A Thousand Blessings
2004年1月〜最新|ひとつ前に戻る|ひとつ先に進む
2004年04月23日(金) |
安易なカヴァーソングが多いと思わない?? |
中学校時代のA教諭の言葉。
『妖児、難しい本を読んだくらいで偉くなった気になるなよ。 世の中で一番えらいのは、学者でも政治家でもないんだぞ。 自然の理不尽さと闘いながら、朝から晩まで汗水流しているお百姓さんだ。』
これは、僕のちょっとばかり長い座右の銘になっている。 この言葉を、遠くの、かつての友人たちに捧げます。
湯水のごとく金を使える人間は別として、普通は限度というものがある。 しかし音楽を聴きたい、新しい音楽に出会いたいという欲求はつのるばかりだ。 そこでオリジナルCD‐Rの登場となる。 オリジナルで編集する楽しみとそれを他人に聴いてもらって 何かをみつけてもらう喜び。 100曲聴いて2〜3曲スゴイのに出会えればみっけもん。
アルバム志向の人には、バラ売りにしか見えないだろうが、 そんなに単純な世界ではない。曲順にも頭を使っているのだ。 それはもうファンタスティック・プラスチック・マシーン並みにだ。 曲順の落差を楽しむのもいい、曲順の妙を味わうのもいい、 ジャンルを越境していく快感に打ち震えるのもいい、 ジャンルにどっぷり浸かるのもいい。 すべて、OKなのだ。NGというものは存在しない。 だいたいがだ、NGなんてくだらないと思わんか?! 頭でっかちが考える事は、回りくどくていかん。 こちとら、スパーンと行ってバシっと決めるのよ。
ファンタスティック・プラスティック・マシーンが出たついでに。 ファンタスティック・プラスティック・マシーンこと 田中知之が選曲・ミックスしたコンピがある。 たまたま購入したのでこれ以外にもシリーズ化しているのかもしれないが 「sound concierge 401 “Do Not Disturb”」と 「sound concierge 402 “Four Kicks Adventure”」 の2枚。
これがなんとも面白い。小西を師匠と仰ぐ田中だから 相当数のこういうシリーズを作っているのだろう(CD化はされていなくても)。
チェット・ベイカーから気が付けば、いつのまにかハイラマズが立ち現れ、 アート・オブ・ノイズがかかったかと思えば藤原ひろし、 さらにはブラジルの至宝カルトーラからロバート・ワイアットを経て ミッシェル・ペトルチアーニからムタンチスヘ。 最後はボビー・ウーマックからガトー・バルビエリで締める72分間の快楽。 「401」
「402」に至っては知らないものばかりで(笑)、楽しみのてんこ盛り状態。 こういうものを目指そうよ。みんな。
話題は変わるが、ラジオで女性シンガーのBirdが渚ゆうこの「京都慕情」を 歌っていた。ほぼ最悪の出来ではあったが、丁寧に歌っていたのは事実。 何がいけなかったかと言えば、 あまりにもBird自身の語法に無理に合わせようとしたために、 原曲の美しさが消えてしまったこと。
カヴァーというのは本当に難しい。成功率はかなり低いのではないかな? 以前、中尾ミエの最高傑作“片想い”を中森明菜がカヴァーしていたが、 感情過多の歌い方が原曲の女心の切なさをドロドロにしていた。 好きな曲だからカヴァーするという安易な姿勢が一般的なのは言うまでもないが、 もっと、その作品や作品を作った人間や作品が生まれた時代背景を 勉強しないと。
カヴァー自体には意味はあると思う。 もちろん中森が百恵をカヴァーしても何の意味はない。 意外なアーチストが意外な選曲で感動させる事に意味があるのだが、 さていかにすればそれが可能になるのか。 今までの成功例は方法論をもたず、偶然の産物である場合が多いような 気がする。
Aというアーチストの曲がかつてあったとする。 それを作った作詞家・作曲家・アレンジャーは、おそらくAを念頭に置いて 作ったにちがいない。 しかし、もしかしたら同時代のBというアーチストが歌っても 成功していたかもしれない。 ただそのときは「そのこと」に気付かなかっただけのことだ。 Bというアーチストと似た個性のCというアーチストが現代にいたとする。 そのCがAの曲を歌ったときが成功例なのではないだろうか。 ただしこのCとAの関係を見つけるのは至難の技。 ほとんど偶然に頼るしかないのが現状。
一番つまらないのは、Aと似た個性のDというアーチストが歌ったとき。 最悪なのが、何の関わり合いもないEというアーチストがしゃしゃり出た時。 実は一番多いのがこのパターンだと、僕は思う。 卑近な例を挙げれば、“贈る言葉”や“なごり雪”を急速テンポで歌った バカガキども。原曲に特別の思い入れはないが、あのアレンジ以前の 破壊行為には蹴りを入れたくなった。
ちょっと考えてみた。 カヴァーで大成功したのってなんだろう? 石川ひとみの“まちぶせ”が最高傑作かな!原曲は三木聖子。 声のリズムの取り方と発声方法を変えただけで、 全くの別もんに生まれ変わった。これには作者のユーミンも驚いたのでは? 最近では、菅原洋一がカヴァーしたサザンの“TSUNAMI”にとどめを 刺すだろう。これはもう必聴盤でっせ!
響 一朗
|