2004年01月03日(土)
03 --------------------------------------------------------------------------------
「ゴンちゃんは電車ずき」
相変わらず夜の景色をぼーっとみてた僕に、
チーがぼそっと言った。
「あ ごめん。車の方がよかった?」
お酒をちょこっと飲んでたこともあって、
僕は電車を選んだのだけれど。
でも、言われてみれば
僕は彼女といると
電車ずきになってしまうのかもしれない。
僕はまだ、免許とりたてて、
実はチーを乗せて運転することに不安がある。
一人なら気楽で楽しいドライブも
チーと二人だと、緊張しすぎてヘトヘトになる。
情けない。
だからコッソリ練習していること、
彼女は知っているのだろうか。
「車も好きだし、電車もすき」
チーはそう言った。
「電車の方が、ゴンちゃん優しい顔してるし」
ね?と言うように僕の顔を覗きこむチー。
完全に僕の負け。
彼女はいつも、何気なく人のココロを読むコなんだ。
チーの親切は、チーの思いやりは、
ほんとに何気なさ過ぎて、気づかれないことが多い。
だから彼女をよく知らない人は、
チーを宇宙人のようなコだと口をそろえて言う。
確かに掴めない所は多いけれど、
ふとした瞬間に、彼女の優しさを知ってしまったら
皆彼女を大好きになる。
僕もその一人で、
僕は必要以上にトリコにされてしまった一人でもある。
そういえば車でチーと出かけると、
「ヤツアタリ」
と意味不明なことをいいながら
僕の体のあちこち目掛けてバンバン叩く。
ホントは密かにマッサージしてくれていること、
僕はちゃんと気づいてる。
そんな不器用な優しさに触れると、
たまらなくココロがあったかくなるんだ。
「ねーゴンちゃん。お弁当つくってくればよかったね」
電車の外に目をやったままで僕にそう言うチー。
誰が作るのさ、聞くと、当然のように僕を指差す。
あのねー・・と肩を落すフリをしながら、
でも僕は、実際作ることになったら、
ぶきっちょで不細工なお弁当を
ちゃんと2つ作ってきてくれることも、わかっているのだ。
電車は僕らを乗せて、柔らかなリズムで進む。
次の駅で、僕らは降りる。
海まで一歩近づいた。
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