A Thousand Blessings
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2004年01月31日(土) |
君はポップグループを聴いたか?俺は聴いた! |
「人生なんて、深く考えてみても意味はないよ」 これは、僕の友人のアヴァンギャルド音楽家の言葉。 こころの中では反駁しながら、「そうかもね」と言ってしまう自分が哀しい。 親しい関係でありながら、あまりに違う人生観に唖然とする瞬間が多い。 人間100人いれば100通りの考え方があるのだから、当然といえば当然だが、 出来れば、「人生は、深く考えるべきものだよ」と言って欲しいと願う。
何の関係もない前書きから始まりました。
ポップ・グループを真面目に聴いてきた人間の一人としては、 “アムネスティ・リポート”の音が店内(かつて勤めていたレコード店)に 流れ出した瞬間、数人の客と店員が笑い出したことがショックだった。 これは笑う音楽なのか?! 何が彼らを笑わせてしまったのか、落ち込みながら考えた記憶がある。 可笑しいから笑うというのなら許せるが、「困ったもんだ」的な笑い (つまり嘲笑)には抵抗したい気分だ。 演奏者の真剣さがいやというほど伝わる「過激」で「異質なもの」に対して 人々は、とりあえず曖昧に笑う事でその場から逃げようとするのだ、 というのが僕の持論だ。 自分の体内リズム(固定観念)を崩されたくないという避難行動の一種だろう。 僕は、むしろそういったリズムを崩される事に快感を感じるのだが・・。
ポップ・グループは、90年代に活躍するブリストル勢(マッシヴ・アタック、 トリッキー、ポーティス・ヘッド等)の先駆的な存在だ。 アイスランド出身のビョークもブリストル勢の影響をかなり 受けているそうだ。(そういえば、質感がそっくり) 1stアルバム「Y」が発表された時、そのグループ名にみんなが注目した。 余談だが、僕は「ロキシー・ミュージック」というネーミングに 共通するものを感じた。 だからという訳ではなく、彼らのダブ的な資質がデニスを選んだと見るほうが 正しい。さらに、ファンクやアヴァンギャルドミュージックからの 影響も顕著である。 いわば、今で言うところのミクスチャーであろう。
写真ですら見たこともないブリストルという街。 そこの出身バンドには「他とは明らかに異質な音楽」を創る傾向がある。 アメリカのdevoが生まれたオハイオ州のアクロンという街に環境が似ているのか? アクロンのバンドのコンピを以前聴いたが、全部「変」だった。
※ ネットで調べたところ、ブリストルは貿易都市で音楽は盛んであるとの事。 ちなみにアクロンは工業都市。車のタイヤ産業で極めて有名。
ポップ・グループは3枚のアルバムと数枚のシングルを残した。 2枚目の「ハウ・マッチ・ロンガー」で恐るべき急成長を遂げることになる。 これは掛け値無しの傑作。 録音のバランスは意図的に崩され、音楽は破壊されていた。 しかし、その破壊された美しさは1stの比ではない。 破壊される事で何かが生まれる、という発想が見事な作品を生み出したのだ。 叫びにも等しいマーク・スチュワートのヴォーカル。 それ以上にリズム隊の弾け具合が痛快極まりない。 フリージャズに対する言葉として、フリーロックというものがあるとしたら、 ここで聴けるサウンドこそがまさにそれであろう。
1stを発表後彼らはレコード会社をレーダーからラフトレードに 変えている。 その第一弾として発表されたのが、 「we are all prostitutes / amnesty report」というシングル盤であった。 B面の「amnesty report」の方がA面よりも数倍衝撃的である。 その過激性を上回る楽曲は、残念ながら傑作の2ndアルバムにも その後のライブ編集アルバムにも収められていない。 つまり、彼らの最高の音楽遺産はシングルのB面に眠っていたというわけだ。 レコード店に居合わせた人々を笑わせたその音楽を 過激なお遊びとして捉えるのが正しいのか、 実は、正直いってわからない。 つまり、このような楽曲がその後発表されていない事実から 推察すると、彼ら自身も「笑いながらお遊びで」演奏していた可能性すら浮上して くるのだ。異質な彼らの楽曲群の中でも特別に異質な存在なのだ。 そうなると、僕の持論はぐらついてくる。冗談なの?これって・・? なお、2ndアルバムの曲は5曲だけ、このアルバム「we are all prostitutes」 に収められている。
ヴォーカルのマーク・スチュワートはエイドリアン・シャーウッドと ソロアルバムを作りつづけ、他のメンバーはリップ・リグ&パニック、ピッグ・バッグ、 マキシマム・ジョイという3つのグループに分かれていく。 僕が知る限り、ポップ・グループのような完璧なテクニックを持ち 過激な演奏を繰り広げる集団にはその後出会っていない。 もし、あったら是非教えて欲しい。即、購入します!
響 一朗
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