A Thousand Blessings
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2004年03月06日(土) |
バーナード・ハーマン「タクシー・ドライバー」完全版。The Shaggsで昇天した中年二人。耳の栄養メニュー。 |
映画「タクシー・ドライバー」の完全版(すなわち作曲者、バーナード・ハーマン 自身が指揮した全ての演奏が収録されている)が発売されていた。 ちっとも知らなかった。 当然、即購入。すでに3回通して聴いている。 天才、バーナード・ハーマンの説明をここでする気はない。 興味があるかたはネットで検索して驚いてもらいたい。 彼の優れた作品群の中でも間違いなく一番の傑作がこの「タクシー・ドライバー」。 最初は監督、マーティン・スコセッシの依頼を断わっていたハーマンだが いざ仕事にとりかかると物凄い勢いだったようだ。 多くの映画音楽作家の中でも彼ほど心理描写の場面で 巧みに音楽を扱える作家は、まずいない。 しかし、世間ではエンニオ・モリコーネ流行りである。 モリコーネも才能はあるが、ハーマンと比べれば才能の差は歴然である。 僕はハーマンのヴォイシングが好きである。 というより、独特のヴォイシングこそがハーマンの全てであると言っても 過言ではないかもしれない。 その全てが体験できるのが「タクシー・ドライバー」の完全版だ。 バーナード・ハーマンは全ての音楽を録音し終えた、その日の夜に 眠るようにしてこの世を去った。正真正銘の最後の仕事だったのだ。
ニュー・ハンプシャー洲の田舎(かどうかは知らんが)で 1969年に発表された「philosophy of the world」 というすっごいタイトルのアルバム。 グループ名はThe Shaggs(シャッグス)。 父親がプロデューサーになり、愛娘たちでグループを作らせ、 2枚のアルバム(1stは3姉妹、一部4姉妹。2ndは4姉妹)を発表する。 どこの父親も我が子はかわいいのだろう。 だが普通、このジャケットに 写っている娘をかわいいとは言わない。言えない。 グループ活動は 父親が死ぬまで続けられた。親孝行バンドなのだ。
さて、演奏だが、これは言葉で表現できる次元をはるかに超えている。 よって、説明は省く。楽器が上手に演奏できないからと言って すぐにコンピューターに頼ってしまう今の若者は 彼女らの試みから学ぶべし。
フランク・ザッパのお気に入りのバンドだったことは付け加えておくべきでしょう。 ちなみに最新再再発CDのプロデューサーは なんと!NRBQのテリー・アダムスでした!って、そんな話題に感動するのは 日本中で100人くらい?(笑)
先日、友人宅でシャッグスを聴き、笑い転げ、極めて幸せな時間を過ごした。 「シャッグスって、オーネットのハーモロディクス理論ですよね?」 「そうだ!バーン・ニクスのギターそっくし!!」 ここで大笑いし、感動に打ち震えながら聴き入った。 真昼間から、シャッグスに感動している中年ふたりの姿は 美しい。
思うのだが、21世紀の我が日本でシャッグスのCDを聴いている 人間が存在する事など、姉妹の父親は想像だにしなかっただろう。 しかし、父親の耳は確かに優れていた。 全曲オリジナルの1stアルバム、さらに言えば全曲同じような曲の 1stアルバムを録音し終えたときの満足感はいかばかりの ものであっただろうか? どこかの勇気ある音楽雑誌がシャッグスのメンバーにインタビュー してくれないものか? 1969年に22〜3歳として、現在生きていれば、 57〜8歳。孫もいる歳である。 ああ・・・・今の姿を見てみたい!すごいことになっているのは 想像できるが。 ちなみにシャッグスの一番おいしい部分は1stアルバムの4曲目 “my pal foot foot”のドラムソロだ。 おそらく1万回聴いても飽きない。
今日の耳の栄養メニューは、
「レジデンツ/ノット・アヴェイラブル」「高木元輝/モスラフライト」 「菊地雅章/Love song」「ロバート・ワイアット/ロック・ボトム」 「ジョー・ヘンリー/scar」「小室等/時間のパスポート」 「スーパーカー/アンサー」「遠藤賢司/エンケンの四畳半ロック」 「渋さ知らズ/自衛隊に入ろう」
音楽は連鎖する生き物だよ。
響 一朗
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