Leaflets of the Rikyu Rat
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物心がついた頃から弟が疎ましくて仕方なかった。 ベビーカーに乗ってきゃっきゃと笑っているその存在に腹が立ってしかたがなかった。 歩けるようになり、全てに於いて僕の真似をしようとするにつれて、 その憎悪に拍車がかかった。 「真似するなよ」と言っても「なんで?」と笑って答える弟が、 そしてその質問に答える術を持たなかったことが、 またそんな僕を嘲笑う弟が、憎たらしくてしかたなかった。
誤ってコップを割れば父親に叩かれた。 その様子を見てにやける弟が恨めしかった。 嫌いな野菜をどうしても食べれなければ父親に殴られた。 その隣で「僕は食べれるよ」と宣言し「あら偉い」と母親に褒められ勝ち誇ったようにこちらを見やる弟。 怒りを静めるために食後子供部屋で殴ったら、母親に告げ口をしに行き叱られる僕。 「謝りなさい」と言われ拒んだら頬を抓られた。 痛みに耐え切れず泣いたが母親は許してくれなかった。 開放されたい一心で「ごめんなさい」と言う。 「お母さんにじゃなくて××に言いなさい」と弟の前へ行かされる。 そこにはいるのは涙目を浮かべた弱弱しい子供でしかないように見えるが、 僕はそいつが瞳の奥で笑っていることを知っていた。 どうしても謝りたくなくて、泣き喚く。 しかし物理的な苦痛を与えられ、最後には渋々と弟に赦しを請った。 弟はその瞬間一番嬉しそうな顔をした。 次第にどうしようも無い程の怨嗟が募り、また僕は弟に暴行を働く。 どんなに口止めしても母親に告げ口しに行く。 僕と弟との諍いに終わりは無かった。
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