井口健二のOn the Production
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2007年04月01日(日) 第132回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 最初は普通の映画の情報から。
 レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが、
1997年の『タイタニック』以来の共演をする計画が発表され
た。作品は“Revolutionary Road”という題名で、リチャー
ド・イェーツという作家が1961年に発表した原作に基づき、
ドリームワークスで製作される。
 内容は、1950年代半ばを時代背景に、夫婦と子供2人の幸
せな一家が、自分たちの真の欲望と周囲の習慣との板挟みで
苦しむというもの。かなり厳しい内容のようだが、原作はそ
の語り口の斬新さなどで評価された作品のようだ。そしてこ
の原作を、1999年の『アメリカン・ビューティ』でオスカー
を受賞し、ウィンスレットの夫でもあるサム・メンデス監督
が映画化するもので、撮影は今夏に予定されている。
 なお、ディカプリオとウィンスレットは、共演以来ずっと
交流を保っていたそうだが、一緒に仕事をする機会には恵ま
れなかった。それが今回は、ウィンスレットの夫メンデスの
監督作品で実現することになったものだ。『タイタニック』
のときはウィンスレットだけが主演女優賞候補になったが、
今年はディカプリオもオスカー主演賞候補を勝ち取って、満
を持しての再共演になりそうだ。
 因に、メンデス監督は第1作の『アメリカン…』をドリー
ムワークスから発表して以来、継続して同社で仕事を続けて
おり、2002年の『ロード・トゥ・パーディション』の監督の
他、製作を手掛けた作品もあるようだ。また、ディカプリオ
は、2002年スティーヴン・スピルバーグ監督の『キャッチ・
ミー・イフ・ユー・キャン』以来の同社での出演となる。
        *         *
 一方、ディカプリオは、マーティン・スコセッシ監督と再
び組む計画も発表している。こちらはワーナーが進めるもの
で、ウォール街の風雲児と呼ばれ、20カ月の懲役も経験した
ジョーダン・ベルフォートの“The Wolf of Wall Street”
と題された自伝の映画化。原作は、9月にバンタムブックス
から出版されるというものだ。
 そしてこの映画化権に関しては、ワーナー+ディカプリオ
と、パラマウント+ブラッド・ピットの間で争奪戦が演じら
れたそうだが、ピットが主演を希望しなかったことと、ワー
ナー側がスコセッシの監督を提示したことが決め手になり、
契約が決まったとのことだ。製作時期は未定だが、脚色には
“The Sopranos”のテレンス・ウィンターが契約し、直ちに
開始するとしている。
 また、この原作では、主人公を追い詰めるFBI捜査官の
存在がかなり大きいとのことで、『キャッチ・ミー…』のよ
うな強力な共演者が期待されている。まさかトム・ハンクス
とはいかないのだろうが。
 さらに、スコセッシとパラマウントの間では、前回紹介し
たように全ての作品の権利の半分をパラマウントが所有する
契約が結ばれているが、今回の計画はその契約が発効してか
ら後のもののようだ。にも拘らず、パラマウントは権利獲得
に固執したもので、前回報告した作品の件も含めて、その扱
いが注目されることになるようだ。
        *         *
 2005年の『マッチ・ポイント』と、2006年の“Scoop”で
連続してコラボレートしたスカーレット・ヨハンソンとウッ
ディ・アレンが、今夏にスペインで撮影予定の新作でも組む
ことが発表された。
 この計画については、2006年1月の第103回で一度紹介し
ているが、その計画にヨハンソンの出演が決まったものだ。
例に拠って題名・内容等は発表されていないが、作品には、
『プレステージ』で共演したレベッカ・ホールや、ジャヴィ
アー・バーデン、それにペネロペ・クルスも出演する。
 それにしてもヨハンソンは、ヨーロッパに渡ってからのア
レン監督作品4本の内3本に出演することになるものだが、
アレンが同じ女優と繰り返し組むのは、初期に6作品を手掛
け、公私ともにパートナーだったダイアン・キートンや、ミ
ア・ファーロー以来のことになる。ヨハンソンと公私ともに
とは考えられないが、アレンのお気に入りの女優になったこ
とは確かなようだ。
 なお、アレンとスペインの関係については、以前の紹介に
も書いたように、休暇を楽しんだり、国王からの勲章の授与
や銅像の建立、『マッチ・ポイント』も大ヒットするなど評
価も高く、気持ちの良い仕事になりそうだ。
        *         *
 ここらは徐々にSF/ファンタシー系の情報に移行する。
 まずは、サー・コナン・ドイル原作の名探偵シャーロック
・ホームズを、新たなアクション・アドヴェンチャーシリー
ズとして展開する計画が、ワーナーから発表された。
 この計画は、『ハリー・ポッター』シリーズの最初の3作
の映画化をワーナー側の製作担当重役として手掛け、その後
に傘下の製作者として独立したライオネル・ウィグラムが進
めているもので、2002年『ドッグ・ソルジャー』のニール・
マーシャル監督と、マイクル・ジョンスンという新人脚本家
の起用も発表されている。
 物語は、原作通りヴィクトリア朝のロンドンを舞台とした
ものになるが、ホームズの特技として知られるボクシングや
フェンシングの技も織り込んで、原作よりアクションの多い
作品にするとのこと。また、助手ワトソンの存在も原作より
大きくなるようだ。なお、ウィグラムは、クリストファー・
ノーランが『バットマン・ビギンズ』で採ったようなアプロ
ーチをこの原作に対して行うとしている。
 また、映画化に並行して原作のコミックブック化も検討さ
れており、両面からの名探偵復活が考えられているようだ。
 因に、ドイルの原作に対しては、1900年以降で200本以上
の映画やテレビでの映像化があり、75人以上の俳優が名探偵
を演じているそうだが、その著作権はすでに消滅している。
しかし、今回の計画に関わるウィグラム、マーシャル、ジョ
ンスンは、いずれもイギリス人なのだそうで、今回の計画で
はドイルの子孫とも密接の連携して、正真正銘の映画化を目
指すとのことだ。またワーナーでは、今回の計画に関して、
その子孫との契約も結んでいるということだ。
        *         *
 昨年7月の第114回で紹介したスティーヴン・スピルバー
グ監督の本格SF企画について、新たな動きが報告された。
 この計画は、以前紹介したように、カリフォルニア工科大
学のキップ・S・ソーン教授が提唱するワームホール理論に
基づき宇宙と次元を越えた冒険の旅を描くというものだが、
今回はこの作品に、“Interstellar”という題名が決定し、
『プレステージ』を手掛けたジョナサン・ノーランが脚本を
担当することが報告された。
 脚本を担当するノーランは、元々は『メメント』の原作を
書いた小説家だったが、兄のクリストファーがその原作を映
画化する際の共同脚本に参加、『バットマン・ビギンズ』で
も共同脚本を担当し、その続編“The Dark Knight”も担当
している。さらに『プレステージ』では、2年を掛けて抜群
のセンスで見事な脚本を作り上げているものだ。
 そんなジョナサンの参加は、スピルバーグの計画について
も強力な助っ人になりそうだ。
 なお、ジョナサンは、その前にワーナーで進められている
“The Chicago Fire”という作品の脚本を完成しなければな
らないようだが、スピルバーグも6月撮影開始の“Indiana
Jones 4”に続いては、リーアム・ニースンがタイトルロー
ルを務める“Lincoln”の計画が進んでおり、それらを考え
ると1年以上の余裕はありそうだ。
 『2001年宇宙の旅』を越える究極SFが期待される。
        *         *
 2004年3月の第58回などで紹介した“The Green Hornet”
の映画化を、『もしも昨日が選べたら』のニール・H・モリ
ッツの製作によりコロンビアで進めることが発表された。
 この映画化については、以前にはミラマックスでの計画を
報告したものだが、結局この計画は、ワインスタイン兄弟が
ミラマックスを離れたことでキャンセルされたようだ。そし
て今回は、その権利をモリッツが獲得し、彼が本拠を置くソ
ニーでの再出発となったものだ。
 因に、作品の起源は1936年にスタートしたラジオ番組で、
西部のローン・レンジャーの遠縁という設定のマスクを着け
たヒーローが主人公。その後にコミックブックや連続活劇に
展開され、1960年代にはヴァン・ウィリアムス主演でブルー
ス・リーが助手カトー役で出演したテレビシリーズが好評を
博した。実は、今回の計画を進めるモリッツは、そのテレビ
シリーズの大ファンだったとのことだ。
 なおモリッツは、最近では『もしも明日が…』の他にも、
『ブルース・オールマイティ』の続編の“Evan Almighty”
を手掛けるなど、コメディ作品での話題作が多いが、元々は
『ワイルド・スピード』シリーズなど男性アクションが得意
分野だった製作者で、その線での期待も高まるものだ。
 またこの計画では、以前にはジョージ・クルーニー主演で
かなり進んでいたが、1997年『ピースメーカー』への出演が
決まったためにキャンセルされた経緯があり、また他にも、
マーク・ウォールバーグやジェイク・ギレンホール主演の計
画もあったそうだ。一方、ジェット・リーがカトー役で出演
するという情報もあった。
 今回はこれらの過去の経緯には縛られないものだが、リー
のカトー役は見てみたいところだ。また、ソニーでは、今年
5月で一応の終了を迎える“Spider-Man”の後釜企画として
の期待もあるようだ。
        *         *
 続けてモリッツの製作で、1981年にジョン・カーペンター
監督で公開された“Escape from New York”(ニューヨーク
1997)をリメイクする計画が発表されている。
 この計画は、『ブラックホーク・ダウン』のケン・ノーラ
ンが新たな脚本を執筆し、『300』が大ヒットを記録した
ばかりのジェラルド・バトラーが、オリジナルでカート・ラ
ッセルが演じた片目の囚人スネイク・プリスケンに扮すると
いうもので、実はモリッツ、ノーラン、バトラーをセットに
して、企画全体がオークションに掛けられていた。そして、
その権利をニューラインが獲得したということだ。
 物語は、犯罪者の急増でマンハッタン島全体が刑務所とし
て運用されるようになった未来社会(オリジナルの設定では
1997年だった)を背景に、大統領専用機が故障し、大統領を
載せた救命ポッドがその中心部に不時着したことに始まる。
そしてその身柄を守るため、成功したら無罪放免を取り引き
材料に囚人の男が救出に向かうが…というもの。
 大統領をドナルド・プレザンスが演じて、結末がちょっと
あっけなかった記憶があるが、アクション映画としては話題
になった作品だ。
 また1996年には、同じくカーペンター監督、ラッセルの共
同脚本と主演で、地殻変動で島になり犯罪者の巣窟となった
ロサンゼルスに、拉致された大統領の娘を救出に向かうとい
う続編『エスケープ・フロムLA』(設定は2013年)も作ら
れた。
 今回は、その第1作のリメイクということだが、バトラー
主演の『300』が第1週の週末だけで7000万ドルという好
スタートで、期待は高いようだ。
        *         *
 次もリメイクの計画で、1978年にジョー・ダンテが監督し
た“Piranha”の再映画化を、『サランドラ』のリメイクを
成功させたアレクサンドル・アジャの脚本と監督で進めるこ
とが、ワインスタインCo.傘下のディメンションから発表さ
れた。
 オリジナルは、1975年公開の『ジョーズ』のパロディとし
て発表されたもので、ジョン・セイルズが脚本を担当。アマ
ゾン河に生息する肉食魚が密かに軍事用に改良され、それが
リゾート地の湖に大量に放流されてしまうというもの。ジョ
ーズの強大な鮫に比べると小さなピラニアだが、集団で襲う
恐怖は抜群で、さらに1950年代のSF映画などを下敷きにし
たギャグも満載。これを見たスピルバーグが、ダンテを当時
製作中だった『トワイライトゾーン』のエピソード監督に抜
擢したという作品だ。
 また1981年には、1984年に『ターミネーター』を発表する
ジェームズ・キャメロンの監督デビュー作となる続編『フラ
イング・キラー』も製作された。
 と言う今回はオリジナルをリメイクするものだが、起用の
決まったアジャは、「僕はこの種のクリーチャーフィルムの
全てに恋している」と、心境を語っていたそうだ。アジャで
パロディというのはちょっと気になるが、オリジナルはその
スタイルで評価されたということで、スタイリッシュさでは
アジャも負けないものを持っており、その点は期待ができそ
うだ。製作は、『300』を手掛けたマーク・カントン主宰
のアトモスフィアが担当する。
 なお、アジャの今後のスケジュールでは、第129回で紹介
したドナルド・サザーランド主演による“Mirrors”の撮影
が5月1日開始の予定だが、本作のリメイクはそれより後の
計画となるものだ。またアジャを含めた、最近のホラー映画
の作家たちには、Splat Packersというグループ名称が付け
られているようだ。
        *         *
 ここからは新規の情報を紹介しよう。
 まずは、『ターミネーター3』のジョナサン・モストウ監
督と、その脚本を手掛けたジョン・ブランカトー、マイクル
・フェリスのトリオが、“The Surrogates”と題されたSF
スリラーの計画をディズニーで進めることが発表された。
 この作品は、ロバート・ヴェンディッティ作、ブレット・
ウェルデール絵によってトップ・シェルフ・コミックスから
発行されているグラフィックノヴェルを映画化するもので、
物語では、人類は家に引き籠もり、人間関係はロボットが代
行しているという未来社会が描かれている。
 この原作についてブランカトーは、「フィリップ・K・デ
ィック的な未来を描いているが、すでにインターネットでは
よく似た状況が出現しており、テーマは現代にも通用する」
としているものだ。なお脚本家の2人は、現在はロバート・
ラドラム原作の“Sigma Protocol”の脚色を進めており、そ
れが済み次第、本作に取り掛かるようだ。
 ただしモストウは、以前に第79回などで紹介したユニヴァ
ーサルの製作によるマーヴルコミックス“Sub-Mariner”の
映画化の計画にも関っており、現時点ではどちらが先になる
か、定かではないようだ。
        *         *
 次は、この夏『トランスフォーマー』が公開されるマイク
ル・ベイ監督と、同作の脚本を手掛けたアレックス・カーツ
マン、ロベルト・オーチのトリオが、“2012: The War for
Souls”というSF作品の計画をワーナーで進めることが発
表された。
 進められている計画は、ワイトリー・ストリーバーという
ベストセラー作家の同名の小説を映画化するもので、この原
作はまだ出版されていないもののようだ。物語は、学術調査
隊の研究者が、並行宇宙に繋がる出入り口を開けてしまうと
いうもの。そして、古代マヤによって予言された2012年に到
来する終末を阻止するため、主人公には並行世界の分身との
接触が求められるというものだそうだ。
 なお、原作者のストリーバーについては、2005年9月の第
94回でも紹介しているが、ローランド・エメリヒが監督した
“The Day After Tomorrow”の基礎になったという作品でも
知られており、また、現在は“The Grays”という作品が、
ケン・ノーランの脚色でソニーで映画化が進められている。
 また、カーツマン、オーチの脚本家コンビは、JJ・エイ
ブラムスの監督でこの秋からの撮影が予定されている“Star
Trek XI”の脚本も手掛けているものだ。
        *         *
 今回はこの題名がよく登場するが、『300』を監督した
ザック・スナイダーが、自身のアイデアによるゾンビ物で、
“Army of the Dead”という計画をワーナーで進めることが
発表された。
 物語の舞台は、そう遠くない未来の隔離されたラスヴェガ
ス。ゾンビが横行するその世界で、死期の迫った娘を救おう
とする父親を主人公にした作品ということだ。因に、スナイ
ダーは、ユニヴァーサル製作のリメイク版『ドーン・オブ・
ザ・デッド』で評価を得て、『300』の監督に起用された
もので、その彼が再びゾンビに挑むというのは興味を引かれ
るところだ。
 ただし、スナイダーの次回作には、アラン・モーアとデイ
ヴ・ギボンズの原作で、引退したスーパーヒーローたちがチ
ームを組み、いろいろな災害から世界を救う姿を描いたグラ
フィックノヴェル“Watchmen”の映画化が、ワーナー製作で
夏の後半からの撮影、2008年の公開予定になっており、ゾン
ビの映画化はその後になりそうだ。
 また、スナイダーは、夫人のデブラと共にワーナー傘下で
プロダクションを設立。今回の“Army…”もそのプロダクシ
ョンで製作されるものだが、さらに同プロダクションでは、
スナイダーのアイデアによる“Sucker Punch”という題名の
アクション−ファンタシーの計画も進めているそうだ。
        *         *
 最後はキャスティングの情報で、
 まずは、撮影開始された“National Treasure: The Book
of Secrets”に、“The Queen”でオスカー主演女優賞を受
賞したばかりのヘレン・ミレンと、エド・ハリスの出演が発
表された。因に物語は、ニコラス・ケイジ扮するトレジャー
・ハンターのベン・ゲイツが、リンカーン暗殺事件の謎に挑
むというものになるようで、ハリスは悪役を演じるそうだ。
またミレンは、ゲイツの母親役ということになっている。こ
の他、ダイアン・クルガー、ジャスティン・バーサ、ジョン
・ヴォイド、ハーヴェイ・カイテルも前作と同じ役柄で再登
場する。全米公開は12月21日。
 “Harry Potter”シリーズ最後の2作に、前回報告したダ
ニエル・ラドクリフに続いて、ルパート・グリントとエマ・
ワトスンも契約を結んだことが発表された。実は、ワトスン
については、推定で390万ドルのオファーがされていたもの
だが、彼女自身がいつまでも「ハリー・ポッターの女の子」
と言われることに嫌気が差しているという事前の情報も流さ
れ、去就が心配されていた。しかしこれで3人揃って全作を
完遂することになりそうだ。
 そろそろ撮影開始の情報も流れそうな“Sin City 2”に関
して、ジョニー・デップとアントニオ・バンデラスに出演の
期待が高まっている。2人はロベルト・ロドリゲス監督の親
友ということで、特にデップに関しては、前作でもジャッキ
ー・ボーイの役で出演の可能性があったが、スケジュールの
都合で実現しなかったとのこと。今回は、前作より良い役を
用意して待っているそうだ。2人とも契約は結ばれていない
が、今までの例から見て撮影に多くの時間が掛かるとも思え
ないもので、何とか少し暇を作ってもらいたいものだ。


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井口健二