※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ティム・バートン監督による“Alice in Wonderland”の 撮影は始まっているようだが、その影響もあってか児童向け の古典文学の映画化が次々発表されている。今回はその情報 から紹介しよう。 その1本目は、これもディズニーの古典アニメーションで も知られる“Pinocchio”(ピノキオ)の再映画化を、ギレ ルモ・デル=トロの製作総指揮により、ジム・ヘンスンCo. (JHC)で進めていることが発表された。 原作の小説はイタリアの作家カルロ・コロディが1883年に 発表したもので、1940年にディズニーが長編アニメーション の第2作として映像化。また実写では、1996年にマーティン ・ランドーの出演で映画化されている他、2002年のロベルト ・ベニーニ監督・主演作も記憶に新しいところだ。 その原作を今回は、よりダークなトーンのストップ・モー ションで映画化するという計画で、デル=トロは、2002年に 原作が再出版された際のイラストレーターのグリス・グリム リーと共に脚本を執筆。またグリムリーは、2006年の“The Wraith of Cobble Hill”という作品で、サンダンス映画祭 の短編賞を受賞したアダム・パリシュ・キング監督と共に、 映画化の共同監督も手掛けることになっている。 因にデル=トロは、前回も紹介したようにモンスターの出 てくる映画しか作らないと宣言しているものだが、元々コロ ディの原作もかなりダークなイメージを感じさせるもので、 今回はその辺を前面に出した作品になりそうだ。そして共同 で監督、脚本を務めるグリムリーのイラストは、ネットの紹 介で見ても相当にダークな感じで、これも良い感じだった。 ただしデル=トロは、前回報告したようにピーター・ジャ クスンと進める“The Hobbit”に、2012年までは掛かり切り になる予定で、その他にもユニヴァーサルと結んだ3年契約 でも、“Frankenstein”“Dr.Jekyll and Mr.Hyde”、さら に“Slaughterhouse-Five”などスケジュールは満杯状態。 しかし本作に関しては、自身のウェブサイトでも3年以内の 完成を公表しているとのことで、早期に進められるようだ。 すでに共同監督も発表されている状況では、グリムリー側が 主導権を持って進めることになるのかもしれない。 なおJHCはディズニーと関係が強いようで、本作もディ ズニーの配給になる可能性が高い。つまりディズニーでは、 バートン監督の『アリス』に続けて本作『ピノキオ』を公開 することになりそうだ。 * * お次は、1972年“Deliverance”(脱出)などのジョン・ ブアマン監督が、1939年のMGM作品“The Wizard of Oz” (オズの魔法使い)でも知られるL・フランク・ボウム原作 の“The Wonderful Wizard of Oz”をCGアニメーションで 映画化する計画を発表した。 この原作の映画化では、何と言っても上記のヴィクター・ フレミング監督による作品が有名だが、それ以前にも、ボウ ム自身が製作したサイレント映画や短編アニメーションなど もあったようだ。しかし1939年以降は、原作にインスパイア されたブロードウェイ・ミュージカルの映画化“The Wiz” (ウィズ)と、ディズニーが続編として映画化した“Return to Oz”(オズ)がある程度で、同じ原作からの映画化は行 われていない。そのくらいにMGM版の映画化は評価の高い ものだ。 その原作の再映画化にブアマン監督が挑むことになる訳だ が、上記の『脱出』が代表作として挙げられる監督に児童向 けの作品はちょっと不思議な感じもする。ところが、実はブ アマン監督が『脱出』の次に撮った“Zardoz”(未来惑星ザ ルドス)では、映画の中でボウムの原作に言及した部分があ ったりもして、監督とこの原作の関係には浅からぬものが感 じられる。従って今回の映画化には、ブアマン自身も相当の 思いがありそうで、その完成に期待が膨らむところだ。 なお、今回の映画製作はフランスで行われるが、ブアマン と、2005年のCGアニメーション『ロボッツ』も手掛けたロ ン・ミタ及びジム・マクレインによる脚本は英語で書かれて おり、映画化は英語で行われる。また物語やキャラクターは 原作に沿うのでMGM版と似たものになるが、ミュージカル にはしないとのこと。さらに製作費には2500万ドルが計上さ れており、公開は2010年夏を目指しているそうだ。 因に、ボウム原作の『オズ』シリーズは全14巻が発表され ているが、MGM版及び今回の映画化は、ドロシーとトトが 活躍するその第1巻が対象とされているものだ。 * * もう1本は、ジョナサン・スウィフト原作の“Gulliver's Travels”(ガリヴァー旅行記)を、ジャック・ブラックの 主演で、現代に再イメージして映画化する計画が発表されて いる。 1726年に発表された原作の映画化では、『ポパイ』などの フライシャー兄弟が1939年に製作したアニメーション作品が 有名だが、実写でも、1960年レイ・ハリーハウゼン特撮によ る“The 3 Worlds of Gulliver”なども作られている。この 他に、1902年にはジョルジュ・メリエスが映画化しており、 1977年のリチャード・ハリス主演作や、2005年にはIMax-3D による作品もあるようだ。 その原作から今回は、日本は年末公開予定の“Forgetting Sarah Marshall”(寝取られ男のラブ♂バカンス)の監督及 び共同脚本を務めたニック・ストーラーと、『シュレック』 のジョー・スティルマンが脚色、『シャーク・テイル』のロ ブ・レターマンの監督で実写映画化しようというものだ。 この顔ぶれからは、コメディでの映画化が目指されている と思われる。ただブラックの主演なら、小人の国リリパット より、主人公がペットにされてしまう巨人の国ブロブディン ナグの方が面白くなりそうだが、発表されているストーリー はやはりリリパット国の物語のようだ。 因にスウィフトの原作は、児童向けと言うより風刺文学と しての位置付けが高いが、映画化はお子様向けであることが 多いし、今回もその類のものになりそうだ。でもこの顔ぶれ ならそれなりに毒のある作品には成ってくれるのかな。撮影 開始は来年3月に予定されている。 * * おとぎ話の情報はここまでにして、次は久々のSF名作の 映画化計画を紹介しよう。 作品はアイザック・アジモフ原作の“End of Eternity” (邦題:永遠の終わり)。実はこの計画に関しては、2003年 11月15日付の第51回でも1度紹介しているが、その時のパラ マウントとクルーズ/ワグナーの企画は実現に至らなかった もので、今回は新たにニュー・リジェンシーが権利の獲得を 発表した。 物語は、以前にも紹介したように、タイムトラヴェルが一 般化し、歴史の改変を防ぐ時間管理機関の創設された時代を 背景に、管理機関の担当者が歴史上の人物を愛してしまった ことから問題が発生する…というもの。アジモフの作品では 珍しい時間テーマの長編で、以前の紹介の時点では、パラマ ウントが計画中だったマイクル・クライトン原作の『タイム ライン』に続く時間ものとして期待されていたものだ。 その作品の映画化権が、今回は1992年の『透明人間』や、 今年春に公開された『ジャンパー』などを製作した会社と契 約されたもので、同社はまず監督の選考に入るとしている。 なお脚本家は監督の意向にしたがって決定するとのことだ。 因にアジモフの原作では、“The Foundation Trilogy”の 映画化についても、今年8月1日付第164回で紹介したばか りだが、1955年に発表された本作は、広くはその『ファウン デーション』シリーズにも組み込まれる作品とのことで、こ れから相互の関係も面白くなりそうだ。 * * 次の話題は、今年もこの時期になりましたということで、 アカデミー賞長編アニメーション部門の予備候補の発表を紹 介しておこう。 この予備候補発表では、その本数が最終候補の数に影響す ることでも注目されるものだが、今年の本数は14本。これは 15本以下ということで、最終候補の数は3となるようだ。 そして発表された14本は、“Bolt”“Delgo”“Dr.Seuss' Horton Hears a Who”“Dragon Hunters”“Fly Me to the Moon”“Igor”“Kung Fu Panda”“Madagascar: Escape 2 Africa”“$9.99”“The Sky Crawlers”“Sword of the Stranger”“The Tale of Despereaux”“Wall-E”“Waltz With Bashir”となっている。 日本の作品もあるし、すでに日本公開された作品もあり、 このサイトの製作ニュースで紹介した作品もちらほらあると いう状況で、この中から3本が選ばれる訳だが、Variety紙 の記事では“Wall-E”“Dr.Seuss”“Madagascar”が有力と 考えられていたようだ。ただし、この3本はそれぞれ製作会 社の異なる作品が選ばれているもので、ドリームワークスな ら“Panda”はどうなのとか、ディズニーの他の作品など、 まだまだ曲折はありそうだ。 なお最終候補は、他の各部門の候補と共に来年1月22日に 発表される。 それにしても今年は、他に7月に全米公開された“Space Chimps”や、8月公開の“Star Wars: The Clone Wars”も 劇場作品のはずだが、これらは無視されてしまったようだ。 何かの思惑でも働いたのだろうか。 * * ここからは続報をいくつか紹介しよう。 まずは、マーヴェル・スタジオから、2011年5月6日公開 予定の“The First Avenger: Captain America”の監督に、 元はILMの特撮マンで、『ミクロ・キッズ』や『オーシャ ン・オブ・ファイヤー』などのジョー・ジョンストン監督の 起用が発表された。 この計画については、2006年5月15日付第111回でも紹介 したものだが、その後の今年5月15日付第159回の情報では 『インクレディブル・ハルク』のザック・ペンが脚色を担当 することにもなっていた。ただ、『ハルク』の成績はちょっ と期待通りではなかった面もある訳で、予定公開日までには まだ多少の余裕がある本作の製作が、これからどのように進 展するかにも注目が集まる。 一方、マーヴェル作品では、2011年には“The Avengers” の公開も予定されていて、Captain Americaはその両方に出 演することになっており、その現実の姿であるスティーヴ・ ロジャースの配役にも注目が集まって来る。スター俳優の起 用が多いマーヴェル作品ということで、『ダーク・ナイト』 の2フェイス=アーロン・エッカートの名前も挙がっている ようだが、さてどうなりますか。 因にジョンストン監督は、その前にユニヴァーサル製作の “The Wolf Man”の映画化が発表されているが、アンソニー ・ホプキンス、ベニチオ・デル=トロ、ウーゴ・ウィーヴィ ング共演によるこの作品は、すでに撮影を完了して、2009年 4月3日の全米公開を目指してポストプロダクションに入っ ているようだ。 * * お次は、これも2006年5月15日付第111回で紹介していた ワーナーが進めている“Clash of the Titans”のリメイク について、主人公ペルセウス役に“Terminator Salvation” にも出演のサム・ワーシントンの起用が発表されている。 この計画では、以前に紹介したトラヴィス・ビーチャムの オリジナル脚本から、『レイダース/失われた聖櫃』などの ローレンス・カスダンが新たな脚本を執筆、『トランスポー ター』シリーズのルイ・レテリエが監督するものだが、レイ ・ハリーハウゼンがダイナメーションで映像化したギリシャ 神話の怪物たちを、今回は『300』と同様のCGI技術を 駆使して映像化を目指している。 そしてその主演に発表されたワーシントンは、ジェームズ ・キャメロンが“Avatar”に起用して、“Terminator…”の McG監督に推薦したことでも話題になった俳優だが、実は、 『カジノロワイヤル』の007にも最終候補の1人だったと のことで、その才能がいよいよ開花することになりそうだ。 この作品の撮影は、来冬の終りか早春に開始される予定に なっている。 というリメイクの情報だが、ここでさらにもう1本、この 計画と同様のギリシャ神話を題材にした作品の計画が発表さ れた。 その作品は“War of the Gods”と題されているもので、 『落下の王国』などのターセム・シン監督の計画として今年 6月頃に発表されたもののようだ。そしてこの計画にも、ア テネ王で怪物ミノタウロスを倒したことでも知られる英雄テ セウス役を、ヘンリー・ケイヴィルという俳優が演じると発 表されている。 因にケイヴィルは、ジョナサン・リス・メイヤースがヘン リー3世王を演じた2007年のテレビシリーズ“The Tudors” への出演で知られているようだが、2005年の“Hellraiser: Hellworld”などにも出演していた。そして『スーパーマン ・リターンズ』のスーパーマン役で最終候補の1人だったと も伝えられている。 という良く似た経緯の主役起用が発表された作品だが、さ らにこの作品の撮影も、冬の終りか早春に開始される予定に なっているとのことで、これはまさに競作ということになり そうだ。 なお、ギリシャ神話に発想を得た計画では、この他にも、 2003年10月1日付第48回で紹介した“Titans”や、同年12月 1日付第52回で紹介した“King of the Gods”、2005年8月 1日付第92回で紹介したヴィデオゲームからの映画化“God of War”、2007年6月15日付第137回で紹介したDCコミッ クスの映画化“Teen Titans”などもあったが、いずれも頓 挫している模様で、現状では今回紹介の2作品の計画が併走 で進むことになりそうだ。 * * 後半は、新規の話題を出来るだけ紹介する。 その最初は、『最高の人生の見つけ方』などのロブ・ライ ナー監督の新作で、ゾーイ・グリーンという作家が執筆した オリジナル脚本“Book of Shadows”の映画化を進めている ことが発表された。 物語は、初恋を成就するために危険な旅に挑む若者を描い たもので、そこには「影たちの本」を名付けられた神秘の本 を探す旅も含まれている。そしてその旅は世界の調和を取り 戻すために旅でもある…というものだ。因に、『スタンド・ バイ・ミー』や『ミザリー』の映画化でも知られるライナー 監督だが、1987年の『プリンセス・ブライド・ストーリー』 は、脚本家ウィリアム・ゴールドマンが執筆したファンタシ ー小説を映画化したもので、この種の題材にも力を発揮でき る監督と言える。 製作は、ライナーとゴールドマンが主宰するキャッスル・ ロックで行われ、配給はワーナーが担当する。 * * ドリームワークスで『燃え尽きるまで』を監督したサム・ メンデスが、本拠であるコロムビアに戻り、超常現象を扱っ たグラフィックノヴェル“Preacher”の映画化を目指すこと になった。 原作は作家のガース・エニスと、画家のスティーヴ・ディ ロンが1995−2000年の間に全75冊で執筆したもので、テキサ スの町の伝導師を主人公に、強い信念によって町を守ってき た主人公が、外部からの圧力によって滅びかけた町を救うた め、悪魔を探して国中を旅して歩く…というものだそうだ。 そしてこの原作からメンデス監督が映画化を行うものだが、 メンデスは2002年の『ロード・トゥ・パーディション』以来 のグラフィックノヴェルへの挑戦となるものだ。 製作は『アイ・アム・レジェンド』などのニール・モリッ ツが担当。因にモリッツとコロムビアでは、同じエニス原作 の“The Boys”という題名のコミックブックの映画化も進め ているようだ。 なお、コロムビアの親会社SPEの日本法人では、最近試 写会名簿の見直しを行ったようで、僕宛の試写状が送られて 来なくなった。従って製作ニュースの紹介はしますが、当面 作品の紹介はできなくなるのでご了承ください。 * * 新興のエッセンシャル・ピクチャーズという会社が、ダイ アナ・ガバルドン原作の“Outlander”と題されたファンタ シー・シリーズの映画化権を獲得し、シリーズ化を視野に入 れた映画化を進めることを発表した。 原作は日本でも第5話までの翻訳がされているようだが、 本国ではすでに第6話が出版され、7話目も執筆中とのこと だ。内容は、18世紀にタイムスリップをした27歳の主婦を主 人公にしており、時間ものというより時代もののロマンティ ック・アドヴェンチャーという感じの作品に見える。そして この原作の第1話から、『ブレイブ・ハート』のランダル・ ウォレスが脚色を行っているとのことで、これは正に時代も のの雰囲気になりそうだ。 因にエッセンシャルでは、製作費1000−4000万ドル程度の 作品を毎年2−3本製作する計画を持っているとのことで、 本作はその中では大作の方で映画化されそうだ。ウォレスの 脚色はすでに完成して、監督に回覧中となっており、撮影開 始は来年春に予定されている。 * * エレクトロニック・アーツ(EA)社が開発中の新作ヴィ デオゲーム“Dante's Inferno”の映画化権を、MGM、ニ ューリジェンシー、パラマウントなどとの争奪戦の末にユニ ヴァーサルが獲得し、来年に予定されているゲームの発売に 出来るだけ近い時期の映画化を目指すことになった。 発売前のゲームなので、その内容等は明らかにされていな いが、上記の題名は確認され、地獄の奥深くを旅する物語で あることは確かなようだ。そしてこの映画化に当っては、E A側のゲームのクリエーターが直接映画化の開発にも関わる とのことで、極めてゲームに密着した映画化が行われること になりそうだ。なお争奪戦の末の契約金は、7桁($)に上る とされている。 因にユニヴァーサルとEAでは、すでに“Army of Two” という今年3月に発売されたゲームの映画化を進めており、 この作品は、『ボーン・アルティメイタム』のスコット・Z ・バーンズが脚本を担当して、2011年公開を目指している。 ヴィデオゲームの映画化もいろいろあるが、今回発表され た“Dante's Inferno”の場合は、映像そのものにも特徴が 出てきそうな感じで、それをどのように映画に取り込むかに も工夫が要りそうだ。映画に新風を吹き込む作品を期待した い。 * * 最後に、10月1日付の第168回で紹介したロバート・ゼメ キスのイメージ・ムーヴァースが映画化する“Airman”で、 原作者オーエン・コルファーによる“Artemis Fowl”シリー ズの第6巻“The Time Paradox”の付録に付けられた第1章 をようやく読み終えた。 お話は、中世の雰囲気の漂うお城を舞台に、同年代のお姫 様に頭が上がらない少年が主人公というもの。一方、城の王 様は発明好きで、いろいろ怪しげな実験をしているのだが… 付録ではその第1章の内から城の尖塔が大炎上したり、その 中から奇跡的な脱出をしたりのアクションの連続で、これは なかなかの読物になりそうだ。 また、主人公たちのキャラクターも映画向きの感じだし、 これは楽しみな作品。早期の実現を期待したいものだ。
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