※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は賞レースの報告から。 最初に2月21日発表の第7回VES賞で、VFX主導映画 のVFX賞には、“The Crious Case of Benjamin Button” が輝いた。またVFX主導でない一般映画の助演VFX賞に は“Changeling”が選出され、さらに年間単独VFX賞には “Benjamin Button”の主人公の生涯が選ばれている。 一方、実写映画におけるアニメーションキャラクター賞は “Benjamin Button”の主人公、マットペインティング賞は “Changeling”の1928年ロサンゼルス・ダウンタウン、ミニ チュア賞は“The Dark Kinght”の塵芥回収車の破壊、背景 賞は“The Dark Kinght”のImax版ゴッサムシティ、合成賞 は“Benjamin Button”、特殊効果賞は“The Dark Kinght” の全体などがそれぞれ受賞している。 また、アニメーション映画における特筆アニメーション賞 には“WALL-E”が輝いている。さらにアニメーション映画の アニメーションキャラクター賞は“WALL-E”のWALL-EとEve が一緒のシーンで音響技術者のベン・バートらが受賞した。 またアニメーション映画における特殊効果アニメーション賞 は“WALL-E”のWALL-E自身の効果が受賞している。 この他にテレビ関係では、“Battlestar Galactica”や、 J・J・エイブラムス製作の新シリーズ“Fringe”、歴史物 の“John Adams”、それに“Doctor Who”などが各賞を受賞 していたようだ。 * * 続いて2月22日に発表されたアカデミー賞では、こちらも VFX部門には“Benjamin Button”が選出された。これは 以前にも書いたように予想通りというところだ。そして同作 はメイクアップ賞と美術賞にも輝いた。しかし、記録となる 13部門の受賞からは程遠い結果となったもので、替って最多 受賞を果たしたのは“Slumdog Millionaire”。何と9部門 での候補中、作品・監督・脚色・音楽・歌曲・撮影・編集・ 音響の8部門での受賞だった。 この結果は、SF/ファンタシー映画ファンとしては少し 残念ではあったが、僕自身では“Slumdog”も大好きな作品 であることに変わりはないので、個人的には満足できる結果 と言えるものだった。 その他のSF/ファンタシー関連の作品では、“The Dark Knight”がヒース・レッジャーの助演男優賞と音響編集賞を 受賞。さらに“WALL-E”が長編アニメーション作品賞を受賞 している。また、外国語映画部門で『おくりびと』と、短編 アニメーション部門で『つみきのいえ』が受賞したのも嬉し い結果だった。 今年の受賞式は、不況の影響か舞台の装置などはシンプル だったが、俳優賞の授与では過去の受賞者が5人ずつ登場し 候補者を称えながら紹介するシステムが感動的で、特にレッ ジャーの受賞では、遺族の登壇に涙が止まらなくなってしま った。来年以降もこの方式は継続してもらいたいものだ。 * * ではここからは、いつもの製作ニュースを紹介しよう。 最初は新しい情報で、“Sin City 2”“3”なども準備中 とされるロベルト・ロドリゲス監督の次回作として、ワイン スタイン兄弟傘下のディメンションから、“Nerverackers” と題された計画が、2010年4月16日の全米公開日付きで発表 されている。 物語は2085年を背景としたもので、論理的に完全なはずの 未来社会を襲った犯罪の急増。その状況に対処するため設立 された精鋭部隊の隊員を主人公としたスリラーとのこと。原 作はないオリジナル作品のようで、この情報だけではそこか らの展開は想像も付かないが、ロドリゲス監督作品ならアク ションも期待できるし、VFXスタジオも自前の監督には、 リアルな未来社会もしっかりと見せて貰いたいものだ。 因にこの計画では、主人公の名前がJoe Tezcaと紹介され ていて、これは普通に読むとジョー・テズカ。何となく手塚 さんの名前を連想するところだが、関係はあるのかな。 なおロドリゲス監督は、ディメンションでは1996年公開の “From Dusk Till Dawn”以来、“Spy Kids”シリーズから “Sin City”“Planet Terror”までの主要な作品の殆どを 送り出している。“Sin City 2”“3”の遅れは気になるも のの、今回の作品にも期待したいところだ。 * * 次は、前回“Lost in Austen”を紹介した19世紀イギリス の女流作家ジェーン・オースティンに関連する作品で、今度 は“Pride and Predator”という計画が発表された。 この題名が、映画化もされた1813年発表の『高慢と偏見』 (Pride and Prejudice)を捩ったものであることは言うま でもないが、それにしてもPredatorというのは…。お話は、 オースティンの原作の時代設定で、そこにエイリアンの宇宙 船が不時着して殺戮が始まる…となっている。何ともはや、 という感じもするが、脚本と監督は2007年に“The Amazing Trousers”という時代物の短編パロディ作品を発表している ウィリアム・フェリックス・クラークが担当し、撮影は今年 後半にロンドンで開始予定とのことだ。 ただしこの計画で、製作は歌手のエルトン・ジョンが主宰 するロケット・ピクチャーズが行うもので、もちろん音楽も 彼が付けることになっている。そこまでするならそれなりの 作品も期待したいところだが。実はロケットでは、ジェーム ズ・マカヴォイとエミリー・ブラントが主役の声優を務める CGIアニメーションで“Gnomeo and Juliet”という作品 も製作中とのことで、そういう趣味の人でもあるようだ。 * * 続いては、最近何となく元気の良さを感じるドイツ映画界 から“Superhero”と題された若年向けファンタシー映画の 計画が発表された。 この作品は、ニュージーランドの作家で映画監督でもある アンソニー・マッカーテンが2007年に発表した“Death of a Superhero”という長編小説を映画化するものだが、実は、 この原作がドイツ、スイス、オーストリア圏に紹介されて、 昨年度の若年向け作品の文学賞を受賞するなど評判になって いたとのことだ。 その映画化をドイツのバヴァリア・ピクチャーズが行うも ので、脚色と監督はマッカーテン自身が担当することになっ ている。因にマッカーテンは、1998年にダニエル・コーマッ ク主演の“Via Satellite”という作品を発表している他、 昨年には“Show of Hands”という作品も監督している。 物語は、白血病に苦しむ10代の主人公が厳しい現実の人生 からの逃避手段としてイラスト付きの冒険物語を創造する。 その冒険物語では、不滅のスーパーヒーローがマッドサイエ ンティストとの永遠の戦いを繰り広げている…というもの。 内容はかなりシリアスのようでもあるが、作品では冒険物語 の場面も登場して、そのシーンはアニメーションで描かれる ことになるようだ。 そしてこの主人公を、『チャーリーとチョコレート工場』 などのフレディ・ハイモアが演じ、相手役として『パフュー ム/ある人殺しの物語』などのドイツ人女優ジェシカ・シュ ワルツの共演も発表されている。製作費は700〜1000万ドル が計上され、実写シーンの撮影は今年後半からニュージーラ ンドで開始、それに並行してドイツでアニメーションの製作 が行われる計画とのことだ。 なおこの映画製作には、『バイオハザード』なども製作し たバイエルン映画テレビ基金から95万6000ドルの出資が認め られている他、ドイツ連邦政府による基金の活用も期待され ているそうだ。このような支援策の充実が、最近のドイツ映 画が元気な理由でもあるのだろう。 * * ここからはリメイクの情報を3つほど紹介しよう。 その最初はドイツ繋がりで、1984年にウォルフガング・ペ ーターゼンが監督したミヒャエル・エンデ原作による“Die Unendliche Geschichte”(The NeverEnding Story)をリメ イクする計画が、当時作品の世界配給を手掛けたワーナーか ら発表された。 このオリジナルは日本では翌1985年3月16日に公開された ものだが、これには個人的に少し思い出がある。というのも 僕はこの前月2月11日の休日にフジテレビ朝のワイドショウ に出演して、小森和子さんと一緒に映画の解説をしているの だ。これは春休み映画の特集ということだったが、メインは この作品『ネバーエンディング・ストーリー』だった。 ところが生番組の途中でCMタイムになった時、並んで座 っていた小森さんから、突然「このお話ちょっと変よね」と 話し掛けられた。それで僕は「本当はもっと長い物語の途中 までの映画化ですから」と答えたら、「そうなの。通りで変 だと思ったのよ」という会話になった。 しかしCMが明けると小森さんは、「おばちゃまね。映画 に出てくるドラゴンの顔が、飼っている犬のココに似ている から大好きなの」と話を続けられ、なるほどそういう風に話 すのだと教えられたものだ。多分僕自身の映画に対する態度 は、この時の小森さんに教えられたものだと思っている。 閑話休題。 因に、オリジナルは当時2000万ドルの稼ぎでヒットとして はまあまあのものだったが、その後も長くホームヴィデオが 売れるなど影響は大きかったと伝えられている。特に最近の 『ハリー・ポッター』などの若年向けファンタシー映画の成 功は、このオリジナルがあるお陰だという説もあるようだ。 そして映画化は1990年と96年に続きが作られているが、興行 的にはじり貧となり、第3作はアメリカでは殆ど劇場公開も されずにヴィデオ直行だったとのことだ。 その原作の再度の映画化が検討されているものだが、今回 は敢えて続きではなく、第1作からの置換えを狙っており、 リメイクが計画されているとのことだ。そのためワーナーで は、新たに映画化権を設定して権利面のクリアも行ったとさ れている。 物語は、この世界では苛められっ子の少年を主人公に、彼 が古本屋の店主の勧めで読んだ本の舞台ファンタージエンに 赴き、その危機を救う冒険が描かれる。そこには、空飛ぶ龍 や「幼ごころの君」と呼ばれる女王がいて、いろいろな冒険 が繰り広げられる。 そしてワーナーでは、今回の製作には『ベンジャミン・バ トン』のケネディ/マーシャルとレオナルド・ディカプリオ 主宰のアピアン・ウェイを起用するとの発表も行っており、 かなり気合いの入ったリメイクになりそうだ。 オリジナルは、後付けされたジョルジオ・モロダーの音楽 なども話題になった作品だが、リメイク版はどのような戦略 で進められることになるのだろうか。 * * 次は、フィリップ・K・ディック原作「追憶売ります」を 基に、1990年アーノルド・シュワルツネッガー主演、ポール ・ヴァホーヴェン監督で映画化された“Total Recall”が、 当時の映画配給を手掛けたコロムビアでリメイクされること になった。 オリジナルは『T2』なども手掛けたカロルコの製作で、 コロムビア傘下のトライスターが配給したものだが、当時全 世界で2億6100万ドルを稼いだとされている大ヒット作だ。 このため当時は当然の如く続編の計画も登場し、オリジナル の脚本を手掛けたロナルド・シュセットが、ディックの別の 原作に基づくストーリーを提案、再度シュワルツネッガーの 主演で計画が進められたこともあったようだ。 ところが、このとき提案された別の原作というのが、実は “Minority Report”だったのだそうで、結局この計画は実 現せずに、同原作からは2002年トム・クルーズ主演、スティ ーヴン・スピルバーク監督による映画化が行われたものだ。 しかしその一方で続編の計画自体はしぶとく生き残り、一時 はディズニー傘下のミラマックスで進められたこともあった が、この計画はワインスタイン兄弟の離脱で頓挫となってい た。なおこの計画には、オリジナルに出演のシャロン・スト ーンが大いに興味を示していたそうだ。 今回は、そのミラマックスが持っていた権利をコロムビア が取得したもので、同社では『ワイルド・スピード』『ステ ルス』から『アイ・アム・レジェンド』も手掛け、本来はコ ロムビア傘下に籍を置くニール・H・モリッツを製作に起用 して、1990年の映画に基づく現代版のリメイクを検討してい るとのことだ。因にモリッツは、ディック原作の魅力を「予 見性だ」と語り、今回の映画化では、「最新のVFXの進化 や技術の進歩を観せる」と発言している。 製作時期などは未発表だが、新たな予見性のある作品を期 待したいものだ。 * * リメイクの最後は、ミュージカル版『ヘアスプレー』の映 画化を成功させたニューラインから、今度はジョージ・アボ ット/スタンリー・ドーネン監督で、1958年に映画化された ブロードウェイミュージカル“Damn Yankees!”(くたばれ ヤンキース)の再映画化の計画が発表されている。 オリジナルは、タブ・ハンター、グエン・ヴァードンの共 演で、物語は熱烈なワシントンセネターズファンの男性が、 悪魔と取り引きして野球選手となり、宿敵ヤンキースを倒す ために活躍するというもの。スポーツネタの話ではあるが、 悪魔との取り引きなどでファンタシーとしても評価のされて いる作品だ。 その作品を今回は、ジム・キャリー、ジェイク・ギレンホ ールの共演でリメイクすると発表されているもので、その現 代化した脚本は、1992年『プリティ・リーグ』なども手掛け たローウェル・ガンツ、ババルー・マンデルが執筆すること になっている。因に、オリジナルの映画化は、イギリスでは “What Lola Wants”という題名が付けられており、ヴァー ドンが演じたローラというキャラクターがタイトルロールに もなっているものだが、今回は男優2人の共演でどのような 展開となるのだろうか。一応ニューラインの発表では、リメ イク版の公開は2012年の予定となっているようだ。 なお、1958年のオリジナル版はワーナーの製作配給による もので、今回はその傘下のニューラインが製作を担当してい るものだ。 * * 続いては、これはリメイクとは呼べないと思うが、イギリ スの中世と近世の人気キャラクターが相次いで映画化される ことになった。 まずはユニヴァーサルから、ラッセル・クロウの主演と、 リドリー・スコット監督の『グラディエーター』コンビで、 シャーウッドの森の英雄ロビン・フッドの冒険が計画されて いる。 この作品は、以前は“Nottingham”というタイトルで報道 されていたが“Robin Hood”に変更されるという情報も流れ ているもので、脚本は『カンフー・パンダ』を手掛けたイー サン・レイフ、サイラス・ヴォリスのコンビによるオリジナ ルから、『ミスティック・リバー』でオスカー受賞のブライ アン・ヘルゲランドがリライトしたとなっている。そして、 今までのロビンフッド物はどちらかというと明るいトーンの 作品が多かったが、今回は『グラディエーター』のような重 厚な作品を目指すとしており、製作費には1億3000万ドルが 計上されているとのことだ。 さらにこの作品では、クロウはロビンフッドと彼らを圧制 するノッティンガムのシェリフの役も1人2役で演じること になっており、対決シーンは面白くなりそうだ。またロビン の恋人マリアン役には、『ベンジャミン・バトン』のケイト ・ブランシェットの出演も発表されて、正に重厚な中世イギ リスの物語が展開されそうだが、レイティングはPG-13の線 を目指すとしており、つまり正当的なイギリスの英雄譚が描 かれることになりそうだ。 なお撮影は4月初旬にイギリスで開始されるが、この映画 製作にはイギリスでの税法上の優遇処置が適用されることに なっている。ただしクロウは、スコット監督との前作『ワー ルド・オブ・ライズ』の撮影のためにかなりのメタボ体形を 作ったもので、そこからスマートなロビンへの減量が大変に なっているとの情報も流されており、役者根性の見せ所にも なっているようだ。 * * 一方、昨年7月15日付第163回で紹介したガイ・リッチー 監督版“Sherlock Holmes”では、ロバート・ダウニーJr.の ホームズ役に加えて、ジュード・ロウがワトスン博士を演じ てすでに撮影は完了されており、その全米公開日が今年12月 25日と発表されている。 サー・コナン・ドイル原作の“A Scandal in Bohemia”に 基づき、ホームズが生涯唯一恋した女性ともいわれるイレー ネ役を『きみに読む物語』などのレイチェル・マクアダムス が演じるこの作品は、今年度予想外のオスカー助演賞候補と なったダウニーJr.に、1992年以来の主演賞候補をもたらす か否かも興味の湧くところだ。 なお、この作品の配給を行うワーナーでは、併せて本作に 続く2010年の全米公開予定も発表したとのことで、それによ ると、昨年11月15日付第171回などで紹介したリメイク版の “Clash of the Titans”は3月25日、前回紹介したクリス トファー・ノーラン監督による“Inception”が7月16日、 DCコミックスの映画化“Jonah Hex”が8月6日、そして “Green Lantern”の全米公開日が12月17日となっている。 この他、最終話が2部公開となった“Harry Potter and the Deathly Hallows”の後編は2011年7月15日の全米公開と発 表された。 いよいよ『ハリー・ポッター』も完結して、ワーナーの次 の戦略も緊急度が高まりそうだ。 * * 最後に、続報をいくつか短くとめて紹介しよう。 コロムビアが製作する“The Green Hornet”で、監督から は降板したチャウ・シンチーに代って、『エターナル・サン シャイン』などのミシェル・ゴンドリー監督の起用が発表さ れた。シンチーはカトー役では残るとされているもので、セ ス・ローゲン主演と共に、コメディタッチのアクション映画 化の路線は守られるようだ。ただしゴンドリーの演出が、そ れに似合うかどうか、多少心配は残るところだ。全米公開日 は2010年6月25日となっている。 1月31日付で作品を紹介した『トワイライト−初恋−』の 続編“New Moon”が、今年11月20日公開予定で製作されるこ とは12月15日付第173回で報告したが、さらに第3作となる “Eclipse”の製作が決定されている。しかも公開予定日と して2010年6月30日も発表されており、続編の製作に並行し て第3作の準備も急ピッチで進められることになりそうだ。 そしてこの第3作の監督には、続編のクリス・ウェイツから さらに交代して女優のドリュー・バリモアの起用が検討され ている。交代の理由はスケジュール的に同じ監督では厳しい ことによるもので、因にバリモアは、すでに“Whip It!”と いう監督デビュー作を完成させており、実現の可能性はある とのことだ。 昨夏公開の『アイアンマン』で最後にニック・フューリー 役で登場したサミュエル・L・ジャクスンについて、“Iron Man 2”への出演交渉が進められている他、さらにその他の シリーズへの出演も契約される見込みとのことだ。これは、 彼の演じたフューリーが、秘密組織Shieldのリーダーという 役柄のためで、このためジャクスンは“Captain America” “Thor”“The Avengers”や、それらの続編へも出演するこ とになりそうだ。
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