2023年05月21日(日) |
ワイルド・スピード/ファイヤーブースト、ナチスに仕掛けたチェスゲーム、世界が引き裂かれる時、Gメン |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』“Fast X” 2017年4月16日付で第8作の『ICE BREAK』 を題名紹介した カーアクションシリーズの第10作で、最終章になるとされて いる作品。 2001年の第1作から観続けてきたシリーズではあったが、実 は前作はCOVID-19禍の影響で観ることを断念。従って本作を 観ることに懸念はあったが、それは杞憂、もちろん前作との 絡みもあるようだが、気にはならなかった それよりも本作は、2011年7月紹介第5作『MEGA MAX』の続 きと言えるもので、同作で主人公らが成敗したリオの裏社会 で警察も牛耳っていた権力者の息子が、復讐に燃えて主人公 らに襲い掛かってくる。 とは言えその顛末は、主要部のほぼ全てがフラッシュバック で紹介されるもので、初めて観ても全く支障がないように作 られている。まあ細かいところではいろいろと仕掛けは施さ れていたが…。 という訳で本作では、ほぼ何の柵もなく、存分にアクション を楽しめる作品になっている。それもカーアクションから格 闘技、さらには大規模な爆発まで、いろいろなアクションが ぎっしりと詰め込まれた作品だ。 しかも上映時間も2時間21分とたっぷりある。それがほぼの べつ幕なしのアクションで埋め尽くされているのだ。これを 観ずして何がエンターテインメントかと言いたくなるような 作品だった。 それにしてもカーアクションの見事さはとても書き切れない ものだが、さらにそこに登場する車種の多様さも、2023年型 からヴィンテージまで、マニアには堪らない作品になってい るようだ。 出演はヴィン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、ジョー ダナ・ブリュースターのオリジナルメムバーに加えて、第3 話からのサン・カン。さらにタイリーズ・ギブスン、クリス ・“リュダクリス”・ブリッジス。 そしてシャーリーズ・セロン、ヘレン・ミレン、リタ・モレ ノのオスカー3女優に加えて、2015年度の主演女優賞受賞者 ブリー・ラースン(前作から登場)。さらにジェイスン・ステ イサム。そしてジェイスン・モモアらが脇を固めている。 脚本は前作を手掛けたジャスティン・リンとダン・マゾー。 監督は、前作までのリンに代わってステイサムとのコラボで 2002年11月紹介『トランスポーター』シリーズの最初の2作 を手掛けたルイ・ティリエが担当した。 公開は5月19日より、全国ロードショウとなっている。実は 本作の試写会は15日に1回だけ行われたもので、しかも18日 まで報道規制が敷かれていた。そんな訳で公開後の紹介にな ったものだ。
『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』 “Schachnovelle/Chess Story” オーストリア出身のユダヤ人作家シュテファン・ツヴァイク が1941〜42年に亡命先のブラジルで執筆し、その完成直後に 自死したことから、ナチスに対する最大の抗議の書とされる 中編小説「チェスの話」の映画化。 開幕はロッテルダム港。ニューヨーク行きの客船の乗船口に 男性が向かっている。その男性は乗船口で生き別れだった妻 と再会するが…。 話は過去に戻って1933年、ウィーンで公証人として開業する 主人公の許にはユダヤ人企業家の財務資料が集まっていた。 そんな中でナチスドイツとオーストリアの併合が発表。しか しユダヤ人ではない主人公には危機感は湧かなかった。 ところが進駐したドイツ軍のゲシュタポは主人公の持つ財務 資料に注目。その原本は辛くも焼却したが、ゲシュタポの将 校は彼が記憶したはずの口座番号を聞き出そうとする。それ を拒否する主人公はとあるホテルに監禁され…。 そこから想像を絶する拷問が始まる。それは肉体を傷つける のではなく、主人公を世間から隔絶させることで、精神的に 追い詰めようとするもの。そんな中で主人公は偶然チェスの 教本を手に入れ、それは彼を思わぬ運命へと導く。 出演は2016年4月紹介『帰ってきたヒトラー』でヒトラーを 演じていたオリヴァー・マスッチ。他に2022年版の『西部戦 線異状なし』でBAFTA 最優秀助演男優賞にノミネートされた アルブレヒト・シュッヘ。2010年9月紹介『白いリボン』な どのビルギット・ミニヒマイアーらが脇を固めている。 監督は2010年1月紹介『アイガー北壁』などのフィリップ・ シュテルツェルが担当した。 同じ原作からは1960年にクルト・ユルゲンス主演による映画 化もされているようだが、その他にも舞台化やオペラ化もさ れ、さらにはグラフィックノヴェルとしても出版されている とのこと。 正直に言って僕は原作は知らず、邦題だけを見てナチスに対 する機密作戦みたいなものかなと思っていたのだが、物語は もっと深く観客の心を抉るような作品になっていた。正しく 観終って直には席を立てなかったくらいのものだ。 それは恐らく侵略戦争の現実を、侵略された側から巧みに描 き切ったものだし、今ウクライナで起きていることかもしれ ない物語ということだ。監督は「原作者の知らなかった未来 を我々は知っている」と発言しているが…。 公開は7月21日より、東京地区はシネマート新宿、大阪地区 はシネマート心斎橋他にて全国順次ロードショウとなる。
『世界が引き裂かれる時』“Клондайк” 上の作品に続いての反戦映画で、こちらはモスクワの侵略に 直面しているウクライナの作品。2020年にウクライナ国内で 撮影され、昨年のサンダンス映画祭、ベルリン国際映画祭な どで受賞し、全世界では41冠に輝いている。 物語の舞台は最近のニュースでもよく耳にするウクライナ・ ドネツク州。ヒマワリ畑や草原の広がる場所にウクライナ人 の夫婦が暮らしている。その妻は妊娠しており、体形は臨月 も近いと思わせるものだ。 一方、夫は隣人に貸した車を取り返そうと草原を走り回って いるが、どうやら車は親ロシアの分離主義者の組織に徴発さ れているようだ。そんな夫婦の家に砲撃の誤射が着弾し、家 の壁が吹き飛んでしまう。 それでも夫には組織への加入が求められ…。やがて夫婦は否 応なしに親ロシア派と親ウクライナ派の対立に巻き込まれて 行く。そして2014年7月17日、マレーシア航空17便の撃墜事 件が発生する。 実話に基づくとされる脚本の執筆と監督は、キーウ国立映画 大学で学んだ後にポーランドのアンジェイ・ワイダ映画監督 学校を卒業したというマリナ・エル・ゴルバチ。女性監督に よる長編第5作とのことだ。 主な出演者はオクサナ・チェルカシナ、セルゲイ・シャトリ ン、オレグ・シェルビナ。 親ロシア派と親ウクライナ派の対立というのは、傍目からは なかなか判り難いところがあるが、本作を観ているとその複 雑な様相も少し判りかけたかなという感じにはなる。でも実 際はもっと複雑なのかな。 でもまあ親ロシア派の横暴振りなどはよく理解できるし、そ の辺が監督が描きたかったポイントでもあるのだろう。そん な監督の思いは良く伝わってくる作品だった。そしてその現 実は今も現地では続いているものなのだろう。 正直に言って戦争の愚かしさを描いた作品は今までにも何本 もあったが、本作ではシュールとも言える意味不明の対立の 様相で、これが現実と思うと、それは正に狂気の沙汰と言い たくなるようなものだ。 そんな現実が見事に描かれた作品とも言える。なお出演者や スタッフの多くは、現在は前線で戦いに身を投じているそう だ。 公開は6月17日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。
『Gメン』 2022年にテレビドラマ化された『ナンバMG5』などの小沢 としおが、2014−18年に「週刊少年チャンピオン」誌で発表 した不良学園漫画を、ジャニーズ岸優太の主演で映画化した 作品。 女子にモテモテとされる名門私立高校・武華男子高校に転校 してきた主人公は早速ナンパを開始するが、彼が転入したの は「武華の肥溜め」とも称される落ちこぼればかりの最底辺 クラスだった。…。 そんな中でも生涯初のガールフレンド獲得を目指して奮闘す る主人公だったが、敵対する不良グループとの抗争やガール ズグループとの交流の中で徐々に仲間を獲得し、遂には教師 も巻き込む青春ドラマへと昇華する。 共演は竜星涼、矢本悠馬、SixTONES森本慎太郎、EXITりんた ろー。。他に恒松裕理、吉岡里帆、高良健吾、尾上松也、田 中圭らが脇を固めている。 監督は2019年『劇場版おっさんずラブ』などの瑠東東一郎。 脚本は2019年4月21日付題名紹介『凪待ち』などの加藤正人 と2011年『アジアの純情』などに出演の丸尾丸一郎が担当し た。 脚本の加藤は1980年代の日活ロマンポルノに始まって、90年 代の『ゲレンデがとけるほど恋したい。』や2006年の『日本 沈没』なども手掛けた大ベテランで、そのツボを心得た展開 が映画を見事に整えていると言えるのだろう。 不良学園ものというと最近では喧嘩自慢の俳優を集めたガチ の格闘技戦ような作品も目立つが、そうではない見せるアク ションを丁寧に演出した作品には好感が持てるし、そこに挟 まるコミカルさも充分に生きている。 正直には巻頭シーンなどの学芸会的な演出に少し危惧も感じ たが、それが逆に乱闘シーンの真剣さを際立たせ、ガチでは ないけど真剣にアクションしている感じを盛り上げている雰 囲気にもなっていた。 アイドル主演の映画でこれは悪い作りではない。因にこの作 品も情報解禁前で、配役などのいろいろな情報をお伝え出来 ないものだ。ただし岸優太の主人公は、原作者のお墨付きだ そうだ。 公開は8月25日より全国ロードショウとなる。 * * なおこの週はもう1本、DC映画の『ザ・フラッシュ』の内 覧試写もあったが。6月16日公開のこの作品は情報解禁前と いうことで紹介ができない。フラストレーションで一杯のと ころだが、マニアには涙ものの作品とだけ記しておきたい。
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