TOM's Diary
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2004年07月22日(木) 火星旅行その2

S氏は案内のロボットに荷物を渡すと、ロボットの誘導に従って
歩いていった。

廊下がいったん狭くなったと思ったが、そこが宇宙船への入り口だとは
ロボットに言われるまで気がつかなかった。
S氏は、いったんロビーに集合し、それから宇宙船へ乗り込むものだと
思っていたのだが、まっすぐ宇宙船に乗り込むとは思ってもみなかった。

S氏は飛行機に乗るときと同じように、ロビーで搭乗までの待ち時間の
間に、自分が乗る宇宙船を外から眺められると思っていた。
当然、自分が乗る宇宙船をバックに記念撮影もするつもりだったのだが
薄暗いが、未来的な装飾の廊下を歩いている内に宇宙船に乗り込んで
しまったことを残念に思った。
そう言えば、成田に着いて以来、外の景色を見ていなかった。

宇宙船の中は人気が感じられなかった。
火星までは一週間の旅である。飛行機と違って個室が与えられる。
ロボットはS氏の部屋まで来ると、S氏にカードキーを出すように
指示する。先ほどまでいた部屋のカードキーがそのまま使えるのだ。
カードキーをスロットに差し込むとドアが開いた。

S氏が部屋に入ると、まず最初に窓に目をやった。
外の様子が気になったのだった。
だが、ブラインドが降りていて外の様子を見ることは出来なかった。
窓に近づきブラインドを上げたが、外の様子を見ることは出来なかった。
ガラス窓の向こうにさらにシャッターのようなものが下りていたのだ。
ロボットの方を見ると、離着陸のときには安全のためシャッターが降りて
いて外は見られないそうだ。
特に着陸時は大気圏投入時の熱から守るために操縦席さえシャッターが
降りるそうだ。

電車にしても飛行機にしても窓際の席が大好きなS氏はがっかりした。
ロボットがS氏の様子を察したのか、壁にあるスクリーンのスイッチを
オンにした。するとそこには成田空港の様子が映し出された。
S氏は物足りない気がしたが、それで我慢することにした。

S氏はさっそく機内の散策に出ることにした。
部屋をでようとするとロボットに制止されそうになったが、
S氏の動きの方がわずかに早かった。

さきほどの入り口の扉はすでに閉じていた。
廊下の両側にはS氏の部屋と同じようなドアが全部で4つならんでおり、
入り口と反対側の廊下の突き当たりには、S氏の部屋とも入り口とも
異なるドアが付いていた。そこが操縦席のように思える。
廊下には誰一人おらず、S氏の部屋以外のドアはすべて固く閉ざされている。
あたりは、空調の音を除くと静まり返っており、S氏は突然閉じ込められた
かのような息苦しさを覚えた。

S氏は操縦席と思われるドアの方に向かって歩き始めた。
近くまで来ると突然ドアが開き、中から人が現れた。
S氏は驚いて立ち止まった。

制服を着たその女性は人間とは思えなかった。
おそらく、アンドロイドではなかろうか・・・
「こんにちは、S氏ですね。私がこの機の機長です。長い旅行になりますが
よろしくおねがいします。」「まもなく出発しますので、お部屋に戻って
下さい。残りはS氏だけです。お急ぎください。」
しゃべり方もどことなく、人間とは思えなかった。

「残り」ということは、やはり他にも乗客がいるのだろうか?
S氏はしぶしぶ部屋に戻った。
出発時には、カプセル状のベットに入ってベルトで身体を固定しなければ
ならない。S氏がカプセルに入った途端に機体が揺れ始めた。
滑走路に向けて動き出したようだ。

カプセルに入ると、壁のディスプレーを見ることは出来なくなったが
カプセル内にもディスプレーが付いており、そこに外の様子を映し
出すことが出来た。

機体が滑走路の端に着いたようだ。
前の飛行機が上昇していく様子が映し出されている。
いよいよS氏の乗った宇宙船が滑走路を滑るように動き始めた。

明日へ続く・・・


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