Leaflets of the Rikyu Rat
DiaryINDEX|past|will
時差があった。サイパンより帰って来てからまず翌々日に、顔の皮膚が剥がれ始めた。 真っ赤になっていた鼻から始まり、眼の下、頬、口周り、そして額。 斑模様が蔓延る見るに耐えない容姿になったので、風呂に入って洗顔をするも、完全に綺麗にはならない。 二日ほど集中的にシャワーに入り、なんとかぱっと見では分からないくらいになった。 顔面がどうにかなったかと思った頃、背中の皮膚が剥け始めた。 それは肩に続き、上部から順に進行する。 顔との違いはその進行の速度と範囲の広さである。 鏡を見るとひらひらと皮膚がたなびいている。どう見ても美しくは無い。 手でぴりりと千切ってみる。出来るだけ長く長くと念じながら引っ張る。 まるで鰹節のようなそれが手のひらに収まり、これが己の皮膚なのかと思いながら見ると、不思議な気持ちになる。 今は上腕まで広がってきた。 どうせなら全身の皮が捲れてしまえばいいのに、と思う。 そうして今の自分よりもっと格好良い自分に変われればいいのに、と妄想する。 しかし、そんな風になることは勿論無い。 “以前の僕”に戻るために、皮膚は剥げ、再生するのだ。
十月に日焼けで皮膚が剥がれているひとはそういないだろう。 明日から北海道に旅行に行くのだと思うと、より不自然さが際立つだろうと愉しくなった。
|