2008年10月05日(日) |
ターミネーター:サラ・コナー、イーグル・アイ、最強☆彼女、青い鳥、旅立ち、ノン子36歳 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』 “Terminator: The Sarah Connor Chronicles” 2008年1月に米国Foxテレビで放送開始されたシリーズの シーズン1が、来年1月にDVD及びBlu-Rayで日本発売さ れることになり、その第1話、第2話の試写が行われた。 ところで、映画の『ターミネーター』シリーズは、1984年公 開の第1作(背景も1984年)に始まり、1991年公開の第2作 (1994年が背景)、2003年公開の第3作(2004年が背景)と 続いているものだが、今回のテレビシリーズの背景は1999年 に始まる。 そして物語は2007年へと時代を移し、現代を背景にしたスカ イネットとの新たな戦いが展開されるものだ。その戦いの全 貌は、第1話、第2話ではまだ明らかにはならないが、まず は未来から敵味方2体のターミネーターが転送され、コナー 母子の戦いが始まる。 つまりこのテレビシリーズは、映画の『T2』に続いている もので、『T3』のストーリーラインは除外されていること になる。しかし、そこには一応の繋がりも着けられていて、 その辺がタイムパラドックスとして面白い仕掛けにもなって いた。 さらに物語では、『T2』で犯した行為により母子ともに殺 人犯として指名手配される展開となっており、これはなるほ ど当然だと思わせるものだ。その他にも『T2』との繋がり はかなり丁寧に描かれているようだ。 そして現在製作中の映画版第4作は、本テレビシリーズに繋 がるものとなるそうだ。とは言うものの、物語は、『ターミ ネーター』『T2』『T3』のいずれからも微妙にずれてい るもので、タイムパラドックスはいろいろと発生しているよ うだ。という言い訳の付けられるのが、本作の便利なところ ではある。 出演は、サラ役に7月に紹介した『ブロークン』のレナ・ハ ーディ、ジョン役はテレビの『ヒーローズ』第2シーズンに 出演のトーマス・デッカー。さらにターミネーター役で、テ レビ『ファイアフライ』のサマー・グローと、映画『ノー・ カントリー』などに出演のガーネット・ディラハント。 その他、『バンテージ・ポイント』のリチャード・T・ジョ ーンズや、この後には『ビバリー・ヒルズ高校白書』のブラ イアン・オースティン・グリーンも登場するようだ。 因にシリーズは、シーズン1が全9作、9月8日に本国で放 送開始されたシーズン2は全13作が予定されている。なお、 試写はBlu-Rayのプロジェクターで行われたが、その画質は 期待以上のものだった。
『イーグル・アイ』“Eagle Eye” スティーヴン・スピルバーグが10数年前に思いついたという アイデアを映画化した作品。そのアイデアは、思い付いたと きにはSFとしてしか描けなかったが、情報化社会の現代で は、現実に起こりうる物語として描けたというものだ。 主人公は、大学を中退してコピーショップに勤めているよう な男性。彼には双子の兄がいたが、優秀な成績で軍隊に行っ ていたその兄が事故死する。ところがその直後から、彼の周 囲には不審な出来事が起こり始める。 それは彼の銀行口座に大金が振り込まれたり、大量の物騒な 物資が部屋に届けられたり…と続いて行く。しかも、そのた めにFBIのオフィスに連行された主人公は、今度は途轍も なくド派手なやり方でそこからの脱出に成功してしまう。 一方、シングルマザーの女性が子供をネタに脅迫される。そ の子供は国会議事堂で行われる小学生の演奏会のためにワシ ントンに向かっていたが、その安全と引き換えにある命令に 従わざるを得なくなる。そして男性と遭遇するが… 携帯電話や電光掲示板、その他、ありとあらゆる手段で指示 が伝えられ、その指示に否応なく従わされる仕組みになって 行く。それは最初は主人公たちの安全を守っているようでも あるが、やがて大きな陰謀が明らかにされて行く。 何故その男女が選ばれたのかなどの謎が巧みな展開で明らか にされて行く。その脚本も見事だったが、それに勝るのがド 派手なアクション場面の映像。次から次へのべつまくなしの VFXの洪水は、そのエネルギーだけでも大したものだ。 CGIになれば何でも可能という時代ではあるけれど、それ を適所にピタリとはめることが映画の面白さを倍加する。そ の意味でもこの作品のVFXは計算され尽くしていると言え るものだ。 主演は、『ディスタービア』などのシャイア・ラブーフと、 『近距離恋愛』などのミシェル・モナハン。さらに『シン・ シティ』のロザリオ・ドースン、『チョコレート』などのビ リー・ボブ・ソーントンらが共演している。 監督は、『ディスタービア』のD・J・カルーソ。前作では 家庭用のヴィデオ機材などを用いて巧みに盗聴劇を描いてみ せたが、今回はさらに大掛かりな最新テクノロジーが駆使さ れ、見事な展開が繰り広げられる。 基本のアイデアの部分では、1983年のジョン・バダム作品な どいろいろと先駆的な作品はあると思うが、その物語を、見 事に市中で展開させてみせたことは、現在のハリウッドの実 力発揮と言えるところだろう。 『ダイハード4.0』が、ほんの前哨戦でしかなかったことが よく判った。
『最強☆彼女』“무림여대생” 2001年公開の『猟奇的な彼女』などのクァク・ジェヨン監督 の最新作。 韓国語での原題は関係ないようだが、2004年の『僕の彼女を 紹介します』、08年の『僕の彼女はサイボーグ』と続く作品 群は、スティーヴン・セガールの『沈黙』シリーズに並ぶ、 『彼女』シリーズとでも呼びたくなるものだ。 ただしこの「シリーズ」、最初の2作はちょっと捻りの利い たラヴコメディのストーリーだったが、今年の2作はVFX も使ったアクション作品となっており、アクションコメディ の様相が強くなっている。と言っても「彼女」が強いことは 共通しているものだが。 そして今回の物語は、武芸集団・武林の名門四家の一つカン 家の一人娘が主人公。彼女は幼い頃から神童と呼ばれるほど の武芸の達人だったが、花も恥じらう年頃の女子大生となっ た今では、その人並み外れた武芸の技が学生生活での重荷に なっている。 そんな彼女は、大学アイスホッケー部のエースに一目惚れ、 自分が主役だった怪力部を辞めてホッケー部のマネージャー となってしまう。その娘の態度を心配した父親は、密かに幼 馴染みの若者を彼女に近づけようとしていた。 一方、武林四家の長老たちには魔の手が忍び寄り、その内の 1人が重症を負う事態が発生していた。そして、武林四家の 存続を賭けたその戦いに、彼女も否応無しに巻き込まれてい くことになるが… アクションは、ワイアーも駆使した格闘技が中心となるが、 彼女が母親譲りの剣の達人という設定もあって、そのチャン バラも見所となるものだ。そのアクション監督は、香港映画 『インファナル・アフェア』なども手掛けたディオン・ラム が担当している。 出演は、「彼女」役に『火山高』などのシン・ミナ。『ピー ター・パンの公式』でダーバン映画祭主演賞を受賞したオン ・ジュワン、『多細胞少女』に主演のユゴンらが共演。また ディオン・ラムも武林の最長老役で出演している。 普通にアクションコメディとしては面白い作品だが、彼女と 幼馴染みとの関係などはもう少し掘り下げて欲しくもあり、 何か勿体無い感じもした。その辺は、『…サイボーグ』の時 にも感じられたものだが、でもまあ映画はヒットしているの だから、これでいいのかな。
『青い鳥』 いじめなど教育現場の問題をテーマとした重松清原作の連作 短編集からの映画化。 前学期に事件を起こした中学2年のクラスに、休職した担任 の代理として教育委員会から吃音の臨時教師が派遣されてく る。その教師は、倉庫に片づけられた事件当事者の生徒の机 をクラスに戻し、毎朝机に向かって挨拶をするようになる。 そんな教師のやり方に、クラスの生徒たちはもちろん、事件 は解決済みだとする学校側も反発するが、教師は頑として態 度を改めようとしない。しかしその波紋は、徐々に生徒たち の心に広がり、そこに閉ざされていたものを解いて行くこと になる。 映画に描かれる生徒の反発や、学校側の事なかれ主義は正に リアルで、本当の現場はこんなものなのだろうと思わせる。 その点での本作は、現代の教育現場の問題を見事に描き切っ たと言えるものだろう。 しかも映画では、阿部寛演じる臨時教師の吃音が最初は煩わ しくも感じられ、その時点で自分も生徒の立場に立っている ことに気付かされる。つまりこの時点で、観客は生徒の立場 に立たされ、以後の彼らの思いにも真剣に立ち向かわざるを 得なくなる仕組みだ。 そして生徒たちは自分で考え、自分で答えを見つけ出して行 く。この生徒の行動こそが、現在の日本の教育現場で最も欠 けているところであり、それに気付かせようとする原作者の 意図がこの映画化にもはっきりと描かれている。 実際、この作品のオーディションに参加した1200人を超える 若手俳優の中で、3割がいじめを受けたことがあり、残りの 7割は自分の周囲にいじめがあると認識していたそうだ。そ んな時代にこの作品は重要なメッセージを発信する。 もちろん、これでも甘いと言われればそれまでのことだが、 こんなところにでも希望を抱かなければ、今後の日本の教育 は全くお先真っ暗と言わなければならない。そしてそんな現 実を何とかして変えて行かなければならないのだ。 生徒側の主演は、『HINOKIO』『シルク』などの本郷 奏多。また『水の旅人』『遠くの空に消えた』などの伊藤歩 が同僚教師役で共演している。
『旅立ち〜足寄より〜』 1955年生れ、今年53歳を迎えた北海道在住フォークシンガー 松山千春が23歳の時に発表した自伝の映画化。 昭和50年、札幌で開催された「全国フォーク音楽祭・北海道 大会」に出演した松山は、ステージ上での言動が禍して落選 するが、その会場に審査員として出席していたSTVラジオ のディレクター竹田に声を掛けられる。 そして足寄に戻った松山は、地元新聞を一人で発行している 父親を手伝いながら、竹田の言葉を信じて曲を作り続ける。 一方、竹田は札幌で松山を番組に起用しようとするが、すで にフォークの時代は終ったとする上層部の許可はなかなか得 られない。 それでも、北海道出身の歌手を育てたいと願い続ける竹田の 努力は、ようやく実を結ぶ日が来るが… 僕は60年代後半の反戦フォークは学園紛争とも重なってよく 聴いていたし、高石友也、岡林信康、五つの赤い風船などの 渋谷公会堂で開かれるコンサートにも通っていたものだ。し かしその後の軟弱なフォーク路線には興味も湧かず、以後は 聴くこともなかった。 従って松山千春もほとんど聴いたこともなかったし、正直に 言って最近の彼が発する特定の政治家に関する言動には、あ まり良い印象も持っていなかった。 だからこの映画を観て一番驚いたのは、松山がまるっきりの フォークシンガーで、歌っている内容も土に根差した全くの フォークソングであったことだ。そうと知っていれば、この 映画を観ることにも躊躇はなかったと思ったところだ。 そんな訳で、ちょっと蟠りが解けながら観た作品と言うこと もあるかも知れないが、映画の後半では見事に填められて、 涙を流す羽目にも陥ってしまった。 ただしこれは、映画の中でも事前に述べられているように、 実にうまく泣きが入るように仕組まれた構成の見事さにもあ るもので、その辺に演出家の手腕も感じられたところだ。そ の監督は、長島一茂主演『ポストマン』などの今井和久が担 当している。 出演は、松山役に『クローズZERO』などの大東俊介。な お劇中の歌唱は全て松山本人の音源が使用されているが、ギ ターの演奏や特に前半のアマチュア時代のシーンは上手く作 られていた。 他に、竹田役の萩原聖人、尾野真千子、石黒賢、泉谷しげる らが共演。
『ノン子36歳(家事手伝い)』 『青春☆金属バット』『フリージア』などの熊切和嘉監督の 最新作。 実は、監督の前の2作は試写会で観せて貰ったが、何となく 性に合わないと言うか、僕には評価できなかった。それは、 例えば登場人物の設定であったり、その行動であったりが自 分の理解の範囲にないもので、中途半端でいい加減な人物像 に嫌気が挿したものだ。 でもこういった人物が世間にはいるのかもしれないし、そう いう見地に立てば映画祭などでの評価が得られていることも 理解しなければならないものなのだろう。でも、今までに観 た2作品は、許せない部分が拭い切れなかった。 そういう負のバイアスがあって本作も観ているものだが、本 作の場合は、その人物設定が意外と理解できた。それは本作 の主人公が女性で、もちろんそれは女性なら良い男性では駄 目というものではないが、何となく自分が男性として、こう いう女性なら保護したい気持ちにもなるかも知れないと思え たものだ。 そんな女性の姿を坂井真紀が見事に演じている。実際に坂井 は、R−15指定になるようなシーンも体当たりで演じている もので、その辺の女優魂みたいなものも本作を応援したくな る気持ちにさせてくれたのかも知れない。 物語の主人公は、一度はTVタレントとしてスポットライト も浴びたが、その後の結婚に破れて今は実家に戻って家事手 伝いをしているという女性。その生活態度も気ままだし、酒 や煙草に日頃の憂さを晴らしているような状態だ。 そんな彼女がある切っ掛けで1人の若者の面倒を見ることに なり、2人は互いに引かれるものも感じる。ところがそこに 彼女が昔結婚していた男性が現れる。そして彼女は、その男 性に誘われるままに情を交わしてしまう。 こんないい加減な女性ではあるけれど、やはり男性としては 保護したくなってしまうのが本心だろう。そんな男女の関係 が上手く描かれている感じもしたものだ。 坂井の相手役は星野源。他に、鶴見辰吾、津田寛治、斉木し げる、宇都宮雅代、新田恵利ら、ちょっと捻った顔ぶれが共 演している。
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