方にＢをおく。すなわち我々でいう三人掛けである。
��(初めは攻撃を決め)Ａ乃至、Ｂの上段攻撃を受けて反撃。その際、片方に背を向けないようにする。
�Ｂ海い藤素技蝓■造旅況發鮗�けて反撃。
＊段階を経て、攻撃内容、攻者、足、体捌きに拘らないようにして行く。眼目はその際、左右の相手に対して八方目が出来ているかどうかである。すなわち目の玉が動かないかを見るのである。
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