■ 開き、対の構えによって生じる、上段、中段に関する表と裏、あるいは正と逆の概念に、上手い名前が見つかりません。色々と考えているのですが、“門の存在/概念”を判り易く表現するネーミングが欲しいのです…。
□1.現時点での私の考えを述べますと、攻防時の布陣、構えによる体勢には三つの概念があるということです。自身の構えの正面が開いている。閉じている。そして正面を閉じて行けば、反比例して裏面/体の側面から背面が開くことです。
一般に正面が開いていれば、左右の裏は固く、攻撃されにくいのです。一方、半身を強くして正面を閉じれば、確かに正面は守り易いですが、裏を攻められます。この加減によって、攻防のスタイルとなります。
□2.守りの立場からすれば、開けば、正面からの強力な攻撃を受けとめることになり、閉じれば、左右からの挟撃を覚悟しなければなりません。もちろん、前者では左右の、後者では正面の攻撃が無いと云う意味ではありません。
ひるがえって、対構えからの逆蹴りがスカシ易いと云って、当たらないという意味ではないので誤解しないで下さい。上の状態で半身で、さらに手の構えが伴えば、門が狭い上に当てにくく、スカシやすいということに異論を挟む余地はないでしょう。ただし、対構えでも正面を向いているのなら、逆蹴りはやはり、当て易くなります。
通常、半身の場合は直線系の攻撃に強く、曲線系の攻撃には弱い(相手からすれば当て易い)と云われています。特に半身が強い時、足払いにより、裏から体を崩されて攻撃される場合があります。
□3.少林寺拳法の構えはレの字立ちに象徴される様に、45°半身、これは45°線上に足、腰、肩が揃うことを基本とし、様々な組み合わせ/歩幅、手の構え、体格、得意技などにより、自身の個性に合った構えを取ります。もちろん状況にも合わせるでしょう。
以前、海上保安庁の人達が六人道場に習いに来ていました。うち二人は武術指導員でした。全員無事に黒帯を取りましたが、ある人が面白い事を言いました。
「…小船の中で犯人を逮捕しようとすると、時々、両方共、海に落っこちそうになるんです。あわてて犯人と支え合うのが可笑しいんです。船上は揺れるし、物がゴチャゴチャしてるので、安定して構えますね」と言ったのでした。
私は“なるほど!”と思いました。“南拳北腿”という言葉は、中国の拳法の特徴を表す言葉だそうで、教範中にもあります。よね(?)
曰く、「南の地方は暖かく、船上の生活が主流だから手技が盛んとなり、空手の源流となった。一方、北の地方は寒く、草原地帯で発達したので足技が発達した。少林寺拳法は北派の系統である。」
これは、中国拳法研究家でも、一概に言えないと否定的な見解を持つ人もいます。しかし、海の男達がそうだと言うのですから、納得しない訳には行きませんでした…。
このように、状況に合わせて構える時があるでしょう。
□4.「45°の半身」と私は門下生達に構えの基本を指導します。少林寺拳法の思想に合った、正面でもない、半身でもない中庸の構えであると思います。
肩、骨盤の高さは平行を保ち、足はエックス・X。この時の角度は45°の線が交差しています。
左中段構えなら左足先をXの左上点辺りを踏みながら真っ直ぐに置き、右足を右斜め上から走る線上に平行のなるように、左斜め上から走る線上に置きます。その時、体の中心部はXの中心点に来るようにします。
これで、肩、腰、足が45°線上になりました。左肘部は僅かに引いて左脇腹を守り、右肘部は僅かに前に出して右脇腹を守っています。この時、どちらの下にも硬い腰骨があります。
この状態からやや半身、やや正面は腰(股関節)の操作によって出来ます。もし、足を(少し)動かせば、強い半身と強い正面になります。これらから門が開く、閉じる、裏門という概念が始まるのです。
□5.法形については改めて述べますが、今は門の概念から基本形を述べます。初学者が学び易い形とはなんでしょうか? 例えば“左対構え”からですと、
上段逆突きを内受け突き:無理攻めを咎める。開身をする場合、狭い進入路を益々狭めるので受け易い。
上段逆突きを内受け蹴り:無理攻めを咎める。半転身をする場合、狭い進入路を益々狭めるので受け易い。
*この時、対構えでの逆突きや順足刀蹴りはスカシ易い方向になるのですが、攻者が突く為に腰を回し、正面を向いてくるので、受けからの反撃の場合、これが解消されます。攻撃半ば以後に突くチャンスが生じやすいでしょうか…。
上段逆突きを上受け蹴り:無理攻めを咎める。振り身をする場合、狭い進入路を益々狭めるので受け易い。
*この場合、順蹴りはもともと蹴り易い布陣なので、出会い頭から正面を向くまでに当てるチャンスが生じやすいでしょうか…。
ちょっと、膨大になるので、考え方の一端/閉じている側への攻撃を益々閉じ、いわゆる表、裏の攻防とするなどの分類法を示しておきました。なお、人体の構造上、手足は左右に付いているので、完全な直線攻撃は考えられません。したがって、入り身が大きく浮上して来ます。
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