「星に願いなど……子供じみている…… 祈ったところで、私の願いを聞き届けてくれる神は居ない……」 『ガルデン様…… どうかそんな悲しい顔をなさらないで下さい』 「シュテル……」 『貴方の望みはこのシュテルが、どんな手を使ってでも叶えて御覧に入れましょう』 「神でもないお前に、何が出来るというのだ……?」 『何であろうと、それが貴方様の願いならば』 「…………では……その……」 『はっ、何なりとお申し付けを』 「……今日一日、私から離れていてくれないか……?」 『―――――は……?』 「駄目か……?」 『いっ、いえ、そのっ、あっ、……な、何故?!! ここ、このシュテルが何か貴方様の信頼を裏切る事を致しましたでしょうか?!!』 「そんな事は無い。いつもお前は私によく尽くしてくれている…… ……だから、なのだ」 『お、仰っている事がわたくし目には……理解できませぬ』 「……お前は、初めて出会った時から長い間ずっと、片時も離れず私の傍に居てくれた…… 特にアデュー達と出会ってからは、まるで私を包み込む様に、害悪から常に守っていてくれていた」 『そ、それは当然の事ではありませぬか』 「そうだな……何時の間にか私には、それが当たり前になっていた。 お前に守られる事に、何の疑念も抱かなくなっていたのだ…… けれど、それではいけない、と思った」 『が、ガルデン様……?』 「私は、『ガルデン』の真名を継いだ誇り高き魔法剣士。 それが何時の間にかお前に頼る事に慣れて……安堵と言う名のぬるま湯に浸かり切ってしまっていた。 これでは駄目だ。私は、私の名前と誇りに相応しく、もっと寒風吹く『外』に出て行かねばならない。 私自身の力をもって様々な害悪を肌に感じ、それを打ち破っていかねばならないのだ」 『………ガ………』 「丁度今日はタナバタとかいう、引き裂かれた者達が年に一度の逢瀬をする日であるらしい。 その逆と言う訳ではないが、この機会に一度私はお前の手を離し、私とお前それぞれの姿を見つめ直してみたい」 『…………―――――』 「だからシュテル……今日一日は、私を庇護せず、放っておいてくれ………」 『うわあぁあァアああーーーッッ』 『……頼むから、主人につれなくされる度に、酒瓶抱えて飲んだくれて泣き叫びながら俺に絡むのはやめてくれないか、シュテル……』 『き、貴様にはこの気持ちが判らないのか?!!それでも同じリューか?!!』 『同じリューって、お前はドゥームとのハイブリッドだろう…… 第一俺は、歴代の乗り手達とはお前達の様なベッタリとした関係は結んでこなかった。 乗り手の交代も、お前に比べれば短いスパンで巡ってきたしな…… 300年前なんか、魔王ガルデスとの戦いを共に生き抜いた勇者の乗り手から聖女に、あっさりと「これは元々貴女のものだから」みたいな感じで譲渡されそうになったことが有るぞ。 結局聖女からは拒まれて、かなり居心地が悪かったが』 『くっ……短命な者達に乗り継がれてきたお前には、このシュテルの一世一代の思いは理解できんか……』 『失礼な言い方だな。 大体お前の主の発言は、その心の真っ当な成長を表していてめでたいものじゃないか。 喜びこそすれ、嘆く必要は無いだろう』 『……………』 『お前の大事な主に、一日限定では有るがやっと巣立ちの兆しが見え始めたんだ。 それを温かく見守ってやるのがお前の役目だろう』 『……それは……』 『まあ、寂しい気持ちも良く判る。俺もアデューの成長を見守っていた時は、程度の差こそあれお前と同じ葛藤を抱えた。 だがああして見事に一人前の男になった今では、やはりあの時、あいつを信じて放任していて良かったのだと……』 『待て、ゼファー。そう言えばお前の乗り手は、今日は何処に……?』 『ああ、何かデートだとか言っていた気が……「今日は邪魔者が居ないからゆっくり楽しめるぜ」とか言って…… いやあ、あいつももうすっかり大人の仲間入りだな』 『……あァアあの野郎ーーーッッ!!!』 『ま、待てシュテル!カウンターに叩き付けて割った刺殺に最適な酒瓶の破片を持って何処に行く気だ?!シュテル、シュテルーーッ!!』 ――――― 七夕ネタ。 本当はゼファーvソフィーな話にしようと思っていたのですが。 護る者と護られる者の強力コンビ・ゼファソフィ大好き。(見た事も聞いた事も無いカップリングをさもメジャー所の様に)
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