井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2007年02月20日(火) ゴーストライダー、ダウト、フライ・ダディ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ゴーストライダー』“Ghost Rider”
初代は1950年に登場したというマーヴルコミックスの人気ヒ
ーローの映画化。と言っても今回の映画化は、1972年に登場
した2代目の方を主人公にしたものだが、でも初代の話もち
ゃんと登場する。
主演のニコラス・ケイジは、ハリウッド一のコミックスコレ
クターと言われているようだが、何故か今まで彼自身がコミ
ックスヒーローを演じることはなかった。そのケイジが満を
持して挑んだ作品ということだ。
主人公のジョニー・ブレイズはスタントライダー。その仕事
は尊敬する父の跡を継いだものだったが、彼は若い頃に悪魔
と契約するという過ちを犯していた。その契約は長く履行さ
れないでいたが、ある日、再び彼の前に悪魔が現れる。
悪魔の命令は、地獄からの逃亡者を倒し、奴らを地獄へ戻す
こと。そのため彼はゴーストライダーへと変身し、炎のバイ
クを駆って夜の街を疾走する。
自ら悪魔の手先でありながら悪魔と闘う。ちょっと矛盾した
感じだが、悪魔の側にもいろいろ事情があるわけで、その辺
は判らないでもない。しかも、悪魔との契約のおかげで、普
段は不死身というのは、それなりに魅力的なキャラクターで
はある。
ただし、今回は地獄からの逃亡者が4人もいて、それを全部
倒すものだから、それぞれの対決があっという間で、ちょっ
と淡泊な感じはした。まあシリーズ第1作では、主人公のキ
ャラクターの説明にも時間が掛かるし、仕方ない面もあるの
だが…
とは言え、主人公が演じるド派手なスタントや、炎のバイク
の疾走シーンなどにはそれなりの快感もあるわけで、そんな
ものを満喫できれば、それでも良いのではないかという感じ
の作品だ。それに物語の設定にも破綻がなくて、納得できる
ものだった。
ヒロインは、『最後の恋のはじめ方』のエヴァ・メンデス。
また、主人公と契約を結ぶ大悪魔メフィスト役に、ライダー
と名が付けばこの人ということでピーター・フォンダ。さら
に西部劇のヴェテラン、サム・エリオットが成程という役で
出ている。
一昨年の『コンスタンティン』、昨年の『イーオン・フラッ
クス』と、毎年この季節にはちょっと捻ったファンタシーが
公開されるのが定番になってきた。それぞれ、出演者らの思
い入れがたっぷりの作品で、この流れが根付いてくれると面
白いと思うのだが…
なおエンディングには、主題歌としてGhost Riders in the
Skyが流れるが、懐かしさ一杯で嬉しくなった。

『ダウト』“Slow Burn”
大都会の犯罪組織と利権争いを巡るサスペンスミステリー。
レイ・リオッタが主演と製作総指揮も兼ね、共演にはLLク
ールJが本名のジェームズ・トッド・スミスでクレジットさ
れている。
脚本監督は、『ホワイトハウスの陰謀』等の脚本家で、本作
で監督デビューしたウェイン・ビーチ。2005年のトロント映
画祭で正式上映され絶賛を浴びた作品だそうだ。
主人公は、市長選への出馬も噂されるとある大都会の地方検
事。しかしその街には、犯罪組織や人相も不明の黒幕などが
おり、それらを一掃することが市長選勝利への鍵となってい
る。しかも街の繁華街の近くの広大な公団所有地を巡る利権
も動いている。
そんなある日、彼の片腕とも言える女性検事補が殺人の現行
犯として逮捕される。彼女はレイプされそうになっての正当
防衛を主張するのだが…彼女を信じて捜査を進めようとする
主人公の前に、彼女の意外な側面を見せつける証言者が現れ
る。そして午前5時に何かが起きるという謎の情報が飛び交
い始める。
原題の意味は良く判らないが、邦題はその通り、つまり登場
人物の誰が真実を話し、誰が嘘を吐いているのか、最後の最
後まで一寸先も判らないという展開の作品だ。その辺の面白
さはたっぷりとある。
ただまあ、何しろ主人公は振り回されっぱなしで、その間リ
オッタのまぬけ面が繰り返し出てくるということになると、
こんな奴が地方検事で市長選にも出るのか?という気分にも
なってしまうところで、適役は間違いないが…という感じで
はあった。
スミス以外の共演者では、『エンタープライズ』でバルカン
人トゥポル役のジョリーン・ブレイロック、『キンキーブー
ツ』のドラッグクィーン役でゴールデン・グローブ賞候補に
もなったキウェテル・イジョフォーなど。人種問題などもう
まく取り入れられた作品だ。
製作は、『ショートサーキット』の2作に出演していたフィ
ッシャー・スティーヴンス。最近別の作品でも製作者として
名前を見掛けたが、頑張っているようだ。
なおエンドクレジットによると、本編中に『エンタープライ
ズ』の映像が出ていたようだが、確認できなかった。

『フライ・ダディ』(韓国映画)
在日韓国人作家の金城一紀原作による映画化。
同じ原作からは、2005年に岡田准一、堤真一主演による日本
での映画化があり、実はその時にも試写状はもらっていたが
時間の都合で観られなかった。今回は、韓国での映画化をよ
うやく観ることが出来たものだ。
主人公は中年サラリーマン。妻と一人娘の家族がいて、そろ
そろ部長に昇進も夢ではない順風満帆の男だ。ところがその
一人娘がカラオケで暴漢に襲われる。そしてその入院先に男
が訪ねてきて、謝罪もそこそこに高飛車な示談を申し出る。
実はその犯人は、高校のボクシングチャンピオンを目指して
おり、その将来を危うくするような事件が明るみに出ること
を恐れていたのだ。その上、相手は主人公の勤め先まで調べ
上げ、政治力まで使った圧力を掛けてくる。
その状況に、一旦は折れてしまった主人公だったが、家族を
守れなかったという後悔の念が残り続ける。しかも娘は、身
体の傷は癒えても、対人恐怖のために外出できないという心
の傷で、退院が出来なくなる。
この事態に主人公は、犯人への復讐を誓って、犯人の通う高
校に乗り込むが、犯人のところにたどり着く以前に別の生徒
の一撃で倒されてしまう。しかしその父親の意気を感じた生
徒たちが復讐への協力を申し出る。こうして父親の猛特訓が
始まる…というものだ。
この父親役を2005年9月に紹介した『ビッグ・スィンドル』
等のイ・ムンシクが演じ、彼を特訓する高校生を、日本映画
の『ホテル・ビーナス』がデビュー作というイ・ジュンギが
演じている。なお、イ・ムンスクは、撮影前に体重を15kg増
やして中年男を演じ、半月の撮影中にその体重を元に戻した
と言うことで、その風貌の変化が見事だった。
日本での映画化がどのようなものであったかは判らないが、
堤の主演だと最初からそこそこ強そうな感じもするが、イ・
ムンスクの前半の容姿は小太りで、確かに小心者の雰囲気が
ある。それが見事に変身して行くのだから、本当に映像から
納得できる感じだった。
それに、やはり自分が娘を持つ父親としては、この主人公の
心情も良く判るもので、さらにその後の頑張りぶりには心底
から感銘してしまうところがある。しかもその頑張りが、実
に巧みに映像化されていて、その辺も見事な作品だった。
コメディタッチで、いわゆる感動作というものではないが、
こういう作品のほうがずっと素直に感動できる気がした。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二