※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は情報が多いので早速始めることにしよう。 まずは続報からで、今年1月15日付の第103回で紹介した “Ocean's Thirteen”について、改めて7月21日からの撮影 が正式に発表された。 この計画について前回は、ブラッド・ピットの去就は不明 と書いたが、スティーヴン・ソダーバーグ監督の下、ジョー ジ・クルーニー、ピット、マット・デイモン、アンディ・ガ ルシア、ドン・チードル、バーニー・マック、ケイシー・ア フレック、スコット・カーン、エディ・ジェミスン、シャオ ブー・クイン、カール・ライナー、エリオット・グールドの 男優陣は全員の再結集が決まったようだ。 しかし、女優に関してはエレン・バーキンが新たに参加す ることになり、ジュリア・ロバーツとキャサリン・ゼタ=ジ ョーンズは、脚本上では今回は主な配役には入っていないと のこと。もっとも、ロバーツもゼタ=ジョーンズも、前作、 前々作の役柄では、どちらかというとオーシャンの計画に反 対する立場だったから、物語の流れでは居なくてもいいのか も知れない。ただしカメオ的な出演が否定されていないよう だ。一方、新登場するバーキンは、デイモンの役柄に絡むと いうことだが、年齢的にはバーキンの方が16歳上のはずで、 これは母親的存在なのだろうか。ただし詳しいストーリーは 明らかにされていないものだ。 また、第1作はラスヴェガス、第2作はヨーロッパを舞台 にして、ほとんどがロケーションで撮影されたものだが、第 3作の撮影は、バーバンクのワーナー撮影所にある5つのサ ウンドステージをフルに使って大掛かりなセットを組み、そ れを中心に行うとされている。これは、ソダーバーグ監督と クルーニーが、現在ポストプロダクション中の戦後混乱期の ベルリンを舞台にした“The Good German”を、オールセッ ト撮影で実現して味を占めたためだそうだが、今回組まれる セットでは、舞台となるカジノ自体にもかなりの仕掛けが施 されることにもなるようだ。 ところで、『オーシャンズ11』のオリジナルで1960年に製 作された『オーシャンと十一人の仲間』に出演したラット・ パックことシナトラ一家の作品では、1964年に彼らの最後の 結集と言われた“Robin and the 7 Hoods”(7人の愚連隊) という作品がある。この作品に関しては、2002年2月15日付 第9回で紹介したように、衛星記者会見でクルーニーにその リメイクはしないのかと質問したことがあるが、そのときの 答えは、「あれは名作だからリメイクは難しい」というもの だった。しかし、実はその作品には仕掛け一杯のカジノが登 場して観客を楽しませてくれたものだったのだ。その物語で は、禁酒法時代のシカゴで違法営業のカジノが、警察の手入 れの際に一瞬で別のものに変身する仕掛けだったが、これは ひょっとして…という感じもしてくるところだ。 脚本は、1998年にマット・デイモンが主演した『ラウンダ ーズ』などのブライアン・コペルマンとデイヴィッド・レヴ ィーン。公開は2007年の夏の予定とされている。 因に、クルーニーはオスカー受賞記念の休暇の予定だった ようだが、ソダーバーグ監督もピットもデイモンもスケジュ ールは満杯。特に、ソダーバーグは上記作品のポストプロダ クションに並行して、すでに次回作のベニチオ・デル=トロ 主演でチェ・ゲバラの伝記映画“Guerilla”の一部撮影に入 っていたし、デイモンは自分の主演シリーズの第3作“The Bourne Ultimatum”の準備中だったそうだ。しかし、製作者 のワイントルーブの説明では、「我々5人は本当に親しい友 人だから、何かあると、お互い自己犠牲をしても結集する」 のだそうで、奇跡に近い再結集が、あっと言う間に実現した ということだ。 * * お次は、今年のアカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞した “Crash”の、製作、脚本、監督を担当していたポール・ハ ギスが、ソニー傘下のコロムビアで進められているリチャー ド・クラークの著書“Against All Enemies”の映画化につ いて、製作と監督の契約を結んだことが発表された。 クラークは、前のホワイトハウスの対テロ戦略顧問という 要職にあった人物で、ベストセラーにもなっている著書は、 2001年9月11日の同時多発テロの数ヶ月前から始まり、ブッ シュ政権がクラークの警告を無視したために有効な対テロ戦 略が立てられなかった経緯や、9/11以後のイラク攻撃に至る までの大統領府内部の動きが克明に綴られたものとされ、政 治の内幕物としてはかなり生々しいものになるようだ。そし てコロムビアでは、昨年この著書の映画化権を獲得、直ちに 2003年公開の“Basic”(閉ざされた森)や、昨年5月15日 付第87回などで紹介している“Zodiac”の脚本家ジェイムス ・ヴァンダービルトを起用して脚色を進めていたものだ。 ところでハギスは、今回受賞した脚本も手掛けている他、 昨年の“Million Dollar Baby”でも脚色賞にノミネートさ れていたものだが、今回の契約では製作と監督のみを行い、 脚本はヴァンダービルトの物を使うことになっている。その 理由は明らかにされていないが、上記ハギスの作品はいずれ もフィクションということで、実録ものではヴァンダービル トの方が手慣れているということなのだろうか。いずれにし ても、今回のハギスは製作も担当している訳で、そのハギス 自身が監督のみとしているものだ。因にハギスは“Crash” が初監督作品だった。 ただし、今回発表された作品は、ハギスの次回作とはされ ていない。一方、ハギス自身は、現在ソニー傘下のMGMで 製作中の007の新作“Casino Royale”の脚色を担当して いるもので、監督と脚本家の両面でソニーとの関係は深くな っているようだ。 * * 続いては、テレビシリーズの映画化で、1968−70年にロバ ート・ワグナー主演で放送された“It Takes a Thief”(プ ロ・スパイ)を、ウィル・スミスの主演で劇場版リメイクす る計画がユニヴァーサルから発表されている。 オリジナルのお話は、ワグナー扮する天才的な泥棒が、生 涯たった1度の失敗で逮捕、収監される。ところが、そこに SIAと称する政府諜報機関の男が現れ、彼を仮釈放する代 りに政府のために盗みの技を活用することが要請されるとい うもの。主な舞台はヨーロッパで、毎回難攻不落の獲物に単 身チャレンジする主人公が描かれた。そして第2シーズンか らは主人公の父親役でフレッド・アステアがセミレギュラー で登場し、ウィットに富んだ物語が展開されていたものだ。 全体的には“Mission: Impossible”(スパイ大作戦)の 個人版といった感じだが、大掛かりではないが華麗な盗みの テクニックが当時のファンには高い評価を受けていた。僕の 記憶しているものでは、大通りに面したガラス張りの部屋に 置かれた大金庫を、白昼堂々破るという回があったが、その テクニックにはなるほどと思わされたものだった。 そしてその映画化の計画は、実は10年ほど以前から当初は マイクル・ダグラスの主演で計画されていたものだが、会社 側の意向でスミスの起用が要望され、今回はそのスミスの出 演が決まって一気に進められることとなった。また、これに 伴い脚本には“Four Brothers”のデイヴィッド・エリオッ トとポール・ラヴェットが起用され、新規の脚本が執筆され るとのことだ。因に、政府諜報機関はCIAになるようだ。 スミス主演のテレビシリーズからの映画化では、1999年の “Wild Wild West”が記憶されるが、あの時はスミス自身よ りも相手役の方に問題が有ったようにも思われ、今回はその 雪辱を果たしてもらいたいところでもある。 なおスミスの次回作としては、息子のジェイドと共演した コロムビア作品“The Pursuit of Happyness”の公開が今年 の12月に予定されている。 また、昨年12月15日付第101回などで紹介している同じく コロムビア作品の“Tonight, He Comes”に関しては、6月 の撮影開始が発表されているものだが、実はここに来て監督 のジョナサン・モストウが降板を表明。これはスミスとモス トウの間で創造上の意見の相違が有るためということだが、 コロムビアでは急遽監督を選考する事態になっている。ただ し、これに伴ってディズニーで先に進められていたモストウ 監督の“Swiss Family Robinson”のリメイクが再開される ことになりそうだ。 * * 1998年公開の“Fear and Loathing in Las Vegas”(ラス ベガスをやっつけろ)などの原作者で、昨年2月21日に亡く なった作家ハンター・S・トンプスンの生涯を描くドキュメ ンタリーが製作され、遺族や生前の作家と親交の深かったハ リウッドスターらの取材が進められている。 “Buy the Ticket, Take the Ride: Hunter S.Thompson on Film”と題されたドキュメンタリーでは、トムプスン原 作の映画化に出演したジョニー・デップ、ベニチオ・デル= トロ、ビル・マーレー(1980年公開の“Where the Buffalo Roam”に出演)を始め、ショーン・ペン、ジョン・キューザ ックらのハリウッドスターや、元上院議員のジョージ・マク ガヴァン、作家のトム・ウルフらが登場、作家の生涯を検証 するということだ。 構成と監督は、“Sam Peckinpah's West”や“John Ford Gose to War”など、映画を題材にしたドキュメンタリーで 知られるトム・サーマン。製作は、アメリカでケーブルTV 向けの映画チャンネルを多数所有しているStarz!。従って、 本来この作品は、テレビ放送用に製作されているものだが、 今回は8月までに完成して劇場でも公開し、アカデミー賞を 目指すことも検討されているようだ。 因に、Starz!では、昨年のカンヌ映画祭で唯一公式上映さ れたドキュメンタリー作品の“Midnight Movies: From the Margin to the Mainstream”を製作した他、“Pirates of the Caribbiean”のスタッフキャストの一部も参加した世界 一周帆船レース“The Volvo Ocean Race”の模様を収録した シリーズや、『13金』『エルム街』『スクリーム』を題材に した“Going to Pieces: The Rise & Fall of the Slasher Film”、さらにトーキー初期から現在までの性格俳優と呼ば れる人々を題材にした“The Face Is Familiar”といった作 品が製作されているとのことだ。 一方、トムプスン原作の映画化では、昨年6月1日付の第 88回で“The Rum Diary”の映画化をジョニー・デップが進 めていることを紹介したが、この計画は現状ではプレ・プロ ダクションの段階で止まっているようだ。つまりデップの身 体の空き待ちというところだろうが、デップの計画では12月 15日付第101回で紹介した“Shantaram”が先に進みそうで、 先行き不透明だ。因に、2004年3月1日付第58回で紹介した “The Diving Bell and the Butterfly”は、もうこれ以上 待てないということでデップの起用が断念され、別の俳優の 選考を進めることが発表されており、本人が希望しながら出 演が叶わないというのも、人気スターの辛いところになりそ うだ。 * * 1950年代の絶頂期のアメリカSFを代表する作家の一人と 言われるアルフレッド・ベスターが、1956年に発表した長編 小説“The Stars My Destination”(別名“Tiger Tiger” =邦題:虎よ!虎よ!)の映画化権をユニヴァーサルが獲得 し、“Doom”を手掛けたロレンツォ・ディ=ボナヴェンチュ ラの製作で進めることが発表された。 物語は、宇宙船の事故で唯一の生存者となった男が、事故 後に近くを通りながら救出活動をしなかった宇宙船の関係者 に復讐を誓い、その真相を追う内に人類の歴史を揺るがす秘 密に近づいて行くというもの。『巌窟王』に準えたとも言わ れる作品だが、さらにこれに惑星表面上を自由に移動する超 能力を身に付けた人類が作り出す奇妙な未来社会の様子や、 それが引き起す惑星間戦争など、SF6冊分のアイデアと、 6冊分の悪趣味をブチ込んだとも言われる作品だ。 そしてこの原作の映画化に関しては、1996年頃にドイツの コンスタンティンとフォックスの共同製作が立上げられ、こ の計画は2002年頃までは生きていたようだが、結局実現しな かった。今回はその映画化権をユニヴァーサルが獲得したも ので、脚本家や監督などは未定だが、実績のある製作者の参 加は期待が膨らむところだ。 ところでべスターの作品では、もう1作“The Demolished Man”(分解された男)という作品の映画化が以前から計画 されている。こちらは1953年に発表された原作だが、当時俳 優のホセ・ファーラーが映画化権を設定するなど、実は今回 紹介した作品より以前から、何度も映画化の計画が発表され ては消えていたものだ。 そして現在、この作品に関しては、実は昨年2月1日付第 80回で紹介したブラッド・ピット主演“The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford”のアンドリュ ー・ドミニク監督が計画を進めており、本当はこのピット作 品がなければ今頃撮影が開始されていたはずだったものだ。 今後のドミニク監督のスケジュールがどうなっているかは不 明だが、取り敢えずは現在もプレ・プロダクションの状態に はなっているようだ。 ということで、べスター原作の映画化が相次ぎそうな情勢 だが、実は両原作とも盛り込まれたアイデアは物語だけでな く、活字のデザインに工夫が施されるなど表現上でも実験的 な要素を含んでいたもの。そのため今まで映像化が見送られ た経緯もあったとされている。これに対して、今回の計画で どのような映像化が試みられるかは不明だが、現代のVFX 技術を駆使した挑戦が期待されるところだ。 * * モンテ・ヘルマンという名前を聞いて「わっ」と言う人が どのくらいいるか知らないが、ロジャー・コーマンの門下生 の一人で、1953年製作の“Beast from Haunted Cave”(魔 の谷)という作品が、日本公開もされている同監督の新作の 計画が紹介された。 作品は、直ぐ上の記事でも触れたブラッド・ピット主演作 “The Assassination …”の原作者でもあるロン・ハンセン の小説を映画化するもので、題名は“Desperadoes”。やは り西部劇でダルトン・ギャングを描いたものということだ。 キャスティングは未定だが、撮影は今秋アラバマで行われる ことになっている。またこの作品の製作総指揮には、マーテ ィン・スコセッシが名を連ねているものだ。 因にヘルマンは、コーマン製作で3本を監督した後、やは りコーマン門下生のジャック・ニコルスン製作で西部劇など を監督、その後も1970年代まではぽつぽつと作品はあるが、 80年以降では、89年製作のホラーシリーズ“Silent Night, Deadly Night”の第3作の監督に名前が出ている程度。しか し、実はその他にも名前を出していない作品が数多くあるよ うで、またクェンティン・タランティーノ監督の出世作『レ ザボア・ドッグス』では、製作総指揮に名前を連ねるなど、 映画界では実力者だったようだ。 なおヘルマン監督は、すでに全4話からなるデニス・バー トック原作の超自然ホラーアンソロジーの1話で“Trapped Ashes”という作品を完成させ、公開待機中ということで、 データによると1932年生まれ、今年73歳のベテランは、これ からもう一と花咲かせることになりそうだ。 * * 1999年に話題を呼んだ“The Blair Witch Project”では 共同で監督及び脚本を担当したダン・マイリックが、それ以 来の脚本監督作品となる“Solstice”の撮影を、ニューオル リンズで行うことが発表された。 内容は、双子の妹を自殺で亡くしたばかりの若い女性が、 友達と一緒に湖畔の家で夏至の夜を過ごすときの出来事を描 くホラー・スリラーということで、夏至の夜というのは元々 不思議な現象が起き易いと言われているから、それなりのこ とが起こりそうだ。なお撮影は、当初は去年の秋に予定され ていたものだったが、ハリケーンの影響で遅らされ、ようや く可能となったもののようだ。 主演は、ワーナー傘下インディペンデンスから近日公開の “Chaos Theory”などに出演しているエリザベス・ハーノイ ス。それに、2002年の『ロード・トゥ・パーディション』で トム・ハンクスの息子に扮したタイラー・ホークリンが共演 している。製作は、『ロード・オブ・ウォー』『プルーフ・ オブ・マイ・ライフ』などを手掛けるエンドゲーム。 因に、エンドゲーム社は“Stay Alive”などホラー映画の 製作者が個人資産で設立した製作会社ということで、確かに この他にもゾンビ物などの計画も発表されているが、上に書 いた2作とはちょっとギャップを感じるところだ。 また、“The Blair Witch…”で共同監督、脚本を手掛け たもう一人のエド・サンチェスも、ユニヴァーサル傘下フォ ーカス・フューチャーズのジャンル・レーヴェル=ローグ・ ピクチャーズで、“Altered”という作品がポストプロダク ション中になっている。内容は、恐怖の夜を体験する男たち の物語ということで、2人は別れても同じような作品を作っ ているようだ。 * * 最後は、続編の話題を2本まとめて紹介しておこう。 1本目は、昨年6月15日付の第98回で紹介した映画化シリ ーズの第3作“Asterix aux Jeux Olympiques”(Asterix at the Olympic Games)の製作が、スペインの配給会社トライ ピクチャーズの参加で行われることになった。 この計画では、前回は製作費を米ドル換算4000万ドルと紹 介したものだが、その後、これがヨーロッパ映画史上最高と 言われる9520万ドルに急騰し、結局フランスだけでは賄い切 れなくなったようだ。そこでスペインでNo.1の配給会社とい われるトライ社の参加が必要になったもので、同社は製作費 の拠出と引き換えに、スペイン国内の全配給収入と海外配給 収入の一部も得ることになる。 監督は、製作者でもあるトーマス・ラングランとフレデリ ック・フォレスティアの共同で行われ、出演はオベリスク役 のジェラール・ドパルドューと、今回のアステリックス役は クロヴィス・コーニラックという俳優が演じることになって いる。なお、前回報告したジャン・クロード・ヴァン=ダム とアラン・ドロンの出演は今回は紹介されていなかった。撮 影は6月18日から20週間の予定で行われるということだ。 2本目は、2004年に日本公開されたトニー・ジャー主演の タイ製アクション映画“Ong bak”(マッハ!)の続編“Ong bak 2”に関し、アジア、イギリスを除く世界配給権をTW Cが獲得したことが発表された。因にTWCは、ジャーの新 作『トム・ヤム・クン』のアメリカ配給も手掛けており、そ の流れで今回も決まったようだ。 撮影は今秋に予定され、監督には前作の原案とアクション 監督を担当したパンナー・リットグライに要請が行われてい る。また、ジャーには今回はアクション監督の肩書きも付く ことになるということだ。物語は、旅する若者のジャーが、 その旅の出来事の中で、格闘技に関するスキルと内面的な意 味を学んで行くというもの。要するに武者修行を行う若者を 描く作品になりそうだ。
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