※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回で制作ニュースは年内最後の更新となるので、纏めも 含めて賞レースの話題から始めることにしよう。 まずは、アカデミー賞VFX部門の第1次候補15本が発表 された。この15本は、この後にVFX部会の幹部会で7本に 絞られ、年明けからその7本の抜粋版が部会の全員に回覧さ れて1月22日発表の最終候補3本が決定されるもの。つまり ここでは、今年のVFXの全貌が明らかにされるものだが… その15本は、 “Australia” “The Chronicles of Narnia: Prince Caspian” “Cloverfield” “The Crious Case of Benjamin Button” “The Dark Knight” “The Day the Earth Stood Still” “Hancock” “Hellboy II: The Golden Army” “The Incredible Hulk” “Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull” “Iron Man” “Journy to the Center of the Earth” “The Mummy: Tomb of the Dragon Emperror” “Quantum of Solace” “The Spiderwick Chronicles” となった。 以上の作品が今年のVFXの全貌とされたものだが、まず Variety紙の見解では、“Speed Racer”“Wanted”が落ちた のはどうした訳だ…?ということになっているようだ。僕と してはこれに“10,000BC”“Eagle Eye”“Jumper”なども 加えたいと思うが、上記の15本のVFXは、これらの作品を 上回っているということなのだろうか? 特に“10,000BC” は、ローランド・エメリッヒ監督が来日記者会見で、VFX に力を入れたと強調しているのを直接聞いていただけに残念 な感じもした。 とは言え、いずれにしても上記の作品の中からオスカーが 選ばれる訳で、Variety紙の記事では“Australia”の景観と “Benjamin Button”の若返りが特記されていたようだ。僕 としては、過去に『フォレスト・ガンプ』が受賞しているこ となども考えると“Benjamin Button”に1票投じたいとこ ろだが…。来年のアカデミー賞最終的な受賞式は、2月22日 午後5時(西部時間)から行われる。因に受賞式の司会は、 『X−メン』のウルヴァリンことヒュー・ジャックマンが務 めるようだ。 * * もう1つ賞関係では、ハリウッド外国人記者協会が選出す るゴールデングローブ賞の候補が発表されている。その映画 部門だけ観ておくと、ドラマ作品賞に“The Crious Case of Benjamin Button”がノミネート。またこの作品は、主演男 優、監督、脚本、音楽の各部門の候補にもなっており、5部 門の候補は“Doubt”“Frost/Nixon”と並ぶ最多で、かなり の注目度となっているようだ。 この他では、助演男優賞候補に“Tropic Thunder”のトム ・クルーズ、ロバート・ダウニーJr.と並んで、“The Dark Knight”のヒース・レジャーの名前が挙がっているのが何と も言えないところで、1月22日に発表されるアカデミー賞の ノミネーションと併せて気になるところだ。因にゴールデン グローブ賞の受賞式は1月11日行われる。 一方、ワーナーは、来年1月23日に“The Dark Knight” の全米再公開を行うと発表している。これは、同作品の興行 収入が国内で5億3030万ドル、海外で4億5690万ドルの合計 9億9620万ドルに達しており、あと400万ドルで10億ドルの 大台に乗ることから、一気に達成を目指すというもの。過去 の全世界10億ドル突破は、“Titanic”“LotR: The Return of the King”“PotC: Dead Man's Chest”の3作だけで、 達成すればそれに続くものになる。残り金額からして達成は 間違いないと思われるが、故レジャーが受賞してその一助に なってくれたら嬉しいものだ。 上記以外では、特に今年はSF/ファンタシー系はあまり ノミネートされなかったようだが、元々スーパーヒーローも のは賞には似合わないという意見は根強いようで、それも仕 方ないところだろう。 なおアニメーション賞候補には、ディズニーの“Bolt”、 ドリームワークスの“Kung Fu Panda”、ディズニー=ピク サーの“Wall-E”が挙げられており、“Bolt”と“Wall-E” は主題歌賞の候補にもなっている。“Wall-E”は期待の作品 賞候補にはなれなかったが、オスカーはどうだろうか。 * * ここからは制作ニュースを紹介しよう。 その最初は新しい情報で、ジョニー・デップ主宰の製作会 社インフィニタム・ニヒルが、ニック・トーシュ原作による “In the Hand of Dante”という作品の権利を獲得し、デッ プ主演で映画化すると発表した。 原作は、ジャーナリスト、詩人でもある作家のトーシュが 2002年に発表した長編小説で、シチリア島で発見されたダン テの遺稿かも知れない文書を巡って、その真贋鑑定を依頼さ れた作家(トーシュ)とギャングらによる文書の争奪戦、さ らに13世紀、失意の中で最後の作品『神曲・天国編』の執筆 に挑むダンテの姿が描かれているとのことだ。なお原作は、 2005年『ダンテの遺稿』の邦題で翻訳もされている。 その作品をデップの主演=トーシュ役で映画化するという 計画で、デップは自己資金で映画化権を獲得したとのこと。 従って映画化はデップの希望通りに行えるものだが、一方、 ニヒル社はワーナー及びグラハム・キングのプロダクション と優先契約を結んでおり、映画が完成すれば配給はワーナー で行われることになるものだ。 ただし、原作は時間軸が縦横に交錯するなど、かなり難解 な構成を採っている作品のようで、それを映画の構成に変換 するためには相当の手腕が必要とされている。監督、脚本家 などはまだ発表されていないが、その人選にはかなり慎重を 要することになりそうだ。 因に、デップの出演計画では、ティム・バートン監督によ る“Alice in Wonderland”の撮影は完了しているようで、 続いて3月からこれも作家の役に扮する“The Rum Diary” の撮影が予定されている。そしてその後には、またもやバー トン監督で、今年6月15日付第161回などで紹介した“Dark Shadows”の映画化計画が急浮上してる。 この最後の情報は、映画製作者リチャード・D・ザナック の発言によるもので、1960年代の人気テレビシリーズの映画 化に関しては、『チャーリーとチョコレート工場』などのジ ョン・オーガストによる脚本がすでに出来上がっているとの こと。そしてザナックの口振りでは、“The Rum Diary”に 続いての製作が実現しそうな感じのようだ。 なおデップには、この他に“The Lone Ranger”のトント 役、ゴア・ヴァビンスキー監督のアニメーション“Rango” の声優、さらに“Sin City 3”“Shantaram”に、“Pirates of Caribbean”の続きなど、発表されている計画は枚挙に暇 のないものだ。 * * 5月15日付第159回でも紹介したホラー映画の老舗ハマー ・フィルムスの復活に関して、新たに“The Resident”とい う作品を来年5月に撮影することが発表された。 同社からは、すでに復活第1作となる“The Wake Wood” という作品の撮影完了も報じられているようだが、さらに、 今回はその第2作となる計画が報告されたものだ。そしてそ の作品に、アカデミー賞2度受賞ヒラリー・スワンクの主演 が発表されている。 この作品“The Resident”は、フィンランド出身で、ウィ ル・スミスやエミネム、ビヨンセ、セリーヌ・ディオンなど のMTVを手掛けた映像作家アンティ・J・ジョキネンが、 1998年にオリヴァ・ストーンが製作した『セイヴィア』の脚 本も手掛けたロバート・オアと共に執筆したオリジナル脚本 を、ジョキネンの長編監督デビューとして進めるもの。 内容は、スワンク扮する女医がニューヨーク・ブルックリ ンのロフトに引っ越してくるが、そこで彼女は新居にいるの が自分だけでないことに気付く…。典型的なサスペンスもの と言えそうだが、スワンク主演の『P.S.アイラヴユー』 が公開された直後にこの内容はニヤリとするところだ。 なおスワンクは、2007年7月に紹介したホラー作品の『リ ーピング』にも主演していたが、案外この種のジャンル作品 が好きなのかな? 因に、共同脚本のオアはすでに撮影完了 したシリーズ第4作“Underworld: Rise of the Lycans”の 原案にも名を連ねている人のようだ。 製作は、以前にも紹介したハマー+スピットファイア共通 の出資会社HSメディアが製作費を調達し、撮影はアメリカ 東海岸で行われることになっている。ハマーではこの他に、 今年10月1日付の第168回で紹介したスウェーデン映画“Let den ratte komma in”の英語リメイクという計画も発表され ており、老舗の復活は順調に進んでいるようだ。 それから第1作として紹介された“The Wake Wood”は、 娘を失った両親を巡る物語とのこと。2005年にニール・ジョ ーダン監督、キリアン・マーフィ主演で映画化された『プル ートで朝食を』などの製作総指揮を務めたブレンダン・マッ カーシーが脚本と製作を手掛けているものだ。 * * ここからは続報で、その最初は2007年3月1日付第130回 で紹介した実写版“The Sorcerer's Apprentice”のタイト ルロール、つまり「魔法使いの弟子」役に、“Knocked Up” (無ケーカクの的中男)に出演していたジェイ・バルチェル の起用が発表された。 『ナショナル・トレジャー』のジョン・タートルトーブ監 督によるこの作品では、すでにニコラス・ケイジが魔法使い 役で出演することも発表されているものだが、『マイティ・ ジョー』などのローレンス・コナーとマーク・ローゼンター ルのオリジナル脚本から、日本では来年3月公開予定の『ベ ッドタイム・ストーリー』を手掛けたマット・ロペスが最終 稿を担当した物語は、現代ニューヨークを舞台に、魔法使い が弟子を求めて彷徨う話が展開されているようだ。 なおバルチェルは、“Knocked Up”のセス・ローガンと共 に“Jay and Seth vs.the Apocalypse”という作品を進めて いる他、2006年11月15日付第123回で紹介したドリームワー クス・アニメーション作品“How to Train Your Dragon”の 声優も務めており、何となく頼りない感じの役柄がお似合い の俳優ということだ。 * * お次は、2005年11月1日付第98回に別記事の関連で題名だ け紹介した“Atlantis Rising”の映画化が、ドリームワー クス製作で進められることになり、その計画に、『アンダー ワールド』シリーズを手掛けるレン・ワイズマン監督との契 約が発表された。 原作は、プラティナム・スタジオ刊行による全5巻のミニ シリーズとのことで、その物語は、深海深くに生き残ってい た古代の大陸アトランティスの末裔が、今までは地表に棲む 人類との競合は避けてきていたものの、人類の無秩序な海洋 開発に耐え切れず、ついに人類に反攻を始めるというもの。 今まで宇宙からの地球侵攻を描いた作品はいろいろあるが、 地球内部からの驚異というのは珍しいとのことだ。 しかもアトランティスは、古代ギリシャ時代に記述された プラトンの原典でも、強大な軍事力を持った超文明国家とさ れているもので、これは凄いことになりそうだ。水を表現す るCGIもかなりリアルになってきているし、面白い作品を 期待したい。 因に深海からの驚異ということでは、1989年ジェームズ・ キャメロン監督の『アビス』が思い浮かぶが、このときは超 高圧の星から来た異星人という設定になっていた。またアト ランティスものでは、人間がその地を訪問するという物語は 過去にもいろいろあるようだが、軍事力による全面対決とい う展開は新機軸のようだ。 なおワイズマン監督とドリームワークスでは、本作の前に “Motorcade”というスリラー作品の準備も進めており、今 回の計画はその後に進められることになっている。 * * 2006年5月1日付第110回で紹介したイギリスの詩人ジョ ン・ミルトン原作による“Paradise Lost”(失楽園)の映 画化について、『地球の静止する日』のリメイクを手掛けた スコット・デリクスン監督が本腰を入れ始めたようだ。 この情報は、デリクスン監督が雑誌のインタヴューに答え たもので、それによると監督は、ギレルモ・デル=トロの最 近の2作品『パンズ・ラビリンス』と『ヘルボーイII』には 大いに触発されたそうで、特に、『ヘルボーイII』で提示さ れた世界観に圧倒されたそうだ。しかもそれを製作費の予算 内で仕上げていることに衝撃を受けたとしている。 そして監督は、「12月中にデル=トロ監督とディナーをす る予定があり、そこで、彼が如何にしてこのような作品を作 り上げたかリサーチしたい。彼やピーター・ジャクスン監督 は、まさにSF/ファンタシー映画を作り上げる全ての要素 を把握しており、それを観客に提示する手段を心得ている。 それは他の誰にも真似できないものだが、僕はそれを彼らか ら学び取って、“Paradise Lost”の製作に役立てたい」と 語っているものだ。 このインタヴューはリメイク作品の公開前に行われたもの のようで、同作品がヒットで受け入れられた後に彼の考えに 変化があるかどうかは判らないが、監督が次回作にかける意 気込みには、違うものがあるようだ。キリスト教の聖書を背 景に神々と悪魔たちの究極の戦いを描く物語を、正にファン タシーの感覚で撮りたいとしているデリクスン監督の次回作 には大いに期待したいところだ。 * * ここからは続編の話題をいくつか紹介しよう。 まずはちょっと意外な続編で、ウィル・スミスがこの夏公 開されたスーパーヒーロー『ハンコック』の続編を検討して いるようだ。その情報によると、実はスミスには別のスーパ ーヒーローものとして“Captain America”の打診があった そうなのだが、その際スミス自身が、「『ハンコック』の宇 宙には、もっと描かれていないキャラクターがいたはずだ。 それを続編で描きたい」と回答したとのことで、数年以内に “Hancock 2”が作られることはほぼ確実なようだ。 因に、オリジナルの『ハンコック』は、日本の興行はそれ ほど目立つものではなかったが、アメリカでは最終的に2億 2800万ドルの興行収入を上げており、続編が作られることに は全く問題の無い水準に達しているものだ。 なおスミスは、新作の“Seven Pounds”が12月19日に全米 公開されるところで、今回の情報はそれに関連して報告され たものだが、スミスにはこの他“I,Robot 2”“I Am Legend Prequel”などの計画も噂されており、その中では、今回の 情報が最新で一番確度も高いようだ。 それにしても、『ハンコック』ではスーパーヒーローの最 後の生き残りというようにも語られていたと思うが、それが 他にいたとしてもその設定も今回と同じなのだろうか…それ だと関係はかなり複雑になりそうだが。 * * お次は前回報告した“Twilight”の続編“New Moon”に関 して、前作を監督したキャサリン・ハードウィックの降板が 発表され、代って『ライラの冒険・黄金の羅針盤』を手掛け たクリス・ウェイツの起用が発表されている。 因に“Twilight”の興行収入は、アメリカ国内1億4400万 ドル、海外3300万ドルに達しており、原作本が1700万部以上 発行されているというシリーズの威力は発揮されているよう だ。この原作本の威力に関しては、前回宗教的な背景も報告 したものだ。 一方、『ライラの冒険』は、アメリカ国内は7000万ドルに 終ったものの、海外では3億ドル突破の成績を残している。 しかし元々の製作会社だったニューラインがワーナーに吸収 合併されて消滅したことから、ワーナーでは続編の計画はま だ立てられていないようで、ウェイツにはその悔しさもぶつ けた作品を期待したい。 なお発表に際してウェイツからは、「ステファニー(原作 者)が作り出した素晴らしい世界は、数多くのファンの心を 捕えている。自分の仕事は、その世界や主人公たちや彼らの 愛の物語を護ることだ。美しい本の傍に立てる美しい映画を 作り上げる」というステートメントが紹介されたそうだ。 脚本は前作と同じメリッサ・ローゼンバーグが担当し、撮 影は来年早々に開始。続編の全米公開は、2009年11月20日と 発表されたようだ。 * * McG監督によるシリーズ第4作“Terminator Salvation” の全米公開は来年5月22日に予定されているが、新3部作の 開幕とされる作品の続編の計画が早くも発表された。 これは先に行われた中東ドバイの映画祭で製作者らによっ て報告されたもので、それによるとシリーズ通算第5作は、 2011年の公開を目指すとのことだ。因にこの発表は、当初は 来年の公開に併せて行う計画だったが、すでに流され始めた 予告編の評判が良いのと、それに呼応したファンの発言が活 発なことを考え併せて前倒しの発表となったようだ。 そして、監督のMcGはすでに製作者らと一緒に作業を始め ているそうで、今回主人公のジョン・コナーを演じたクリス チャン・ベールも3部作の全てに出演する契約になっている とのこと。第5作は第4作と全く同じ体制で製作されること になりそうだ。ただし今回、第4作の配給でアメリカ国内を ワーナー、海外をソニーとした契約は1作限りとのことで、 第5作の配給は新たに契約交渉がされる。 いずれにしてもこの勢いなら、3部作全ての映画化も間違 いなさそうだ。 * * 最後も第5作となる話題で、1994年にアレックス・プロイ アス監督によってスタートした『クロウ・飛翔伝説』シリー ズが、『ブレイド』などのスティーヴン・ノリントン監督の 手で再開されることが発表された。 このシリーズでは、その後は1996年“The Crow: City of Angels”、2000年“The Crow: Salvation”、さらに2005年 “The Crow: Wicked Prayer”と続いているものだが、今回 の計画は、以前からの製作者エド・プレスマンに、『ハムナ プトラ』から『ハンコック』『チェンジリング』『ヘルボー イII』も手掛けるリレイティヴィティ・メディアが交渉して 再開を進めているもので、新たなシリーズとしての再出発が 検討されている。 そしてノリントン監督も、「プロイアスのオリジナルは、 ゴシック風のゴージャスなものだったが、僕はもっとリアル なものを目指す。切れ味が鋭くミステリアスで、もしかした らドキュメンタリータッチなものになるかも知れない」とし ており、作品のイメージもかなり違ったものになりそうだ。 因にノリントン監督は、2003年の『リーグ・オブ・レジェ ンド』以来の監督復帰となるが、この間は“Exorcist: The Beginning”のFXや、“Feast”のクリーチャーFXなどに も関わっていたようだ。そして一時は、ワーナーが進めてい るリメイク版“Clash of the Titans”での復帰を目指した ものの不調に終ったとのことで、今回は監督も再出発となる ものだ。
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