※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずはこの話題から。 『ブレードランナー』の原作者として知られるアメリカの SF作家フィリップ・K・ディックの伝記映画が計画され、 その作家役に『シンデレラマン』や“Lady in the Water” のポール・ギアマッティが交渉されている。 ディックは1982年、彼の原作『アンドロイドは電気羊の夢 を見るか?』を映画化した『ブレード…』の完成を待たずに 他界したが、その死後になって、大作だけでも『トータル・ リコール』から『マイノリティ・リポート』、そして新作の “A Scanner Darkly”など、多数の映画化の原作を提供し、 映画ファンにも一躍その名前を轟かせた。 そのディックの伝記映画が初めて遺族の公認を得て製作さ れるものだが、作品には、いわゆる伝記映画とはちょっと違 った趣向が凝らされるようで、具体的にはデュックの未完と なった遺作“The Owl in Daylight”をモティーフにして、 その小説のキャラクターなどが登場して彼の人生が描かれる ということだ。なお、脚本には作家ハンター・S・トンプソ ンの半自伝的作品とも言われる“Fear and Loathing in Las Vegas”(ラスベガスをやっつけろ)などを手掛けたトニー ・グリゾーニが契約している。 題名や監督は未発表だが、製作は、カンヌで話題になった 『バベル』や、前回紹介した“Case 39”を手掛けるアノニ マス・コンテントが行っている。因に同社の作品は、基本的 にはパラマウント系の配給になるようだ。またギアマッティ は、出演が決まると製作者にも名を連ねることになる。 小説家を描いた作品ということでは、『カポーティ』が、 主演のフィリップ・シーモア・ホフマンにオスカーをもたら すなど話題になっているが、この後には、2005年10月1日付 第96回などで紹介したベアトリス・ポッターの生涯をルネ・ ゼルウィガーの主演で描く“Miss Potter”の公開も、全米 では年内に予定されており、さらにハンター・S・トンプソ ンの別の自伝的作品“The Rum Dialy”もジョニー・デップ の主演で計画されるなど、注目を浴びそうだ。 * * お次は、2001年以来のシリーズ第3作“Rush Hour 3”の 撮影を9月に控えるブレット・ラトナー監督の次の計画で、 1978年にフランクリン・J・シャフナー監督で映画化された アイラ・レヴィン原作“The Boys From Brazil”(日本未公 開)のリメイクを行うことが発表された。 『ローズマリーの赤ちゃん』や『ステップフォードの妻た ち』の原作者としても知られるレヴィンの原作は、1970年代 を背景に、ナチスの残党が第3帝国復活のため南米で行って いた恐怖の実験を暴くというもので、当時はまだ研究の端緒 だったクローン技術も背景となっていた。そして1978年の映 画化では、ローレンス・オリヴィエとグレゴリー・ペックと いう英米の名優の共演も話題となったものだ。 その現代化リメイクを今回は目指すものだが、原作の物語 は1970年代の時代背景に完璧にフィットしているということ で、その現代化にはちょっと神経を使う必要がありそうだ。 その脚色は、リチャード・ポッターとマシュー・ストラヴィ ッツというコンビが担当することになっている。 ただしラトナーは、「オリジナルは素晴らしい作品、でも 今ならクローンの説明などは不要だね」と語るなど、勝算は 見ているようだ。またラトナーは、“Red Dragon”のような サスペンス作品のリメイクもそつなくこなした実績があり、 今回のような題材にも不安はない。 製作はニューライン。なお、“Rush Hour 3”の全米公開 は来年8月10日と発表されており、本作はそれに続けての製 作が期待されている。因に、今年公開の“X-Men 3”を手掛 けたラトナー監督には、ヒュー・ジャックマンが“X-Men” のスピンオフ作品の監督も期待していたものだが、この分で はそちらはちょっと難しくなりそうだ。 一方、今回はパリが舞台となる“Rush Hour 3”に関して は、ジャッキー・チェンとクリス・タッカーの2人は当地の 中国系シンジケートと闘うことになるようだが、この作品に ロマン・ポランスキー監督の出演が計画されている。 この計画は、ポランスキーがパリ在住であることを知った ラトナーが、ポランスキーのためのキャラクターを創造して オファーをしたもので、会食したラトナーが直接交渉をして 了解を得たようだ。なお、ポランスキーは1967年の監督作品 “The Fearless Vampire Killers”(吸血鬼)には自ら主演 もしており、ちょっと特異な風貌も含め登場人物としても魅 力がある。ラトナーがどのようなキャラクターを創造したか も楽しみになりそうだ。 * * もう1本リメイクの情報で、ボリス&アルカジー・ストル ガツキー兄弟原作『路傍のピクニック』(英題名“Roadside Picnic”)の映画化の計画が発表されている。 この原作は、1979年にアンドレイ・タルコフスキー監督が 英語題名“Stalker”(ストーカー)として映画化した作品 と同じもので、今回はこれを『ステルス』などのアクション 映画でお馴染みのニール・モリッツ製作、2005年9月29日付 で『ダウン・イン・ザ・バレー』という作品を紹介している デイヴィッド・ヤコブスンの脚色・監督で、リメイクしよう というものだ。 1979年の映画化は、宇宙から飛来した謎の物体の着陸によ り、空間などが歪められた「ゾーン」と呼ばれる禁断の地域 (中心に行くと望みが叶うとの噂もある)を舞台に、その地 域の中を案内するストーカーと呼ばれる男たちと、その地域 を研究しようとする研究者たちの姿を描いていた。その作品 を、今回の紹介文によると、futuristic-crime-story(未来 的犯罪物語)として描くということで、まあタルコフスキー の映画化でも、ストーカーたちは警備の目を掠めて侵入して いたのだから犯罪者ではあった訳だが、ちょっと違った方向 性の作品になるのかも知れない。 因に、タルコフスキー監督のSF作品では、すでに1972年 発表の“Solaris”(ソラリス)がスティーヴン・ソダーバ ーグ監督によって2002年にリメイクされているが、今回はそ れに続いてのハリウッドの挑戦ということになりそうだ。 なお、ヤコブスン監督の前作『ダウン…』に関しては、時 代に立ち向かえない人々の存在に目を向けた作品の印象があ り、その点ではタルコフスキーの映画化にも通じる部分があ るようにも感じる。またタルコフスキーの映画化では子供の 存在がキーになっていた記憶もあるが、『ダウン…』でも子 供の描き方には優れていた印象も持つもので、その点でも期 待ができそうだ。 配給はソニー傘下のコロムビアが担当する。 * * リメイクの次はシリーズの話題をいくつか紹介しよう。 まずは、昨年春の大ヒット作『ナショナル・トレジャー』 の続編“National Treasure 2”について、2007年11月29日 の全米公開を目指して、今年の10月から撮影が行われること が報告された。 この続編については、前作の公開直後からそれを期待する 声が強く、ジョン・タートルトーブ監督からもそれに関する 発言は幾度となく発せられていたが、今回はついに正式に報 告となったものだ。因にこの報告は、監督がLAデイリー・ ニュースのインタヴューに答えているものだが、ここまで詳 細に報告されれば、正式と考えていいものと言える。 そのインタヴューによると、監督らはプレプロダクション を開始したということで、すでにニコラス・ケイジ、ジャス ティン・バーサ、ダイアン・クルガー、ジョン・ヴォイト、 ハーヴェイ・カイテルの再出演が決まっているようだ。この 再出演は、監督の言によると「死んだり監獄に入っている奴 以外は全部」ということで、それに従うとショーン・ビーン の再出演はないようだ。 物語は、主人公たちが再び宝捜しを始めるというもので、 その探索の行程はアメリカ国内だけでなく、世界を巡ること になるかも知れないとのこと。それ以上の細かいことは言い たくないが、そこに大統領の巨大彫刻で有名なラシュモア山 が出てきてもおかしくはない…というもののようだ。 因に、以前に紹介した監督の発言の中では、続編の題名は “International Treasure”にしたいとか、中国でのプレミ アの際には「中国を舞台にしたい」などとも言っていたが、 差し当って第2作の宝物はアメリカ国内に在るようだ。しか し、その宝物の在処を探すために、世界中の歴史的なポイン トを巡る冒険が繰り広げられる、ということになりそうだ。 なお全米公開日については、まだ決定したものではない。 * * お次は、フォックスが1995年公開の前作“Die Hard With a Vengeance”から12年ぶりとなるシリーズ第4作を、9月 に撮影開始、来年7月4日の週に公開することを発表した。 この作品には、ブルース・ウィリスが不運なニューヨーク警 官ジョン・マクレーンとして再び登場するものだ。 『ダイ・ハード』シリーズは、1988年にジョン・マクティ アナン監督による第1作が公開され、1990年にレニー・ハー リン監督による第2作が公開。そして第3作は再びマクティ アナンが監督した。そして途切れていたものだが、その後も 第4作の計画は幾度か浮上し、特に2003年にウィリス主演、 アントワン・フークワの監督で映画化された“Tears of the Sun”は、当初は“Die Hard 4”として企画されたものの、 フォックスが断念したために、ウィリスが企画を買い取って 別の会社で実現したものと言われたりもしたものだ。 そのシリーズが再び始動したもので、今回はマーク・ボマ ックの脚本から、『アンダーワールド』のレン・ワイズマン が監督することになっている。題名は、“Live Free or Die Hard”となる。 物語は、合衆国のコンピュータネットワークがサイバーテ ロに襲われる…というもの。これをいたってアナログ人間の マクレーンが解決するというのが主題となるものだが、この ハイテクvs.アナログ警官というのが、『ダイ・ハード』の 基本路線だということだ。なお物語は7月4日の独立記念日 に密接に絡んでいるそうで、このためその日には絶対に上映 されていなくてはならないとのこと。そこで6月29日の公開 日が決定されているようだ。 * * この他、これも1998年からは9〜10年ぶりとなる“Lethal Weapon 5”の計画について日本でも報道がされたようだ。 ただしこの情報は、メル・ギブスンの個人的なトラブルに絡 んで出てきたもので、映画会社はワーナーになるものだが、 あまり軽々に進められるというものでもない。また今回の情 報では、リチャード・ドナー監督の名前も出ておらず、かな り怪しげな情報と言えそうだ。 また、今秋第21作の“Casino Royale”が公開されるジェ ームズ・ボンドシリーズは、早くも第22作の公開日が2008年 5月2日と発表されたが、同時に報告されていた監督のロジ ャー・ミッチェルが創造上の意見の相違を表明し、契約交渉 が止まっているという情報が伝わっている。この計画では、 主演のダニエル・クレイグは決定、脚本もすでに出来上がっ ているはずで、後は監督だけの問題だが、どうなりますか。 撮影は年末に開始の予定のようだ。 * * 続いては、これもシリーズと言えばシリーズだが、前日譚 の話題で、1985年に第1作と1989年にも続編が作られたグレ ゴリー・マクドナルド原作の“Fletch”シリーズを再開する 計画が進み始め、テレビで“Friends”や“Spin City”など の人気シリーズを手掛けてきたビル・ローレンスが、脚本の 執筆と、本作で監督デビューすることが発表された。 オリジナルの映画化は、マイクル・リッチー監督、チェヴ ィー・チェイスの主演で製作されたもので、地方紙の記者の アーウィン・フレッチャーが取材の過程で出くわすいろいろ な事件が描かれた。特に第1作の“Fletch”(フレッチ/殺 人方程式)では、チェイス主演のコメディでありながら、麻 薬組織と対決して事件を解決するなどミステリーとしても評 価されたものだ。 しかし、第2作の“Fletch Lives”は、確か南部を舞台に した遺産相続か何かに絡む話だったと思うが、ちょっとチェ イスの演技が度を過ぎた面もあるようで、日本公開は見送ら れてしまった。ただし後日テレビで放映されたのを見たが、 僕には面白く感じられたものだ。もっともアメリカのガイド 本には「俳優のファンにはお勧め」と書かれていた。 というシリーズの再開だが、今回参加するローレンスは、 元々のマクドナルドの原作のファンということで、今回の計 画ではオリジナルのフレッチャーの物語を自分で作ることが できるということで参加を決めたそうだ。そして計画されて いる物語は、フレッチャーが新聞記者に成り立ての頃のエピ ソードとなり、初めてのスクープをものにするまでのお話に なるようだ。 なおこの計画は、最初は2003年頃にミラマックスで立上げ られたもので、当時は『ジェイ&サイレント・ボブ』などの ケヴィン・スミスの監督で進められていた。しかし、その後 のワインスタイン兄弟の独立などで消滅。その計画が今回は ザ・ワインスタインCo.で再開されたもので、題名は2003年 頃の計画と同じ“Fletch Won”になっている。ただし脚本は ローレンスが書くということだ。 出演者や製作時期は未定。 * * お次はちょっと変わった話題で、使い古しの赤いペーパー クリップからインターネットのトレードサイトでの物々交換 の繰り返しによって、ついに自分の住む家を手に入れた男の 実話が、ドリームワークスで映画化されることになった。 このお話については、日本のテレビ番組などでも一部紹介 されていたが、カナダ在住の無職のカイル・マクドナルドと いう男性が、ある日インターネットのトレードサイトに使い 古しの赤いペーパークリップを出品したことから始まる。そ のクリップは同じカナダ在住の女性の魚の形のペンと交換さ れ、次にそのペンはシアトルで特注品のドアノブに交換され る。こうして徐々に高価なものに物々交換され、途中では、 ロック歌手のアリス・クーパーと午後を過ごす権利や、映画 作品の権利などを経て、ついに男性は2階建ての農家を手に 入れることができたというものだ。 そしてこの実話に目をつけたドリームワークスの製作担当 者ウォルター・パークスは、当初は映画作品にするかテレビ シリーズで製作するかを迷ったそうだが、男性がランダム・ ハウス社と本の出版契約を結んだことから、映画作品に仕上 げることとし、題名も出版物と同じ“One Red Paper Clip” として進めることになっている。 まあ、日本で言えば「藁しべ長者」というところだが、確 か紹介されたテレビ番組の中で男性は、本の出版や映画化を 期待しているようなことも語っていた。しかし、家も手に入 った上に、本当にそうなるとは…というところだろう。 なお、パークスは、「今のような時代に、こんなことも起 こるのだ、ということを示したい」と、映画化の意図を語っ ているようだ。 * * 後半は、SF/ファンタシー系作品のニュースを短く纏め て紹介しよう。 まずは、ジョージ・A・ロメロ監督が、日本の鈴木光司の 短編小説を原作とする“Solitary Isle”という作品の脚本 と監督を契約したことが発表された。この作品は無人島に探 検にやってきた人々が謎の勢力によって死の恐怖を味わうと いうもの。製作は角川映画とアメリカのハイドパークが折半 で出資して行うものだが、総製作費は2500万ドル以下に押さ えられるということだ。まあロメロの作品なら平均的な数字 だろう。なお、アメリカ配給はハイドパークが提携している フォックスが扱う。 ソニー傘下のコロムビアから“Moon People”というコメ ディ作品の計画が発表された。この計画は、テレビの人気シ ョウ番組“Late Night With Conan O'Brien”などの構成作 家デメトリ・マーティンが、自らの主演を含めた脚本を契約 したもので、内容は、基地建設のために数年を月面で過ごし た人々が地球に帰還して始まるトラブルを描くというもの。 恐らく月面との重力の違いなどが笑いのネタになりそうだ。 監督には、テレビで“Da Ali G Show”などを担当するジェ ームズ・ボビンが起用されている。月面もののSFコメディ では、最近もエディ・マーフィの主演で『プルート・ナッシ ュ』などが作られているが、月からの帰還者というのはちょ っと新機軸で面白そうだ。 ワーナーからは“Benighted”という作品の映画化権を獲 得したことが発表された。この作品は、キット・ウィットフ ェルドというイギリスの作家が発表したもので、イギリスで の題名は“Bareback”というそうだ。お話は、人口の90%が 狼人間になってしまった世界を描いており、満月の夜にはい ろいろなトラブルが発生することになるもののようだが、映 画化権獲得の切っ掛けは、『ナルニア国物語』などを手掛け るアンドリュー・アダムスン監督が原作の中心にある疎外者 の問題というテーマに惚れ込み、自ら脚色と監督も買って出 て企画を立上げたそうだ。因にアダムスンは『シュレック』 の脚本も手掛けているが、疎外者の問題というのはそこにも 通じる感じだ。 ただし、アダムスンは、現在は来年1月撮影開始を目指し て『ナルニア国物語』の第2章“Prince Caspian”の準備を 進めており、また第3章“Voyage of the Dawn Treader”の 脚色監督の契約を結んだことも発表されたもので、今回発表 されたワーナーの計画がいつになるかは、ちょっと定かでな いようだ。 ユニヴァーサルでは、『リロ&スティッチ』の脚本監督を 手掛けたディーン・デブロイスの脚本で、“Sightings”と いう作品の映画化権を契約したことが発表された。この作品 は実写での映画化が予定されているもので、フロリダ・キー ズを舞台に、子供たちのグループが、人類史上誰も見たこと のないようなものを発見するというお話。これだけだと何の ことだかさっぱり判らないが、『リロ…』の監督ならそれな りのものになるだろう。なお製作は傘下のゲイリー・ロスが 担当するが、彼は“Creature From the Black Lagoon”のリ メイクなども計画しているものだ。 そして最後にぎりぎりで飛び込んできた情報で、“Batman Bigins”のクリストファー・ノーラン監督が、1967年に放 送されたテレビシリーズ“The Prisoner”の映画版の監督に 起用されることがユニヴァーサルから発表された。この計画 は、『ブレードランナー』や『12モンキーズ』の脚本家デイ ヴィッド・ピープルズと夫人のジャネットが以前から進めて いたものだが、ついに監督が決定して本格的な始動となるよ うだ。製作は、来年前半の続編“The Dark Knight”に続け て行われる予定。なおこの話題については、次回改めて報告 することにします。
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