道院長の書きたい放題

2003年06月11日(水) コーネル・キャンプ(6?)番外編

■【番外編】コーネル・キャンプについて色々と感想を述べて来たが、最後は今回の旅行で私が遭遇した最大(最低?)の事件を述べて終わりとする…。

合宿が終わり、Zさん夫妻との楽しい夕食も済ませ、夫Mさんの職場も見学し、私達は午前様にならずアパートに帰って来た。

NY最後の夜なので、素敵な夜景を展望できるバーで一杯という話も出たが、Mさんが次の日仕事なので、気を利かせたのだった…。

それでも、先に休んだ彼を除き、三人による楽しい会話は延々と続いた。午前一時半近くになって、とうとう私はダウン。「ユー…、スリ〜プ…」。その声に促されベットへ。充実感を抱いた至高の眠りとなった。

■爽快に目覚めた朝、すでに分担して家事をする夫妻に挨拶して、ソファーに腰掛ける。作山先生は別室でまだ寝ている。

どうも、昨晩は相当遅くまで話し込んだようだ。が、Zさんはさすがに主婦?している。

彼女はベトナム人である。今回は髪を長くしているが、これは癌治療で髪が抜けた女性の為にかつらとして提供するからだそうで、本来の彼女は短い髪に短パンが似合う、非常にアクティブな人である。しかし初めてみるこの髪型も、端正な顔立ちとスレンダーな肢体と相まって、また魅力的である。

■ところで、私がぼんやりと素敵な室内のインテリアを眺めていると、「Atsumi!(オフィシャシャルではもちろん“Atsumi sensei”だが、プライベートでは彼女は私をそう呼ぶ)」。Zさんが手招きしてキッチンに呼び入れる。

すかさず、Mさんがコーヒーを勧めてくれる。息が合った夫婦である。ここの家のコーヒーはストロングで、大変美味しい。私は大のコーヒー党である。

午前八時半頃、仕事に出掛けるMさんを階下の玄関まで送り、お別れの挨拶をする。そして、起きて来た作山先生共々、Zさん手作りの最後の朝食となる。

ラズベリーのパンケーキ、ソウセージ、野菜、フルーツ、ホームメイドのブレッド、そして特製のバナナジュース。真心のこもった朝食である。

■アパート出発を午前十時半と決め、帰りの身支度をする。今回の合宿は最後を決めてやろうと、(道院生であり、現役女子大生の)Yが選んだ白いスラックスを用意して来た。

鉄紺のシャツにブルー系のジャケット、そしてこの白いズボン。普段の私には考えられない決め方である。

(まあ、いいよネ〜。旅の恥はかき捨てだもんね♪)…。これから襲う人生最大の不幸?を知る由もなく、私は後顧の憂いをなくす為にトイレに入った。全て順調だった…。

こちらのトイレはシャワールーム、洗面台と兼用で、しかしスペースがたっぷりあり、明るい雰囲気のとても綺麗なトイレである。

■そんな素敵なトイレで用を足し、「よし、快調、日本に帰るぞ!」と立ち上がって水洗した。ところが…ちょっと流れが悪い。それでもこの一投目は慌てず騒がず、(あれ?)という感じだった。

続いて二投目の水洗。…しかし流れない。で、水かさが増した。(ムムッ!)冷や汗が出始めた。ここでいったん中止して対処すれば良かったのだが、すでにパニック?になりかけて三投目のスイッチをひねってしまった。

…でも、どうしても流れてくれない。逆に便器の水かさが満杯になった。溢れないだけ幸いだった。

(なんだよ〜、これ〜!?)。思わず、辺りを見回して途方に暮れた。トイレを出るに出られない、まさしく雪隠詰めの状態となったのだ。

■備え付けのブラシで何とかしようと試みたが…如何ともならない。空港への出発時間が気になり出した。

仕方がないのでドアを開け、Zさんと会話中であった作山先生に向かって、「吉永ちゃん、大変だよ。トラブルだよ、助けてよ!」救援を乞うと、

「…大丈夫、あとで私がするから心配しないで」。事態を知ったZさんがこう言ってくれたが、…冗談ではない。「No!No! 絶対自分で始末する!」。こんな置き土産?はまっぴらである。押し問答の末に道具を借りた。

泣きたい気持ちと祈る気持ちで、「ブシュッ、ブシュッ」とパイプの詰まりに向かって空気を送っていると、なんとしたことか「ピチャッ!」と音がして、卸したての新品のズボン、しかも真っ白いズボンの裾に汚水がかかってしまった。

「アッ!」と思ったが後の祭り。ガッカリして、しかし床を汚すまいと新聞紙を借りにトイレを出ると、「…だから言ったじゃない」とZさん。作山先生はと見ると、人の不幸は蜜の味とばかりにゲラゲラ笑っている。

■(クソー??)。なんか悔しくなって、「くっ付けてやる!」と掛かった右足を擦りつけようとすると、「やめて〜、やめて〜」悲鳴を上げて逃げ回る。それを見て、「ファニー!」Zさんは大笑いしている。

――まあ、こんなことをグダグダ書いていてもしょうがないので、この辺で止める。

結局タイムアップとなって、Zさんには心苦しく申し訳なく思ったが、ズボンを着替え、後の始末はお任せして帰国した。とんでもない結末が待っていたものである。作山先生の言い草が振るっている。

「いいんだョ、成功した話ばかりじゃ面白くないんだョ」ですと…。

以来、私はトイレの水洗がトラウマとなっている…。


PS:このまま終わっては私があまりに可哀想なので、最後にZさんから届いたお礼状の一節を紹介して、コーネル・キャンプの章を終わりとする。

「…The Mexicans have a saying "Mi case es tu case". It means"my house is your house."You will always be welcome in our home and I hope you will visit us again in the near the future! Thank you for everything.」


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あつみ [MAIL]