井口健二のOn the Production
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2005年08月15日(月) 第93回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回はこの話題から。
 アーノルド・シュワルツェネッガーの主演で計画され、彼
のカリフォルニア州知事への当選によって頓挫したSF作品
“Westworld”のリメイク計画がまた動き始めている。
 この計画については、2002年4月1日付の第12回や2003年
6月15日付第41回でも紹介したが、結局は2003年8月15日付
第45回で紹介したようにシュワルツェネッガーが州知事選挙
に立候補し、当選を果たしたために実現不可能になってしま
ったものだ。
 その計画がまた動き始めているものだが、今回の情報は、
以前から計画を進めていた製作者のジェリー・ワイントロー
ブが新たに監督名を公表したもので、それによると、監督に
は2000年公開のジェニファー・ロペス主演のサスペンス作品
“The Cell”などを手掛けたCF、ミュージックヴィデオ監
督のターセムが起用されることになっている。
 しかしこの計画では、脚本がまだ作られていない。因に、
以前の計画では“Terminator 3: Rise of the Machines”を
手掛けたマイクル・フェリスとジョン・ブランカートのコン
ビの起用が発表されていたものだが、これはシュワルツェネ
ッガーの要請によったもので、彼の出演が無くなった時点で
キャンセルされている。
 一方、ターセムは、インディーズで製作された新作“The
Fall”では、1992年製作の“Freejack”などの脚本家ダン・
ギルロイが執筆したオリジナル脚本から、長年のパートナー
のニコ・ソルタナキスと共に自ら脚本を執筆しているという
ことで、今回もその可能性はありそうだ。
 とは言うものの、いずれにしてもこれから脚本が作られる
ということでは、撮影開始はかなり先になりそうだ。
 ところで、最近の世論調査によると、シュワルツェネッガ
ーの知事としての支持率が急落して、来年秋の選挙での再選
は難しいとの観測も出て来ている。そうなると、州知事の任
期は2007年1月までとなるもので、そこで今回の情報では、
彼の復帰第1作となるのでは?という説も流れているようだ
が…果たしてどうなることか。
 なお、以前の計画でシュワルツェネッガーが演じるのは、
1973年製作のオリジナルでユル・ブリナーが好演し、ターミ
ネーターの原形とも呼ばれた不死身のガンマン役ではなく、
ワールドを訪れてパニックに巻き込まれる観光客の役となっ
ていたものだ。
        *         *
 お次は、ディーン・マーティンの主演で1966年に映画化さ
れた“The Silencers”(サイレンサー/沈黙部隊)などの
退役スパイ=マット・ヘルムを主人公にしたシリーズを、ド
ナルド・ハミルトンの原作に基づいて再映画化する計画が、
ドリームワークスから発表されている。
 オリジナルの映画化は、評価も高く大ヒットした第1作に
続いては、ほぼ毎年1作の割りで“Murderers' Row”(殺人
部隊)、“The Ambushers”(待伏部隊)、そして1969年公
開の“The Wrecking Crew”(破壊部隊)まで全4作が製作
されたものだ。
 そしてこれらの映画化では、いずれもマーティンの軽妙な
演技で、特に第1作はパロディとして大成功したものだが…
元々の原作では、主人公は第2次大戦中の作戦失敗の記憶が
尾を引いているという、比較的シリアスな内容も含む物語と
いうことだ。そこで今回の計画は、原作の路線に戻して再映
画化するというもので、この脚色に、“2 Fast 2 Furious”
(ワイルド・スピード×2)のマイクル・ブラントとデレク
・ハースのコンビが6桁($)後半の契約金でサインしたこ
とも発表されている。
 因に、以前のシリーズはコロムビア製作で、上記の4作の
後には1975年にアンソニー・フランシオーサ主演によるテレ
ビシリーズ化もされたが、それも1クールで終了している。
これに対してハミルトンの原作は、1960年発表された第1作
“Death of a Citizen”以降20作以上も発表されているとい
うことで、成功すればかなりのシリーズになりそうだ。
 ただし、第2次大戦に絡む主人公の設定などは21世紀では
通用し難いもので、脚本家コンビには、その辺の物語の現代
化も求められているものだ。なおこの脚本家コンビは、ユニ
ヴァーサルが来年夏向けに計画していたコミックスの映画化
“Wanted”や、パラマウントでロバート・ロダットが手掛け
たトム・クランシー原作“Red Rabbit”の脚色のリライトな
ども契約している。
 またフランス映画のリメイクで“The Capitalist”という
作品も、ハースの製作によりブラントの監督デビュー作とし
てユニヴァーサス傘下のフォーカス・フィーチャーズで計画
されているようだ。
        *         *
 もう1本ドリームワークスから、トム・クランシーの書き
下ろしによるヴィデオゲーム“Splinter Cell”の映画化の
計画が発表された。
 このゲームは、クランシーが発表しているヴィデオゲーム
シリーズの“Rainbow Six”“Ghost Recon”と並ぶもので、
政府機関のスパイ=サム・フィッシャーを主人公に、国際的
テロ組織とのハイテクを駆使した闘いが描かれる。ゲームで
は、すでに続編の“Pandora Tomorrow”と第3作の“Chaos
Theory”も発表されて、3作合計で1200万本が販売されてい
るということだ。
 そしてこの映画化の計画は、元々はパラマウントで、前回
も登場したピーター・バーグの監督により進められ、バーグ
とゲームライターのJ・T・ペティ、ジョン・J・マクラグ
リンによる脚本も完成していたということだ。しかし、バー
グの出来るだけ早く製作したいという意向と、パラマウント
側の製作時期の考えが合わず、結局バーグが前回も紹介した
“The Kingdom”の計画に参加を表明したために、計画自体
がキャンセルされてしまったものだ。
 その計画がドリームワークスに移されたものだが、同社で
は新たに“The Manchurian Candidate”(クライシス・オブ
・アメリカ)のダニエル・ペインを脚色に招いて映画化を進
めることになっている。
 監督は未定のようで、前回紹介したようにバーグのスケジ
ュールはかなり詰まっているようだし、今回新たに脚本家が
契約されたということは、もはや彼の復帰はないと思うが、
バーグには別の期待作もあることなので、その辺は巧くやっ
てもらいたいものだ。
        *         *
 このサイトでは2002年3月1日付の第10回で初めて紹介し
たニューラインが進めているフィリップ・プルマン原作によ
るファンタシー3部作“His Dark Materials”の映画化で、
第1作の“The Golden Compass”の監督に、イギリス出身の
エイナッド・タッカーの起用が発表された。
 この計画については、2004年6月1日付の第64回で再度紹
介したように、一時は“About a Boy”のクリス・ウェイツ
監督の起用も発表されていたものだが、そのウェイツ監督が
昨年12月に降板を表明、その後、ニューラインでは50人以上
の後任監督をリストアップして、選考を進めていたというこ
とだ。その中には、リドリー・スコットやデイヴィッド・ク
ローネンバーグも含まれていたと報告されている。
 しかしなかなか決定に至らなかったもので、そんな折りに
タッカー監督から20ページに及ぶ概要を含めた、コンセプト
アートやVFXのデモ映像などが提出され、これらを検討し
たニューラインの首脳によってタッカー監督の起用が決定さ
れ、正式発表されたものだ。
 この発表に当ってニューラインの首脳からは、「我々は、
タッカー監督の実績や彼が提出したプレゼンテーションなど
を検討し、その結果、彼がアイデアに溢れた作家であって、
この計画を実現するのに最適な人材であると確信した」との
発言が添えられた。また原作者のプルマンからも、「彼は、
物語の全てを尊重してくれているし、何より映画製作の手順
に精通している」とのコメントが寄せられていた。
 これに対して、約10年前にこの原作に触れて以来、ずっと
この映画化の監督を夢見てきたというタッカー監督からは、
「巨大な映画になるだろうし、多分、そのスケールには誰も
が簡単に圧倒されてしまうような作品になるに違いない。し
かしその中心に描かれるのは、自ら望んでなった訳ではない
英雄が、その責任を果たして行くという物語。この素晴らし
い物語を実現するために、全てのものが導かれている」と、
映画化への意欲が表明されている。
 因にタッカー監督は、1998年に発表された音楽家伝記映画
“Hilary and Jackie”(本当のジャクリーヌ・デュプレ)
の監督でも知られるが、最近スティーヴ・マーティン原作主
演による“Shopgirl”というコメディ作品を撮り終えたとこ
ろだそうだ。またその一方で、スカーレット・ヨハンソン主
演の“Girl with a Pearl Earring”(真珠の耳飾りの少女)
の製作も手掛けており、今回“The Lord of the Rings”の
後を継ぐ超大作の映画化には、その両面からの手腕が期待さ
れているものだ。
 また今回の計画では、まず“The Golden Compass”を単独
の作品として製作し、その成功を見て第2作の“The Subtle
Knife”と第3作の“The Amber Spyglass”を同時に製作す
る方針ということで、3部作の全てが製作されるか否かは、
第1作の出来に掛かるようだ。
 出演者などは未定で、撮影開始の時期も発表されてはいな
いが、第1作の映画化にはウェイツが書き上げた脚本が使用
されるということで、脚本が出来ているということは比較的
早く動くかも知れない。なお、日本配給に関してはギャガが
すでに権利を獲得しているようだ。
        *         *
 ニコール・キッドマンが、ワーナーでジョール・シルヴァ
が製作するSFスリラー“Invasion”に、1600万ドルの出演
料で主演することが発表された。
 この作品については、2003年9月1日付第46回などで紹介
したように、元々は1956年製作のジャック・フィニー原作、
ドン・シーゲル監督の“Invasion of the Body Snatchers”
をリメイクする計画とされていた。ところが2004年4月15日
付第61回で報告したデイヴィッド・カジャニッチ執筆の脚本
が、原作とは違うコンセプトを持つものになったということ
で、現在は独立の作品として進められているものだ。
 因に、カジャニッチの執筆した物語は、人類を絶滅に導く
ような人々の異常な行動が伝染病のように広がり始め、主人
公の精神医学者はその陰に異星人の存在を見い出す。そして
彼女は、その事態を止める鍵を握る息子を守るため、異星人
との闘いを開始するというもの。確かに、オリジナルの物語
の中心にあった人々が徐々にすり替わって行くという設定は
消えているようで、人間そっくりの異星人を生み出す莢も出
てこない、となれば別の物語ということも納得できそうだ。
 そしてこの映画化では、今年のアカデミー賞で外国語映画
部門の候補に挙げられた“Der Untergang”(ヒトラー〜最
後の12日間〜)のオリヴァ・ハーシュビーゲル監督が、ハリ
ウッドデビューを飾ることも発表されている。
 なお、監督はこの作品について、「この物語の言わんとす
るところは、歴史的な出来事の暗喩であり、今この国が直面
していることの暗喩でもある。私は人間を描くスペシャリス
トで、常に薄っぺらでない立体的な人間の姿を描いてきた。
VFXやCGIに負けない人間ドラマを描いてみせる」と抱
負を語っている。
 一方、製作者のシルヴァは、監督について、「彼の作品は
ダークで、無気味で、それでいてスマートで、ちょっと密室
恐怖症に似た感じもある。これらの特徴は、自分がこの映画
に求めている全てのものだ」と期待を述べていた。
 それにしても、子供を守るために異星人の侵略と闘うとい
うのは、最近何処かで聞いたようなお話で、もちろん、侵略
の手口などは全く異なっているものだが、それにしてもこの
元夫婦は…という感じだ。因に2003年3月1日付第34回で紹
介したトム・クルーズ主演の“I Married a Witch”の計画
は消えたようだが。
        *         *
 『シュレック』の原作者として知られる故ウリアム・ステ
イグが1969年に発表した児童書“Sylvester and the Magic
Pebble”をアニメーション映画化する計画がライオンズ・ゲ
イトから発表された。
 物語は、ロバの主人公が望みを叶える小石を発見するが、
誤って自分を岩に変えてしまう。しかも家族の住む場所から
も引き離されてしまい、彼は無事もとの姿になって家族の許
に戻れるか…というもの。この概要だけでもいろいろ冒険が
起きそうなお話だ。なお、映画化の題名は“Sylvester”だ
けになるということだ。
 実は、ライオンズ・ゲイト社では、先にファミリー・エン
ターテインメント部門を設立して、今年2月に、以前から製
作されていた“Foodfight!”という3−Dアニメーション作
品の北米圏配給権を獲得したことが報告されている。そして
この作品の公開が2006年に予定されていて、本作はその部門
からの第2弾になるというものだ。
 因に“Foodfight!”は、キネ旬ではこのサイトを立上げる
前の2000年の夏ごろに紹介しているはずだが、スレッショル
ド・エンターテインメントという会社が5000万ドルの製作費
を掛け、韓国のアニメーションスタジオのナチュラル・イメ
ージなどと協力して製作していたもので、巨大スーパーマー
ケットの食料品売り場を舞台に、陳列棚の商品たちがいろい
ろな闘いを繰り広げるというCGIアニメーション。
 そしてこの映画化では、Mr.クリーン、Mr.プリングルや、
チキータ・バナナ・レディ、チャーリー・ザ・ツナ、トゥイ
ンキー・ザ・キッヅなど著名な食品のイメージキャラクター
がそのままの姿で登場するということで、その使用権を得る
ために1年以上の期間が費やされたとも言われていた。
 スレッショルド社の経営責任者で、『トゥルー・ライズ』
などの製作総指揮も手掛けたラリー・カサノフの原案から、
ブレント・フリードマンが脚本にしたもので、カサノフが監
督も担当しているということだ。
 ということで、ライオンズ・ゲイト社では“Foodfight!”
と“Sylvester”の2作のアニメーションが公開される予定
だが、他社製作の作品の配給のみを担当する“Foodfight!”
とは異なり、今回の“Sylvester”は自社で企画から発表し
たもので、今後の動きが注目される。
 なお、新作の脚本家や監督などは未発表だが、因に『シュ
レック』の原作は1993年に発表されており、本作はそれより
4半世紀ほど前の作品ということになるもので、さてどんな
作品が登場するのだろうか。
        *         *
 お次は、続編の話題を3つまとめて紹介しよう。
 まずは、2000年にオーウェン・ウィルスンとベン・スティ
ラーの初本格共演で話題となり、興行的にも好成績を残した
“Zoolander”の続編が、ウィルスンとスティラーの間で話
し合われているということだ。
 前作は、スティラーの監督作品で、ニューヨークの男性モ
デル業界を背景に、長くトップに君臨していたスティラー扮
するデレク・ズーランダーが、ウィルスン扮する新人モデル
に追い上げられ、起死回生の策に飛びつくが、そこにはアパ
レル業界を陰で操る男の陰謀が隠されていた…というもの。
パロディやアクションも満載で、しかも社会問題も扱ってい
るという、コメディとしては上出来な作品だった。
 そして今回の情報は、新作の“Wedding Crashers”が公開
3週目で全米第1位に輝くなど、底力を見せつけたウィルス
ンが同作のプロモーションで訪れたオーストラリアで語った
もので、企画はかなり進んでいる口振りだったようだ。
 また、ウィルスンはジャッキー・チェンとの共演で、第3
作となる“Shanghai Dawn”と、スティラー共演の“Starsky
and Hutch 2”の計画も語ったということで、何処までが本
気かは判らないが、“Noon”“Knights”に続くチェンとの
第3作には期待したいところだ。
 お次は、この春公開された“Sahara”の続編で、監督のブ
レック・アイスナーが期待を表明している。
 この映画化では、クライヴ・カッスラーの原作は18冊が発
表されていて、そのうち1作は過去に映画化されているが、
取り敢えずは続編の材料には事欠かない。また、前作の興行
成績はまずまずの数字を残しているので続編は可能性大なの
だが、実は主演のスター(複数)は3作の出演契約を結んで
いるのに、監督にはその契約が無いということだ。そこでア
イスナーとしては、何としても続編の監督をやりたいとのア
ピールのようだが、さて製作も担当している主演のマシュー
・マコノヒーの判断は…?
 それにしても、主演のスター(複数)が3作の契約という
ことは、続編にもペネロペ・クルスが出てくるということな
のだろうが、原作ではダーク・ピットガールズと呼ばれて、
毎回ヒロインは変わるという話も聞いており、さて映画化は
どうするのだろうか。
 3本目はヨーロッパから、1967年のルイス・ブニュエル監
督作品“Belle de jour”(昼顔)の続編が、ポルトガルの
マノエル・デ・オリヴェイラ監督によって計画されている。
 オリジナルは、カトリーヌ・ドヌーヴが主演し、上流社会
に暮らす女性の姿を赤裸々に描いたもので、ブニュエル監督
の幻想的な表現も話題となった作品だ。そして、今回続編を
計画しているオリヴェイラ監督は、当年97歳の恐らくは世界
最高齢の映画監督ということで、まずはその製作意欲に敬意
を表したいところだ。
 因に、監督の最新作は“El espelho magico”というもの
で、来月のヴェネチア映画祭のコンペティション部門でワー
ルドプレミアされるというから、間違いなく現役の監督とい
うことだ。
 撮影は来年フランスで行われ、主演にはフランス女優のブ
レ・オギエルが起用されることになっている。なお監督は、
当初はドヌーヴに出演を求めたが、断られたのだそうだ。
        *         *
 最後に、パラマウント傘下のニケロデオンから、タイムト
ラヴェル物のファンタシーの映画化権を獲得したことが発表
されている。
 この作品は、デイル・ペック原作の“Drift House”とい
う児童向けの小説を映画化するもので、物語は、主人公の少
女と2人の弟がカナダの叔父さんの家で未来を描いた壁画を
発見し、それに触れた弟の1人がその未来に行ってしまうと
いうもの。当然、主人公ともう1人の弟がそれを追いかける
のだが…原作は9月に出版予定で、これが3部作の第1巻に
なるということだ。
 3部作ばやりの昨今だが、計画ばかりでなかなか実現しな
い映画化も多くなってきており、この計画も期待半分で待つ
ことにしたい。


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井口健二