2023年05月07日(日) |
フリークスアウト、THE KILLER/暗殺者、NO LIMIT, YOUR LIFE |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『フリークスアウト』“Freaks Out” イタリアのアカデミー賞とされるダヴィッド・ディ・ドナッ テロ賞で7冠に輝いた2017年4月紹介『皆はこう呼んだ、鋼 鉄ジーク』の脚本・監督を手掛けたガブリエーレ・マイネッ ティによる第2作。本作では6冠に輝いた。 時代背景は第2次世界大戦下。そこに登場するのはユダヤ人 イスラエルが率いる5人だけのサーカス団。しかしその演目 は、口に咥えた電球を輝かす電気少女やアルビノの蟲使い、 多毛男に磁石人間など少し毛色の違ったものばかりだ。 そんなサーカス団にも戦火が迫り、団長はアメリカへの脱出 を企てる。ところが資金を持って手筈を整えに行った団長が 消えてしまう。そこで残された4人のフリークスは生きる術 を検討し始めるが…。 一方、イタリアで興行中のベルリン・サーカス団は、異能の ピアニスト=フランツに率いられて華麗な興行を繰り広げて いたが、フランツの真の狙いは悪化する戦況を打開できる特 異な能力の持ち主を探し出すことだった。 そんなフランツの前に4人組が現れる。 出演は、『皆はこう呼んだ…』でドナッテロ賞主演男優賞を 受賞したクラウディオ・サンタマリアと、2002年生まれ8歳 から演技を始めていたというアウロラ・ジョヴィナッツォ。 他に2004年9月紹介『赤いアモーレ』などのセルジオ・カス テリット監督の息子で同作で映画界デビューしたというピエ トロ・カステリット。さらにジャンカルロ・マルティーニ、 ジョルジョ・ティラパッシ、フランツ・ロゴフスキらが脇を 固めている。 試写案内の惹句には「超人サーカス団VSナチス・ドイツ」 とあって、そんな映画かなあと思って見ようとしたら、上映 時間が2時間21分もあって驚かされた。正直に言ってそんな に持つのかな、と不安にもなったものだ。 ところが観はじめると、掴みからキャラクターの立て方、そ れに物語の展開などが実に巧みで、観ていて全く飽きさせな い。特に敵役のキャラクターの立て方が巧みで、それを良い アクセントにして見事な展開になっていた。 しかも主人公側のフリークスの異能は、言ってみれば昔の地 元の祭りなどに来ていた眉唾物の見世物が実はインチキ無し だったという程度で、イメージ的には今一なのだが。敵役の 異能は本物。その捻りが実に巧みなのだ。 その辺りのヒューマンドラマが見事としか言いようがなく、 そこに対抗するように描かれる女性フリークスのドラマも巧 みで、完璧としか言いようのない作品だった。因に敵役の異 能だけを見れば、これは正しくSFと言える作品だ。 まだ第2作で、本当に凄い作品を作ってきたものだ。 公開は5月12日より、東京地区は新宿バルト9他にて全国ロ ードショウとなる。
『THE KILLER/暗殺者』“더 킬러: 죽어도 되는 아이” 2012年5月紹介『依頼人』などの俳優チャン・ヒョクが自ら 企画・主演したという作品で、10年以上にわたりボクシング やテコンドーで肉体を作り上げてきたという俳優が、その成 果を発揮するアクション作品。 主人公は元暗殺者。その報酬や財テクで引退後は優雅な生活 を送っている。そんな主人公の妻が女子友と旅行に行くこと になり、その間に女子友の娘を預かることになる。ところが その娘が人身売買組織に拉致され、主人公はやむを得ずその 奪還に動くことになるが…。 共演は、韓国・日本・台湾出身のメムバーからなるガールズ グループ「公園少女」のイ・ソヨンと、4部作ドラマ「ファ ンレターを送ってください」で人気のパク・ヨンウン。他に 香港やハリウッド映画にも出演のアクション俳優ブルース・ カーン。テレビドラマに多数出演のイ・スンジュンらが脇を 固めている。 原作はウェブ小説だそうで、その物語からチャンの前作でも 組んだというチェ・ジェフンが監督している。 格闘技自慢の俳優が自ら企画したアクション映画と言うのは 他の国でも散見されるところだが、得てして格闘技の見せ場 ばかりで映画としては不満足なことも多い。その点で本作は 原作を巧みに昇華させたというところかな。 物語もそれなりのどんでん返しがあったり、巧みに作られて いるし、特に主人公と妻との関係性が短いシーンで巧みに表 現されているのも良い感じだった。上で紹介の作品で女性フ リークスのドラマも一瞬のシーンで表現していたが、本作も その短いドラマが響いてくるものだ。 そして本来のアクションシーンでは、斧から拳銃まで多彩な 武器が巧みに扱われて、しかも元暗殺者という設定らしく、 敵を必ず仕留めて行くという展開も観ていて納得できるもの になっていた。その行為に全く後ろめたさがないというのも 見事な作劇だ。 それに韓国映画には珍しく(?)、政治家が全く絡んでこない というのも観ていてすっきりする感じだったかな。取り敢え ず上質のエンターテインメントと呼べそうな作品だ。上映時 間が95分というのも良い。 公開は5月26日より、東京地区はシネマート新宿他にて全国 ロードショウとなる。
『NO LIMIT, YOUR LIFE』 27歳でALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した男性と、その 病を知りながら結婚した女性を追ったドキュメンタリー。 内容紹介からは2018年12月2日付題名紹介『こんな夜更けに バナナかよ』を思い出したが、その作品で描かれたのは筋ジ ストロフィーによる全身麻痺。それに対してALSでは、発 症後には手足の麻痺だけでなく、喉の機能の低下による誤嚥 を防ぐための胃婁処置によって声も奪われ、眼球の動きによ るコミュニケーションも困難になって行くという。正しく難 病中の難病と言われる病だ。 しかし本作に登場する武藤将胤・木綿子の夫妻は、その状況 を打開すべく雄々しく立ち上がって行く。そんな夫妻がまず 着目したのは、ALSで最後まで動かせるとされる「目」。 そのため夫妻は眼鏡メーカーと協力して目の動きを検知する 眼鏡を開発。それを用いて将胤はDJになる夢を叶え、著名 アーチストとの共演も果たす。 元々将胤は、発症前は大手広告代理店の広告マンだったとい うことで、そんな前職での人脈がこういう事業を叶えさせて いるのかもしれない。それ自体が普通の人とは違うと言われ てしまうかもしれないが、こうやって実現した技術が他の患 者にも還元されることを考えれば、大いなる実験材料として の活動も称賛されるべきものだろう。 その点で言えば、途中で登場する高額の車椅子のシェアする 話も、彼の行動力を見事に表していると言える。特にそこで 語られるALS患者は病の進行によって車椅子に乗れる期間 が短いという言葉には、この病気の本当の恐ろしさも衝撃的 に描かれていた。 さらに「目」が動かせなくなった時に備えて、脳波を直接計 測してコミュニケーションを採れるようにする試みや、分身 ロボット「OriHime」 の開発状況など、ここまでくるとある 種のSFを観ているような気分にもなってくる、そんな未来 が見事に展望される作品にもなっていた。 監督は、テレビ朝日「報道ステーション」のディレクターと して2015年にはALS患者に密着したドキュメンタリー番組 で日本民間放送連盟賞を受賞した毛利哲也。ナレーションを 夫妻との交流も深いという石原さとみが担当している。 公開は6月23日より、東京地区はT・ジョイPRINCE品川、大 阪地区はT・ジョイ梅田にて先行上映の後、7月7日からは 丸の内TOEI他にて全国順次ロードショウとなる。 * * なお今週はゴールデンウィークで試写会がお休みのため、 紹介した3作品はいずれもオンライン試写で鑑賞したもので す。
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