道院長の書きたい放題

2003年10月17日(金) ■双龍出海(6)/開祖と中野先生の目打ち

■以前、本「書きたい放題/2001年11月06日(火) 技法論・中野先生の目打ち! 」の中で、先生の目打ちについて触れた。そして以下のように追記した。

「…さらに、中野先生はやや手首をローリングするようにされました。これは実際に見ればなんてことはありませんが、文字で表現となると難しいです。多分、中指が一番長いからだと思います」

今回、「双龍出海」を書きたい放題していて、この謎?が解けたようである。

■手首のローリングの意味は、目打ちをする際、腕を外旋(=逆小手系の捻り)させる動作だったのだ。脱力はするが手首は折り曲げず、微量に外旋を効かしながら、結果やや尺屈(尺骨側に曲げる意)になりながら打つのである。

この打ち方は非常に有効である。我の胸、袖を掴まれた際、頭突きや突きを防いで手掌を相手の顔面に向ける防御動作から一気に打ちやすい。しかも、かなり近距離からの目打ちが可能である。

考えてみれば、寄り抜きからの目打ちがやり易いのはこの為だったのだ。すなわち、寄り抜きの際は腕を一端内旋(寄る動作に含まれる)しながら、次外旋して抜くので、すでに目打ちの態勢なのである。

■こんなことがあった。大学3年生の頃だった。夏の指導者講習会を受講していたある日、開祖法話を先生の目の前で聞いていると、何かのお話から「誰か前に出て来い」となった。先生は私の顔を覗き込みながらそう言われたので、気がついたら壇上に上っていた。

そして太いが柔らかい先生の右手を左手で順に握ると、鈎手をされた刹那、抜きと同時に一気に私の道衣を打たれた。「バシッ!」という鋭い音が第一講堂中に響き渡り、受講生全員の目が丸くなったのが分かった。

この時の目打ちがそうだったのであろう。その意味で、相手の顔面に掌を向ける動作=内旋はバックモーションとなり、より威力が増すのである。

(余談を許されたい。先生は黒いレースの支那服を着られ、下は短い道衣姿であった。ある人がたまたまこのシーンを写真に撮影していて、後年、私に送って下さった。初めて先生の手に直に触れることが出来、感激と緊張の面持ちの若き日の私が写っている。書いていて、懐かしくて涙が込上げて来た…)

■「言うまでもなく、白蓮拳千鳥返、内旋→外旋の関節運動が相関する」と「双龍出海(1)/序章 」で述べているのは、単に相関だけではなく、受け手が次の力を蓄えることになり、“後の先”の重要な術理となる。したがって、腕の内外旋を含む“龍体運動”はもっと研究されるべきであろう。

少林寺拳法の突きは直突きとはいうものの、それは逆突きの上段、中段突き、他数種のみである。試みに突き、打ち手を大雑把に分類すると、

内旋系:上段順突き、上、横鈎突き。下方からの掌拳打ち。手刀切り。バラ手金的打ち。肘打ち。下げ振り打ち等など。掌底打ちは両用あろう。

外旋系:目打ち。裏拳打ち。上方からの掌拳打ち。後ろ肘当て。下方からの振り打ち。上段への手刀打ち(頭部を打つ際、内旋して打つ場合もあろうが実際的ではない。手刀は松風、三合を打つのである。なお、手刀打ちは特殊に行う場合がある。一端、内旋し、仁王構えから外旋して打つのである。空手の突きを正反対にしたといったら分かりやすい)等など。

各自、確認されたい。


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あつみ [MAIL]