昨年の冬、朝の通勤途中に、駅の階段でこういう人を見かけた。
突然、油が切れたように、その人は立ち止まってしまった。動く事をやめて、この人はどうなってしまうんだろう…。不安だった。
ほんの数秒間がとっても長く感じられた。
今。家の中。
無気力状態でじっと動けない私がいる。
この状況を何とかしなくてはと予定を入れ、仕事に出る。からっぽであることをごまかす為に、何かに夢中になり、没頭する。
何かに追われる自分を日々演出する。
でなければ、きっと立ち止まってしまう。
ある日、ひとりになって気づく。
…自分には何もない。
何もないのでは虚しくて生きていけない。
一人では生きていけないから、人と関わり、契り、物に固執し自分を縛るのか。
人との関わりなしで自分探しなどしても見つかる筈もない、
と新聞のコラムにあった。
なるほどと思った。
言いかえれば、人との関わりなど要らぬと思えば、自分探しの必要も、生きている必要も又ないのかと、そうも思った。
人間だけが、こんなにややこしいものなのか。
この長い人生に、何もない自分は、いったい何のために生まれてきたのか…
と、前世たぶん虫であったろう私は、未だ青臭いことに惑う。
では、では。晩ご飯の大根も煮えたので、出勤、仕事に逃げるとします。
こんな私でもたぶん頼りにしてくれる家族の為にがんばろ。
Sako