午前中は講習、午後からミーティングと、今日も仕事だった。
早朝より人出の多い某駅周辺は、今週あたりが観光シーズンのピークかな。
仕事明けの年末に、懲りずに会津へ行こうなどと、夫婦間で旅行話が盛り上がっていたが、どうやらお流れになるかもしれない。
一昨日、夢を見た。
何の脈略もないワケの分からない夢だったが、そこに父の顔があった。
最近、忙しさにかまけ、ろくに顔も見せていないことに思い当たった。
そんな矢先のこと。朝に、実家近くに住む姉から電話があったらしい。
午後7時。仕事から帰って、その旨、子どもから話を聞いて電話した。
先日、おすそ分けした鮭のお礼かしらん、などと脳天気に電話を掛け、
「お父ちゃんが…」
のトーンダウンした姉の声に、全てを聞く前に話を理解した。
母が亡くなって一年と半年。若い頃から病気持ちの父は80を超えている。
こういう事態もどこかで予測していた。
うん、うん、と頷きながら、体の芯が急速に醒めていく。
自分でも驚くほどに、冷静に、必要な事を聞き出している自分がいる。
体中が痒く、おしっこも出ず、腎臓の機能が著しく落ちているらしい。
体調不良で診察に行って、そのまま入院することになった。
姉の話では、幸い、急にどうこうという話ではないらしいが…。
とにかく、明日、親不孝の顔を見せに行ってこよう。
その日がやってくるのは、そう遅くはない。
いつかは誰だって、日々に決着を付け、独りで、さよならするんだ。
ネットでそれらしき病気を調べていると、ダンナが素っ気無く言った。
「それやったら、死ぬで」
悪気じゃない。ないが、それだけに、無神経さに腹が立った。
お互いどんなに優しくても夫婦は他人なんだろう。
私が何も返事をせずに背を向けていると、
お休み…、と、小声で言って部屋を出て行った。
お正月の我が家の光景…。
風来坊の兄の姿はないが、毎年、父と、母と、姉夫婦と、私達家族、恒例のお墓参りをして、その帰りに皆で少し豪華なお昼を取る。
そんな年に一度の平凡な絵から、母が抜けて、2年が経つ。
変わりない、おだやかな日々が、少しでも長く続けばいい。
確かに退屈かもしれないが、今日は、永遠とは続かない。
若い頃からの酒も、煙草も、競馬も、とうとう年貢の納め時かなあ。
好きなことが出来ん人生なんて意味がないなんて言うなや、お父ちゃん。
うちにはそこに居るだけで意味があるんやから。
Sako