※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずは、アジア発のこの話題から。 7月20日付で紹介した『グエムル−漢江の怪物−』が韓国 の封切りで新記録を樹立しているポン・ジュノ監督が、今後 の計画を発表。次回作は母親とその息子を描いた低予算作品 を年内に製作した後、来年にも再びビッグスケールのSF映 画に挑戦することを表明した。しかもその原作は、フランス 製のコミックスだということだ。 発表された原作の題名は“Le transperceneige”(「雪を 貫くもの」というような意味のようだ。因に、英題名はThe Snowplow Trainとなっている)。この作品は、1980年代にジ ャーク・ロブ文、ジャン=マルク・ローシェ画によって雑誌 A Suivreに連載されたもので、1984年に単行本として出版さ れた。また同作は1999年にシリーズの第1巻“L'echappe” (逃亡者)として再刊され、さらにベンジャミン・レグラー ン文、ローシェ画によって第2巻“L'arpenteur”(測量士 :1999年)、第3巻“La Traversee”(横断:2000年)と、 書き継がれたそうだ。 物語は、地球が再び氷河期を迎えた未来を背景に、生き残 りの人々はなぜか運行を続けているtransperceneigeと名付 けられた列車の中で暮らしているというもの。その列車の中 では後部ほど階級の高い権力者が暮らしており、そんな階級 社会の中で、主人公は列車の運行の秘密を探るべく、先頭車 両を目指して進んで行く…というのが第1巻のお話。 また、第2巻では、同じレールの上を走る第2の列車が発 見されて衝突しそうになり、さらに第3巻では、大洋の反対 側からのメッセージが届き、列車はレールを離れ凍った海を 渡って行くことになるようだ(なお、この情報はSFファン 仲間でフランス通の林さんに調べていただきました)。 因に、“Le transperceneige”は3部作全体の題名のよう だが、今回映画化の原作はジャーク・ロブ作となっているも ので、これが第1巻だけを示すのか、シリーズ全体の映画化 なのかは不明。しかし、いずれにしてもかなり大規模な作品 になることは間違いなさそうだ。またスタッフでは、すでに 『グエムル』の怪物をデザインしたジャン・ヒチュルの参加 が発表されている。 雪と氷の原野を疾走する列車というのは、実写でも映像化 できないことはないと思うが、デザイナーが早々と参加して いるということは、ここにも仕掛けが考えられる。その映像 化のために、『グエムル』に参加したオーファネイジ、ウェ タなどのVFX工房が再結集することもありそうだ。その辺 にも期待したい。 なお、監督にはハリウッドからの誘いもあるようだが、監 督自身は、一応、今回発表された計画を変えることはないと している。ということは、来年の撮影で再来年には公開が期 待できそうだ。ただし原作はフランス製、どうせなら一気に 世界を目指す作品にもして欲しいが、キャスティングと言語 はどうするのだろうか。 * * 以下はハリウッドの情報で、まずはワーナーからまたまた DCコミックスの映画化の計画が発表された。 発表された作品の題名は“The Doom Patrol”。内容は、 超能力を持ってはいるが社会と相容れないグループが、車椅 子の指導者と共に戦う…というもの。どこかで聞いたような お話だが、実はマーヴルの“X-Men”とは、同じ1963年6月 にオリジナルシリーズがスタートしているというものだ。た だし、このオリジナルシリーズは一旦終了していたもので、 その後、1980年代の後半にスコットランド出身のストーリー 作家グラント・モリソンの参加によって、物語に子供の悪夢 のような超現実的な要素が取り入れられ、現在では、特にカ ルト的な人気を得ているとも紹介されていた。 その作品の映画化を、映画版“X-Men”が終了した今、満 を持して発表したもので、製作には大作専門のアキヴァ・ゴ ールズマンが当たることになっている。また脚色には、アダ ム・ターナーという新人が起用されているが、ゴールズマン は、「ターナーのユニークな感性は、ちょっとオフビートな この作品にはピッタリな人材だ」と信頼を表明しているもの だ。因に、ターナーは先にライオンズゲイトにティーンズ・ ホラーのオリジナル脚本を売ったところだそうだ。 なお、登場するキャラクターとしては、天才的な戦略家で もある車椅子のチーフの外、身体を伸縮できる少女エラステ ィ・ガールや、1分間を限度に自分の身体を離れ純粋エネル ギーとなって活動できる男ネガティヴマン、脳をロボットに 移植された男ロボットマンなどがいるようだ。また、その後 にもいろいろなメムバーが参加することになっており、メム バー内でのロマンスや結婚などもあるとのこと。ただし物語 は、“X-Men”よりダークで、ハードなものだそうだ。 * * 次もコミックスの話題で、1940年代にウィル・アイスナー によって発表された“Spirit”という作品の映画化に、自作 の『シン・シティ』ではロベルト・ロドリゲスとの共同監督 で物議を醸したグラフィック・ノヴェル作家のフランク・ミ ラーが、今度は単独で挑むことが発表された。 内容は、セントラル・シティと呼ばれる都会を舞台に、死 んだと信じられている探偵が、仮面のヒーローとなって活躍 するというもの。そしてこの映画化権は、2001年の『ウェデ ィング・プランナー』などを手掛けたオッド・ロッドという 製作会社が、2004年にアイスナーと契約していたものだが、 超能力も持たず、変身もしないヒーローということで、大手 からは敬遠されていたのだそうだ。しかしミラーの参加で新 たな方向性が生まれたとされている。 なおアイスナーは昨年亡くなっているが、ミラーは生前に 親交を持ち、共同で物語も創作していたようだ。そのミラー が脚色と監督を手掛けるものだが、ミラー自身は、最初は自 分にはできないと思っていたそうだ。しかし他人にやらせる 訳にも行かないと考えて参加を決意、「自分は、この物語の ハートとソウルに完璧に沿った作品を作り上げる。それはノ スタルジックなものではない。人々が期待しているよりも、 ずっと恐ろしいものになるはずだ」と抱負を述べている。 しかし、その一方でミラーからは、「自分は、ロドリゲス が『シン・シティ』のフィーリングを捉えたのと同じやりか たで、“Spirit”に対するつもりだ。アイスナーが描いたこ の街にはロマンティックな要素もあるし、楽しい面もある」 との発言もされている。なお情報によると、アイスナーの原 作には、ミステリーからホラー、コメディ、ラヴストーリー などいろいろなジャンル要素が詰まってということで、全く 一筋縄では行かない作品のようだ。 また、映画製作には『バットマン・ビギンズ』を手掛けた バットフィルムが参加しており、ということは、配給はこれ もワーナーが行うことになりそうだ。因に原作は、DCコミ ックスから単行本で再刊されているものだ。 ただしミラー自身は、現在は“Sin City 2”の脚本を執筆 中ということで、本作はその後になる。その“Sin City 2” の製作は、ロドリゲス+クェンティン・タランティーノ監督 の“Grand House”の撮影完了待ちとのこと、またミラーは “Sin City 2”のエヴァ役にアンジェリーナ・ジョリーの出 演をまだ希望しているようだ。 * * 続いては、前回1963年の監督作品『鳥』のリメイク(?)の 情報を紹介したアルフレッド・ヒッチコックの関連で、サス ペンスの巨匠の若き日を描くサスペンス作品が、来年1月の 撮影開始に向けて準備されている。 作品の題名は“Number Thirteen”。内容は、ヒッチコッ クの未完成のまま失われた処女作の撮影を巡る物語。物語で は、監督は映画のスタッフとの間で三角関係となっており、 その内に映画の主演俳優が殺され、映画の編集者が現場にい た監督の姿を目撃してしまうというもの。この監督役を、ト ニー賞受賞俳優のダン・フォグラーが演じ、ユアン・マクレ ガー、ジェフリー・ラッシュが共演することになっている。 因に、ヒッチコックの初期作品では、イギリス時代の1932 年に“Number Seventeen”という作品があり、また生涯連れ 添った夫人は、元編集者だったものだ。つまり、微妙に現実 と絡み合う話にもなりそうだが、どこまでが真実かというと ころも面白そうだ。この作品の脚本と監督はチェイス・パル マーという人が手掛けている。 製作は、ユニオンスクエアー・エンターテインメントとい うプロダクションが資金調達している。また、フォグラーは “Fanboys”“Schook for Scoundrels”“Balls of Fury” “Good Luck Chuck”などの映画にも出演しているようだ。 * * メル・ギブスン主宰のイコンプロダクションから、リバ・ ブレイ原作によるヴィクトリア王朝時代のイギリスを舞台に した3部作の映画化権を獲得したことが発表された。 物語の全体は、4人の反抗的な10代の子供を主人公に、彼 らが神秘的な世界と交流し、徐々に力をつけて行くというも の。そして第1作は“A Great and Terrible Beauty”と題 されており、インドの自由な精神を獲得したゲマ・ドイルと いう少女が母親の死を目撃し、その死を取り巻く陰謀を解き 明かして行くうちに、魔法とペテンの世界に踏み込んで行く というお話のようだ。 なお紹介記事ではファンタシーだとは記載されておらず、 魔法というのが、どのくらい超自然的なものかはよく判らな いが、この作品と続編の“Rebel Angels”は、ニューヨーク タイムズのベストセラーリストにも掲載されているそうだ。 また第3作は来年出版予定とされている。 そしてこの3部作の映画化は、テレビ出身で“Gulliver's Travel”などを手掛け、劇場版の“Lassie”の全米公開が 9月1日に予定されているチャールス・スターリッジが企画 をイコンに持ち込んだもので、スターリッジは3部作の全体 の製作を務めると共に、第1作の脚色と監督も手掛けること になっている。 配給会社は未定のようだが、イコンの製作ならそれなりの 規模での製作は行われることになるはずで、映画化には期待 が持てそうだ。 * * 後半は、続報をまとめて紹介しておこう。 まずは前々回に報告した『バットマン・ビギンズ』の続編 (“The Dark Knight”という題名になるようだ)のキャス ティングに関して、ジョーカー役にはヒース・レジャーの配 役が公式に発表された。前の報告で挙げた3人はいずれも外 れてしまったものだが、どちらかというと顎の張った俳優に なった訳で、ウィリアムスは残念だったというところかもし れない。いずれにしても今回のシリーズでは、若手の俳優が 優先されているというところはあるようだ。 またこの他に、続編にはペンギンも登場するという情報も あり、この役には『カポーティ』でオスカーを受賞したフィ リップ・シーモア・ホフマンが候補になっているようだ。さ らに、後にトゥー・フェイスとなるハーヴェイ・デントも登 場の噂があって、こちらにはライアン・フィリップ、若しく はレイヴ・シュライバーの名前が挙がっている。なお、デン トは、続編ではデントのままで、第3作でトゥー・フェイス になる予定だそうだ。 因に、前のシリーズでペンギンは、1992年公開の“Batman Returns”にキャットウーマンと共に登場したもので、その ときはダニー・デヴィートが演じていた。また、ハーヴェイ ・デントは1989年の第1作“Batman”に登場してこのときは ビリー・ディー・ウィリアムスが演じていたが、1995年公開 の“Batman Forever”でトゥー・フェイスになったときには トミー・リー・ジョーンズが演じていたものだ。 ジョーカー、ペンギンが一挙に登場ということで、今回も 前のシリーズと同様悪役は2人ずつセットで登場することに なるようだが、それにしても、コミックスでは多分1、2番 人気のジョーカー、ペンギンのコンビとは、シリーズを一気 に盛り上げることになりそうだ。それに第3作も計画されて いるようだが、トゥー・フェイスは前のシリーズではリドラ ーと一緒だったもので、今度は誰と組むことになるのか、新 シリーズにはまだ女性の悪役の噂がないが、そろそろ期待し たいものだ。 * * お次は、前回紹介した『ファンタスティック・フォー』の 続編(題名は“Fantastic Four and the Silver Surfer”に なるようだ)のシルヴァ・サーファー役は『ヘルボーイ』で エイブ・サピアン役を演じたダグ・ジョーンズに決まった。 これについては、前回もすでに怪しいと書いておいたが、結 局、前回の情報は希望でしかなかったようだ。 ただし、このキャラクターは、実はほとんどがCGIで作 られるものだそうで、そのための新しいテクノロジーもデザ インされているとのこと。でも一部は人間の俳優が演じるこ とになり、その一部のための配役ということだ。別段パフォ ーマンス・キャプチャーをするということでもなさそうで、 まあ、その程度では、ちょっとヴィン・ディーゼルという訳 には行かなかったのだろう。 * * 3月15日付の第107回で紹介したニューライン製作による “Hairspray”のミュージカル版の中で、唯一の悪役とも言 える元ミス・ボルティモア、そして物語の舞台にもなるテレ ビ局のオーナー=ヴェルマ・フォン・タッセル役を、ミシェ ル・ファイファーが演じることが発表された。 この作品は、以前にも紹介したように1988年に公開された 同名の青春映画がブロードウェイでミュージカル化され、今 回はさらにそのミュージカル版を映画化するもので、監督に はアダム・シャンクマンが起用され、すでにジョン・トラヴ ォルタ、クイーン・ラティファらの出演も発表されている。 また、舞台ではトニー賞にも輝いた主人公のトレイシー役に は、全米で行われたオーディションの結果、ニッキー・ボロ ンスキーという新人が選出されている。 そのミュージカル映画にファイファーの出演が決まったも のだが、今回の映画化では、舞台の作詞作曲でトニー賞を受 賞したマーク・シャイマンとスコット・ウィットマンによっ て新たにファイファーのための歌曲も作られるとのことだ。 因にファイファーは、過去には『グリース2』に主演してお り、また1989年の『恋のゆくえ−ファビュラス・ベイカー・ ボーイズ』でも歌っているものだが、スクリーンで歌うのは それ以来になるようだ。なおシャンクマン監督は、1992年の 『バットマン・リターンズ』でファイファーが演じたキャッ トウーマンのような、美味しい悪役に描きたいとしている。 撮影は、9月5日にボルティモアで開始の予定。また公開 は、当初は2007年夏に予定されていたものだが、来年の夏は 大作が競合するため12月21日に繰り延べされることになって いる。この新しい公開日はオスカー狙いの作品も登場する時 期だが、その狙いもあるということだろうか。 なおファイファーは、現在はマシュー・ヴォーン監督で、 ロバート・デ=ニーロ、クレア・デインズ共演によるファン タシー作品“Stardust”を撮影中とのことだ。 * * 5月1日付第110回で紹介したパラマウント製作、ルネ・ ゼルウィガー主演のホラー作品“Case 39”に、テレビ番組 “Deadwood”が話題のイアン・マクシェーンの共演が発表さ れ、ドイツ人監督クリスチャン・アルヴァルトの許、カナダ ・ヴァンクーヴァでの撮影が開始された。 レイ・ライトの脚本で、虐待の報告された子供を保護した ソーシャルワーカーに襲い掛かる恐怖を描くこの作品では、 マクシェーンは主人公を助ける警官を演じる。なおマクシェ ーンは、ウディ・アレン監督の新作“Scoop”に出演の他、 ドリームワークス・アニメーションの“Kung Fu Panda”と “Shrek 3”に連続して声の出演をすることになっている。 一方、ゼルウィガーの降板で頓挫していた『The Eye』の リメイクは、製作担当のトム・クルーズ/ポーラ・ワグナー が権利をパラマウントからライオンズゲイトに移して計画を 継続することとし、新たにジェシカ・アルヴァを主演にした 計画が発表されている。 因にこちらの監督は、フランス人のダヴィード・モーロウ とザヴィエイ・パルードが担当する。ただしアルヴァには、 すでに“Fantastic Four”の続編への出演が契約されている もので、リメイク作品への出演はその後になる。といっても 来年1月には撮影開始となりそうで、パン兄弟の原作は、紆 余曲折の末ようやくリメイクができそうだ。 * * 7月1日付第114回に題名だけ紹介したナタリー・ポート マン、エリック・バナ共演の歴史ドラマ“The Other Boleyn Girl”に、スカーレット・ヨハンソンの共演が追加された。 フィリッパ・グレゴリーの原作により、ヘンリー8世時代 のイギリス王室を舞台に、国王のハートとベッドを争ったメ アリーとアンのブリン姉妹を描くこの作品では、ポートマン とヨハンソンが姉妹を演じ、バナが国王を演じるものだ。正 に美人姉妹という感じだが、かなり強力な姉妹の前で、バナ が演技負けしないことを祈りたい。 脚色はピーター・モーガン、監督はジャスティン・チャド ウィックで、撮影は秋にロンドンで開始の予定。また、映画 の配給は、アメリカ国内はコロムビア、海外はフォーカスが 担当する。 なお、ヨハンソンの出演作品では、7月28日にウディ・ア レン監督の“Scoop”が全米公開され、続いて9月15日にブ ライアン・デ=パルマ監督の“The Black Dahlia”、10月27 日にクリス・ノーラン監督の“The Prestige”が公開予定。 さらにザ・ワインスタイン・コープ製作による“The Nanny Diaries”の撮影が完了しているそうだ。 * * 最後は、2003年1月1日付第30回で紹介している“Arthur Spiderwick's Guide to the Fantastic World Around You” の映画化が、“The Spiderwick Chronicles”と改題されて ようやく動き出し、フレディ・ハイモアとサラ・ボルジャー の主演が発表されている。 この作品は、以前にも紹介したように、大叔父さんの家を 訪ねた姉と双子の弟が、妖精とゴブリンの棲む異世界を発見 し冒険するというもの。この3人をハイモアとボルジャーが 演じるもので、ハイモアはジャレッドとサイモンという双子 を1人2役で演じることになるようだ。 ホリー・ブラックとトニー・ディタリジーの原作から、ジ ョン・セイルズが脚色し、マーク・ウォータースの監督で、 9月12日にカナダのモントリオールで撮影開始されることに なっている。製作はニッケロデオンとパラマウント。 * * 今回は、ちょっと手違いがあって更新が遅れました。心配 をお掛けした人にはお詫びします。映画紹介を月3回に増や し、できるだけ遅れないようにしたいと思っています。その ため、製作ニュースの原稿をなかなか進められないのが実情 ですが、頑張りますので今後ともよろしくお願いします。
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