某駅の青空駐輪場の空き地に彼岸花が咲いていた。田んぼの畦道で見るような群生ではなく、ところどころに一つ、二つとポツンと咲いているだけなのに、自転車の上からも目をひいてしまう。
別の名を曼珠沙華(まんじゅしゃげ)。
地方によっては、死人(しびと)花、仏花など、陽気でない俗称で呼ばれているらしい。
お彼岸に咲く毒々しいまでの鮮やかな色と、可憐とは言いがたい派手な花弁。名前の先入観があるせいか、真紅の色や、おしべやめしべが幾つも突き出した様子が、燃えさかる人の命や情念の揺らぎのようにも見える。
好き嫌いがあるだろうけど、彼岸花が似合う風景が好きだ。
豪華な割りには淋しげな、そんな花の姿に誰かさんの死に様を思い重ねる。
草むらから虫の音が聞こえる青空駐輪場。
今どき撤去もされず無料で利用させてもらえるのは有難いが、夜になれば当然真っ暗。街灯から離れた場所だと、目が慣れるまで手探りで探す事になる。
堤までの自転車が立ち並ぶ細いゆるやかな坂道。
…そういや、いつかの夏には道を横断する蛇の尻尾を自転車で踏んだんだっけ。と思い出す。とたんに暗闇の中の足が鈍って、苦笑い。
あの蛇は今どうしているかなぁ…。おーい。すっかり秋ですよ。
懐中電灯、通勤カバンに入れなくっちゃ。
Sako