※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回はキネ旬では遠慮しているヨーロッパ発の情報から。 まずは、MGM/UAがソニーに買収されてからは最初の 作品となる007シリーズの第21作“Casino Royale”に関 して、10月14日、ロンドンのテームズ川に架かるタワーブリ ッジの傍に停泊した英国女王の専用船プレジデント号の船上 で記者会見が行われ、新たにジェームズ・ボンドを演じる俳 優ダニエル・クレイグが正式に発表された。 クレイグは37歳、以前には、1996年にBBCのテレビ番組 で人気を得た後、1998年の『エリザベス』や2001年の『トゥ ーム・レイダー』、2002年の『ロード・トゥ・パーディショ ン』などにも出演しているようだが、いずれもトップにクレ ジットされたものではない。ただし、ソニーが今年5月に全 米公開したマシュー・ヴォーン監督作品“Layer Cake”では 主人公のXXXX役を演じており、さらに年末に全米公開予定の スティーヴン・スピルバーグ監督作品“Munich”にも出演し ているということだ。 また、この配役には、ジュード・ロウや、ユアン・マクレ ガー、コリン・ファレル、オーランド・ブルームらも候補に 挙がっていたようだが、いずれも却下され、最終的にはクレ イグとヘンリー・カヴィルという俳優が残って最後のタイ& タキシードによるオーディションに臨んだ。そして、その着 こなしから、クレイグが選出されたというものだ。 なお、最後がタキシードの着こなしというのは、いかにも 女王陛下の諜報部員という感じのするものだが、実はタキシ ードというのは本来はアメリカ式の略礼服の名称で、その辺 の発表が正しく翻訳されているのかどうか、ちょっと疑問に も感じたところだ。もっとも選考を行った製作者のバーバラ ・ブロッコリは、ニューヨーク生まれの父親の跡を継いだの だから、そんなところかも知れないが… 一方、37歳の俳優がボンドを演じることに関しては、若す ぎるのではないかという意見もあるようだが、実際にイアン ・フレミングが執筆した小説の主人公はその程度の年齢で描 かれているということで、逆に映画で作られたイメージをど のように覆すかが問題になるようだ。因に記者会見で、監督 のマーティン・キャンベルからは、「今回の作品では、秘密 兵器などのような道具立てを少なくして、より人物に近づい た映画化を目指す」という抱負も語られている。 元々“Casino Royale”は、フレミングが1953年に最初に 発表した007物語だったが、いろいろな経緯で正式な映画 化が最後になってしまったものだ。しかし、この機会に原点 に立ち戻って、新たな21世紀のジェームズ・ボンドを目指す 良いチャンスのようにも感じるところだ。 また今回は、マニーペニーやQなどの脇役陣も一新される ようで、その配役はまだ選考中のようだが、計画では、来年 1月に撮影開始して、同年11月の公開となっている。 * * お次はフランスからで、2003年12月1日付の第52回で紹介 したコミックスの“Lucky Luke”が、今度はアニメーション で映画化されることが発表された。 この発表は、フランスのアニメーションスタジオのキシラ ムが行ったもので、発表によると“Tous a l'ouest”という 作品が、長編アニメーション化されるということだ。 この物語は、英題名で“The Caravan”と呼ばれる原作の 1篇に基づいており、内容は、カウボーイの主人公と、その 相棒の喋る馬ジョリー・ジャンパーが、宿敵ドルトン兄弟と の決着を付けるため、決戦の場に向かうというもの。確か以 前に紹介した映画化もドルトン兄弟との話だったはずだが、 それとの関係はどうなっているのだろう。 因に、キシラムでは“Lucky Luke”のテレビアニメーショ ンシリーズの製作も行っており、2003年に放送されたそのシ リーズでは、420万人の視聴者の獲得と、7つの受賞にも輝 いているそうだ。そして今回の長編化は、オリヴァ・ジャン =マリーと、ジャン=フランシス・ヘンリーの脚本から、ジ ャン=マリーが監督を担当することになっている。 また今回の製作では、総製作費1200万ユーロの内の30%を 海外配給の事前契約で調達するとしているが、すでにドイツ やベネルックス、ポルトガル、ギリシャなどとも契約が結ば れ、さらに英語版の製作も行って英語圏へのセールスも行う 計画だそうだ。そのため声優には著名な俳優の起用を検討し ているということだが、テレビシリーズでは、アントニオ・ デ=コネスというフランス人俳優が主人公の声を当てていた ものだ。フランス公開は2007年秋に予定されている。 * * 以下は、ハリウッドの情報を紹介しよう。 最初はちょっと残念なニュースで、アメリカ南部に甚大な 被害を及ぼしたハリケーン・カタリーナだが、ついにその影 響が映画製作にも現れてしまった。 影響を受けたのは、今年4月15日付の第85回でも紹介した “Deja Vu”の映画化で、『シュレック』『パイレーツ・オ ブ・カリビアン』などのテリー・ロッジオと、ビル・マーシ リが脚本を執筆したこの作品の製作延期と、トニー・スコッ ト監督の降板が発表されてしまった。 なお作品は、時間移動の能力を身に付けたFBI捜査官の 主人公が、難事件解決のため時間を遡ったことからタイムパ ラドックスに直面するというもので、製作元のディズニーで は脚本の契約に7桁($)を支払ったほどの期待作。そして 映画化では、スコット監督に続いてデンゼル・ワシントン主 演が発表され、スコット+ワシントンのコンビには、1995年 『クリムゾン・タイド』、2004年『マイ・ボディガード』に 続く3度目のコラボレーションが期待されていたものだ。 ことろが今回の映画化に当って、元々の脚本の舞台はサン フランシスコだったようだが、映画製作費に対する税制上の 優遇措置などの理由でニューオルリンズに舞台が変更されて いた。しかしそのロケーションの予定地が、今回のハリケー ンで全壊してしまったということだ。このため製作者のジェ リー・ブラッカイマーは、ロケ地を元のサンフランシスコに 戻すのか、さらに別のロケ地を探すのかなども検討している ようだが、これにより撮影の延期は余儀ないものとされ、さ らに延期によるスケジュールの都合でスコット監督の降板と なってしまったものだ。なお、発表が行われた10月4日は、 元々の撮影開始の予定日だったということだ。 また今回の映画化では、物語の展開上フェリーとドックが 必要ということで、それがニューオルリンズがロケ地に選ば れた理由でもあったようだが、それらが揃ったロケ地はそう 簡単に見付けられるものではなく、またロケ地をルイジアナ 州の外に変更するとなると、先に与えられた税制優遇措置な ども得られないことになって、すでに支払われたものに関し ては税金の追徴などもあるようだ。 元々の製作費は7500万ドルが計上されていたものだが、延 期によってかなりの追加も必要になりそうで、いろいろな条 件を検討しなくてはいけない事態になっているようだ。なお 製作者は、来年1月中には撮影を開始したいとしているが、 配給元のディズニーは公式発表を控えている。また今回の計 画では、上記のように先にスコット監督が決って、後からワ シントンが参加したものだが、これでワシントンまで降板し てしまわないことを祈りたいものだ。 * * お次は、ちょうど2年前の2003年10月15日付第49回で紹介 したクリストファー・ノーラン監督の“The Prestige”の映 画化に、“X-Men”のヒュー・ジャックマンと、“Batman” のクリスチャン・ベイルの共演が発表された。 この計画は、『バットマン・ビギンズ』のノーラン監督が 2年半ほど前から進めていたもので、クリストファー・プリ ーストの原作から、『メメント』の原案にも協力した兄弟の ジョナサンと共に脚色を行っていた。内容は、1878年を発端 とする19世紀末の時代背景で、当時のロンドンで人気を二分 していた2人のステージマジシャンの確執を描いたもの。互 いにネタばらしを行ったり、新規なトリックを編み出すなど の熾烈な闘いを続けていたが、やがて2人は揃って殺人の容 疑者にされてしまうという展開になるようだ。 なお、元々の原作の映画化権は、『パッション』なども手 掛けたニューマーケットが所有していたもので、脚色の依頼 も同社が行っていた。これに対して2年前の時点でワーナー とディズニーが製作に参加したもので、映画の配給は、アメ リカ国内をタッチストーン、海外はワーナーが担当すること になっている。撮影は来年1月に開始の予定。 因にジャックマンは、撮影中のシリーズ第3作の“X3”は それまでに完了する計画で、またダーレン・アロノフスキー 監督の“The Fountain”と、ウッディ・アレン監督の新作も 撮り終えているそうだ。一方のベイルは、『バットマン…』 に続いては、テレンス・マリック監督の“The New World” と、デイヴィッド・エイヤー監督の“Harsh Times”がすで に撮影終了しており、現在はタイでウェルナー・ハーツォグ 監督の“Rescue Dawn”という作品に出演中とのことだ。 * * 『ターザン』の原作者としても知られるエドガー・ライス ・バローズの原作による“John Carter of Mars”シリーズ 第1作の映画化を、ジョン・ファヴロウ監督で行うことが、 パラマウントから発表された。 この映画化に関しては、昨年3月15日付第59回で紹介した ように、一時はロベルト・ロドリゲス監督で進められること が決定されていたものだが、第60回で報告した『シン・シテ ィ』でのフランク・ミラーとの共同監督の問題でロドリゲス がアメリカ監督組合(DGA)を脱退したことから、第61回 で報告したようにDGAとの取り決めに縛られる老舗のパラ マウントでは組合員以外の監督との契約は解除せざるを得な くなっていた。その後、第69回で報告したように『スカイ・ キャプテン』のケリー・コンラン監督も取り沙汰されたが、 今回ファヴロウ監督の起用が発表されたものだ。 なお、ファヴロウ監督は、2003年にニューラインからウィ ル・フェレルの主演で発表した実写とアニメーション合成の ファンタシー“Elf”が評判になった他、今年の11月11日に ソニーから全米公開されるクリス・ヴァン・オールズバーグ 原作のファンタシー・アドヴェンチャー“Zathura”など、 VFX主導の映画の監督にも実績があり、身長12フィートの 緑の巨人や6本脚の馬も活躍するこの作品の監督にはピッタ リと言えそうだ。また、ファヴロウ監督は“Elf”では、登 場する北極熊の声を伝説の特撮マン=レイ・ハリーハウゼン に演じさせているということで、そのような繋がりも、ぜひ 今回の映画化には活かしてもらいたいものだ。 脚本は、マーク・プロトセヴィッチが手掛けたものから、 さらにアーレン・クルガーのリライトが終っているというこ とで、当初の予定では2005年早々からの撮影となっていたも のだが、それが1年半遅れたとして、2007年クリスマスシー ズン〜08年夏の公開が期待できるのだろうか。 * * フランシス・フォード・コッポラ監督が、1997年の『レイ ンメーカー』以来、8年ぶりの監督に復帰したことが発表さ れた。発表によるとこの作品は、ルーマニア人の作家ミアシ ャ・イリアデ原作の英題名“Yuoth Without Youth”という 中編小説を映画化するもので、製作費は全て自己資金で賄う 低予算作品とされている。 内容は、第2次大戦前の暗黒の時代を背景に、世情の激変 によって逃亡者となり、生活の全てを変えなければならなか った一人の大学教授の人生を描いたもの。これにより主人公 は、祖国ルーマニアから、スイス、マルタ、そしてインドへ と旅を続けたというものだ。出演者には、ティム・ロス、ア レクサンドラ・マリア=ララ、ブルーノ・ガンスらの名前が 上がっている。撮影は10月3日にブカレストで開始された。 なお原作には、1920年代のシュールレアリズムの影響も見 られるそうで、その辺をコッポラがどのように処理するかに も注目したい。また最近は、娘ソフィアの監督に注目の集ま ることの多かったコッポラ家だが、ここらで父親の実力も見 せてもらいたいところだ。 それにしても、主人公はインドまで旅するようだが、言わ れているような低予算作品で、そのようなロケーション撮影 は一体どうするのだろうか。 * * 『デイ・アフター・トゥモロー』では、新たな氷河期の到 来の恐怖を描いたローランド・エメリッヒ監督が、今度は前 の氷河期を舞台にした物語を描くようだ。この作品は、エメ リッヒと、『デイ・アフター…』の音楽も手掛けた作曲家の ハラルド・クローサーが考えた物語を映画化するもので、題 名は“10,000 B.C.”。氷河期に掛かる先史時代の人類にお ける3つの進化の段階を描くとするものだ。 具体的な物語は、原始人たちの集団の中で暮らす21歳の若 者を主人公に、彼らは毎年彼らの居住地を移動するマンモス を狩って生活をしていたが…というお話。エメリッヒ=クロ ーサーの原案からジョン・オルロフが脚本を執筆し、撮影は 来年2月にアフリカで開始される。 なお、先史時代を描く作品では、先にメル・ギブスンが、 西欧人が渡来する前のマヤ文明の物語“Apocalypto”を古代 マヤ語の台詞で撮影するとして話題になっているが、本作の 台詞は英語で撮影されるということだ。ただしエメリッヒの 意向で、出演者には無名の俳優を使うことになっており、そ の選考は10月後半に行うとしている。 製作は、エメリッヒと彼の永年のエージェントだったマイ クル・ウィマーが今年4月に設立したセントロポリスが行う もので、ソニーが配給する。 なお、題名からは“One Million B.C.”を連想したが、さ すがに人類の祖先が恐竜と戦うような荒唐無稽のものではな いようだ。しかし、巨大なマンモスを登場させるとなれば、 やはりそれなりのVFXも必要とされるはずで、エメリッヒ とソニーの関係では、“Godzilla”で培った技術を発揮して もらいたいもの。特に、マンモス狩りのシーンには期待した いところだ。 * * 『トレジャー・ハンターズ』(Without a Paddle)で主人 公トリオの1人を演じた俳優のダックス・シェパードは、脚 本家としても認められている人だが、彼の新作で日本を舞台 にした“Get'Em Wet”という脚本が、パラマウントで映画化 されることになった。 お話は、アメリカでバスタブのトップセールスマンとなっ た男が、その販路拡大のため日本にやってくるというもの。 当然そこから始まる日本の商慣習や風俗とのカルチャーギャ ップを題材としたものになるようだが、大体、風呂場の構造 からして違う日本にバスタブのセールスとは飛んでもないこ とを思いついたものだ。 日本の風俗を描いた作品では、昨年のアカデミー賞で、ソ フィア・コッポラ脚本、監督の『ロスト・イン・トランスレ ーション』が話題になったが、本作はその本格コメディ版と いうことにもなりそうだ。 なお脚本は、やはり俳優のウィル・アーネットとの共作に よるもので、2人は映画化の主演にも起用されることになっ ている。またシェパード+アーネットのコンビでは、すでに “You Are Going to Prison”という作品を完成していて、 本作は続編ではないが、それに続く作品になるものだ。 またシェパードは、俳優としてはソニーの“Zathura”に 出演している他、レヴォルーションとハッピー・マディスン が製作する“Guerilla Photographer”の脚本を提供。また 『トレジャー…』のスティーヴン・ブリル監督と共に、パラ マウントに向けて“Space Race”という脚本も提供している ようだ。またアーネットは、ソニーから来年3月に全米公開 されるロビン・ウィリアムス主演の大型コメディ“RV”に出 演している他、“Dad Can't Lose”というパラマウント作品 と、“Most Likely to Succeed”というユニヴァーサル作品 にも出演している。 * * 1988年の『グッド・モーニング・ベトナム』で、ロビン・ ウィリアムスを本格的に世に送り出したバリー・レヴィンソ ン監督が、再びウィリアムスを主演に迎えて、“Man of the Year”という作品を年末から撮影することが発表された。 この作品は、深夜の政治討論番組のホストを務める主人公 が、大統領批判を繰り返すうちに政争に巻き込まれて行くと いうもの。レヴィンソンの政界コメディでは、1997年の『ウ ワサの真相』以来になるということだが、今回はレヴィンソ ンが書き上げた脚本をウィリアムスに送ったところ、そのコ メディの良さに直ちに彼が反応したというものだ。なおレヴ ィンソン+ウィリアムスのコンビでは、1992年の『トイズ』 も作られている。 撮影は年末に開始の予定だが、セット撮影はカナダのトロ ントで行われ、その後に屋外シーンの撮影がメリーランドと 首都ワシントンでも行われるということだ。なお、製作会社 はモーガン・クリークで、同社の作品はアメリカ国内はユニ ヴァーサル、海外は自社が配給権を持つことになるようだ。 因にウィリアムスは、現在は来年3月17日に全米公開予定 のバリー・ソネンフィルド監督による大型コメディ“RV”を 撮影中となっていた。 * * 2004年4月1日付第60回で紹介したテレビシリーズからの スピンオフ作品“Serenity”が9月末に公開され、1週目に 1000万ドル=全米第2位の興行を記録したジョス・ウェドン 監督が、新たに“Goner”という脚本でユニヴァーサルと契 約を結んだことが発表された。 この作品についての詳細な内容は不明だが、“Buffy the Vampire Slayer”などを手掛けてきたウェドンが得意とする 超自然の現象に立ち向かう若い女性を主人公にしたもので、 彼女の恐怖とヒロイズムを巡る「旅」が描かれるとされてい る。そして“Serenity”より暗いトーンに包まれたものにな るということだ。と言っても“Serenity”が未公開の日本で は、どう解釈していいか判らないのだが… ただしウェドンには、その前にワーナーとの間でDCコミ ックスを映画化する“Wonder Woman”の契約が結ばれている はずだが、今回の記者会見では、「ワンダー・ウーマンは、 自分にとって常にシンボル的存在だが、自分には全ての権利 が与えられており、それをいつ実現するかは自分で決める」 として、期日などの明言は避けたようだ。まあ、ワーナーが それを認めているのなら仕方がないことではあるが、ファン にとってはあまり長く待たされたくはないし、出来るだけ早 く取り掛かってもらいたいものだ。 それから、ついでにテレビシリーズの情報だが、出演者の 大半が入れ替わった“Buffy the Vampire Slayer”は、今後 はジェームズ・マースターズが演じているパンクヘアの吸血 鬼=スパイクに焦点を当てたシリーズが続いて行くことにな るようだ。
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