2023年05月28日(日) |
ABYSS アビス、バカ塗りの娘 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ABYSS アビス』 2020年3月紹介『ワンダーウォール』に主演の俳優・須藤蓮 が脚本、監督、主演し、同作の脚本を務めた2003年10月紹介 『ジョゼと虎と魚たち』などの脚本家・渡辺あやが共同脚本 で参加している都会に生きる若者を描いた青春ドラマ。 主人公は渋谷でのバー勤めやモデル稼業で目的もなく生きて いる若者。その兄が行方不明の末に故郷の海で自死。その葬 儀に参列した主人公は、棺の前で泣きじゃくる女性を目にす る。その女性は以前に兄が乱暴した相手だった。 そんな葬儀を終えて都会に戻った主人公は女性と再会。何と なく彼女と付き合い始めるが…。主人公は兄は死んでくれて 良かったと思っていたが、その兄からひどい目に遭わされて いたはずの彼女の意見は違っているようだった。 そんなすれ違う想いが、やがて兄を飲み込んだ故郷の海へと 2人を向かわせる。 共演は2016年8月紹介『闇金ウシジマくんザ・ファイナル』 に出ていたという佐々木ありさ。ダンス歴17年という女優は 劇中で特技も披露してくれる。他に夏子、松本亮、浦山佳樹 らが脇を固めている。 題名からは1989年のジェームズ・キャメロン監督作品を思い 出したが、海の深淵という意味合いでは実際の海中と、都会 という得体のしれない空間の中での深みというか、そんなイ メージも湧いてくる。その中でもがき苦しんでいる主人公と いう感じなのかもしれない。 主人公の兄への想いが憎悪なのか憧れなのか、その辺の複雑 な思いも微妙に語られ、それが兄の自死という顛末の中で複 雑に変化して行く様子も巧みに描かれているように感じられ た。僕自身、多少疎ましい兄がいたこともあり、その辺はい ろいろと考えてしまったものだ。 まあそれが監督の狙いかどうかは判らないが、個人的には複 雑な思いが感じ取れる作品でもあった。渋谷という土地柄に は、新宿や池袋とも違う得体の知れなさを感じるが、そんな 雰囲気もしっかりと捉えられた作品とも言えるだろう。 公開は9月15日より、東京地区は渋谷シネクイント他にて全 国順次ロードショウとなる。 なお本作は本試写が始まる前の内覧のような状況で見させて 貰ったが、その際の監督の挨拶では特に地方上映に向けた熱 意も感じられた。因に本作は2本目の監督作だそうで、前作 を持って地方を巡った際にいろいろと思うところがあったよ うだ。その気持ちにも共感したものだった。 監督・須藤蓮。ちょっと目を離せない名前になりそうだ。
『バカ塗りの娘』 2019年1月紹介『まく子』の鶴岡慧子脚本・監督で、2019年 7月紹介『超・少年探偵団 NEO』などの堀田真由を主演に迎 え、青森県の伝統工芸・津軽塗を描いた作品。 漆を塗っては研ぎ、塗っては研ぎの繰り返しで何度も塗るこ とからバカ塗りとも称される津軽塗。主人公はそんな津軽塗 で代々続く職人の家の娘。祖父は文部科学大臣賞も受賞した 名工だったがすでに引退し、父親が継いだものの工芸品の需 要は多くはない。 そんな暮らしを嫌って母親は家を出て行き、長男の兄も家業 は継がないと宣言して美容師の道に進んでいる。そして主人 公は家計を助けるために近所のスーパーでパート務めしなが ら、家業の事務管理などを行っていた。そんな主人公がパー トに向かう道にある花屋の店員に目を留めるが…。 こんな日常の中で、主人公が津軽塗の大作に挑むようになる までが描かれて行く。それはバラバラになった家族が再び結 集する過程でもあった。ちょっと唐突な感じの展開だが、そ の間には見事な伏線回収や、ネタバレ禁止の展開も用意され ているものだ。 共演は2022年11月紹介『仕掛人・藤枝梅安』などの小林薫、 2019年8月4日付題名紹介『閉鎖病棟−それぞれの朝−』な どの坂東龍汰、Kis-My-Ft2の宮田俊哉。他に木野花、坂本長 利、片岡礼子、洒向芳、松金よね子、篠井英介、鈴木正幸。 さらに王林、ジョナゴールドらが脇を固めている。 映画では津軽塗の制作課程や技法などもかなり丁寧に紹介さ れ、それを観るだけでも感激する作品になっている。そんな 中で主人公が挑戦する大作に関しては、以前にニュースなど で聞いた記憶があり、それをしっかりと観られたことも嬉し い作品だった。 それに加えて津軽塗の特性を活かした見事な伏線と絶妙なそ の回収。これには思わず目頭が熱くなるものだった。これは 良く描かれた作品だ。とは言うものの廃校のセキュリティの 甘さや、その侵入が問題にされない展開などは、少し疑問に 感じるところではあったが。 でもまあそんな乗りの作品ということでは良い出来と言える だろう。 公開は8月25日より青森県での先行上映の後、9月1日から 全国ロードショウとなる。
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