※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずは、前回予告したスティーヴン・スピルバーグによる 宇宙SF映画の情報から。 スピルバーグとパラマウント映画は、探究者たちがワーム ホールを抜けて、他の次元に到達する宇宙の旅を描いた作品 の計画を進めることを発表した。この計画はリンダ・オブス ト製作の下で進められ、スピルバーグは本作の監督も希望し ているということだ。 この計画の大本は、カリフォルニア工科大(カルテック) のキップ・S・ソーン教授が提唱するワームホール理論に基 づくもので、その物語の概要はソーン教授によって書かれた とされている。そしてその概要に感銘したスピルバーグと、 彼の父親で引退したエンジニアのアーノルド(89歳)が、先 日カルテックで開かれたソーン教授を含む科学者たちのワー クショップに参加、その映画化の確信がスピルバーグに生ま れたということだ。 ただし、その概要に書かれた物語などの詳しいことは明ら かにされていないものだが、ソーン教授の理論によると、ワ ームホールは単に宇宙的な距離を光速を超えて瞬時に繋ぐ移 動手段というだけではなく、タイムトラヴェルの手段として も考えられているもので、その理論からすると、時空を超え た雄大な物語が展開されていそうだ。 といってもこの計画は、今直ぐ実現されるものではなく、 これから直ちに準備を開始したとしても、劇場公開までには 少なくとも4年間が掛るとされている。また、スピルバーグ はその前に、懸案の“Indiana Jones 4”と、リーアム・ニ ースン主演予定のリンカーン大統領の伝記映画も監督する計 画があるということだ。 実はスピルバーグは、ドリームワークスのパラマウントに よる吸収に伴い、ここ数ヶ月は独立の映画会社を傘下の製作 プロダクションにするための組織の変更に奔走していたとい うことだ。そこで今回の発表は、その作業が一段落し、本来 の仕事が進められるようになったことも現しているようだ。 スピルバーグの宇宙SF映画というと、1977年の『スター ・ウォーズ』と『未知との遭遇』が相次いで公開された直後 に、次はスピルバーグとジョージ・ルーカスが手を組んで、 『2001年宇宙の旅』を超える究極のSF映画を作るとい う情報が流されたことがある。それは結局、1981年の『レイ ダース/失われた聖櫃』となって、究極のSF映画はどこに 行った(?)ということになってしまったが、それでもスピ ルバーグの胸の内には、いつか『2001年』を超えるとい う夢が残っていたのだろう。だから、その後もスタンリー・ クーブリックとの親交を深め、最後は残された『A.I.』を 手掛けることにも繋がったと思われる。 そんなスピルバーグが満を持して、今度こそという意気込 みで今回の計画を発表したもので、この計画にはたっぷりと 時間を掛けて、正しく究極のSF映画を目指して欲しいと思 ってしまうものだ。 * * お次も、前回予告の『コナン』の情報で、ワーナーは懸案 だった『コナン・ザ・グレート』(Conan the Barbarian) のリメイクを、2000年公開された『タイタンズを忘れない』 などのボアズ・ヤーキンの参加を得て、2007年初旬の製作開 始を目指して進めることを発表した。 この計画に関しては、2002年4月1日付第12回で紹介した ことがあるが、その時は1982年のオリジナルを手掛けたジョ ン・ミリウスが再び脚本を執筆し、製作にはラリー&アンデ ィー・ウォシャウスキー兄弟も協力するということだった。 しかし、ドウェイン“ザ・ロック”ジョンスンの主演で、ア ーノルド・シュワルツェネッガーが父親役で出演するとした この計画は、2003年秋のシュワルツェネッガーの州知事当選 によって、父親役の出演が困難になったという理由で頓挫し てしまう。まあ、この辺の経緯はよく判らないが、本当の理 由は他にもありそうな感じがしたものだ。 その後、実はロベルト・ロドリゲスの参加による計画も立 上げられていたようだが、今度は2004年3月の『シン・シテ ィ』の共同監督を巡るトラブルで、ロドリゲスがアメリカ監 督協会を脱退したことからこちらも頓挫してしまった。この 時は、目前に“A Princess of Mars”の問題があったので隠 されていたが、実はこちらも頓挫していたということだ。 その計画が再び立上げられたものだが、今回のヤーキンも 子供の頃からのロバート・E・ハワードの原作小説のファン だったということで、以前のシュワルツェネッガーが主演し た2作よりも、もっとハワードの原作に近付けた映画化を目 指すとしている。因に今回発表された契約は、脚本の執筆と いうことだが、その脚本が会社側に好印象を与えられれば、 監督も依頼されることになるということだ。 キャスティングなどは、脚本が出来上がるまでは当然未定 だが、製作者には『ポセイドン』を手掛けたアキヴァ・ゴー ルズマンやジョン・ヤシニらが名を連ねており、ワーナーと してはかなり大規模な映画化を考えているようだ。 * * もう1本、実は同じ日付で報告された情報で、ブラッド・ ピットとパラマウントが、マックス・ブルックス原作による “World War Z: An Oral History of the Zombie War”とい う長編小説の映画化権を獲得したことが発表された。 この原作者は、前作では“The Zombie Survival Guide” という作品も発表しているようだが、今回の作品は、病原菌 によって人食いゾンビと化した元人類の軍団との戦争を描い たもの。原作本は今秋の出版予定ということだが、その前に 映画化権が争奪戦となり、ピット+パラマウントと、レオナ ルド・ディカプリオ+ワーナーの2者が争っていたというこ とだ。そしてピット側が権利を獲得、プランBで映画化を行 うことになったものだが、その権利料は6桁($)の上の方 とも言われている。 それにしても、ゾンビと言えば、ジョージ・A・ロメロの 作品を筆頭にスプラッター・ホラーの定番という感じのもの だが、そのゾンビを描いた原作にピットとディカプリオが争 奪戦を演じたというのも意外な感じだ。もちろんゾンビと言 えばブードゥー教の呪術によるものもあるが、今回の紹介で はわざわざflesh-eatingと紹介されていたもので、ロメロ系 のゾンビであることは間違いない。もっとも、原作者の前作 の題名を見るとパロディという線もありそうだが、それにし ても…という感じのものだ。 ただし、映画化権を獲得したと言っても、即ピット主演と いうことではないが、少なくとも彼が製作には関わる訳で、 ハリウッドにおいてゾンビという題材が、それだけ市民権を 得てきたことを現しているとは言えるかも知れない。映画化 がいつになるかは不明だが、楽しみに待ちたいものだ。 * * 『スパイダーマン2』の脚本に関ったことでも話題になっ たピュリッツァー賞受賞作家マイクル・シェイボンが、その 受賞作“The Amazing Adventures of Kavalier & Clay”の 映画化を進めていることを公表し、その出演にナタリー・ポ ートマンが興味を示しているということだ。 この作品は、2002年10月1日付第24回でも少し紹介してい るが、1930年代のニューヨークを舞台に、2人の若い従兄弟 同士が自ら作り上げた“The Escapist”というスーパーヒー ローコミックスに夢を託し、コミックスの黄金時代と言われ たこの時代を生きた姿を描いている。また、映画化はシェイ ボン自身の脚色で行われ、監督には『めぐりあう時間たち』 のスティーヴン・ダルドリーが予定されているものだ。 そして今回ポートマンの名前が紹介されているのは、ロー ザという登場人物で、彼女は強力にその役を希望しているそ うだ。因に、スーパーヒーローを生み出す従兄弟同士は少年 たちということで、ローザはその役ではないようだが、彼女 が強力に希望しているということは、それだけ魅力的なキャ ラクターなのだろう。ポートマン以外のキャスティングも順 次進められているということだが、とりあえず俳優の名前が 出たことで、製作状況はプレ−プレ・プロダクションから、 プレ・プロダクションに昇格したとも書かれていた。 現在の状況は、長過ぎる脚本をカットする作業が続けられ ているということだが、それと並行して、映画化では描かれ たコミックスのキャラクターがアニメーションで登場するシ ーンもあるようで、そのためのアニメーションスタジオとの 技術の検討も開始されているということだ。 コミックスヒーローの映画化がブームになっている中で、 そのルーツを探る作品というのも面白そうだ。 なお、ポートマンの出演作品では、2005年5月15日付第87 回で紹介した“Mr.Magorium's Wonder Emporium”の撮影が すでに完了。続いてウォン・カー・ワイ監督で今夏撮影予定 の“My Blueberry Nights”に出演が予定されている。また BBCフィルムス製作の“The Other Boleyn Girl”という コスチュームプレイに、エリック・バナと共演する予定も発 表されており、『スター・ウォーズ』が終ってますます忙し くなっているようだ。 * * 冬のアラスカを舞台に、白夜とは逆に30日間太陽が昇らず 夜が続く町をヴァンパイアが襲うという物語が、ジョッシュ ・ハートネットの主演で映画化される。 この作品は、スティーヴ・ナイルズ、テッド・アダムス、 ベン・テムプルスミスの3人が2002年に発表した“30 Days of Night”と題されたグラフィックノヴェルを映画化するも ので、ハートネットが演じるのはアラスカ州の合衆国最北の 町バーロウで、夫妻で保安官の職を務めている夫。しかし、 真冬の30日間に亙って太陽が昇らないこの町を、ヴァンパイ アが襲う。この事態に保安官夫妻は、自分たちを助けるか、 危険を冒して4500人の住民を救うかの二者択一の選択を迫ら れることになるというお話だ。 ヴァンパイアが太陽光線を嫌うというのは、古来から伝統 的な設定だが、この作品はその設定を逆手にとって、30日も の間、ヴァンパイアが自由に活動できる場所を舞台にしてし まったというもの。普通の吸血鬼ものなら1夜を頑張り通せ ば何とかなるが、24時間30日では、ちょっとどころでなく大 変になりそうだ。題名のNightが単数なのが洒落ている。 そしてこの物語を、『コラテラル』『パイレーツ・オブ・ カリビアン』の第1作を手掛けたスチュアート・ビーティが 脚色し、さらに“Hard Candy”というインターネットを背景 にしたサスペンスドラマが話題になっているデヴィッド・ス レイド監督と、脚本家のブライアン・ネルソンのコンビが、 リライトと監督することになっている。製作は、サム・ライ ミとロバート・ターペット。彼らが主宰するゴースト・ハウ スの作品で、アメリカ配給はソニーが担当する。 * * 2002年公開の『8Mile』では、自伝的な作品にそこそこの 演技を見せてくれたラッパーのエミネムが、今度は何とバウ ンティ・ハンター役に挑戦する計画が発表された。作品の題 名は“Have Gun, Will Travel”で、実は2003年2月15日付 第33回で一度紹介したテレビシリーズ『西部のパラディン』 の映画版の計画が再燃してきたものだが、今回の計画では、 物語が現代化されるということだ。 オリジナルは1957年に放送開始された毎回30分のシリーズ で、アメリカはCBS、日本ではNHKで放送されている。 そしてオリジナルの物語は、1870年代を背景に、元陸軍士官 で南北戦争でも活躍したという男が西部の流れ者となり、普 段はサンフランシスコのホテルで優雅な生活をしているが、 依頼を受けると黒ずくめの衣裳に身を包み、雇われガンマン として事件の解決に赴くというもの。以前の計画では『トー タル・フィアーズ』のダニエル・ペインが脚本を担当するこ とも発表されていた。 しかしその計画はキャンセルされていたようで、今回は改 めてエミネムの主人公パラディン役で計画が進められるとい うものだ。また物語は現代化して、エミネムの出身地のデト ロイトを舞台にすることも報告されている。ただし、登場す るキャラクターは、オリジナルにルーズではあるが沿ったも のになるということで、パラディンはもちろんだが、他にも 「ヘイ・ボーイ」などのキャラクターは活かされることにな りそうだ。また、音楽もエミネムが担当することが発表され ている。 なお、配給元のパラマウントでは、取り敢えずリメイク権 に対して契約のオプション期間を18カ月間延長しているが、 会社としては最優先で製作準備を進める意向ということだ。 製作は、やはりラッパーの50 Cent主演による“Get Rich or Die Tryin'”なども手掛けるISAが担当する。 * * 『サイレントヒル』に続いて、またまた日本製ホラーゲー ムの映画化で、今度は『バイオハザード』のカプコンが発売 している“Clock Tower”の映画化計画が発表された。 因にゲームは、1995年に第1作がヒューマンからスーパー ファミコン用に発表されたもので、その後にプレイステーシ ョンに移植されたシリーズは、全体として史上最も売れたゲ ームの一つに数えられているようだ。またカプコンが製作し た第3作は、全米で200万本を売り切ったとされている。 そして計画されている映画化は、すでに2005年5月1日付 第86回で紹介した“When a Stranger Calls”(夕暮れにベ ルが鳴る)のリメイクなども手掛けているジェイク・ウェイ ド=ウォールによる脚本が完成されており、今回はその監督 に、チリ人で、2000年の監督デビュー作“Angel Nero”が、 同国興行成績No.1を記録したジョージ・オルグインの起用が 発表されたものだ。なおオルグイン監督は、第2作でホラー 作品の“Sangre Eterna”(Eternal Blood)も成功を納め、 その成功を目に留めたギレルモ・デル・トロの手で、第3作 となる“The Call of the Sea”が製作されたそうだ。 また監督は、今回の映画化を担当する製作会社のメイヘム に対し、ウェイド=ウォールの脚本に基づいてゲームの悪役 キャラクター=シザーマンが登場する映画の予告編にもなる ようなアニメーション・ストーリーボードを提出し、プレゼ ンテーションを行ったということだ。そう言えば、『サイレ ントヒル』のクリストフ・ガンズ監督も、同様にプレゼンテ ーション用の短編を自主製作したということだったが、特に 英語圏以外の監督がアピールを行うには、このような手法が 定番になりそうだ。 なお、ウェイド=ウォールが執筆した脚本の物語は、主人 公の若い女性が、ある日、疎遠だった母親から実家に帰って きてはいけないという不穏な警告の電話を受け、その事情を 調べるうちに、彼女自身の過去に関る恐ろしい超自然的な真 実を解き明かすというものだそうだ。ゲームでは、北欧のオ スロにある古城が舞台になっていたもののようだが、それが どう関るかも気になるところだ。 キャスティグは未発表だが、撮影は今年の秋の開始予定に なっている。 * * ここからは、嘘か真か、噂のキャスティング情報を4つま とめて紹介しよう。 まずは、真になった情報で、公開目前となった『パイレー ツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』に続く第 3作に、以前から噂されていたローリング・ストーンズのキ ース・リチャーズの出演が公式に発表された。これは監督の ゴア・ヴァービンスキーが、映画サイトのインタヴューに答 えたもので、それによると、「キースの出演は、“Pirates of the Caribbean”の第3作に明確に決定した。それは小さ な役だが、重要な役だ」とのことだ。また、役柄はジャック 船長の父親かという質問には、「それは秘密だ」とだけ答え たということだ。怪我によるツアーのキャンセルなどで心配 させたキースだが、取り敢えず映画の小さな役をこなすくら いには回復しているようだ。 お次は、まだあやふやな情報で、J・J・エイブラムス監 督が本当に決まってしまった“Star Trek XI”のカーク船長 役に、マット・デイモンのキャスティングがかなり真実味を 帯びてきたようだ。この情報も1カ月ぐらい前からウェブ上 で頻繁に流されていたものだが、今回は製作に近い筋のイン サイダーから「監督もその気になっている」という情報が流 されたものだ。元々デイモンはやる気満々という説もあり、 トレッキーの間では賛否両論あるようだが、アカデミー賞脚 本賞受賞者で、『ボーン』シリーズでもヒットを続ける人気 スターの登場は、映画会社側にとっては大歓迎というとこと だろうが、これは真になるのだろうか。 3本目は、ピアーズ・ブロスナンがジェームズ・ボンドに 復帰するかも知れないという噂が登場した。実はこの噂は、 またぞろという感じがしないでもないが、“Thunderball” の権利を保有し、その権利を利用して1983年にショーン・コ ネリー主演の“Never Say Never Again”を実現したケヴィ ン・マクローリーが、その再々映画化を目論んでいるという もので、その主演にブロスナンが起用されるということだ。 しかもこの噂が、“Casino Royale”の撮影現場で囁かれて いるというから、噂だけと片づける訳にも行かないようだ。 実際、この権利に関するこの前の計画では、結局、裁判はソ ニーの取り下げで終った訳で、権利自体の効力の判断はされ ていない。一方、ブロスナンも一時期復帰をアピールしたこ ともあったから、この可能性もないとは言えないようだ。 キャスティングの情報の最後は、昨年公開された“Batman Begins”の最後で、続編への登場が予告されたジョーカー に付いて、ロビン・ウィリアムスが出演を熱望していること が明らかになった。これも映画サイトのインタヴューに答え ているものだが、それによるとウィリアムスは、「神様、僕 はこの役をやりたいのです」とのことだ。前のシリーズでは ジャック・ニコルスンが途轍もない存在感を発揮した役柄だ が、監督のクリストファー・ノーランは新たなジョーカー像 を求めているとのことので、ウィリアムスはそれにも自信を 覗かせている。なおこの役には、すでにポール・ベタニーや エイドリアン・ブロディの名前も噂されているようだ。しか し、ウィリアムスとノーランは2002年の『インソムニア』で も組んだことがあり、その線からも有力候補になりそうだ。 ただしノーランは、現在はこれもクリスチャン・ベイル主演 の“The Prestige”という作品を進めており、続編の準備に 掛るのはその後になる。因に、ウィリアムスは前のシリーズ では1995年の“Batman Forever”でジム・キャリーが演じた リドラーに一時噂されたことがあったものだ。 * * 最後に、前回報告した『カーズ』の記者会見での監督の発 言で、書き忘れたことを一つ補足しておく。実は映画では、 主人公の発する「カッチャウ」という台詞が、字幕では「勝 っちゃう」に読めて、やり過ぎの意訳のようで気になったも のだ。しかし、これは演じたオーウェン・ウィルスンによる 稲妻の擬音なのだそうだ。主人公の名前がライトニングなの で、彼にその擬音を頼んだところ、子供の頃に使っていたも のを思い出し、それが採用になったとのこと。原語にも特に 意味はなく、意訳に見えるのは単なる偶然だったようだ。
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