2008年08月17日(日) |
パティシエの恋、恋愛上手…、ボディJ、花は散れども、6年目も恋愛中、センターオブジアース、ダイアリーオブザデッド、ブラインドネス |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『パティシエの恋』“後備甜心” 10月中旬から開催される「中国映画の全貌2008」で上映 される内の1本。この映画祭では、日本公開済みの作品も含 め66番組の上映が予定されているようだが、その中で本作は 日本未公開とのことで試写が行われた。 香港のイタリアンレストランを舞台にしたラヴ・コメディ。 相手が他の女と付き合っていることを知りながら、その男と 別れられない女性パティシエのいる職場に、やはり二股を掛 けられている男性シェフが現れる。 と来れば、この2人が一緒になればことは簡単だが、人の心 はそう簡単なものではない。しかもこの2人には、最初の出 会いで多少行き違いがあったりして…そんな男女の物語が開 幕する。 昨年8月に紹介した『幸せのレシピ』など、レストランの厨 房を舞台にした恋物語が最近流行のようだ。これにはテレビ のグルメ番組などの影響も考えられるが、いろいろな料理が 観られたりするのは、それなりに面白いことは確かだ。 お話は、正直に言って他愛ないものではあるが、まあ普通に ラヴコメとはそういうものだろう。ただし本作では、2人の 接近は意外と早くて、間怠っこしいところが余りない。それ でもいろんな出来事が生じる展開は、案外上手く作られてい た感じがした。 しかも、女性の主人公にはイマジナリー・ペットがいたり、 ちょっと捻ったところもある。それもまた面白くて結構気に 入ってしまった。もちろん、傍から観ればいろいろ言ってあ げたくなるような展開だが、それでも男女の恋はこんなもの だとも納得できる。 出演は、2002年12月に紹介した『カルマ』(異度空間)に主 演のカリーナ・ラムと、『風雲ストームライダーズ』などの イーキン・チェン。さらに、『カンフー・ダンク』などのエ リック・ツァンがよく似た役柄で登場している。 監督は、アメリカ出身でフランシス・フォード・コッポラの 下にもいたことがあるというアンドリュー・ローと、『アン ナマデリーナ』などの編集者で受賞の経験もあるモーリス・ リー。物語の分り易さは、この2人の力にもありそうだ。
『恋愛上手になるために』“The Good Night” グウィネス・パルトロウの実弟ジェイクの初監督作品で、姉 とペネロペ・クルスの共演でも話題になっている作品。 ただし物語の主人公は、『ホット・ファズ』などのマーティ ン・フリーマン扮するミュージシャンで、同じ『ホット…』 のサイモン・ペグ、さらにダニー・デヴィート、マイクル・ ガンボンらが共演している。 主人公は、以前には人気のあったミュージシャン。ちょっと した勢いでバンドを解散し、当時のバンド仲間には実社会で 出世した奴もいるが、彼自身の現在はくすぶっている。そし て当時から一緒に暮らす女性との仲も倦怠期だ。 そんな主人公がある夜、理想の女性が登場する夢を見る。そ して夢を自在にコントロールして希望の夢が見られるように する「明晰夢」の実践セミナーに参加した主人公は… 同じような題材の話では、昨年2月にミシェル・ゴンドリー 脚本監督の『恋愛睡眠のすすめ』を紹介しているが、発想は 似ていても展開はかなり違う。特に本作は、出演者からも想 像できるかなりセレブな雰囲気なども楽しめる作品だ。 因にゴンドリー作品の初上映は2006年2月のベルリン映画祭 で、本作の初上映は2007年1月のサンダンス映画祭だから、 その前の製作期間などを考えると想を得たということでもな さそうだ。 このような夢と現実の交錯する話は過去にもいろいろあると 思うし、これからも次々作られそうだが、映画の中で夢と現 実とをしっかりと区別するのが良いか悪いか。本作では、夢 の世界を35mm、現実をスーパー16で撮影しているようだが、 ネタバレにもなってしまうし、その映像自体もあまり効果的 とは思えなかった。 それにしても、グウィネスとペネロペの共演というのも豪華 なもので、特にペネロペの如何にもセレブな感じがよく出て いた。一方、グウィネスは実生活でもロックミュージシャン と結婚しているから、弟はそんな姉を念頭に書いた脚本でも あるのかな。 なお監督は次回作の脚本も進行中だそうで、同じような傾向 の作品ならそれも楽しみだ。
『ボディ・ジャック』 幸福の科学出版から2006年5月に刊行された光岡史朗原作の 小説の映画化。 最近多発している通り魔事件。それは過去の霊に身体を乗っ 取られた者たちの仕業だった。そして主人公の身体が幕末の 土佐藩士の霊に乗っ取られ、乗っ取った藩士は通り魔の真犯 人(霊)を発見し、犯行を止めようとするのだが… この乗っ取った藩士の割り出しや真犯人の割り出しなど、そ れぞれ推理的な要素も絡めた物語が展開される。 ところで主人公には、実は元学生運動の活動家という過去も あって、その社会改革に賭けた思いと、幕末の藩士たちの思 いが重なってボディ・ジャックが起きたという設定もあるの だが、実はそれがどうにも時代設定の辻褄が合わない。 実際、主人公が学生運動をしているは明らかに70年安保で、 その主人公が壮年になっているとは言っても演じているのが 高橋和也では明らかに40歳前後。それなら描かれている現代 が1990年頃かというと、その辺も明確ではない。 原作も2年前の発表だから、その辺は同じなのかも知れない が、映画で観せるなら、ここはそれなりに気を使ってほしい 感じはしたものだ。僕は自分の中で解釈して辻褄を合わせた が、それでも宣伝の人に確認するまで釈然とはしなかった。 まあその辺に引っ掛かりつつも、お話は現代の事象を上手く 反映しているものだし、それはそれで納得はするのだが…。 やはり一般の観客に対してはそれなりの手は打ってほしいと ころだ。 共演は、土佐藩士役に故田宮二郎の息子の柴田光太郎。お父 さんを思い出させる風貌は役柄に良く合っていた。他に『さ くや妖怪伝』などの安藤希。さらに、小林且弥、美保純、笠 智衆の孫の笠兼三らが出ている。 監督は、『真木栗ノ穴』などのプロデューサーの倉谷宣雄。 初監督作品のようだが、70年安保当時の映像にエコマークは 気を付けてもらいたかったものだ。もっとも、闇市に掲げら れた星条旗に、平気で星が50個付いていたりするのが日本の 映画だが。
『花は散れども』 1912年生まれ、今年96歳の新藤兼人監督作品。 大正期の田舎の尋常小学校の様子と、戦後しばらく経っての 同窓会、さらにその後の物語が描かれる。その間の戦時中の ことは、昨年5月に紹介した『陸に上がった軍艦』に描かれ ており、それも観ておくと分り易いが、観ていなくても問題 はなさそうだ。 主人公は没落した一家の末弟。土地屋敷は人手に渡り、今で は土蔵に住んでいる。それでも成績は優秀で級長も務めてい るが、希望する上の学校には行けそうにない。そんな彼を、 担任の先生は上手く指導し、また副級長の女子も心に掛けて くれている。 しかし、高等小学校で2年間学んだ後の主人公は、町に出て そのまま音信不通となってしまう。そして30年が経ち、担任 の先生の定年を祝って開かれた同窓会に、脚本家となった主 人公も呼ばれるが… この同窓会で級友たちの語る戦時中の苦難の歴史には、新藤 監督の思いが明確に現れている感じがする。それは前作から 引き継がれた今の日本に対するメッセージのようでもあり、 その監督の思いはしっかりと受け止めたいと感じた。 ただし物語はここから急展開を始める。そしてそれは深く人 間的なものになって行く。この転換の上手さが脚本家として も大ベテランである新藤監督の面目躍如という感じのもの。 つまり、己が思想を観客に押し付けることなく納得させる。 その辺にも上手さを感じてしまった。 物語の全体は、今ではなかなか見つけられない全身全霊を教 育に捧げた教師の姿であり、一方、戦前戦後を生きた日本人 の物語でもある。今の時代にこのような人々には滅多に出会 えないが、これこそ良き日本人の姿が描かれている作品だ。 そんな日本人の姿を懸命に残そうとしている新藤監督の心に も触れる感じのする作品だった。 出演は、柄本明、豊川悦司、六平直政、川上麻衣子、大竹し のぶ。他に、角替和枝、根岸季衣、りりい、渡辺督子、大杉 漣、吉村実子、原田大二郎、田口トモロヲ、大森南朋、麿赤 兒。 正に日本映画の良心とも言える作品を見せてもらった。
『6年目も恋愛中』“6년째 연애중” 9月下旬開催の「韓流シネマ・フェスティバル2008」で 上映される作品の1本。現代文化の最前に生きている男女が 繰り広げる恋愛模様。 主人公は、出版社で「恋愛マニュアル」の編集者の女性と、 テレビ局でホームショッピング番組を担当するプロデューサ ーの男性。2人は大学のサークルで知り合ってから6年目、 1年半前からはマンションの隣同士の部屋に住んで半同棲の 間柄になっている。 しかし、2人にはそれぞれ結婚より優先する目標があるよう で、そのため現在の状況を維持しているが、徐々に倦怠期の 足音が聞こえてくる。そんなとき、女性は才能豊かな男性デ ザイナーとの仕事上の交渉を任され、男性の傍には若い女性 の姿が現れる。 主演は、韓国でラヴコメの女王といわれるクム・ハヌルと、 元ラッパーで今は人気俳優のユン・ゲサン。共に1978年生ま れの2人が初共演で、正に等身大の男女を演じているという 物語だ。 半同棲といっても他人は他人、ベッドや食事は共にしても、 結婚=運命共同体ではない間では最終的に話せないこともあ る。そんな気持ちの擦れ違いが徐々に心の溝を広げて行く。 そしてそこには、他人の立ち入る隙もできてしまう。 6年間も半同棲という状況が、最近では普通なのかどうかも 判らないが、女性のキャリアも増えている昨今では、こんな 男女の姿も数多いのかも知れない。既婚者の自分には、正直 余り理解はできないが、あってもおかしくはないのだろう。 しかも通常なラヴコメなら、ここにお節介な先輩や同僚が出 てきたり、2人の仲を取り持つ関係者が登場するものだが、 本作ではそれも皆無で、2人は2人だけで事を解決しなくて はならない。この辺も現代的と言えば現代的だが、何とも寂 しい人間関係だ。 従って、それも見事に現代社会を反映していると言えるかも 知れないところで、韓国では今年2月に公開されて、興行の 第1位を記録したということは、それだけの共感も得られた のだろう。 監督は、韓国総合芸術学校を2002年に卒業して、本作が長編 デビュー作となるパク・ヒョンジン。つまり監督も同世代の 人が描いた正に現代の恋愛ドラマということだ。
『センター・オブ・ジ・アース』 “Journey to the Center of the Earth” 3月に特別映像を紹介したジュール・ヴェルヌ原作冒険映画 の日本公開が10月25日に決定し、試写が開始された。 この試写は3Dで行われているが、今回はまだ日本語字幕も 吹き替えも準備されていないもので、英語のオリジナル版で 上映された。とは言っても、物語の骨子はヴェルヌ原作の通 りだし、ギャグなどに多少不明なところはあったが、物語の 理解には問題なかった。 ただし本作では物語を現代化してるが、それはちょっと面白 い仕掛けになっていた。なお、前回の紹介で同行者を主人公 の息子としたが、それは甥だったようで、その点だけ訂正し ておく。 そこから先は、いろいろ新しい仕掛けなども登場はするが、 基本的にはヴェルヌの原作通りの物語が展開されている。従 ってその映像も、原作本の挿絵や1959年の映画化とほぼ同じ となるが、それが今回は見事な3Dで展開される。 そして映画には、その3Dを最大限に活かすためのいろいろ な仕掛けやアイデアも盛り込まれており、その仕掛けなどは 観てのお楽しみとしておくが、それは日本公開のキャッチコ ピーにあるように、「映画館がテーマーパークに変わる!」 ものだ。 出演は、前回も紹介したようにブレンダン・フレーザー、ジ ョッシュ・ハッチャースン、それにアイスランドの新星アニ タ・ブリエム。プロローグとエピローグの少しを除いて、ほ とんどこの3人だけの演技となる。 監督は、『キャプテンEO』などディズニーランドの3Dア トラクション映像のVFXを手掛けてきたエリック・ブレヴ ィク。実写の監督は初めてだが、永年培ってきた3Dの技が 見事に冴え渡っている。 因に今回の試写は、六本木にあるギャガ試写室を期間限定で 3Dシアターにして行っているものだが、そのシステムには Dolby 3Dが用いられていた。この試写室は元々ディジタル対 応ではあったが、Dolby 3Dというのは本当に簡単に3D化で きるもののようだ。 それから一般公開は吹き替えになると思われるが、その声優 には沢村一樹、入江甚儀、矢口真理が決まっているようだ。
『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』“Diary of the Dead” ジョージ・A・ロメロ監督による本家ゾンビ映画。 それぞれリメイクされたNight-Dawn-Dayに続いては、2005年 に“Land of the Dead”を発表したロメロ監督だが、前作が 有名俳優も揃えて大作風に作ったのに対して今回は、学生の 自主映画というスタイルで、原点に戻ったような作品に仕上 げている。 ただし、映画に登場する報道の音声には、ウェス・クレイヴ ン、スティーヴン・キング、サイモン・ペグ、クウェンティ ン・タランティーノ、ギレルモ・デル=トロら、ファンには 豪華な顔ぶれが登場しているようだ。 物語は、学生たちが山中で卒業制作のホラー映画を撮ってい るところから始まる、凝り性の監督のお陰でスケジュールも オーヴァーして、他の学生たちにも嫌気が差していたとき、 携帯ラジオから異様な報道が流れ始める。 それは、死体が甦って生きている人間を襲い始めたというも のだ。最初は半信半疑だった彼らも事態を信じざるを得なく なり、急遽学校へと戻るがすでにそこは藻抜けの殻。そして 恐ろしい状況に直面することになる。 そこで監督役だった学生は、後世にその事実を残すため、全 てを映像で記録することを決意するが… ヴィデオカメラで撮られた学生映画という設定では、1999年 公開の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を思い出させる が、同趣向の作品の中では、『クローバーフィールド』がわ ざと稚拙感を出したような姑息なこともせず、プロの作品に 仕上げている。 そしてそこに、インターネットから拾ってきたという映像を 挟み込むことで、物語の視点を拡大させ、世界が直面した未 曾有の危機を見事に描き出して行く。特に、このインターネ ットを挟むという手法が、批判的な部分を含めながら見事に 機能しているものだ。 その他にも監視カメラの映像など、現状有り得る映像を巧み に織り込んで、物語をヴァラエティに富んだものに仕上げて いる。ただし、1つのシークェンスでは本来ないはずの映像 が出てくるが、これはどうしたことだろうか。ちょっとロメ ロの遊びかな。 「ゾンビは走れない」という台詞が出てきたり、リメイク作 品への批判とも取れる部分もあるが、ロメロのゾンビへの思 い入れは強く感じられた。なお、他の台詞で‘shoot me’に は2重の意味を持たされていることは、気づいて欲しいもの だ。そして結末では、現在の闇が見事に描き出されていた。 なお最新の情報によると、“Diary of the Dead 2”の製作 が9月に開始のようだ。
『ブラインドネス』“Blindness” 『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』のフェルナンド ・メイレレス監督による人間ドラマ。ノーベル賞作家ジョゼ ・サラマーゴ原作『白い闇』の映画化。 物語の発端は、アメリカの何処かと思われる都市の街角で、 日本人男性の運転する車が立ち往生するところから始まる。 その男性は、突然目の前が真っ白になり何も見えなくなった と言うのだ。 そこは何とか自宅に辿り着いた男性は、帰宅した妻と共に眼 科医を訪ねるが、目そのものには全く異状がなく原因も治療 法も不明と診断される。そして診断した眼科医は帰宅して文 献などを調べていたが、その眼科医も失明してしまう。 その後も同じ症状の失明者が次々に現れ、政府は伝染病と判 断して隔離対策を始める。ところが日本人の男性らと共に眼 科医が隔離病棟に収容されたとき、眼科医の妻は咄嗟に自分 も失明したと主張して夫に同行してしまう。 こうして、感染を恐れて警備員も近寄らない隔離病棟の中で は、盲目の患者だけの社会が形成され始めるが…それは現代 の縮図のような世界になって行く。 人類の大半が盲目になるという話では、SFファンは1962年 に『人類SOS!』として映画化された、ジョン・ウィンダ ム原作の『トリフィドの日』を思い出すところだが、本作が SFかと言われるとかなり考えてしまう。 実際、物語は人類全体の話より、隔離病棟に閉じ込められた 人々の行動に重きがおかれており、それはSF的なものでは なくむしろ人間性を問い掛けるものだ。つまりこの作品は、 SFのテーマを被った人間ドラマといった方が良い。 試写会で行われた舞台挨拶で監督も、「盲目はあくまでも象 徴的なものだ」と語っていたが、その通りの作品として考え たほうが良さそうだ。 出演は、ジュリアン・モーア、マーク・ラファロ、ガエル・ ガルシア・ベルナル。さらに日本人夫妻役で、伊勢谷友介と 木村佳乃。他に、『アイ・アム・レジェンド』などのアリス ・ブラガ、『リーサル・ウェポン』のダニー・グローヴァら が共演している。 また、『トスカーナの休日』『サイドウェイ』などの韓国系 女優サンドラ・オーが保険省長官の役で顔を出していた。
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