井口健二のOn the Production
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2007年05月15日(火) 第135回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回はこの話題から。
 2005年にワーナーが配給した青春映画“The Sisterhood
of the Traveling Pants”(旅するジーンズと16歳の夏)の
続編が6月に撮影開始され、前作に主演したアメリカ・フェ
レーラ、アンバー・タンブリン、アレクシス・ブレーデル、
ブレイク・ライヴリーの4人が揃って再登場することになっ
た。
 前作の物語は、今まで何時も一緒に行動してきた高校生の
女子4人組が、初めて夏休みを別々の場所で過ごすことにな
り、全員にフィットする不思議なジーンズパンツを順番にそ
の旅先に送って幸運を共有しようとするもの。それぞれの恋
愛や失恋、将来への期待や不安など、甘酸っぱい青春ドラマ
が観光映画のような素晴らしい風景の中で描かれた。
 この作品は、アン・ブレイシャーズという作家が、2001年
から1年おきに発表している原作シリーズに基づくもので、
原作では今年1月にシリーズ4巻目の“Forever in Blue”
が出版されている。そして今回は、間を飛ばしてその第4巻
が続編として映画化されるものだ。因に今回の主人公たちは
それぞれ大学生となり、トルコ、ギリシャ、ニューヨーク、
ヴァーモント、プロヴィデンスなどで夏休みを過ごす。
 なお、主演の4人では、フェレーラは現在“Ugly Betty”
の主人公を演じて大人気となっており、タンブリンは『呪怨
2』に主演の他、“Babylon Fields”という新作テレビシリ
ーズに主演が予定されている。またブレーデルは、前作当時
すでに『シン・シティ』にも出演していたが、現在は好評だ
ったテレビシリーズ“Gilmore Girls”へのレギュラー復帰
が濃厚とされる。さらに、ライヴリーは“Gossip Girls”に
レギュラー出演中など、それぞれがテレビシリーズで主演や
レギュラーを持つ人気者になっており、今回はその原点とも
言える作品への再結集となるものだ。
 監督は、マライア・キャリーなどのミュージックビデオを
手掛け、すでにフォーカス製作の“Something New”という
作品で長編デビューしているサナナ・ハムリ。脚本は、前作
を共同で手掛けたエリザベス・チャンドラー。
 撮影は、6月3日にギリシャで開始され、その後にニュー
ヨークとコネチカットに移動する。因に前作公開時のレーテ
ィングはPGだったが、今回はPG-13を予定しているそうだ。
        *         *
 またまたレオナルド・ディカプリオの情報で、『マイアミ
・バイス』のマイクル・マン監督、『アビエイター』の脚本
家ジョン・ローガンと組む計画が発表された。
 計画されているのは、題名は未定だが、1930年代のMGM
スタジオを舞台にした作品で、ディカプリオはスタジオ所属
のスターが起こしたスキャンダルを揉み消す私立探偵を演じ
る。そして中心となる事件では、若いスターの卵による夫殺
しを揉み消すことになるようだ。また、映画にはジュディ・
ガーランドや、1991年にウォーレン・ベイティの製作主演で
その人生が映画化されたバグジー・シーゲルの登場もあると
いうことだ。
 脚本は、マンとローガンが昨年9月から検討を重ねてきた
もので、ディカプリオも数ヶ月前からそれに参加してきたと
言われている。なおマンは、当初『アビエイター』も自らの
監督作品としてローガン、ディカプリオと進めていたものだ
が、当時の監督には、『アリ』と『インサイダー』といった
実話に基づく作品が続いていたことと、同様のヒューズの伝
記に基づく企画が競合して早急に製作する必要が生じ、やむ
なくマーティン・スコシージに監督を依頼、自分は製作に下
がったものだ。
 従って本作は、ディカプリオにとっては、念願のマン監督
作品への出演となる。因にマン+ディカプリオでは、それ以
前にもジェームズ・ディーンの伝記映画の企画が進められて
いたこともあったそうだ。
 撮影は来年の2月。リドリー・スコット監督による“Body
of Lies”の撮影完了後に開始の予定になっている。
        *         *
 ついでにもう一つディカプリオの情報で、第133回で報告
した『ブラッド・ダイアモンド』の記者会見にも来日せずに
取り組んでいた環境問題を描くドキュメンタリーが完成し、
“11th Hour”と題された作品の配給について、ワーナーと
契約の結ばれたことが報告された。
 この作品は、レイラ・コナーズ・ペーターゼンとナディア
・コナーズの共同監督によるもので、人類が行っている環境
破壊が手遅れにならないよう行動を改めるべきとしたもの。
ディカプリオは2人の監督と共に脚本を執筆、ナレーション
も務めている。また作品では、スティーヴン・ホーキングら
世界のリーダーとなる科学者、思想家や、元CIAトップの
ジェームズ・ウルセイ、元ソ連大統領のミヒャエル・ゴルバ
チョフら政治的なリーダーへのインタヴューを織り込んで、
人類が今為すべきことを訴えているということだ。
 そして完成された作品は、今月開催のカンヌ映画祭でワー
ルドプレミアが行われているものだが、ワーナーではアメリ
カ国内をワーナー・インディペンデンス、海外をワーナー・
ブラザース・インターナショナルの扱いとして、今年の秋に
全世界で公開する計画としている。
 なお、配給を決めたワーナーのトップは、「異常気象につ
いての問題を論評しているだけのものではなく、現在我々が
直面している世界的な規模の無数の事象を提示して、もはや
認めざるを得ない事実を探究したもの」と、内容を説明して
いる。カンヌでの反響が楽しみだ。
        *         *
 紀元前5世紀のスパルタ人を描いた『300』が予想を超
える大ヒットとなったフランク・ミラー原作のグラフィック
ノベルで、今度は“Ronin”という作品の実写映画化の計画
がワーナーから正式発表された。またこの作品の監督には、
今年初めに公開された“Stomp the Yard”が好評のシールヴ
ァン・ホワイトの起用も報告されている。
 物語は、13世紀というと鎌倉時代の頃になるが、その時代
に汚名を着せられた日本の侍が、2064年のニューヨークに甦
り、同じく未来都市に解き放たれた悪鬼と闘うというもの。
その悪鬼の一人は、神秘の力を宿した刀剣を所持していると
いう設定で、原作はDCコミックスから出版されている。
 侍が時代を超えて甦るという話では、1984年に藤岡弘(こ
の頃は「、」はないのかな)の出演で、“Ghost Warrior”
(SFソードキル)というアメリカ映画が製作されている。
雪洞に冷凍されていた侍が発見され、その侍をアメリカの研
究所で蘇生させるというもので、日本人の目で観ると珍品と
いう感じの作品だったが、藤岡の演技には存在感もあって、
アメリカでの評価は娯楽作品ということではそれなりとされ
ていたものだ。
 今回は、未来都市を舞台に悪鬼と闘うということで、内容
的にはかなり違うが、侍というからにはそれなりの役者が必
要になる訳で、その侍役を一体誰が演じるか、主人公の配役
にも注目が集まりそうだ。
        *         *
 前回に続いて、またまた“The Mummy”(ハムナプトラ)
シリーズ第3弾の続報で、ブレンダン・フレイザーの息子役
に26歳のオーストラリア人俳優ルーク・フォードの出演が発
表された。
 彼は、他に4人いた候補者の中から選ばれたということだ
が、ロブ・コーエン監督からは、「彼がブレンダンと台詞を
読み合わせたときにはマジックを感じた。今回の物語は父親
と息子のリレーションシップを描くことになるが、シリーズ
の将来は彼の双肩に掛かった」との発言も出されており、シ
リーズは主人公を代えて継続されるようだ。
 なお今回の報告によると、以前紹介したジェット・リーは
呪いによって甦った古代の王ということで、その王に呪いを
掛けた魔法使い役をミシェル・ヨーが演じる。また、結局出
演が断念されたレイチェル・ワイズの替役には、6人の女優
がテストされて、マリア・ベロが選ばれたようだ。
 撮影は7月27日にモントリオールで開始。舞台は中国の隠
された墳墓からヒマラヤへと広がる。公開は2008年7月で、
北京オリンピックの開催直前の時期、中国に関心が集まる頃
を狙っているものだ。
        *         *
 ピーター・ジャクスン監督が次回作に予定している“The
Lovely Bones”の脚本が完成し、ハリウッド各社に提示され
て、ドリームワークスがその権利を獲得したようだ。
 この作品については、第124回では題名だけ紹介したが、
アリス・シーボルドという作家が2002年に発表した同名の原
作小説に基づくもので、レイプされ殺された14歳の少女の霊
魂が、彼女の家族と殺人者を見つめ続けているという物語。
1994年にジャクスンがベネチアで受賞した『乙女の祈り』と
同傾向の作品と言われている。そして脚本はジャクスンと、
『LOTR』『キング・コング』にも協力したフィリッパ・
ボウエン、フラン・ウォルシュの共同で執筆されたものだ。
 また、今回の脚本の提示に対しては、ワーナー、ソニー、
ユニヴァーサルも手を挙げたが、スティーヴン・スピルバー
グがジャクスンとの共同作業を希望したこと。元々この原作
は数年前のジャクスンに権利が移行する以前に同社が権利の
獲得を目指したことがある。さらに現在ドリームワークスの
CEOを務めているステイシー・スナイダーが、『キング・
コング』を実現した際のユニヴァーサルの担当だったなど、
いろいろな条件でドリームワークスに決定されたようだ。
 なお、契約に当ってスピルバーグからは、「こんなに心を
動かす魔法のような物語を読んだら、そこにどんな紆余曲折
があったとしても、何時かはその映画化に至る道を見つけた
くなる」と、ここに至った経緯が紹介されたそうだ。
 一方、今回の脚本の提示では、ニューラインだけはその対
象から外されたと言われている。これは『LOTR』の利益
配分を巡って同社とジャクソンが揉めているためだが、元々
今回の作品は、監督が次の大型作品の前に撮りたいとしてい
たもの。これで“The Hobbit”の映画化は、ますます多難に
なってきたようだ。
 さらに“The Lovely Bones”の契約に関連して、ジャクス
ンとスピルバーグの新たなコラボレーションも動き出したよ
うだが、その話は次回に報告する。
        *         *
 久しぶりに“Terminator 4”の話題が登場した。
 この第4作には、アーノルド・シュワルツェネッガーも、
ジェームズ・キャメロンも参加しないことは、既定の事実と
なっているようだが、さらに『T2』『T3』の実現の立て
役者だった製作者のアンディ・ヴァイナとマリオ・カサール
も関わらないことになったようだ。
 元々このシリーズでは、1984年にキャメロンとゲイル・ア
ン=ハードが第1作を作る際に、その製作費を調達する目的
で権利を切り売りし、実際に第1作が完成されたときには、
10数人の権利者がいたと言われている。その分割された権利
を1991年の第2作を製作する際に、一つずつ買収して纏めた
のがヴァイナとカサールで、結局この時点では、権利はヴァ
イナ+カサールとアン=ハードに集約された。
 ところがその後、ヴァイナ+カサールの率いていたカロル
コが倒産、2003年の第3作の時には、そのカロルコの権利が
争奪戦となり、最終的にヴァイナ+カサールが買い戻して、
一緒にアン=ハードの権利も獲得して一元化したものの、こ
のときキャメロンが独占契約を結んでいたフォックスとは対
立、ついにキャメロンは降板となった。一方、シュワルツェ
ネッガーも第3作には主演したものの、その直後にカリフォ
ルニア州知事に当選、さらに再選も果たして、当面は映画出
演の可能性はなくなってしまったものだ。
 という事態にやる気を無くしたのかどうかは知らないが、
今度はヴァイナ+カサールが“Terminator”の全権利をハル
シオンという会社に売却したことが発表された。因に、この
ハルシオン社は、ヴィクター・クビセックとデレク・アンダ
ースンという起業家によって設立されたもので、先にHBO
のコメディフェスティバルで上映された“Cook-Off!”とい
う作品の製作実績はあるようだ。
 ただし、今回『T4』の製作に当っては、実は前インター
メディア社のCEOで、『T3』の製作にも関わったモリッ
ツ・バーマンと、ポリグラム社のマーケティング担当だった
ピーター・D・グレイヴスの2人が参加しており、この2人
の差し金で買収が行われたと考えるのが正しそうだ。
 ということで、第4作は新体制で製作が進められることに
なったものだが、監督や出演者は未定とされているものの、
脚本は『T3』を手掛けたジョン・ブラカトーとマイクル・
フェリスのものが執筆されており、それを基に進められるよ
うだ。また、バーマンからは、「『T3』の製作の際に、数
多くの後に続く物語の種を仕掛けておいた。物語はジョン・
コナーとターミネーターの、人類の未来を掛けた冒険となる
が、これは新たな3部作として製作される」との発表も行わ
れている。
 因に、『T4』の製作は2009年夏の公開を目指して進めら
れることになっており、配給に関してはMGMと日本の東宝
東和が優先権を持っているようだ。
        *         *
 第119回で紹介した“The Alchemyst: The Secrets of the
Immortal Nicholas Flamel”の原作者マイクル・スコットが
新たに提示した15ページの小説の概要に対して、その映画化
権の契約が6桁($)の金額で結ばれたことが報告された。
 この作品は、題名が“Otherworld”とされているもので、
内容は、地球温暖化の影響で古代の魔物が次々に甦ってくる
という現代を背景にしたファンタシー。そしてその契約を結
んだのは、第105回で紹介したギレルモ・デル=トロ監督の
“Killing on Carnival Row”なども手掛けている製作者の
アーノルド&アン・コペルスン。なお今回の契約金は、原作
者による脚本の執筆料も込みということなので、金額的には
特に高額ということではないものだが、実は製作を担当する
映画会社は未だ決まっていないもので、コペルスンは独自の
資金で契約を行っているとのことだ。
 因にコペルスンは、今年3月にも“The Alchemy Papers”
というエジソンが錬金術を発明していたという仮説に基づく
ファンタシーの脚本を契約しており、ファンタシー系の作品
ばかり契約しているということでは、ちょっと気になる製作
者になりそうだ。
 一方、製作者のマーク・バーネットが映画化権を契約した
“The Alchemyst”に関しては、その後、ニューラインでの
製作が決定し、2005年3月に紹介した『バタフライ・エフェ
クト』で共同脚本と共同監督を務めたエリック・ブレスが脚
色を担当することが発表されている。そろそろ映画製作の準
備も進み始めているようだ。
        *         *
 久しぶりの“Mr.Bean's Holiday”が世界各国でスマッシ
ュヒットを記録しているローワン・アトキンスンが、次回作
でチャールズ・ディケンズの古典に挑む計画が発表された。
 計画されているのは“David Copperfield”。最近は『プ
レステージ』にも協力しているマジシャンの方が有名になっ
てしまったが、元々は『オリヴァ・ツイスト』と並ぶ若者を
主人公にした冒険物語で、この原作からは1935年にジョージ
・クーカー監督によるハリウッド製オールスター映画も作ら
れている。しかし、その後はテレビ化は多数されているもの
の、映画としての製作はなかったのだそうだ。
 その計画を進めているのは、アトキンスンとは2003年8月
に紹介した『ジョニー・イングリッシュ』でも組んだことの
ある監督のピーター・ハウィット。元々は1998年にデビュー
作の『スライディング・ドア』がヒットしたときに、ミラマ
ックスで立上げられた企画だったようだが、その後に計画が
放棄されて、権利がハウィットに戻されていた。その計画に
アトキンスンと共に再挑戦しようというものだ。
 なお、アトキンスンが演じるのは、1935年版ではW・C・
フィールズが演じたMr.ミカウバーというキャラクターで、
この役柄は、ディケンズの登場人物の中でも最もコミカルと
言われているものだそうだ。
 製作費は3000万ドルが予定され、カンヌ映画祭でも配給権
のセールスが行われているようだが、英国の映画基金からの
援助対象にもなっているようだ。撮影は2008年の初旬に開始
される。
        *         *
 後は短いニュースをまとめておこう。
 『シュレック3』の公開が近付いているが、それに合わせ
て“Shrek 4”の監督が発表された。第4作の監督を担当す
るのは、昨年2月に紹介した『スカイ・ハイ』のマイク・ミ
シェル。脚本はティム・サリヴァンのオリジナルから、ジョ
シュ・クラウスナーがリライト中だそうだ。前々回に報告し
たように、この作品は3Dで製作されるものだが、『スカイ
・ハイ』も立体で観られたら楽しそうな話でもあったし、期
待したい。
 一方、そのシュレックの声を担当しているマイク・マイヤ
ーズからは、1997〜2002年に発表された“Austin Powers”
の続編を計画していることも報告されている。この計画も、
実現すれば第4作となるものだが、マイヤーズの発言による
と「第4作は、Dr.イーヴルの視点から描いたものになる」
そうだ。この発言はアメリカでの『シュレック3』の記者会
見で出されたもので、それ以上の具体的な話はなかったよう
だが、動き出せば誰も止めるものはいないだろう。
 後はテレビシリーズからの映画化で、第38回で一度紹介し
た“Fantasy Island”を計画しているコロムビアが、この計
画をエディ・マーフィの主演で進めることを発表した。オリ
ジナルは、リカルド・モンタルバンらの主演で1978〜84年に
放送され、1998年にもマルカム・マクダウェルらの主演でリ
メイクされた人気シリーズだが、映画版ではマーフィが複数
のキャラクターを演じることになるようだ。
 続いてワーナーが進めているハナ=バーベラのアニメーシ
ョン“The Jetsons”の実写版の計画で、監督にロベルト・
ロドリゲスの名前が浮上している。この計画では、アダム・
ゴールドバーグがすでに脚本を書き上げており、監督が決ま
ればただちに動き出せる計画のようだ。
 さらにロドリゲスは、ユニヴァーサルが進めている“Land
of the Lost”についても、主演に予定されているウィル・
フェレルと話し合いを持ったとも伝えられており、どちらか
は動き出すことになりそうだ。
 もう1本、メル・ギブスンが1994年に主演したコメディ西
部劇“Maverick”の続編を期待しているようだ。この計画に
は共演のジェームズ・ガーナーも賛同しているそうで、後は
権利を所有するワーナーの意向次第だが、ギブスンは「可能
性はある」と言い切ったそうだ。


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井口健二