Leaflets of the Rikyu Rat
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2006年03月23日(木) 僕と弟(2)

アトピーなんてものに罹るのは食生活が悪いからだ、
生活環境が悪いからだ、なんてのは途轍もない大嘘だと思う。
うちの母親は異常なほどの健康オタクだった。
野菜は完全無農薬の有機野菜しか買わない、なんて当たり前だった。
お米だって農家である祖父が無農薬で一から作り上げた米しか食べなかったし、肉も国産のものしか買わなかった。
インスタントラーメンやカップラーメンなんて絶対に食べさせて貰えなかったし、
レトルトも冷凍食品も食べれなかった。
それでも弟はアトピーを患った。そしてそれはどこまでも酷くなっていった。
痒くて痒くて仕方が無いと弟は自らの肌を掻き続ける。
皮膚が捲れ血が滲み出て、それでも痒くて仕方ないと弟は掻き続ける。
我慢できないと掻き続ける。
血だけでなく透明な液まで滲み出し、膿む。
そんな弟を見ていて、気味が悪くてしょうがなかった。
布団で眠ればシーツは染みと血塗れになり、それが乾き斑の模様が残る。
その光景は実に気味悪く、禍々しいものであった。
次から次にシーツを汚して行く弟が汚らわしく見えて仕方無かった。
「これは僕だけしか使えないの」と自分専用のシーツ取得を主張した。
稀に隣で寝ていた弟の血が己のシーツに付着したときなどはあまりの気持ち悪さに癇癪を起こしたが、母親に激しく叱られた。
「なんで僕だけこんなのが出てくるの」と弟は泣いた。
僕は「この恐ろしい病に罹ったのが自分でなくて良かった」と心から安堵した。


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加持 啓介 | MAIL

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