※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずは、SF/ファンタシー映画ファンには今世紀最大の ニュースと言えるかも知れないこの話題から。 1927年公開のフリッツ・ラング監督作品“Metropolis”の 完全版が発見されたようだ。 この作品については、昨年12月15日付第149回でリメイク の計画を紹介して、その際にオリジナル版の状況についても 解説したが、1927年1月10日にベルリンでプレミア上映され たオリジナル版の上映時間は210分であったとされている。 しかしその評判があまり芳しくなかったことと、長尺のフィ ルムはそのプリント代も嵩むことから、製作会社のUFAは 再編集を断行、その結果、同年8月に行われたアメリカ公開 版は上映時間が114分となっていた。 ただし、この作品の製作はサイレントで行われたもので、 その撮影は毎秒16コマ。これに対して、アメリカでの公開は サウンド版となっており、その上映は、サウンドトラックの 性能との関係から毎秒25コマで行われたものだ。従ってオリ ジナル版をそのコマ数で上映すると134分となったはずで、 このときのカットは、毎秒25コマ換算で20分程度だったと考 えられる。因に、サイレント映画の上映で俳優の動きなどが チカチカとコミカルに観えるのは、通常このコマ数の変化の せいであって、演出的なものではないことが多い。 しかしこのときのアメリカ公開版が以後の標準版となり、 その際にカットされた20分のフィルムは完全に失われたもの と考えられていた。実際、2002年に123分(毎秒25コマ)の リストア版が作成されたときも、「もうこれ以上のフィルム は発見されないだろう」とコメントされたものだし、2001年 のユニセフ世界遺産の登録でも、「完全版ではないが、これ 以上のものが得られる可能性はない」として、不完全を承知 で登録が認められたものだ。 という失われたフィルムの再発見だが、これが何と、南米 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある映画博物館に保 管されていたとのことだ。その経緯について、Variety紙や イギリスBBCなどの報道によると、このロングヴァージョ ンのフィルムは、1928年に当時ブエノスアイレスでテラとい う配給会社を経営していたアドルフォ・Z・ウィルスンなる 人物が入手。その後、フィルムはいろいろな人の許を渡り歩 いたが、1992年から同博物館に所蔵されていたとのことだ。 一方、アルゼンチンでは、1960年代に“Metropolis”の別 ヴァージョンが上映されたとの噂があり、その噂を確認する べくフェルナンド・ペナという映画研究家が、1980年代から 博物館の所蔵フィルムを調査していた。そして今年の4月、 ついに博物館の調査員がフィルムを発見したというものだ。 その後6月に博物館は同作の著作権を管理するドイツのFW ムルナウ財団に鑑定を依頼、このフィルムが失われた20分を 含むものと確認された。 なお研究者の中には、「まだ5分ほど足りない」という意 見もあるようだが、フィルムにはサブのキャラクターを掘り 下げるようなシーンもあり、何よりラングの演出のリズムが はっきりと刻まれているとのことで、これを完全版と言って かまわないもののようだ。 現在フィルムは、博物館を管理するブエノスアイレス市当 局の意向で、博物館からの持ち出しが禁じられており、今後 の取り扱いについては、ムルナウ財団とブエノスアイレス市 が話し合うとなっているが、この作品はすでにユニセフが、 「万人に供すべき世界遺産」として認めているものでもある し、かなりの擦り傷などもあるとされるフィルムは、一刻も 早くリストアして、僕らにも観せてもらいたいものだ。 それにしてもこんなことが起こるとは、全く夢のような話 だ。 * * 以下は、製作ニュースを紹介しよう。 最初はちょっと面白そうな新作の話題で、コロムビアから “Mythological Veterinarian”というコメディ作品の計画 が発表された。 物語は、現代の獣医が世界の神秘的な生物を監視している 秘密結社に招かれるというもの。映画会社の発表はここまで だが、多分、風邪を引いたり翼が傷ついたりしたドラゴンや キメラの治療を行うことになるのだろうというのがファンサ イトの予想だ。もちろんそんな単純な話ではないと思うが… 脚本は、アンドリュー・カーツマンという脚本家のオリジ ナルで、この脚本家は、2003年7月1日付の第42回で紹介し たロブ・ミンコフ監督によるテレビアニメシリーズの映画化 “Mr.Peabody & Sherman”や、ジム・キャリーの製作、主演 によりユニヴァーサルで企画中の“Sober Buddies”なども 手掛けている。因にカーツマンは、1982−85年当時のテレビ 『サタデイ・ナイト・ライヴ』のライターで、その頃の日本 公開作では、1989年にジーン・ワイルダー脚本、主演、リチ ャード・プライヤー共演の『見ざる聞かざる目撃者』に参加 の記録があるだけだが、最近になって上記以外の計画も複数 発表されるなど、活動が活発になっている。 神秘生物の獣医というと、今なら『ハリー・ポッター』の ハグリットが思い浮かぶところだが、コメディ作品でこの設 定というのもいろいろな展開が考えられそうだ。後は監督と 主演に誰が起用されるか、主演は『エース・ベンチュラ』の ジム・キャリーというのも面白そうだが。 * * お次は競作の話題で、サー・コナン・ドイルが創案した名 探偵シャーロック・ホームズの冒険の映画化が、コロムビア とワーナーで計画されている。 まず、コロムビアの計画はコメディで、『スウィーニー・ トッド』のサッシャ・バロン・コーエンがホームズを演じ、 『俺たちダンクシューター』のウィル・フェレルがワトスン を演じるというもの。因にこの2人は、2006年に全米で大ヒ ットを記録した“Talladega Nights: The Ballad of Ricky Bobby”に、ライヴァルレーサー役で出演して以来の再共演 となるものだ。 題名は未定で、具体的な内容もまだ発表されていないが、 脚本は、今年11月7日に全米公開予定のアニメーション続編 “Madagascar: Escape 2 Africa”も手掛けているイーサン ・コーエンが担当。彼は、今夏公開されるベン・スティラー 監督、主演の戦争アクション・コメディ“Tropic Thunder” にも参加しているなど評価が高い。なお発表では、ドイルの キャラクターにインスパイアされた…となっているが、この 顔ぶれではかなり飛んだものになりそうだ。 撮影は来年の春以降の予定になっている。 * * 一方、ワーナーの計画は、昨年4月1日付第132回で紹介 したライオネル・ウィグラム製作の“Sherlock Holmes”が 進行しているものだが、この計画は、前回の報告からかなり 変更されていて、まず監督には、今年3月30日付で紹介した 『リボルバー』のガイ・リッチーが参加。そして主演には、 『アイアンマン』を大ヒットさせたロバート・ダウニーJr. のホームズ役が発表されている。 また脚本も、2001年マイクル・ダグラス主演のサスペンス 作品『サウンド・オブ・サイレンス』などを手掛けたアンソ ニー・ペッカムが最新版を執筆しており、これからリッチー 監督が手直しを加えて、撮影は今年10月に開始の予定となっ ている。 こちらはしっかりとドイルの原作に基づくとされているも ので、そこにリッチー監督ならロンドンには精通していそう な感じもするところだ。ただし、ホームズの活躍の舞台とな るヴィクトリア朝のロンドンはどうなのだろうか。とは言え この顔ぶれなら、ストレートな作品にはなりそうだ。 なおダウニーJr.の主演作では、昨年10月15日付第145回で 紹介した“The Soloist”が11月21日全米公開の予定になっ ているものだが、その前に公開される“Tropic Thunder”に も出演しているようだ。 ホームズの映画化は、1905年製作の無声映画から200本近 い作品数があるようで、過去にはピーター・クッシングや、 クリストファー・リーなども名探偵を演じている。しかし、 最近はテレビでの活躍が目立つもので、僕自身、映画版では 1985年公開の『ヤング・シャーロック』くらいしか印象には 残っていなかった。それが一気に2本とは、これで映画での 名探偵復活にもなってほしいものだ。 * * 次はコミックブックの映画化で、ワーナーが、イメージ・ シャドウラインから発表されている“Hiding in Time”とい うシリーズの権利獲得を発表した。 この作品は、クリストファー・ロングという原作者による もので、タイム・トラヴェルを利用した高度な目撃者保護プ ログラムを描いたもの。まさに題名の通りのもののようだ。 ところがその中でトラブルが発生し、助手の1人が暗殺者に 狙われることとなる。その救出のため、政府機関の科学者が 元犯罪者と共にいろいろな歴史的瞬間を巡って問題の解決に 当たるが…という展開になっている。 そしてこの脚色に、先にフォックスで、10月17日全米公開 予定の“Max Payne”というヴィデオゲームの映画化を担当 しているビュー・トーメの起用が発表された。 タイム・トラヴェル物は、前回も書いたようにパラドック スの扱いが難しいが、本作はどうなっているか。原作がある ということはそれだけしっかりした展開にはなりそうだが、 原作はしっかりしていても、脚本で打ち壊しになってしまう こともあるので気になるところだ。因に“Max Payne”は、 DEA(麻薬取締局)の捜査員を主人公にしたアクション・ スリラーとのことで、普通のアクション映画のようだ。 * * 続いてはゲームの映画化で、カプコンが2007年にアメリカ 発売し、200万本を売り切ったというゲーム“Lost Planet” の映画版を、ワーナーとカプコンの共同製作で進めることが 発表された。 物語は、人類救済のため、氷の惑星でエルギー源の調査に 向かう遠征隊の冒険を描くものとのことで、根本のテーマは 違うが、何となく『ザ・デイ・アフター・トゥモロー』を思 い出させる感じの作品になりそうだ。 そしてこの脚本に、『Xメン』『スコーピオン・キング』 を手掛け、『300』のザック・スナイダー監督が現在製作 中の“Watchmen”も担当したデイヴィッド・ハイターの起用 が発表されている。また製作は、元マーヴェルの映画製作を 担当していたアヴィ・アラドが行っており、アラドとハイタ ーは『Xメン』のコンビ復活となっている。このコンビ復活 で、どのようなアクションドラマが作られるか楽しみだ。 因にハイターは、『Xメン』には俳優としても登場してい たようだが、さらにゲームの“Metal Gear Solid”には、英 語版スネイク役の声優として第1作からレギュラー出演して いるとのことで、現在計画が発表されている同ゲームの映画 版の脚本も手掛けている。 一方、製作者のアラドは、現在はファンタシー映画専門の シーサイド・エンターテインメントというプロダクションを 主宰しているが、同社では“Ghost in the Shell”の3D実 写版の計画もドリームワークスと進めており、この計画には スティーヴン・スピルバーグが監督を希望しているとの情報 もあるようだ。 さらにカプコンでは、“Resident Evil”(バイオハザー ド)の第4作の計画もソニーと進めているようで、こちらは 製作総指揮のポール・WS・アンダースンが、8月22日に全 米公開されるリメイク版“Death Race”を終えたら、新たな 動きが出てきそうだ。 * * 『バイオハザード』の続編情報が出たところで、シリーズ 物の話題を後2つ紹介しておこう。 まずは『ナルニア国物語』の第3章“Voyage of the Dawn Treader”について、撮影スタジオをニュージーランドから メキシコに移すことが発表されている。 シリーズの前2作では、ニュージーランド政府の税法上の 優遇処置や、VFXや特殊な小道具を製作するウェタ・ディ ジタル、ウェタ・ワークショップが同国に所在することもあ って、映画の撮影も主にニュージーランドで行われていた。 しかし前作『カスピアン王子の角笛』では、一部の撮影がポ ーランド、スロヴェニア、チェコでも行われて、スタジオ撮 影にはプラハの撮影所も使用された。 そして今回は、物語の舞台が大洋になるとのことで、さら に大きなサウンドステージや、水中撮影用のタンクが必要と され、撮影をメキシコのロザリントと、バッハ・スタジオで 行うとされているものだ。ただし、一部のロケ撮影はオース トラリアでも行われることになっている。 因にバッハ・スタジオは、ジェームズ・キャメロン監督が 『タイタニック』の製作のため新規に建設したスタジオで、 その後は『マスター・アンド・コマンダー』などの撮影にも 使用されるなど、海洋物のメッカとも言える感じのスタジオ だった。しかし最近、主要な出資者だったフォックスが出資 の取り止めを発表、その存続に赤信号が点りかけていた。そ こに今回の発表ということで、スタジオの存続にも明るいも のが見えてきそうだ。 マイクル・アプテッドが新たに監督を務める第3作の撮影 は、来年1月に開始の予定になっている。 * * もう1本のシリーズは、『スーパーマン』の計画で、昨年 の10月以来ストップしている“Superman: Man of Steel”の 製作準備にちょっと新たな局面が出てきているようだ。 その情報が出てきたのは、アンジェリーナ・ジョリー、ジ ェームズ・マカヴォイ、モーガン・フリーマン共演で映画化 されたアメコミ“Wanted”の原作者としても知られるマーク ・ミラーの発言で、彼がアメリカ人のアクション映画監督か らのアプローチを受け、新規なアイデアを提供したとのこと だ。因に、“Superman: Man of Steel”の監督には、現在も ブライアン・シンガーの契約が生きているものだが、シンガ ーはニューヨークの出身だから、「アメリカ人のアクション 映画監督」ということに問題はない。 ただしマーク・ミラーは、“Wanted”の他に“Fantastic Four”や“Avengers”、それに“Spider-Man”など主にマー ヴェルで活躍している人材で、それがDCの作品に関るとい うのが、多少引っ掛かるところにはなっている。しかしミラ ー自身が、『スーパーマン』のファンであることは以前から 広言されていたことのようで、その噂を聞きつけての監督か らのアプローチだったとのこと。これには監督側が形振り構 わぬという感じにも観えるが、これでうまく行けば万歳とい うところだろう。 マーク・ミラーのアイデアで映画化が進むかどうか、結論 はクリスマスごろまでに明らかになるようだ。 * * シリーズの次はリメイクで、1984年にジョン・ミリウスが 監督した“Red Dawn”(若き勇者たち)のリメイクがMGM で計画されている。 このオリジナルについては、2004年1月1日付第54回でも 紹介しているが、突然ソ連の侵攻の始まったアメリカ大陸を 舞台に、その侵攻を逃れて山岳地帯に立て籠った高校生の一 団が、いろいろな作戦を立てて反攻を繰り広げて行くという お話。ミリウスの原案から、後に『ウォーターワールド』な どを監督するケヴィン・レイノルズが脚本を執筆していた。 その物語がリメイクされるものだが、今回は、ジェレミー ・パスモアという人が書いたストーリーから、『ディスター ビア』のカール・エルスワースが脚本の執筆を契約。また、 監督には、『スパイダーマン3』や『ボーン・アルティメイ タム』、それに11月7日に全米公開されている007の新作 “Quantum of Solace”などで第2班監督や、スタントコー ディネーターなどを務めるダン・ブラッドレーの起用が発表 されている。 それにしても、原題のRedとは共産主義を指していたもの だが、今の時代にアメリカ侵攻を実現できる共産勢力がある とも思えないし、その辺をどのように処理するか。多分そこ にアイデアがあるからリメイクの話も出てきたのだろうが、 ちょっと興味を引かれるところだ。逆に、完全に架空の話と して描くことは可能だが、いずれにしても、戦争ごっこのよ うな作品では許されないもので、それなりに現実味のある物 語が要求される。 正直なところは、オリジナルの物語は右翼思想の一辺倒で かなり辟易したが、出演者には、パトリック・スウェイズ、 C・トーマス・ハウェル、リー・トムプスン、チャーリー・ シーンら見事な若手が揃っていたもので、今回のリメイクで もその辺には期待したいものだ。 * * 後は短いニュースをまとめておこう。 まずは続けてMGMの話題で、ウィノナ・ライダーが出演 した『エイリアン4』などの脚本家で、『恋するヴァンパイ ア』などのテレビシリーズの製作者としても知られるジョス ・ウェドンが、“Cabin in the Wood”と題したスリラー作 品の映画化について同社と契約した。この作品は、ウェドン と、彼とは『ヴァンパイア』以来のパートナーであるドリュ ー・ゴッダードが共同で脚本を執筆したもので、ゴッダード はこの作品で監督デビューも果たすことになっている。因に ゴッダードは、『クローバーフィールド』の脚本を手掛けた 人でもある。ただし本作の内容は明らかにされていないが、 ジャンル分けでは、コメディ、ファンタシー、ホラーとなっ ているもので、期待は持てそうだ。 お次は『The Eye』のハリウッドリメイクなどを手掛ける ヴァーティゴ・エンターテインメントが、エコホラーと称す る作品を計画している。作品の題名は“The Colony”という もので、脚本は、ステイシー・タイトルとジョナサン・ペナ ーという夫婦コンビが執筆したもの。この内、妻のタイトル は2007年に“Hood of Horror”という作品の監督もしている ようだ。夫のペナーは同作品に出演している。この作品も、 内容などは一切公表されていないものだが、前作は一応ホラ ー・コメディのようなので、その線からは興味は引かれると ころだ。 最後は、ちょっと…な情報で、『エイリアン』シリーズの 続編について、シガニー・ウィーヴァーが主演を希望してい るとのことだ。彼女は今年60歳になるそうだが、彼女自身は ソフィア・ローレンを目標に頑張っているとのことで、その ウィーヴァーが“Alien 5”について良いアイデアを思いつ いたとのこと。さらに、そのアイデアを第1作を監督したリ ドリー・スコットに話したところ、監督も興味を示したとの ことだ。もしかすると第1作のコンビによる続編が作られる かも知れないものだ。因に『エイリアン4』は1997年の製作 で、今から実現しても10年以上の間が開くことになるが、最 近は『ランボー』『ロッキー』『インディ・ジョーンズ』な ど、間隔の開いた続編も多く登場しており、その中では短い 方ということにもなる。後は製作会社の20世紀フォックスが OK出すかどうかと言うことになるが、果たしてそのOKは 出されるのだろうか。
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