※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 最初は、この話題から。 昨年3月1日付第82回と、今年の1月15日付第103回でも 報告した“Star Trek 11”=“Star Trek: The Beginning” のその後について、脚本家のエリック・イェンドルセンによ る経過報告が公表されたので紹介しておこう。 この作品は、イェンドルセンの報告によると、昨年終了し たテレビシリーズ“Enterprise”の物語が完結した2164年か ら、カーク船長らの物語が始まる2233年までの70年間を時代 背景とし、主にはロミュランとの対立による惑星連邦の設立 と、その発展の歴史を描くもの。中心となるのはタイベリウ ス・チェイスという名前の人物で、物語の全体は3部作で構 成される。またその物語の全ては、「カークやその末裔たち に繋がるものになる」とのことだ。 つまり、その後の物語の基礎となる銀河政争史とも呼べそ うな壮大な内容だが、しかもこの計画の一番の理解者で推進 者だったのは、パラマウントの共同社長の地位にいるデイヴ ィッド・デライン。そして昨年の記事の時点では、一度は計 画にゴーサインが点灯していたのだそうだ。 ところが、その直後のブラッド・グレイのトップ就任によ って社内の組織が改変され、ゴーサインは一時消灯。さらに この状況では、新たな組織からは一時的にせよいろいろ新規 のアイデアがもたらされるようになり、そうなると、それよ り古いアイデアは浮上することが難しくなってしまうのが現 状だということだ。 またイェンドルセンは、「計画は現在deadの状態とされて いるが、それは計画が進行していないという意味。鮫と同じ でハリウッドでは前に進んでいないとdeadと見なされる」と も語っている。しかし、彼自身は現状を悲観してはいないよ うで、「このアイデアはStar Trekを再構築し、従来のファ ンだけでなく、新たなファンも開拓するもの。計画を検討し ているプロデューサーがいる限り、いつかそれは実現する。 だから、それが実現する日のため、準備は常にしている」と のことだ。ただし彼は、そのプロデューサーの名前は明らか にしなかったようだ。 因に、第103回で紹介したトム・ハンクスの去就について は今回は触れられていなかったが、実は後で紹介するように ハンクスのスケジュールは満杯で、もしかするとあの時点で は、彼の出演が起死回生の必打だったものが実現しなかった のかも知れない。しかし、ハンクス自身のトリヴィアを読む と、彼はStar Trekについて語り出すと止まらなくなるほど のトレッキーだとのこと。また、1996年の『ファースト・コ ンタクト』でジェームズ・クロムウェルが演じたコクレーン 博士役には、最後まで出演を希望していたということで、何 かの都合でハンクスが動けば、一気に実現、という可能性は ありそうだ。 * * ということで、以下はいつもの制作ニュースだが、まずは 上にも書いたトム・ハンクスの情報から。 ハンクスの主演とガス・ヴァン・サント監督の顔合せで、 “How Starbucks Saved My Life”という計画がユニヴァー サルから発表されている。この作品は、大企業の重役だった 男性が、ある日リストラで自分の役職を失い、しかも60歳代 だった彼は結婚生活にも終止符を打たれてしまう。こうして 人生のどん底に突き落とされた男性は、ふと立ち寄ったコー ヒーショップで人生の転機を確信し、その店のマネージャー として働く道を選ぶというもの。 ミッチェル・ゲイツ・ギルという元企業重役の実体験に基 づく原作は、今年3月にゴッサム・ブックスから出版され、 現在の世相を最も反映した作品として映画各社の注目を浴び ることとなった。そしてその映画化権を、ユニヴァーサルが 6桁($)の契約金で獲得、ハンクス主宰のプレイトーンに オファーされたというものだ。 アメリカでもリストラの嵐はかなり強烈そうだが、特に、 極一握りのトップを除いては、重役も従業員でしかない競争 社会ではこのようなことも日常茶飯時なのだろう。そんな世 相にいち早く反応した作品と言える。それにしても、題名に 店名とは、スターバックスには良い宣伝になりそうだが、ま た同チェーンでは、この春からカップホルダーに映画の広告 を入れることも始めたようで、映画が公開されると相乗効果 も生まれることになりそうだ。 ただし、ハンクスの計画では、マイク・ニコルズ監督、ジ ュリア・ロバーツ共演による“Charlie Wilson's War”が、 同じくユニヴァーサルの製作で9月15日の撮影開始の予定に なっており、本作の製作はその後になるものだ。 一方、ハンクスの予定では、『ナルニア』を製作したウォ ルデン・メディアの姉妹会社ブリストル・ベイとプレイトー ンとの共同製作で、息子のコリンが主演する手品師を主人公 にしたコメディ作品“The Great Buck Howard”に、親子の 役で出演することも発表されている。父親の出番は少ないよ うだが、ケヴィン・クラインが相手役を務めるこの作品は、 7月にニューヨークで撮影の予定ということだ。 というわけで、ハンクスのスケジュールには、当分空きは 無いようだが… * * 1997年に公開された“L.A.Confidential”の原作者として も知られる作家のジェームズ・エルロイが、初めて自作以外 の脚色を手掛けることが発表された。 この作品は、ニッキー・フレンチという作家の“Land of the Living”という作品を映画化するもので、原作は2年前 に発表されたものだが、今回はエルロイが脚色を担当するこ とをセットにして各社に打診が行われ、争奪戦の末にワーナ ー傘下のニューラインが脚色料込み7桁($)に近い金額で 権利を獲得したということだ。 物語は、性に多少だらしないと思われている女性が連続殺 人鬼に拉致され、拷問を受けた末に何とか脱出する。そして 彼女はそのことを警察に訴えるが、警察も彼女の友人たちさ えもが彼女の作り話ではないかと疑うという展開。かなり悲 惨な話にもなりそうだが、エルロイがこれをどのように脚色 するのかも注目されるところだ。 なお、エルロイの作品では、“The Black Dahlia”がユニ ヴァーサルで、ブライアン・デパルマ監督、スカーレット・ ヨハンセン、ヒラリー・スワンク、ジョッシュ・ハートネッ ト、アーロン・エッカートの共演で映画化中。 またパラマウント製作で、“The Night Watchman”の映画 化が、エルロイ自身の脚色で準備が進められており、今回は この脚色を完了した直後に、同作の製作者のアレクサンドラ ・ミルチャンからフレンチの原作本が届けられ、エルロイが 脚色をOKしたということだ。しかし、その映画化を同じ会 社で行わないところがこの製作者の強かさのようだ。 * * お次はテレビシリーズからの映画化で、1997年に公開され て全世界で2億4000万ドルの大ヒットを記録した『ビーン』 の続編“BeanII”が、もちろんローワン・アトキンスン主演 で5月15日に撮影開始されることが発表された。 ちょっと常識外れの行動がいろいろなトラブルを巻き起こ すMr.ビーンの今回の物語は、彼が休暇で南フランスを旅行 し、やはりいろいろなトラブルの原因になってしまうという もの。しかも映画の結末では、彼の旅行を撮影したヴィデオ ダイアリーがカンヌ映画祭で上映されてしまうという展開に なるようだ。 つまり、5月15日の撮影開始というのは、カンヌ映画祭の 会期中に撮影を行うということのようだ。脚本は、サイモン ・マクバーニーの原案から、前作も手掛けたロビン・ドリス コールと、新参加のハーミッシュ・マッコール。監督には、 昨年“The League of Gentlemen's Apocalypse”というこれ もテレビシリーズからの映画化作品を発表しているスティー ヴ・ベンデラックが起用されている。製作は前作も手掛けた ワーキング・タイトル。 因に、前作のアメリカ公開題名は、“Bean: The Ultimate Disaster Movie”だったようで、あの内容からはちょっと 誇大タイトルのようにも感じるが、アメリカのガイドブック ではかなり高い評価が付いている。 テレビシリーズの『ビーン』は一発芸のようなところがあ るが、前作の映画化はそれなりに人間味のある展開で、それ に一発芸がうまく組み合わされた感じの面白さだった。特に ドラマ部分は良い味を出していたものだ。前作の舞台はアメ リカだったが、今度はフランスで、Mr.ビーンは一体どんな 騒ぎを巻き起こすのだろうか。 * * ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの共演で話 題を呼んだ“Mr.and Mrs.Smith”のダグ・リーマン監督の次 回作として、1992年に発表されたスティーヴン・グールド原 作による“Jumper”というSFアドヴェンチャーを3部作で 撮る計画が発表された。 この原作の元々のお話は、17歳の少年が自分にテレポート の超能力があることを発見し、最初は父親の虐待から逃れた り、銀行強盗などに使っているが、やがて司法機関とテロリ ストとの闘いに巻き込まれて行くというもの。ただし映画化 に当っては、最初にデイヴィッド・ゴイヤーが脚色したもの を、現在は『ファイト・クラブ』などのジム・ユルスがリラ イトしているが、その内容は厳秘とされているものだ。 まあ、3部作にするというからには、かなりの紆余曲折が ありそうだが、最終的に司法機関とテロリストとの闘いに巻 き込まれるということは、その時どちらの側に立つかで展開 はずいぶん変わってくることになる。もっともアメリカ映画 でテロリストの側というのは考えにくいが、その前が銀行強 盗というのは引っ掛かるところだ。 主演は、2004年の“Being Julia”に出演していたトーマ ス・ストーリッジ。それに今秋公開“The Grudge 2”に出演 のテレサ・パルマーと、『リトル・ダンサー』『キング・コ ング』のジェイミー・ベルが共演する。製作は“Mr.and…” のニュー・リジェンシー。 魔法使いの延長で、超能力ものもいろいろ出てきそうな感 じだが、ぱっと消えたり現れたりのテレポーテーションは、 映画では比較的早くから登場していたもののように思える。 そんなオーソドックスなものを、現代にどうアレンジするか が注目だが、特に脚本がゴイヤーとユルスというのは今まで の作品から考えてもかなり過激になりそうだ。しかもそれを 若手の共演で描くというのは…楽しみな作品だ。 * * 受賞経験もある短篇作家で、“20th Century Ghosts”と いう短編集も出版されているジョー・ヒルの初めての長編小 説“Heart Shaped Box”の映画化権をワーナーが獲得し、ア キヴァ・ゴールズマンの製作で進めることが発表された。 物語は、歌手の主人公がeBayで幽霊を購入してしまい、彼 自身の過去にまつわる幽霊と悪魔の攻撃に晒されるというも の。悪魔にインターネットが関わるなど、現代的なアレンジ が面白そうな作品だが、実はこのヒルという作家は、あのス ティーヴン・キングの息子ということで、その点でも注目を 集めそうだ。 ただし、この原作に最初に目を付けたワーナーの製作トッ プのケヴィン・マコーミックも、製作を担当するゴールズマ ンも、実は映画化を決めた時点では彼の父親がキングだとい うことは知らなかったのだそうで、今回の契約は親の七光で はないとしている。また、ワーナーでは早速脚本家を選考し て、ただちに製作に掛かるということだ。 * * ルーシー・リューの製作、主演による“Beautiful Asian Bride”という計画が、紆余曲折の末ユニヴァーサルで進め られることになった。 この計画は、レス・ファイアスタインとP・J・ペイセの オリジナルアイデアに基づくもので、誤って殺人容疑を掛け られた男と、彼の無実を信じたい文通だけでやってきた花嫁 を巡るコメディ。元々はダニー・デヴィート主宰のジャージ ー・フィルムスで進められていたが、同社が解散したために 宙に浮いていたものだ。 その計画をユニヴァーサルが引き継ぎ、新たにアイス・キ ューブ主演の“Are We There Yet?”などに参加しているス ティーヴン・ゲイリーとクラウディア・グラジオッソの脚本 家コンビを起用して、実現を目指すことにしたもので、さら に製作には、『ダヴィンチ・コード』などのイマジンの主宰 者ブライアン・グレイザーの参加も発表されている。 * * “Ice Age: The Meltdown”の大ヒットを受けて、同作で 共同脚本を務めた新人脚本家のジム・ヘクトが、今度はドリ ームワークスアニメーション(DWA)で、“Punk Farm” という計画を進めることが発表された。 この作品は、ジャレット・J・クロソツカの原作に基づく ものだが、物語はヘクトとプロデューサーのケヴィン・メシ ックがアイデアを出し合い、完成された概要をジェフリー・ カツェンバーグに提出、それが認められて計画進行となった ということだ。 内容は、農園の家畜たちがパンクロックバンドを結成し、 羊、鶏、豚、山羊、牛が一緒になって、Livestockという場 所で開かれる史上初の動物によるロックフェスティバルに参 加するため旅をするというもの。『ブレーメンの音楽隊』が 思い浮かぶ展開だが、題名から連想される『動物農場』的な 捻りはあるのだろうか。 なお、DWAでは、今夏に“Over the Hedge”(森のリト ル・ギャング)を公開、秋には『ウォレスとグルミット』の アードマン製作による“Flushed Away”が公開されて、来年 は“Shrek the Third”の公開が予定されており、今回の作 品の順番はその後ぐらいになりそうだ。 * * アダム・サンドラー主演“The Longest Yard”のリメイク を手掛けたピーター・シーゲル監督が、2003年1月1日付第 30回で紹介して以来滞っていたニューライン製作によるDC コミックスの映画化“Shazam !”に起用されることが発表さ れた。 この計画では、同年4月1日付第36回と12月15日付第53回 でも紹介したように、最初はアカデミー賞受賞者でコミック スファンを自称するウィリアム・ゴールドマンが脚色を担当 したものの挫折。その後は、『トイ・ストーリー』のジョエ ル・コーエンとアレック・ソコーロフや、ブライアン・ゴル ボフといった脚本家もリライトに起用されたが、結局、実現 を見なかったものだ。 一方、今回起用が決まったシーゲルは、「子供の頃から、 主人公のキャプテン・マーヴェルのファンだった。この物語 は『ビッグ』と『スーパーマン』を合わせたようなもので、 それまでのスーパーヒーローとは全く違うものだ」と語って いるが、実はシーゲルは、今までの監督作品でも自ら脚本の 執筆はしておらず、従って今回も新たな脚本の登場を待つこ とになるものだ。 取り敢えずシーゲル自身は、他の作品を1本監督してから 本作の準備に掛かるとしているが、この状況はどのように打 開されるのか。因に、シーゲルは今回の起用では製作も担当 しており、このまま製作が滞ることは製作者の責任にもなる ものなので、それなりの勝算はあると思われるが、ちょっと 気になるところだ。 なお、Shazamとは、神話に登場するSolomon、Hercules、 Atlas、Zeus、Achilles、Mercuryの頭文字を集めたもので、 古代エジプトの魔法によって彼らの能力を身に付けた15歳の 少年が活躍する物語。どのようにでも料理は出来そうな感じ だが、全てのファンの満足を得るのはかなり大変そうだ。 * * ウェス・クレイヴン監督の1977年作品“The Hills Have Eyes”(サランドラ)のリメイクを成功させたアレックス・ アジャ監督が、次回作として“Into the Mirror”というホ ラー・スリラーを手掛けることが発表された。 この作品は、高度に情報化されたデパートのセキュリティ ガードの主人公が、店頭の鏡の前で発生した不自然な死亡事 故を調査するうちに、その鏡に隠された死の復讐劇を見付け 出すという物語。元々はジム・ユルスとジョー・ジャンジェ ミが執筆した脚本を、キーラン&ミシェル・マルローニがリ ライトしていた。そして、“Hills…”のヒットの後で各社 から殺到したオファーの中から、アジャ本人が気に入って選 んだものだそうだ。 この脚本についてアジャは、「物語は、人間が鏡の中に自 分を見るときの最悪の見え方を描いたもので、完璧に新しい コンセプトにしたがっている。誰でもが捕われる恐怖のエレ メントが見事に描かれたものだ」と語っている。ただし脚本 に付いては、アジャとパートナーのグレゴリー・ラヴァサー ルがさらに手を加えるとのことだ。 製作はニュー・リジェンシーで、この秋に撮影される。 * * 最後に、第4作の続報を2つ紹介しておこう。 まずは昨年6月1日付第88回で紹介したシルヴェスター・ スタローン脚本出演の“Rambo IV”について、ジェームズ・ ブローリンが共演の契約をしたことが発表された。 この計画については、前回はスタローンが脚本の執筆を契 約したと紹介したが、その脚本はジョブ・スチュアート、ダ ニー・ラーナーの協力ですでに完成されたようだ。まあ共演 者が決まったというのは脚本の完成を意味しているものだ。 そしてその物語は、前回はランボーは脇に廻って若い主人 公を新たに立てるということだったが、今回の発表では、妻 と幼い娘と共に平穏に暮らしていたランボーの娘が行方不明 となり、娘の行方とその犯人を追うというもの。 結局ランボーは主人公に復帰したようだが、その犯人捜査 の過程で、戦争犯罪と誤認されて逃亡した元兵士を救済する 組織と関わって行くことになるということだ。そしてブロー リンはその組織の人間ということになっている。しかし、物 語では、ランボーは最後にはその逃亡者と闘うことになるよ うで、そうなるとブローリンの役柄も表面的なものだけでは なさそうだ。 製作時期は未発表だが、このまま行くとかなり早く実現す ることになりそうだ。 もう一本は、“Terminator 4”の情報で、2004年10月1日 付第72回では2005年中の撮影と紹介したが、結局それは実現 せず、今回は製作者のアンディ・ヴァイナが、撮影をオース トラリアのワーナー・スタジオで行うことを表明しているも のだ。またアーノルド・シュワルツェネッガーについては、 “T4”では主演には起用せず、カメオ程度の出演の可能性 が示唆されたようだ。 脚本は、すでにジョナサン・ブランカートとマイクル・フ ェリスの手になるものが完成しているが、監督のジョナサン ・モストウはすでに降板しており、現在は監督を選考中。こ ちらはもう少し時間が掛かりそうだ。
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