※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 最初は、前回約束した“The Prisoner”について、もう少 し詳しく紹介しておこう。 “The Prisoner”(邦題:プリズナーNo.6)は、1967年に 17話だけ製作されたイギリス製のテレビシリーズで、アメリ カでは1968年にCBSテレビで放送され、日本では1969年の 3月からNHKで放送されたものだ。 主演はパトリック・マッグーハン。彼は、1961年放送開始 の“Danger Man”(秘密命令)というモノクロ30分のシリー ズで、ジョン・ドレイクという名のNATOのスパイ役を演 じて人気を得、やがてそれが1964年放送開始のカラー60分シ リーズ“Secret Agent”(秘密諜報員ジョン・ドレイク)に 発展してアメリカでも知られるようになる。 因に“Secret Agent”というのはアメリカでの題名で、イ ギリスでは新シリーズも“Danger Man”のタイトルで放送さ れていたようだ。そしてこのシリーズは、アメリカで付けら れた主題歌“Secret Agent Man”も大ヒットするなど話題と なり、マッグーハンの人気を確定させた。 その人気を背景に、自らの製作総指揮、主要なエピソード では脚本監督も務めて発表されたのが、“The Prisoner”と いうシリーズだった。 物語は、一人の秘密諜報員と思われる男が激昂し、辞表を 叩き付けるところから始まる。そして彼の記録カードを抹消 する映像が続くのだが、帰宅した男は催眠ガスで眠らされ、 目覚めるとリゾート地を思わせる小さな家の点在する「村」 と呼ばれる場所に幽閉されている。そこでは個人の名前は使 われず、住民たちは番号だけで呼ばれる。そして、主人公の 呼び名はNo.6とされる。 村は姿を見せないNo.1によって支配されているらしいが、 実際はNo.2と呼ばれる人物が全てを仕切っている。しかしそ のNo.2は、エピソードごとに人物が変わってしまうような存 在だ。そんな中でNo.6は、毎回変わるNo.2から、辞表を提出 した理由を問い詰められるのだが… 主人公にとっては、その場所が敵国の施設で母国の秘密を 探ろうとしているのかも知れず。あるいは今まで所属してい た組織の施設で忠誠心を試されているのかも知れない。しか し、いずれにしても彼の持つ秘密は絶対に明かしてはいけな いものだ。そんな状況下で主人公は、毎回No.2の裏を掻いて 脱出を試み続けるというお話だった。 実際、物語は不条理劇とも言えるエピソードの連続で、中 でも主人公の脱出を最後に阻止するRoverと呼ばれる白い巨 大な球体(吹き替えで「オレンジ警報」というのは覚えてい るが球体の名前は記憶にない)の存在は、その象徴とも言え た。また、No.2が情報を聞き出すのに用いる手口も、かなり 奇想天外なものが実行されていた。このような内容から、こ のシリーズはスパイものと言うよりはSFとして評価される ことが多く、当時出版されたノヴェライズもSF作家によっ て書かれたものだ。 一方、製作の時期からこのシリーズは“Secret Agent”= “Danger Man”の続きとの見方もされ、実際上記のノヴェラ イズでは、主人公の本名はジョン・ドレイクとなっていた。 また、今回調査した中では、“The Prisoner”のイギリスで の放送は1967年9月29日から翌年2月2日までされたものだ が、実はその間の1月5日と1月12日には“Danger Man”の 最終2話の放送も行われている。 この2話は、1964年にスタートした番組の第3シーズン用 として1966年に製作されたものだが、番組がキャンセルされ たために以降の製作は中止され、1966年に2話合体して単発 で放送されたもののシリーズとしては放送されていなかった ようだ。その2話が突如放送されているものだが、実はこの 中には“The Prisoner”にも登場する同じ役名のキャラクタ ーが同じ俳優によって演じられているものもあるということ で、製作者でもあるマッグーハンは否定しているが、No.6= ジョン・ドレイク説はかなり固いようだ。 因にこの2話は、題名が“Koroshi”と“Shinda Shima” とされており、物語の舞台は日本。『金星ロケット発進す』 などの国際女優谷洋子も出演していたというものだ。 と言う、謎に満ちたシリーズの映画版が計画されているも のだが、実は、この計画が報告されたのは今回が初めてでは ない。1999年11月には、『コン・エアー』と『将軍の娘』で ヒットを連発していたサイモン・ウェストの監督で、映画版 の計画が発表された。この時にはマーク・ローゼンタール、 ローレンス・コナー、クリス・カマリーが脚本を書き、主演 には『ワイルド・スピード2』に出演する以前のタイリーズ ・ギブスンの起用も噂に上っていた。しかし、計画は実現に 至らずウェスト監督は2001年の“Lara Croft Tomb Raider” に行ってしまうことになる。 その計画が再燃してきたものだが、今回ユニヴァーサルか ら発表された計画によると、監督には、『バットマン・ビギ ンズ』と、新作の“The Prestige”が10月27日に全米公開さ れるクリストファー・ノーランが起用される。また脚本は、 1995年の『12モンキーズ』を手掛けたジャネット&デイヴ ィッド・ピープルズのコンビが当るということだ。因に、デ イヴィッドは1982年の『ブレード・ランナー』の脚色を手掛 けた脚本家の一人でもある。 『メメント』『インソムニア』の作品歴もある監督のノー ランについては適材の感じがする。一方、脚本家のコンビに ついても、『12モンキーズ』は、1962年に発表されたクリ ス・マルケル監督による中編映画『ラ・ジュテ』の長編化リ メイクだが、オリジナルの特異な雰囲気を長編化にも見事に 再構成して見せたもので、その手腕は期待できるものだ。 配役などは未発表だが、いずれにしても、ノーラン監督は 来年撮影の“The Dark Knight”の後に取り掛かるというこ とで、製作は来年以降、期待して待ちたい。 ちょっと長々と書いてしまったが、待望の作品ということ でご容赦ください。 * * 次は、前回の更新直後に飛び込んできたニュースで、6月 15日付第113回で紹介したティム・バートン監督、ジョニー ・デップ主演によるミュージカル“Sweeney Todd”の映画化 が実現されることになった。しかも、以前に懸念したワーナ ーとの関係に関しては、何とドリームワークスとワーナーの 共同で映画製作を進めるということだ。 ここに至る経緯については前の記事を参照していただくと して、ここでは追加の情報を一つ。実は、今回の報道の直前 に、デップがオリジナルのミュージカルの作曲家スティーヴ ン・ソンドハイムの前でヴォイステストを受けたという情報 が流れていた。デップは、13歳の時にロックバンドを結成、 ロサンゼルスにはミュージシャンを夢見てやってきたという 経歴が発表されているが、映画で歌を披露したことはほとん どなく、昨年の『コープス・ブライド』でも他の配役は歌が あったが、デップの役にはなかったものだ。 しかし、音楽に関する素養はあると思われていたのだが、 今回、特に作曲家が心配したのは、彼の歌い方がロックの歌 唱法に陥っているのではないかということだったようだ。そ のテストの結果について作曲家からの発言は紹介されていな いが、いずれにしてもデップの配役は、『ウェストサイド物 語』なども手掛けた75歳のベテラン作曲家のお墨付きで決定 されたようだ。 撮影は来年2月に開始され、公開は来年の秋の予定。また 配給は、アメリカ国内をドリームワークス、海外はワーナー が担当することが発表されている。 * * ところでデップの出演予定については、7月15日付第115 回で報告した“I Am Legend”に関しても噂は消えていない ものだが、こちらの撮影は、今年9月23日から来年3月31日 までという異様な長丁場が発表されている。この半年にも及 ぶ撮影期間の意味は、主人公以外の出演者がやせ衰えて行く 姿を描くなどの理由は考えられるが、それにしても最近のハ リウッド映画では珍しいこととされている。 ということで、主人公とともに活動する生き残りの一人を 演じるとされているデップの出番は、カメオということなら この期間の中のどこかでということになるのだろうが、これ は実際に行われるまでちょっと(?)となりそうだ。 もう一つデップ関係で、来年5月に公開される『パイレー ツ・オブ・カリビアン』の第3作の題名が、“The Pirates of the Caribbean: At Worlds End”に決まったようだ。こ の副題では当初から“At World's End”というのが噂されて いたものだが、最終的に「'」が取れて決まったということ だ。といってもこの「'」、付いていれば「世界の果て」と いう意味になるが、取れると「世界の終わり」の意味にもな りそうで、お話の内容がそのどちらなのか、ちょっと気にな るところだ。 * * 次も続報で、今年1月1日付第102回で紹介したイアン・ ソフトリー監督によるファミリーファンタジー“Inkheart” の計画が進み始めている。 物語は、以前にも紹介したように、小説の文章を読み上げ ることでその登場人物を実在化させてしまう能力を持つ父親 と、その娘を巡るもので、ある日その父親が誤って実在化さ せてしまった悪人に誘拐され、娘が現実の友人と物語の中の 友人たちの助けを借りて、父親の救出に向かうというもの。 そして、その父親役に『ハムナプトラ』ブレンダン・フレ ーザーが発表され、さらにダストフィンガーという名前の登 場人物(fire-eaterと紹介されていた)が、『ダヴィンチ・ コード』のポール・ベタニーにオファーされているというこ とだ。 さらに主人公の少女役には、9月9日からイギリスでオー ディションを行うと発表されている。製作のニューラインで は、今月撮影開始の“The Golden Compass”でも大掛かりな オーディションを行ったばかりだが、またやるようだ。因に 原作は、ドイツ人作家のコーネリア・ファンケが発表したも ので、昨年の秋には第2作の“Inkspell”が発表され、来年 第3作の“Inkdawn”が発表予定とのこと。こちらも3部作 になるようだ。 一方、“The Golden Compass”の撮影は、クリス・ウェイ ツ監督の許で9月4日に撮影開始されるが、こちらもオーデ ィションで選ばれた主演のダラス・ブルー・リチャーズを囲 んで、ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、エヴァ ・グリーンらの出演が発表されている。なお新007のクレ イグが演じるのは、主人公ライラの叔父の役で、この役柄は 原作では3部作の全てに登場するようだ。また、クレイグと グリーンは“Casino Royale”に続いての共演ということで も話題になっている。因にこの役は、当初ポール・ベタニー にもオファーされていたようだ。 “The Golden Compass”の公開は、2007年12月に予定され ている。 * * 以下は、短くニュースを纏めて行こう。 『シカゴ』では味わいのある歌声を披露したジョン・C・ ライリー主演で、架空のミュージシャンの伝記映画の計画が ソニーで進められている。 この作品は、“Walk Hard”と題されているもので、これ は説明するまでもなく今年のオスカーを賑わせた“Walk the Line”からのインスパイアだが、直接のパロディというわ けではなく、最近次々に発表される音楽伝記映画の全体を網 羅したコメディということだ。脚本監督は、ベン・スティラ ーと共に『オレンジカウンティ』などの作品を発表している ジェイク・カスダン。物語的には、浮き沈みの激しい芸能界 を生き抜く一人のミュージシャンの生涯を描くということだ が、ライリーは劇中で歌はもちろんハーモニカの演奏も披露 するということだ。 なおライリーは、ウィル・フェレルと共演の“Talladega Nights”がこの夏に大ヒットを記録したばかりだが、同じコ ンビでは、いい年をしたそれぞれの親が結婚して、突然義兄 弟になってしまった男2人を描く“Step Brothers”という コメディの計画もソニー進められている。 * * 昨年ロマン・ポランスキー監督で『オリバー・ツイスト』 が映画化されたが、同じディケンズ原作の『クリスマス・キ ャロル』の映画化が、ラッセ・ハルストレム監督で計画され ている。 物語は、強欲なスクルージーという男が、クリスマスの夜 に3人の幽霊の訪問を受け、それぞれ過去、現在、未来の自 分の姿を見せられて改心して行くというもの。クリスマスス トーリーの定番として1930年代から繰り返し映画化されてい る作品だが、それを『サイダーハウス・ルール』や『シッピ ング・ニュース』などの骨太の作品で知られる監督でという のが面白いところだ。また、過去の作品ではジョージ・C・ スコットやパトリック・スチュアートが演じたスクルージを 誰が演じるかも楽しみになる。 なおハルストレムの作品では、『カサノヴァ』に続いて、 リチャード・ギア主演の“The Hoax”という作品がミラマッ クスで待機中になっている。 * * ワーナーから“Fool's Gold”と題されたアドヴェンチャ ー・コメディの計画が発表された。 この作品は、『メラニーは行く!』などのアンディ・テン ナント監督で進められているもので、主演は『10日間で男を 上手にフル方法』以来の共演となるマシュー・マコノヒーと ケイト・ハドソン。2人は夫婦のトレジャー・ハンターだっ たが、ある宝物を8年探し続けたが成果が上がらず、それを きっかけに夫婦生活も破綻してしまう。ところが離婚した後 でそれぞれが謎解きに成功。しかし最後の謎の解明には、お 互いが持っている鍵が必要になるというもの。 前回、続編の情報をお伝えした“National Treasure”の パロディみたいな感じだが、元々はジョン・クラフリンとダ ン・ゼルマンによるオリジナル脚本があり、ワーナーではそ の権利を2001年から保有していたとのこと。そして今回は、 その企画をテンナントが立て直し、再出発となったものだ。 ロマンティックコメディの代名詞のような顔ぶれだが、楽し い作品を期待したい。 * * 前回は日本人作家の原作を映画化する計画を紹介したジョ ージ・A・ロメロ監督の新たな情報で、再びゾンビ映画を手 掛けることが発表された。 この作品は、“George Romero's Diary of the Dead”と 題されているもので、ロメロが脚本と監督を担当。内容は、 森の中でホラー映画の撮影をしていた大学生たちが、本物の ゾンビと出会ってしまうというものだ。パロディではなく、 ドキュメンタリータッチを取り入れた「シネマ・ヴェリテ」 スタイルの作品になるとしている。 ロメロのゾンビ作品では、昨年『ランド・オブ・ザ・デッ ド』が公開されたが、大手映画会社で行ったその映画化を実 現するまでのトラブルが身に染みたのか、今回はインディー ズ系での製作が報告されており、製作にはアートファイアと いうプロダクションが全製作資金を提供するとされている。 撮影は、ちょっと情報が錯綜しているが、10月11日にトロ ントで撮影開始という報告もあるようだ。 * * JJ・エイブラムス監督で進められることは決定し、予告 ポスターも登場した“Star Trek XI”に、レナード・ニモイ とウィリアム・シャトナー出演の情報が流されている。 これは、ニモイがトロント・サンのインタヴューに答えて いるもので、「パラマウントの映画製作のトップが僕のエー ジェントに打診してきた」ということだ。そしてニモイは、 「これは至極当然のことだ。これは僕の推測だけど、彼らは 僕とビル(シャトナー)にフラッシュバックスタイルのドラ マのきっかけを作ってもらいたいのだと思うよ」とも語って いるようだ。 今回の“XI”の物語が、カークとスポックの出会いを描く ということはすでに報告されているが、それにオリジナルの 2人の登場は鬼に金棒というところだ。またパラウントとし ては、トム・クルーズとの契約解除で、折角のシリーズ作品 “Mission: Impossible”を失った所だけに、“Star Trek” に掛ける意気込みも違ってきそうで、ファンには楽しみなこ とになりそうだ。 * * 来年5月に公開される“Spider-Man 3”に関して、急遽再 撮影が行われるという情報が流れている。 これは、主演トリオの1人ジェームズ・フランコがインタ ヴューで述べたもので、それによると、「(自分の)次の撮 影予定は、来月(9月)に行う“Spider-Man”のreshoot」 だとのこと、またフランコは、「監督(サム・ライミ)はも っとアクションが欲しいと考えたようだ」とも語っている。 これには8月に行われたテスト上映での観客の反応を見ての こともあるようだが、公開までにはまだ半年以上あり、じっ くりと仕上げてほしいものだ。 一方、直接映画製作に乗り出しているマーヴルの新CEO ケヴィン・フェイジからは、“Spider-Man”の映画シリーズ を継続する発言も飛び出している。これはCEOが、MTV の行ったインタヴューに答えたもので、それによると「シリ ーズを続ける考えはある。実際に次回作のアイデアも生まれ ている。原作のコミックスには50年の歴史があるから、映画 も今後20年は続ける物語を持っている」とのことだ。 ただし継続には俳優の問題もあるわけだが、それについて CEOは、「映画は1本、1本、その時々に検討すればいい ものだ」と、現状にはこだわらない姿勢も示したようだ。 * * 最後に、ちょっと希望の沸く情報で、ドリームワークスが 進めているスティーヴン・キング、ピーター・ストラウヴ共 著の“The Talisman”の映画化に、マイクル・J・フォック スの出演が噂されている。 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などで人気のあった フォックスは、難病に冒されて芸能活動を休止していたが、 最近“Atlantis”というプロジェクトに参加しているとの情 報も流され、俳優業への復帰も可能性が出てきているという ことだ。そしてその作品として、“The Talisman”が挙がっ ているということだが、回復といっても完治する病気ではな いはずで、撮影にはかなり制約はあることになりそうだ。し かし、ドリームワークスは『BTTF』を製作したスティー ヴン・スピルバーグの許で体制が整えられており、制約を加 味して万全の体制を作ることも可能と考えられる。 物語は、1人の少年が死の床にある母親を救うためにパラ レルワールドを旅するというもの。原作の発表直後から一時 はスピルバーグの監督も計画されるなど、映画化も待望され ている作品だが、これを機会に、一気に実現に進んでもらい たいものだ。
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