※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は記者会見の報告から。 映画の公開時などに行われる記者会見には、お呼びが掛か れば出来るだけ出席するようにしているが、ここでは少なく とも自分でした質問に関しては、きちんと報告させてもらう ことにする。 因に昨年は、記者会見で多少トラブルに見舞われたりもし て、今年はちょっと自重気味にスタートしたのだが、質疑応 答の時間になっても質問が出なかったりすると、やはり手を 挙げてしまうことになる。それで今年の最初は、1月20日の 『重力ピエロ』完成披露試写会での質問からになった。 質問は脚本の相沢友子さんに対して、小説を脚本化するに 当って気を付けたことを訊いてみた。その答えは「本作では 原作の時間軸がかなり入り組んでいたので、一旦、時系列を 戻したシナリオを書いてみた」とのこと、実はこの答えは、 当日配布されたプレス資料にも書かれていたことに後で気が 付いたが、原作のまま単純に脚本化するのではない、特別な 作業の状況が聞けて面白かったものだ。 次は1月22日の『GOEMON』の完成報告記者会見で、 この映画に秀吉役で出演した奥田瑛二さんに質問をした。実 はこの時点で試写は見せて貰っておらず、作品を観ないでの 質問は難しいのだが、この日は宣伝担当からの依頼もあった ので質問をした。ただし質問内容は勝手に変更して、監督の 経験もある奥田氏にVFXを多用した映画に出演した感想を 訊いてみた。 その答えは、「(本作の)監督の紀里谷氏とは以前から仲 が良く、今後、自分もビッグバジェットの作品を作るときが あったら、今回のグリーンスクリーンを貸してもらいたい」 とのことだった。僕は奥田監督の作品では、第17回東京国際 映画祭のコンペティションにも出品された『るにん』が気に 入っているものだが、あのスケールでグリーンスクリーンを 使った作品はぜひ観てみたいものだ。 さらに2月3日の『PLASTIC CITY』の記者会見では、ユー ・リクウァイ監督にアマゾンを舞台にしたことについて訊い てみた。これは、物語の後半がかなりファンタスティックな ものになることについて、脚本が先で舞台をアマゾンにした のか、アマゾンを舞台にしたことでこの展開になったのかを 質問したものだ。 その答えは、「映画の結末には苦慮して、決まらないまま ブラジルに向かったが、アマゾンを観てあの物語が出来上が った」とのこと、1月11日付の映画紹介の時にも書いたが、 やはりアマゾンには物語を生み出す特別な力があるようだ。 因にこの会見は、有楽町にある外国特派員協会の会見場で 行われたものだが、記者席の前に立ったマイクに所に出て行 って質問するという形式で、そのためか質問が映画の内容に 関わらない通り一遍のものばかりだった。そこで最後に、監 督に上記の質問をしたのだが、場内が多少混乱している中、 監督には丁寧に答えてもらえて嬉しかった。 そして2月5日の『四川のうた』のジャ・ジャンクー監督 記者会見では、俳優が演じているインタヴューが実話に基づ くのか、それとも完全なフィクションか訊いてみた。 その答えでは、「ジョアン・チェンが語ったシャオホァの 話と、リュイ・リーピンが語った母親の話は、複数のインタ ヴューで出た話を総合して作った。特に母親の話は工場の従 業員の多くに語り継がれている話。一方、ジョアン・チェン には、過去の自分の映像との共演という無理な注文の応じて 貰えて感謝している」とのことだ。またチャオ・タオが語る 若い女性の話は完全にフィクションで、チェン・ジェンビン の話については言及されなかったが、流れからすると創作の 可能性が高そうだった。 確かに、多くの人に語り継がれている話を、当事者が居な いからといって描かないのは歴史を語る上では誤りであろう し、それを俳優に語らせたからといって間違っているとは思 えない。さらにそこに完全なフィクションを入れることで、 全体のバランスを見事に取っている感じもしたものだ。 以上で、2月前半までの記者会見を報告させてもらった。 これからも折があれば質問はしたいと思っているので、その ときはまた報告させてもらうことにする。 * * ではここからは、いつもの製作ニュースを紹介しよう。 まずは、2004年8月1日付第68回で最初に報告して、07年 11月1日付第146回の頃にも再燃していたDCコミックス原 作による“Green Lantern”について、新たにマーティン・ キャンベル監督を招請していることが発表された。 キャンベル監督というと、アントニオ・バンデラス主演の 『ゾロ』2部作や、ピアーズ・ブロスナン=新007誕生の 『ゴールデン・アイ』、そして『カジノ・ロワイヤル』での ボンド復活が決まったときには、そのリスタートの監督にも 起用された人だが、今回も新シリーズのスタートに当っては ベストの人材と言えそうだ。 一方、脚本に関しては、第146回の際に報告したグレッグ ・バーランティらによるものが完成されており、差し当たっ てはそれに沿って進められることになりそうだ。因にバーラ ンティは、以前の情報では監督に起用されていたものだが、 ワーナー側の要請などで現在は製作を担当することになって いるようだ。 なおキャンベル監督の状況は、1985年に製作したBBCの ミニシリーズを自ら映画化する“Edge of Darkness”という 作品の撮影を終えたところでスケジュールはフリー。また、 DCコミックス原作の映画化では、ジョッシュ・ブローリン 主演、ジミー・ヘイワード監督による“Jonah Hex”が4月 の撮影開始予定になっており、ワーナーの発表では“Green …”はそれと前後しての公開予定とされている。 これらを勘案すると、配役などの発表はまだ無いものの、 本作の製作は近々に開始されることになりそうだ。『アイ・ アム・レジェンド』で、主人公が訪れるDVDショップに貼 られていたポスターが、ようやく本物になるのかな。 * * 次も、2000年頃から計画されていた作品で、ジェリー・ブ ラッカイマー製作“Gemini Man”の監督を、『LAコンフィ デンシャル』などのカーティス・ハンスン監督と交渉してい ることが報告された。 この作品は、後の2005年に“Lost”という作品を発表する ダーレン・リムケのオリジナル脚本から、一時は『アルマゲ ドン』などのジョナサン・ヘンスレイが脚本を担当し、トニ ー・スコット監督やメル・ギブスンの主演など、ブラッカイ マー製作では『アルマゲドン』に続く大作と宣伝されていた ものだ。しかし製作の機会に恵まれないまま、2001年には製 作延期が発表されていた。 その作品に今回は、ハンスン監督との交渉が公表されたも ので、脚本には、『トロイ』などのデイヴィッド・ベニオフ の手によるものが提示されているようだ。 物語は、アメリカ国家安全保障局(NSA)の捜査官が引 退を試みるが不自然な事故で生命が危うくなる。しかもそこ に、彼自身のクローンと思われる若者の介在が認められる… というもの。ブラッカイマーの作品では、『アルマゲドン』 というより『デジャヴ』の系統の作品と言えそうで、そこに ハンスン監督はマッチしそうな感じもするところだ。 製作時期やキャスティングなどは未発表だが、ハンスン監 督なら主人公の葛藤などにも面白いものが描けるかもしれな いし、その辺にも興味が湧くものだ。 * * 前回もナチス絡みの“Fatherland”という作品を紹介した が、今回は月に置かれたナチスの基地からの地球侵略という SF映画の計画が発表されている。 英語題名は“Iron Sky”。物語は第2次世界大戦の末期に ナチスの科学者が反重力装置を開発し、建造された宇宙船に 乗った兵士たちは月の裏側に着陸、そこで強力な艦隊を建造 する。そして2018年、ナチスの宇宙艦隊が地球侵略に向けた 準備を開始する…というものだ。 日本でも、帝国海軍がどこかに隠れて艦隊を建造している という話があったような気がするが、月の裏側からの侵略と いうのは大変なものだ。ただし本作は侵略戦争を描くのでは なく、侵攻の準備として月の基地から地球の様子を探るため 派遣された女性将校を主人公としたもの。しかもその将校役 には、コメディ映画で人気の女優が起用されているとのこと で、それなりに捻った作品にはなりそうだ。 とは言うものの、VFXはかなり使用されるとのことで、 そのための製作費の調達が検討され、その支援に向けてイン ターネットが活用されたとのこと。そこには200万人以上の 支援者が登録されているそうだ。なお映画の製作は、フィン ランドの映画会社と、ベルリンに本拠を置く映画会社の共同 で進められている。 因にフィンランドでは、2006年に『スター・トレック』の パロディ作品“Star Wreck: In the Pirkinning”がネット で無料配信されて2カ月間で350万人が鑑賞。これが同国の 映画観客動員数の歴代記録になっているそうだ。今回の作品 は劇場での公開が目指されているようだが、何とか日本でも 観られるようにして欲しいものだ。 * * 昨夏公開の『ダーク・ナイト』が全世界興行で10億ドル突 破を記録したワーナーとクリストファー・ノーラン監督が、 同監督が新たに執筆した脚本について、7桁($)の契約を 発表した。 この脚本は“Inception”と題されているもので、内容は 精神の構造を題材にした現代が背景のSFアクションとのこ と。それ以上の具体的な物語は明らかにされていないが、製 作担当のワーナーの幹部からは、「ノーラン監督は、自分の 作る作品ごとに、その関門の高さを上げているようだ」との 発言がされていた。『メメント』や『インソムニア』の監督 が、今度はどんな物語を仕掛けてくるか楽しみだ。 なお、契約金額については、ワーナーとすれば『ダーク・ ナイト』の続きを確保するためにも、当然の金額と考えられ ているようだ。そして今回の作品はノーランの次回作として 2010年夏の公開となっており、このペースで進めば2012年に は「バットマン」の第3作が期待できることになりそうだ。 * * 昨年2月に紹介した『ジェーン・オースティンの読書会』 は、その時にも書いたようにネビュラ賞受賞SF作家の原作 によるものだったが、そこに描かれた世界がよほどSFファ ンの心をくすぐるのか、今度はオースティン世界にタイム・ トラヴェルするというお話が映画化されることになった。 題名は“Lost in Austen”。物語は現代のニューヨークで ボーイフレンドと同棲中のオースティンファンの女性を主人 公にしたもので、その主人公がある日のこと『高慢と偏見』 のエリザベス・べネットと入れ替わって…というもの。元は ロンドンを舞台にして去年秋に放送されたイギリスのテレビ ミニシリーズがあり、今回はそのミニシリーズを製作した会 社がそのまま映画版も手掛けるとのことだ。 そしてその映画版の製作者として、『アメリカン・ビュー ティ』で1999年のオスカー監督賞を獲得し、『君のためなら 千回でも』などの製作も手掛けたサム・メンデスの参加が発 表されている。また脚本は、テレビシリーズも担当したガイ ・アンドリュースが映画版も手掛けており、アンドリュース は映画版の製作総指揮も担当するそうだ。 監督は未定で、配役や製作時期も未発表の計画だが、製作 会社は『…読書会』と同じコロムビアとなっており、完成す れば続編のような雰囲気での売り込みともなりそうだ。なお メンデス+コロムビアでは、昨年11月15日付第169回で紹介 したようにグラフィックノヴェル原作の“Preacher”という 計画も進めており、こちらはメンデスの監督になっている。 それにしてもオースティンとSFは、何故か相性が良いよ うだ。 * * 続報で、昨年11月15日付の第169回で紹介したMGM製作 で進められているロバート・ラドラム原作の“The Matarese Circle”の映画化に、デイヴィッド・クローネンバーグ監督 とデンゼル・ワシントン主演に加え、トム・クルーズの共演 が報告された。 1979年に発表されたオリジナルの物語は、冷戦時代を背景 にアメリカとソ連のスパイが協力せざるを得なくなるという もの。その原作からの映画化では、『ウォンテッド』などの マイクル・ブラントとデレク・ハースが現代化した脚色を進 めていたもので、そこにワシントンとクルーズの共演は面白 くなりそうだ。 因にクルーズは、同じくMGM製作の“Valkyrie”の後に は、スパイグラス社でシャーリズ・セロン共演による“The Tourist”という計画はあるようだが、その他に決定してい る作品はなく、今年中の製作が計画されている本作の映画化 には支障無く参加できそうだ。 * * 一方、ラドラム作品の映画化権を管理しているキャプティ ヴェイト・エンターテインメント(社名が変わったようだ) 社は、昨年12月1日付第172回で報告したようにユニヴァー サルと包括的な契約を結んでいるものだが、同社が直接映画 製作に乗り出す第1号作品として“The Parsifal Mosaic” (邦訳題:狂気のモザイク)という計画が発表された。 物語は、KGBとの二重スパイだった自分の恋人が暗殺さ れるのを目撃した合衆国の情報局員が、それを契機に職を辞 するが、後日、暗殺されたはずの恋人の姿を町で目撃する… というもの。題名通りの複雑なモザイクが描かれそうだ。そ してこの映画化の計画を、ユニヴァーサルでは最優先で進め ると発表している。 因にユニヴァーサルでは、昨年6月15日付第161回で紹介 した“The Sigma Protocol”の映画化も進めているが、この 作品はキャプティヴェイトとは別枠で進められているもの。 この結果、ユニヴァーサルでは、全くの映画オリジナルで準 備中の『ジェイスン・ボーン』シリーズの第4作と併せて、 3本のラドラム関連作品が同時進行中となっている。 『ボーン』3部作の全世界興行収入合計が10億ドルに到達 しているラドラムの人気は、まだまだ続きそうだ。 * * またまた玩具の映画化で、ハスボロ社が1970年代から発売 しているマッスル型のキャラクター人形Stretch Armstrong に基づく物語の計画が、先に同社との包括契約を結んだユニ ヴァーサルから発表された。 因に人形は、身長13インチながら腕を掴んで引っ張ると、 最大で4フィートにも伸びるという代物。そして計画では、 2003年にジム・キャリー主演で大ヒットしたVFXコメディ 『ブルース・オールマイティ』のスティーヴ・オーデカーク が脚本を担当しており、人形の特徴を活かしたコメディでの 映画化になりそうだ。 なおこのキャラクターに関しては、実は1998年頃にディズ ニーでも映画化が企画されたことがあって、その時はダニー ・デヴィートとジャッキー・チェンの共演という計画だった そうだ。つまりその時もコメディでの映画化が計画されてい たもので、今回ものその線は変わらないものだ。 因にハスボロ社は、元々今年公開される“Transformers” と“G.I.Joe”の玩具の発売元でもあるものだが、一昨年の 映画版『トランスフォーマー』の大成功で、新たな可能性に 着目したようだ。そこでユニヴァーサルと包括契約を結んで の直接進出となったもので、すでにこの契約からは、ボード ゲームのMonopolyをリドリー・スコット監督で、また同じく ボードゲームのCandylandを『魔法にかけられて』のケヴィ ン・リマ監督で映画化する計画も進められている。 ただし、すでに映画化のされたキャラクターに関しては、 映画会社側に優先権が生じることになっているもので、その ため“Transformers”の製作はドリームワークスが続けて行 うことになる。しかし同社は先日、パラマウントからディズ ニーへの移籍を発表したもので、この場合の優先権はどこに あるのか、その権利主張が縺れると、最悪以後の続編の製作 が不能になってしまう恐れもあるようだ。 * * 1997年『ガタカ』、2002年『シモーヌ』が鮮烈な印象を残 すアンドリュー・ニコル監督が、2005年の『ロード・オブ・ ウォー』以来の監督作品として、近未来SFとされる“The Cross”の計画を発表し、その映画化にオーランド・ブルー ム、ヴァンサン・カッセルと『慰めの報酬』オルガ・キュリ レンコの出演が報告されている。 物語は、神秘的な境界を描くもので、ブルームが演じるの は誰も成しえなかったその境界越えを試みる男、カッセルは それを阻止するために手段を選ばない境界の番人を演じると のことだ。これだけでは何の話かさっぱり分からないが、全 体のテーマは近未来ものとなっており、それを前記の作品を 手掛けたアンドリュー・ニコルの脚本監督なら、相当のもの が期待できそうだ。しかも製作費には2400万ドルが計上され ており、主な撮影は7月にオーストラリアで開始されること になっている。 因に、アンドリュー・ニコルは1998年にピーター・ウェア が監督した『トゥルーマン・ショー』でオスカー脚本賞候補 になっているが、どの作品もかなり特異なシチュエーション を現実のように描いているもので、その系列の中での今回の 作品は気になるところだ。 * * 最後に短いニュースをまとめて紹介しておこう。 まずは久々の名前で、ジョン・カーペンター監督が2001年 の『ゴースト・オブ・マーズ』以来の計画を発表している。 題名は“The Ward”。詳しい内容は不明だが、記事によると ghost storyとのこと。インディーズのEcho Lakeの製作で、 主演には“Pineapple Express”というRレイトのコメディ が評判になっているアンバー・ハードの起用も発表されてい る。なお、Echo Lakeは昨年3月に紹介の『アウェイ・フロ ム・ハー/君を想う』を製作した会社だそうだ。 昨年9月15日付第167回で紹介したアレン&アルバート・ ヒューズ兄弟監督による“The Book of Eli”の撮影が開始 され、以前に紹介した主演デンゼル・ワシントンに加えて、 ゲイリー・オールドマン、マイクル・ガンボンの共演が発表 されている。最終戦争後の世界を舞台に荒廃した各地を旅す る主人公を描く作品には、他にもいろいろな登場人物が現れ そうだ。なおワーナーが配給するこの作品の全米公開日は、 2010年1月15日に決定しているようだ。 『カジノ・ロワイヤル』『ライラの冒険』のエヴァ・グリ ーンが、ハンガリー出身ベネデク・フリーガウフ監督による 初の英語作品に出演し、この作品“Womb”の内容が未来物と 紹介されている。具体的な内容は、グリーン扮する未亡人が 夫のクローン再生を試みるというものだそうで、共演にはB BCの新作“Dr.Who”で主演を勝ち取ったマット・スミスの 起用も発表されている。撮影は今年3月に北海沿岸で開始さ れる予定とのことだ。 1月15日付第175回で紹介したMcG監督の“20,000Leagues Under the Sea: Captain Nemo”の映画化に関連して、前回 “Masters of the Universe”の記事にも登場したジャステ ィン・マーカスが脚本のリライトを担当すると発表された。 ディズニーの製作で1954年作品のリメイクの面も持つこの作 品は、ネモ船長の人生を語るものにもなるようだが、そこに 『ストリートファイター/ザ・レジェンド・オブ・チュンリ ー』の脚本家の起用は面白そうだ。期待したい
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