井口健二のOn the Production
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2008年10月12日(日) ワンダーラスト、アイズ、天使のいた屋上、猫ラーメン大将、未来を写した子どもたち、ワールド・オブ・ライズ、ホルテン、チェチェンへ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ワンダーラスト』“Filth and Wisdom”
女性歌手のマドンナによる初監督映画。
ロンドンでルームシェアして暮らす男1人と女2人の物語。
男はウクライナからの移民で本業は歌手だが、生計はSMの
調教師などで立てている。そして、同じアパートに住む盲目
の詩人の面倒も見ている。
一緒に暮らす女の1人は医科大を中退してインド人経営の薬
局で働いているが、アフリカで恵まれない子供たちを助ける
ことが夢だ。もう1人は、クラッシックバレーを学んでいる
が成果は上がらず、生活のためにストリップダンスを勧めら
れる。
そんな3人とその周囲の人々の姿が、マドンナ自身の若い頃
とも重なるのか、どちらかと言うと甘く優しい眼差しで描か
れる。
映画は主人公の男のモノローグで始まる。その構成は、最初
は多少迷いがあるのか混乱もしているが徐々にそれも解消さ
れて、収まるところに収まって行く。それは映画の成立の経
緯にも関わっているようだが、それなりに上手く行っている
ように思われた。
ミュージシャンとしては功なり名を遂げている人が、大上段
に振りかぶることはせずに、自分なりのスタンスで映画を作
り上げている。そんな雰囲気も心地よく感じられる。
それに加えて、マドンナが熱望し、ストーカー紛いのことま
でして出演交渉したという、カリスマ的ロマ系バンドのヴォ
ーカリスト=ユージン・ハッツの演じる主人公が瓢々として
良い感じで、さらにバンドの演奏や歌唱がフィーチャーされ
ているのも聞き物だった。
共演は、新進女優のホリー・ウェストンとヴィッキー・マク
ルア。その他、『ペネロピ』などのリチャード・E・グラン
ト、アジア系スタンダップ・コメディアンのインダー・マノ
チャ、舞台俳優のエリオット・レヴィら多彩な顔ぶれが脇を
固めている。
物語自体はよくあるものかも知れないし、演出も取り立てて
何かあるものでもないが、まあ、新人監督の分を弁えて真面
目に撮っているという感じはする作品。マドンナ本人は、ゴ
ダール、ヴィスコンティ、パゾリーニ、フェリーニに憧れて
いるようだが、確かにハリウッド映画ではないヨーロッパの
香りのする作品にはなっていた。
因にマドンナは、先にH&Mのコマーシャルの演出を手掛け
たことがあるそうで、その経験が今回の映画監督の切っ掛け
になっているようだ。

『アイズ』“The Eye”
2002年、パン兄弟監督で発表された『the EYE〔アイ〕』の
ハリウッド版リメイク。ただしこの話の大元は、手塚治虫原
作、大林宣彦監督の1977年作品『瞳の中の訪問者』だと言い
たいところだが、今回もそれは無視されたようだ。
主人公は盲目の女性バイオリニスト。5歳の時に事故により
失明した彼女は、コンサートでは指揮者の隣でソロを務める
ほどの名手となっていた。そんな彼女が、ついに角膜移植に
よって視力を取り戻す決心をするのだが…
手術も成功し、視力も少しずつ戻り始めた彼女は、同室の寝
た切りだったはずの老人が夜中に起き上がり何かの影に導か
れて立ち去って行くのを「目撃」する。そして翌朝、その老
人が昨夜息を引き取ったことを教えられる。
彼女が見たものは一体何だったのか。さらに彼女は街でいろ
いろな現象に遭遇し、また悪夢を見るようにもなる。そして
それらは、彼女に何かを伝えようとしているようにも見え始
める。
パン兄弟のオリジナルでは、墓地のシーンでの心霊写真のよ
うな仕掛けなどいろいろ楽しませてくれたが、リメイク版は
もっとストレートなホラー映画の作りで、そのような小細工
は余り講じていないようだ。この辺は文化の違いというとこ
ろなのだろうか。
それに対して本作では、瞬間に現れるものの恐怖感や交錯す
る人体の擦り抜けなど、ハリウッド映画らしいVFX的な仕
掛けは満載で、それは楽しめるようになっている。そしてそ
の恐さという点では、甲乙付けがたいという作品だろう。
主演は、『シン・シティ』などのジェシカ・アルバ。それに
『GOAL!』のアレッサンドロ・ニヴォラ、『スーパーマン・
リターンズ』のパーカー・ポージーらが共演。
監督は、今春に日本公開された『THEMゼム』のダヴィッド・
モロ&ザヴィエ・パリュ。脚本は、ベネズエラ出身で2003年
『ゴシカ』などを手掛けたセバスチャン・グティエレスが担
当している。
オリジナルは、確か続編も作られたはずだが本作はどうなる
かな。それから本作の製作は、トム・クルーズの盟友ポーラ
・ワグナーが担当しているものだが、本作にクルーズの出演
はなかったようだ。

『天使のいた屋上』
本作の原作は、女子中高生対象の携帯小説サイトで映画化を
前提として募集された作品とのことだ。以前にも同様の経緯
で製作された映画を紹介したことがあるはずだが、今回はそ
のときとは別の製作会社の作品で、こういう動きがいくつも
進んでいるようだ。
それに前回の時は、ちょっとファンタスティックなテーマの
物語だったが、今回はそれなりに現実的な内容で、募集して
いるサイトによってテーマの方向性が異なるのも、良い傾向
のように感じられる。
その本作の物語は、とある高校が舞台。主人公の男子生徒が
授業をサボり、音楽を聴きにやってきた立入禁止の校舎の屋
上で、周囲の風景を写メしている女子生徒に出会う。
その主人公はサッカー部員だったが、ある事件によって部は
休部になっているらしい。そのため目標を失った主人公は、
授業もサボり勝ちになっているのだが、屋上での女子生徒と
の交流が、彼に新たな目標を見出させるようになって行く。
自己責任以外の原因で長年の目標が失われるというのは辛い
話だが、集団スポーツなどではかなり起り得る話なのかも知
れない。そんな学生生活に起り得る話を、上手く物語に取り
込んだ作品ということは言えそうだ。
ただし本作では、その元になる事件が謎解きのように徐々に
明らかになる構成となっているのだが、本作の全体の物語の
中で、主人公が屋上にいる理由まで謎解きの対象する必要が
あったかどうか。これは前提として描いた方が良かったので
はないかと感じた。
実際、物語では後半にいろいろな事実が明らかになり、特に
AEGNの英文字の使い方は上手くできているものだが、前
半から謎だらけの展開が全体の謎解きの興味を散漫にしてし
まっているようにも思えた。
その辺の脚色にはもう少し工夫が欲しい感じはしたが、全体
的には、いろいろ考えて作られた作品で、特に中高生の生に
近い声が聞けるということでは、企画として大事にしたいも
ののようにも思える。
出演は、『トウキョウソナタ』などの小柳友、『恋空』など
の波瑠。監督は、ドキュメンタリー出身の高木聡が担当して
いる。

『猫ラーメン大将』
『日本以外全部沈没』などの河崎実監督の新作。河崎監督に
は『いかレスラー』『コアラ課長』など着ぐるみを用いた一
連の作品があり、本作はその流れで猫がラーメン屋の大将に
なるというものだ。
主人公の大将(ウィリアム・トーマス・ジェファーソン3世)
はキャットアイドル(2世)の息子だったが、父親のスパル
タ教育に耐え切れずアイドルの世界を飛び出す。そして職を
転々とし、挫折して橋の欄干に佇んでいるところをラーメン
屋の親父に救われる。
その親父が作ってくれた一杯のラーメンに感激した大将は修
業を積み、ついには自らラーメン屋を開店するまでになる。
その店は大将にアイドル的な人気も出て順調な営業となるが
…。その近所に派手なパフォーマンスが売りの「猫ラーメン
将軍」なる店が開店する。
この大将と将軍が、スーパー・ギニョールと称する要はパペ
ットで操演され、それに人間の俳優たちが絡む作品となって
いる。ただし、一部の町を歩くシーンなどでは操作棒を消す
程度のVFXは使われていたようだ。と言っても画面の一部
をぼかす程度のものだが。しかしこのチープさが河崎作品の
信条でもある…というところだ。
そしてこの大将と将軍の声優を、古谷徹、加藤精三の『巨人
の星』飛雄馬、一徹コンビが担当。またラーメン屋の親父役
には黒沢年雄が出演して「時には醤油のように〜」とちょっ
と照れながら歌うなど、分かり易いパロディも満載の作品と
なっている。
その他、河崎監督の前作『ギララの逆襲』に出演の加藤和樹
や、『ラバーズ★ハイ』『ロックンロール☆ダイエット!』
の長澤奈央、沙綾らが共演。さらに実在のキャットアイドル
のたま駅長や、かりん&くりんなども登場する。
原作は、そにしけんじという人の4コマ漫画だそうで、とい
うことは原作は単発ギャグが中心と思われるが、そこに親子
の確執や芸能界の裏話的なストーリーを入れ込んで、長編映
画に仕上げている。
さらにグルメブームやテレビの対決シリーズなどの要素も取
り入れて、正にてんこ盛りのサーヴィス精神の作品。細かい
ことには眼を瞑って、まずは気楽に楽しもう。

『未来を写した子どもたち』
   “Born into Brothels: Calcutta's Red Light Kids”
カルカッタ(近頃ではカルカタと呼ぶようだ)の売春地帯で
暮らす子供の姿たちを追ったドキュメンタリー。
中心となるのはニューヨーク在住の女性フォトジャーナリス
ト=ザナ・ブリスキ。彼女は1998年からカルカタの売春街に
入り込み、住人たちの信頼を得て写真を撮り続けている。そ
して彼女は、そこに暮らす子供たちにカメラを渡し、自由に
撮影させることを始めた。
そこには8人の子供たちが集まり、彼らが撮影した写真は豊
かな感性に満ちあふれたものばかりだった。そしてそこから
は、若手写真家の登竜門でもあるアムステルダムで開かれる
ワールドフォトプレス・ファウンデーションに招待される子
供も誕生する。
しかしその渡欧のためのパスポートの取得にも障害が発生す
る。そんな過酷な環境の中でも懸命に生き抜いて行こうとす
る子供たちを、彼女も懸命に支援しているのだが…
映画の巻末には、必ずしも全ての子供たちを救い出せなかっ
たことが告白されている。それほどに厳しい環境の中でも、
子供たちは、あるときは屈託のない笑顔を見せてくれる。そ
の姿には、誰しも支援したいという気持ちが湧くが、それも
叶わない現実が描かれる。
もちろんそこには、対外的な表面だけを繕うのに懸命な政府
の無策もあるのだろうが、実は差別的な身分制度カーストの
中で娼婦というのは比較的上の方に属するという歴史的な背
景も、状況を改善できない理由の一つであるようだ。
その一方でニューヨークでの展示会が成功したり、その凱旋
展示会に取材が入ったりというメディアの力が彼らの意識を
変えて行くことはあるようだ。それで、現在はアメリカに留
学してM・ナイト・シャマランらが学んだ大学に進学する子
供もいるものだ。
従ってこういう状況にメディアが利用できることは確かなよ
うだ。でも全てを変えることはできない。因に、今も売春街
に暮らす子供たちは、折角入学できた寄宿学校から親たちが
連れ出したというものだ。その中には親元に戻されても大学
進学を夢見ている子供もいるようだが…
もちろん軽々しく何をできるかなどと論じられる問題ではな
い。現実の重さがひしひしと感じられる作品。そんな現実と
の狭間が歯痒く感じられる作品でもあった。

『ワールド・オブ・ライズ』“Body of Lies”
元ワシントン・ポスト紙の外信部長で、イラクのクウェート
侵攻に関する特集記事で同紙にピュリッツアー賞をもたらし
たデイヴィッド・イグネシアス原作の長編小説の映画化。因
に原作はフィクションだが、限りなく現実に則したものと言
われる。
主人公は中近東で活動するCIAのエージェント。アラビア
語も堪能な彼が追っているのは爆弾テロ組織の首謀者。とこ
ろがその組織は、犯行声明も出さず、携帯電話やeメールも
使わない。犯行の指令は全て口伝えで連絡されるのだ。その
ため電子諜報戦に馴れたCIAはその足跡を追うこともでき
なかった。
そんな実体の見えない組織だったが、ついに主人公はその尻
尾をつかむことに成功する。そして決死の覚悟で奪った資料
からは、その組織のアジトがヨルダンの首都アンマンにある
ことまで判明する。しかもその資料の存在は敵組織には知ら
れていないようだ。
そこで主人公は、ヨルダンの諜報部とも連携して首謀者を追
い詰めようとするのだが…。CIA本部にデスクを置く上司
は彼をヨルダン支局のトップにし、裁量権は与えるものの、
ヨルダン諜報部に情報を渡すことには懸念を示し、彼の動き
を牽制し始める。
原題は「嘘の本体」とでも訳せばいいのかな、お互いの信頼
関係がなければ成立しないはずの諜報戦で、大元のCIAの
内部で虚々実々の工作が繰り広げられる。そこには、これが
現代アメリカの弱体化の真相かと思わせるような馬鹿げた官
僚主義が展開される。
原作が何を描いているかは知らないが、ここで告発されてい
るのは、官僚主義に毒されたCIAの姿であって、それには
格好の良いスパイの活躍もなければカーチェイスすらほとん
ど登場しない。ただ嘘で塗り固められた組織の弱さと横暴さ
が暴露される。
全体の雰囲気は、2005年の『シリアナ』を思い出させるが、
ジョージ・クルーニー主演作が個人レヴェルの悪であったの
に対して、本作では組織の悪が追求される。ただしどちらも
アメリカ政府への不信感が横溢したものだ。それがハリウッ
ドで映画化されている。
出演はレオナルド・ディカプリオとラッセル・クロウ。『シ
リアナ』にも出演のマーク・ストロングや、イランの国際的
女優ゴルシフテ・ファラハニらが共演。監督はリドリー・ス
コット。脚色は『ディパーテッド』でオスカー受賞のウィリ
アム・モナハンが担当した。

『ホルテンさんのはじめての冒険』“O'Horten”
2004年3月に『キッチン・ストーリー』と、07年7月に『酔
いどれ詩人になる前に』という作品を紹介しているベット・
ハーメル監督の新作。2008年カンヌ映画祭「ある視点部門」
で上映され、アカデミー賞外国語映画部門のノルウェー代表
にも選ばれている。
勤続40年の真面目な列車の運転士が最後の乗務に乗り遅れて
…。この広告文を見て、乗り遅れた列車に追いつくべく大冒
険が始まるのかと思ったら、そうではなくて、乗り遅れる前
の乗務から乗り遅れた後へと続く彼の周囲の様子が描かれて
いるものだった。
その作品は、監督の前2作と同様に人を優しく見つめるもの
で、終着駅の宿舎の女主人や、同僚、その階下の子供、老い
た母親や町での行き摩りの人々、そして犬などとの交流が、
柔らかく暖かい筆致で描かれる。
個々のエピソードは、特に取り上げて説明するほどでもない
ものだが、市井の出来事のちょっとした描写であったり、痴
呆気味の親との会話であったりの普通にありそうなことと、
他人の住居に侵入して子供に見つかったり、目隠しで運転す
る男の車に同乗したりの少し異様なものとが綯い交ぜになっ
て、主人公の最後の大冒険へ盛り上げて行く。
そのありそうなことと、なさそうなこととのバランスも絶妙
という感じの作品だ。
主演は、1936年生れ『デュカネ・小さな潜水夫』などのボー
ド・オーヴェ。その他に、1935年生れ『愛の風景』のギタ・
ナービュ、1947年生れ『キッチン・ストーリー』にも出てい
たビョルン・フローバルグ、1924年生れ『ソフィーの世界』
のエスペン・ションバルグなど北欧の名優たちが顔を揃えて
いる。
そしてもう1つの注目される登場は、主人公の運転する列車
として描かれる「ベルゲン急行」。ノルウェーの首都オスロ
と第2の都市ベルゲン間を結び、トーマスクック時刻表で毎
年「ヨーロッパ鉄道景勝ルート」に選ばれているという路線
が、雪原を驀進する列車の姿として撮影されている。鉄道フ
ァンにはこれも見所のようだ。
それから本作で主人公が遭遇する犬のモリーは、今年のカン
ヌ映画祭で「パルム・ドッグ」に選ばれているそうだ。

『チェチェンへ/アレクサンドラの旅』“Alexandra”
1999年の第2次紛争勃発から9年、1994年の第1次紛争から
はすでに15年が経過しようとしているロシア−チェチェン戦
争の最前線で撮影されたアレクサンドル・ソクーロフ監督の
最新作。
1人の老女が、最前線のロシア軍基地に将校として赴任して
いる孫を訪ねるという設定の物語。彼女が最前線に向かう輸
送列車に乗り込むところから始まり、基地やその周辺の市場
などでの兵士や民間人の様子が描かれる。
その基地は土埃にまみれ、物資も不足して食事もろくなもの
ではない。そして、駐屯する若い兵士たちは訪れた老女に自
らの祖母のように思慕の情を示す。一方、周辺の市場には物
資が揃っているが、その価格は兵士と将校で異なると言う。
そんな基地内と市場を老女が彷徨い歩く。もちろん基地の出
入りには許可証がいるが、老女はそんなことお構いなしだ。
そして兵士たちもその行為を黙認している。基地の中も外も
暮らしは最低限だが、そこでも人々は頑張っている。
撮影されたのはロシア軍の最前線の基地とのことで、当然、
戦場の中ということになるが、この映画の中に戦闘は描かれ
ない。もちろん離着陸するヘリコプターや兵士が武器を取り
扱う姿などは描写されるが、銃撃のシーンはない。
監督は、「戦争に美学などない」という信条で、あえて戦闘
シーンのない戦争映画を撮ったのだそうだ。しかもそれを如
実に知るには、一度戦場に身を置くだけでいいという考えか
ら、この作品をその戦場で撮影することにしたようだ。
撮影の方法論はともかく、反戦を描く映画に戦闘シーンは不
要という考えには賛同する。従ってこの作品は、反戦思想に
基づいて描かれているものだが、それでも登場する兵士が国
への奉公を口にするあたりは、戦争当事国であるロシアの苦
しみでもありそうだ。
因に、今年5月に退任した前ロシア連邦大統領プーチンは、
監督の以前の作品『エルミタージュの幻想』には最大の賛辞
を述べたものだが、本作には嫌悪感を露にしたとも伝えられ
ている。
そして主演のガリーナ・ヴィシネフスカヤは、1926年生れ、
以前は夫ともにアメリカに亡命していたこともあるロシアオ
ペラ界きってのソプラノ歌手とのこと。彼女は、「この役は
断れない」として出演に応じたそうだ。
ロシア−チェチェン戦争の現実を知る上でも貴重な作品と言
える。


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井口健二