| 2003年06月10日(火) |
コーネル・キャンプ(5)/魂が洗われる合宿 |
今回のコーネルキャンプで感じた印象深かったことを、気の向いた順に述べたいと思います。
■【魂が洗われる合宿】コーネルキャンプは非常に真面目な合宿である。ボーイ・スカウトのキャンプ場なので原則酒類は禁止。したがって、人と会って話しをする以外、楽しみがない。道場兼、食堂兼のホールにみんなが集まっておしゃべりをする。
作山先生と私はもちろん、ケン・大橋、彼の門下生共々、一度たりと夜間、キャンプ場を抜け出したことがない。他の人たちは知らないが…。
静かな湖畔。緑鮮やかな草木の中に点在するキャビン/丸太小屋。早朝は日本では聞いたことがない小鳥たちのさえずりで目覚め、吸い込む空気はしっとりとして清々しい。
夜ともなれば、満天に張り付いたように輝く星々。魂が洗われる…。これ以外に何が必要であろう…。
ケン・大橋がこの地を少林寺拳法の合宿地に選んだ意味が、語らずとも聞こえて来る。
■そんな合宿を彼の弟子たちが支えている。古参のAさん(四段)とNさん(三段)である。
彼らは土曜日から始まる合宿に木曜日から来て、買出しやら、清掃やらと事前の準備をしてくれている。合宿の運営しかり、その姿勢にはいつものことながら頭が下がる。
キャンプ場にレーンジャー/管理人さんがいる。この人とも来る度に顔を合わせる。彼の愛犬「マリー」は真っ黒な雌犬だが、年を経て、ちょっと中年太りした…。しかし二年ぶりに会うと、お腹を見せて歓迎してくれた。
「少林寺拳法が練習に来るとみんなで清掃してくれるので、ホールがこんなに綺麗になる。他の団体でこんなことするところはないよ」と、少林寺拳法の評価は大変高い。
■キャンプでは細かなことは言われない。しかし練習時間の厳守はもちろん、食事当番なども参加支部ごとの分担制で整然と行われる。
そして、早朝のマラソンも参加が自由。内容も自由。私達はウォーキングで参加する。今回は初日は雨が降っていたので中止。二日目と三日に行われた。
特に三日目は雨がかなり振っていたのだが、強行された。「エブリバディー・カモーン!」とNさんがめずらしく気合を入れていた。そして「ディス・イズ・コーネルキャンプ・トラディッショナル!」と叫んだのが耳に残った。
前述したが早朝マラソンは強制ではない。しかし、これは合宿の伝統行事なのだ。私が感動したことは、“伝統とは黙っていても伝わるものではなく、誰か、伝えようとする積極的な意思の存在があって初めて伝わるものなのだ”と知らされたことだ…。
「(コーネルキャンプの精神を伝えようと頑張っているあなた方は偉い)You are great!」
私はAさんに敬意を表して言い、Nさんにもそう伝えて欲しいと伝言した。電子辞書に「感動/be impressed」の言葉を表示した時、彼は素直に「Thank you!」と微笑んで握手を求めて来た…。
■同じく、ケン・大橋の門下生でG先生がいる。Gさんはやはり古参で、ミシガン州、Ann Arborの支部長である。一昨年のキャンプではGさんの自宅に泊めて頂いた。私の家に宿泊されたことが二度ある。一度目はずっと昔、新婚の頃に二人で来たのだった…。
キャンプ初日、実技練習を午後四時に終わり、Gさんを中心に「“道”と“術”の違いについて」のミーティングとなった。なかなか活発な意見交換が行われていた。
最後は私達が締めくくる形となったが、「少林寺拳法の精神を演武で表現しようとするなら、固めてギブアップしている相手を打つのはおかしい。他の武道ではそうしない」という、非常に鋭敏な感性の質問が出たのには驚かされた。質問者はRさんであった…。
■二日目の夕食は25周年の行事だからと出前のマカナイさんが来て、ターキー料理が振る舞われた。Gさんの門下生のMさん(三段の日本人拳士、日本料理店を経営)も得意の腕を振るっていた。
彼の地で「餃子、ソース焼きそば」が食べられるとは驚きであった。それにしても、デザートのアイスクリーム共々、大変美味しく、お腹も大満足であった。
午後八時から講話の時間。「開祖宗道臣先生の思い出を語る」という題。
暖炉に赤い火がともり、私達二人を囲むように半円となる。みんな下に引いたマットの上に自由な姿勢でくつろぎ、熱心に耳を傾けてくれる。
■作山先生もさすがに疲れていたのか、この時は通訳をお願いする。
シカゴのMさんが行う。彼は四段で、英語版の副読本を翻訳した人だ。非常に優秀な人で、体格は2m近くはあろうという大丈夫。そして奥さんは、このキャンプに白帯から参加しているAさんがなった。
みんな顔馴染である。というより、新しいメンバーももちろんいるが、見知った人が多いこのキャンプは、まるで懐かしい田舎に親戚一同が会する如きの不思議な赴きがある。
私はこのキャンプが本当に好きだ…。
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