2024年09月15日(日) |
トランスフォーマー/ONE、忘れない、パレスチナの子どもたちを、国境ナイトクルージング、火の華、フード・インク ポスト・コロナ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『トランスフォーマー/ONE』“Transformers One” 2011年7月『ダークサイド・ムーン』から2023年7月『ビー スト覚醒』まで紹介している日本製玩具を基に描かれた実写 の俳優と CGIキャラクターの共演によるシリーズから、今回 はその起源を描いたフルCGアニメーションによる作品。 過去の作品では地球を舞台に戦いを続けてきたオプティマス プライムとメガトロン。しかし故郷の惑星サイバトロンでは 同じ階級で暮らす親友同士だった。そんな2体がなぜ敵対す る関係になったのか? その経緯が解き明かされる。 舞台はエネルギー資源の枯渇した惑星サイバトロン。そこで 2体はエネルギーの原石を採掘する労働者。しかしオプティ マスはエネルギー資源を再興する失われた装置を探し出し、 惑星を元の姿に戻すことを夢見ていた。 そんな中で開催された観客熱狂のレースに2体は割り込みで 参戦するが、実はトランスフォームの能力を持たない2体に は勝ち目のないレースだった。ところが偶然の作用で2体は 目覚ましい活躍を示す。 その結果は…。しかしその中でオプティマスは失われた装置 の在りかに繋がる重大な情報を見つけ出す。こうして2体は 仲間と共にその在りかを目指すが、そこには彼らの社会を揺 るがす陰謀が潜んでいた。 そしてその陰謀に対抗して行く中で2体は、それぞれの方向 性の違いから袂を分かつことになってしまう。 声優はクリス・ヘムズワース、ブライアン・タイリー・ヘン リー、スカーレット・ヨハンソン、キーガン=マイクル・キ ー、スティーブ・ブシェーミ、ローレンス・フィッシュバー ン、ジョン・ハム。 日本語吹き替えは中村悠一、木村昴、吉岡里帆、木村良平、 玄田哲章、諏訪部順一、柚木涼香、稲田徹、佐藤せつじ、上 田耀司、星野貴紀、杉田智和らが務めている。 脚本は原案も提供した2018年『アントマン&ワスプ』などの アンドリュー・バレル&ガブリエル・フェラーリと、2021年 『ゴジラvsコング』などのエリック・ピアソン。 そして監督は2019年『トイ・ストーリー4』のジョッシュ・ クーリーが担当した。 物語は『トイ・ストーリー』を髣髴させるバディ物で、その 中に描かれるエピソードにはいろいろな作品へのオマージュ というか、良いとこ取りの若年層が喜びそうなシーンがてん こ盛りという感じの作品になっている。 とは言え突っ込みどころも満載で、例えばオプティマスやバ ンブルビーが、トランスフォームの過程でトラックや乗用車 になるのはご愛嬌? 確か前の作品では地球で見つけた事物 をスキャンして変身するという説明があったと思ったが…。 でもまあそんな枝葉末節のことは考えずに楽しめばよい作品 なのだろう。 公開は9月20日より、全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社東和ピクチャーズの招待で試写 を観て投稿するものです。 またこの作品の試写は2週前に行われたが、情報解禁の関係 で今回の投稿となりました。
『忘れない、パレスチナの子どもたちを』 “Eleven Days in May” 2021年5月の11日間。そこで行われたイスラエルによるガザ 空爆で犠牲になったパレスチナの子どもたち。その在りし日 の姿や遺族による追悼を記録したドキュメンタリー。 2021年5月7日に開始されたガザ空爆。映画の巻頭にはイス ラエル側が撮影したと思われる空爆の様子が提示されるが、 高層ビルが崩れ落ちる映像には9・11も思い出され、それを 今イスラエルが行っていることの矛盾も感じた。 そこからは空爆で犠牲になった子供たちの両親や兄弟姉妹た ちによる証言が綴られて行くが、そこには悔しさや虚しさな ど、哀しみに伴うあらゆる感情が表現されている感じもする ものだ。 そしてその証言に併せて、子供たちの在りし日の姿も紹介さ れる。そこでは夢や希望が語られ、また両親や兄弟姉妹への 想いも語られる。それが全て叶わなかったという現実を突き 付けられるものだ。 監督はパレスチナのムハンマド・サウワーフと、2011年2月 紹介『キラー・インサイド・ミー』などのマイクル・ウィン ターボトム。映画製作はニュースで状況を知ったウィンター ボトムがサウワーフに取材を依頼、送られてきた 100時間を 超える素材からウィンターボトムが編集したとのことだ。 また音楽を2019年5月紹介『荒野の誓い』などのマックス・ リヒターが手掛け、日本版のナレーションをミュージシャン の坂本美雨が担当している。 映画の中では2021年5月の空爆では少なくとも67人の子ども たちが亡くなったと紹介されるが、2023年10月7日に始まっ たイスラエルの攻撃では、2024年5月現在で15,000人の子供 の命が奪われ、その戦闘は今も続いているものだ。 イスラエルは病院や学校を攻撃する度にハマスの拠点だと主 張するが、本作を観ていると攻撃が無差別であることも明白 だし、正にイスラエルによるジェノサイドと言えるものだ。 つまりアウシュヴィッツの復讐をしているものだ。 しかもこれを世界中が座視し、さらにはアメリカおよびその 追随国はイスラエルを支援してさえいる。2021年の東京五輪 にも影を落としたユダヤ人が支配する世界の恐ろしさも感じ てしまう作品だった。 なお坂本美雨が担当する日本版のナレーションには疑義を唱 える人も居るかも知れないが、彼女は動物愛護や子どもの虐 待を無くす活動の発起者としても知られており、専門家では ないのでうまい訳ではないが心の籠った語りだった。 それに本作の場合は、遺族らの証言に吹き替えはできないも ので、字幕がかなり大量になっている。そこにさらにナレー ションの字幕まで挿入する余地はなかったとも言える。しか も日本版の制作に当っては本国から音響素材の提供も受けて 日本版のみ 5.1サラウンドの音響になっているそうだ。 そして本作の日本公開に当っては、配給会社から観客1人に 対して現金 100円をガザの子どもたちを支援する団体に寄付 することも表明されている。 公開は10月4日より、東京地区は kino cinéma新宿、アップ リンク吉祥寺他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アップリンクの招待で試写を観 て投稿するものです。
『国境ナイトクルージング』“燃冬” 2013年の『イロイロぬくもりの記憶』でカンヌ国際映画祭の カメラドール(新人監督賞)を受賞、さらに東京フィルメック スでは観客賞を受賞した中華系シンガポール人監督=アンソ ニー・チェンが初めて中国語で撮った作品。 物語の舞台は中国吉林省延辺朝鮮族自治州の首都延吉。北朝 鮮国境に位置する中国東北部辺境の町は、冬には最低気温が 零下20度を下回る極寒の場所だ。そしてそこには古くから朝 鮮族が居住し、異文化紹介の観光地にもなっている。 そんな場所で主人公は、観光客相手の1日観光を行うツアー ガイドの女性。彼女はある事情から実家を飛び出し、1人で 辺境の町で暮らしているが、そこには断ち切れない過去も存 在しているようだ。 そして彼女が案内するツアーに1人の男性客が乗り込んでく る。その男性は観光に興味があるようでもなく、何か別のも のを求めているような感じもした。ところがその男性がスマ ホを紛失したことから2人が接近する。 一方、彼女に想いを寄せる若者がいて、彼もまた故郷を飛び 出して親戚を頼ってその地にやってきたのだという。そんな 3人が巡り合い、極寒の辺境の町で普通ではない観光ツアー =クルージングを始めるが…。 出演は、2011年5月紹介『サンザシの樹の下で』でチャン・ イーモウ監督に見出されたチョウ・ドンユイ。因にアンソニ ー・チェン監督とは2度目のタッグだそうだ。 さらに2018年1月紹介『空海 KU-KAI 』などのリウ・ハオラ ン、2024年2月紹介『流転の地球』の1作目に出ていたとい うチュー・チューシアオが共演している。 撮影は現地で行われたようで、そこは2023年11月紹介『ビヨ ンド・ユートピア脱北』などでも写されていた場所と思われ るが、正しく表と裏なのかな。でもそんな表の街にも苦悩は あってそんな若者の想いが丁寧に描かれた作品だ。 ただ個人的には結末が暗示するものに承服しねる部分はある が、それを暗示に留めて前向きの希望を描いていることには 納得することにした。そんな若者の想いを雄大な自然が包み 込んでいる、そんな描き方の作品だ。 因に写されているのは長白山、韓国名の白頭山は大韓民国の 国歌にも歌われているものだが、実は中国領土のようで、そ の山頂にあるカルデラ湖=天池は世界最高度の湖だそうだ。 そんな大自然も観られる作品になっている。 公開は10月18日より、東京地区は新宿ピカデリー、ヒューマ ントラストシネマ有楽町他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アルバトロス・フィルムの招待 で試写を観て投稿するものです。
『火の華』 2021年の長編デビュー作 『JOINT』で新藤兼人賞銀賞を獲得 した小島央大監督が、同作主演の山本一賢とプロデューサー 兼俳優のキム・チャンバと再結集して自衛隊による海外派遣 の闇を描いた作品。 2011年から2016年までアフリカの南スーダンで行われた自衛 隊による平和維持活動(PKO)。それは憲法9条の下、改正 自衛隊法に基づいて行われたもので、その活動範囲は非戦闘 地域に限られるとされていた。 しかし一度は隠蔽され、その後に開示された現地派遣部隊の 日報によれば、その中に戦闘という言葉は何度も出てきてい る。そこで隊員に死傷者は出ていないとされているが…。そ んな報道された事実を踏まえて描かれた物語だ。 主人公は南スーダンでPKO活動に従事する自衛隊の隊員。 そんな主人公が基地の外れで隊員が孤立したとの連絡でその 救援に向かう。そこには国内難民のテント村があり、その難 民も連れて帰還しようとするが。 そこに反政府軍の狙撃兵が現れ、先頭で両手を挙げていた自 衛隊員が銃撃を受け、主人公は相手の少年兵を撃った後、隊 長を残したまま辛くも脱出することになる。そして撃たれた 隊員は死亡してしまう。 ところが帰隊した主人公を待っていたのは隠蔽工作。そこで は隊員は交通事故で亡くなり、隊長は逃亡したとするものだ った。こんな重荷を背負った主人公は、自衛隊を辞め、火薬 を扱った経験を活かして花火師の門をたたく。 こうして華やかな花火師への道が拓かれるが、主人公の心の 傷は容易に癒えるものではなかった。 出演は、上記の2人に加えて2018年7月29日付題名紹介『純 平、考え直せ』などの柳ゆり菜、2023年10月紹介『笑いのカ イブツ』などの松角洋平。さらにダンカン、伊武雅刀らが脇 を固めている。 映画の後半ではかなり強烈なフィクションが展開され、それ はそれで面白いが。それに並行して新潟長岡の花火師が監修 した打ち上げ花火のリアルな製作課程も描かれ、それらが結 末で見事に収斂する。 その結末で、僕が観た上映では現地教師の英語の台詞に敢え て字幕が付けられていないと思ったが、聞き取り易いその英 語の台詞が監督らの期待する未来を見事に物語っている感じ がした。この結末は秀逸だ。 公開は今年12月より、東京地区はテアトル新宿、渋谷のユー ロスペース、さらにT・ジョイ長岡他にて全国ロードショウ となる。 なおこの紹介文は、配給会社アニモプロデュースの招待で試 写を観て投稿するものです。
『フード・インク ポスト・コロナ』“Food, Inc. 2” 2010年9月紹介『フード・インク』の続編。2009年製作の前 作から15年、スタッフが再結集してCOVID-19パンデミックを 経たアメリカの食物事情を改めて問うたドキュメンタリー。 前作ではドラマ化されたリチャード・リンクレイター監督の 『ファーストフード・ネイション』(2007年)でも描かれたよ うにハンバーガーやフライドチキンのようなファストフード チェーンを中心に、食品業界の問題点を提起していた。 そして監督らは前作で全てを描き切ったと思い、続編を作る 気はなかったそうだ。ところがパンデミックが起き、その際 に全米で食品が不足する事態が生じた。その原因を考察する 中で食品をめぐる新たな問題が見出された。 その一つは食品業界の寡占化。アメリカは本来事業の独占に は厳しい国だったはずだが、トランプが前の政権に就いてい た時、パンデミック下で食品業界に対して独占禁止法の緩和 が執行され、寡占化が進んだ。 その一方で、前作で指摘された糖分、塩分、脂質の取りすぎ による健康被害を上回る新たな過剰な添加物の問題が生じて いた。それは超加工食品=Ultra-processed foods (UPFs)と も呼ばれ、事業の寡占化がそれを増長した。 そんな新たな食品をめぐる問題点が本作では描かれる。 監督は前作を手掛けたロバート・ケナーと、前作ではプロデ ューサーだったメリッサ・ロブレロが共同監督として参加。 さらに前作にも関ったエリック・シュローサーとマイクル・ ポーランも共同プロデューサーとして参画している。 映画では上記の他に未来の食肉への展望なども語られるが、 この辺は確か前作でも取り上げられており、さらにそれが進 化した様子も紹介される。ただそれが前作と同様に視点を動 かしてしまうのは痛し痒しの感じも持つ。 とは言え今回は上記の2点が強烈で、観客としては充分な見 ごたえを感じた。しかもそれはシステムの輸出という側面も 持ち、日本を含む全世界がその危険に見舞われている。そん な恐ろしさも感じさせる作品だった。 前作も多方面に影響を及ぼしたが、本作もそれを上回る警鐘 となることを期待したい。 公開は12月6日より、東京地区は新宿シネマカリテ、ヒュー マントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺他にて全国順 次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アンプラグドの招待で試写を観 て投稿するものです。
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