| 2003年08月23日(土) |
■技法と指導法を考える(2)/開祖の格闘センス |
■開祖が負傷した市場（カッパ・ブックスには「城外にある北市場・ペイスーチャンという泥棒市場」と書いてある）での格闘について、もう少し触れておきたい。
この歳になって改めて同書を読み返してみると、新たに気付くことがある。それは、開祖の格闘センスの卓越さ/非凡さである。
夜、ガラの悪い市場。ヤクザ風の男と対峙して、しかも相棒は苦しそうにしゃがみ込んでいる。刺されて死んだのであるから、おそらく相当なうめき声を発していたであろう。目の前の相手は、苦しむ相棒をさらに蹴倒す残忍な奴で、見たこともない構えを取ってジリジリと迫り来る。尋常ならざる事態である。
■まがりなりに拳法を修練している身で考えると、相手が目を狙った構えを取ったのに対し、若き日の開祖が下段構え/「竜王陣に構えて用心した」と述べられていることに驚かされる。
皆さんどうであろうか…。私なら本能的に顔を守る。したがって、八相構えをさらに高くした構えを取る。で、オダブツ…。この時、開祖は二十歳前後(昭和三年に十八歳と述べられてる)、よくぞ下段構えに構えたな、とその格闘センスに感心するのである。刺されはしたが、手を下方に備えたので下受けが辛うじて間に合ったのだ…。
鏡の前でヤクザの構えを取ると分かるが、後ろの手は全く見えない。しかも夜である。相手は相当場数を踏んでいて、きっと他にも何人かその手で葬っている筈だ…。
■この出来事は拳技＝法形となって記録されている。順蹴り地一、逆蹴り地一、逆蹴り地三、短刀突き込み打ち落とし蹴り、などである。なぜ、全体的に記録しなかったのであろう。今となっては想像であるが、友人の死が絡んでいるからであろう…。
他にもいくつかの問題点が考えられるので、箇条書きにする。
�‥�時、混乱していた中国といえども、ナイフでのケンカは特別なことだったようである。あるいは開祖が若く、ケンカのしかたも純情？だったのかもしれない。
「…私はそれまでは一対一だからと思って、傍観していた。…某はきっと拳法の当て身でもくらったのだろうと心をひきしめた」と述べ、よもやナイフで刺されたとは思われていない。だからこの事件は、開祖の護身という考え方に重大な転機を与えたに違いない…。
��拳法の威力＝有効性に驚いた。当時、先生の拳法修行は“技”を主に教わっていたようである。一種の法形演練である。剣道、柔道の心得があった先生はすでに乱取り修業を経験されており、型稽古に多少の違和感を感じていたのではあるまいか。それで、よけいに驚かれた訳である。
�Ｄ垢�は書き写せないが、「…少林寺拳法が、なぜ乱どり(原文ママ)よりも基本法形を重視するかというと…」以下の文章に、実戦性、護身術の観点からの乱捕りの非を述べられてる。その根底にあるのは、突きや蹴りを体捌きや手足によって正しく受ける為である。つまり、接触させない為である。
�せ�を経て、プロレスラー・力道山がヤクザを相手にケンカして刺殺された時、この事件が悪夢となって甦った。さしもの開祖も、いわゆる「強さ」の限界について考えざるを得なかったのであろう。
(続く)
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