※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は製作ニュースから、早速始めることにしよう。 まずは、“Charlie and the Chocolate Factory”(チャ ーリーとチョコレート工場)が2週連続で全米第1位を記録 し、さらにこの秋には、企画と製作を担当したストップモー ション・アニメーション作品の“Corpse Bride”(コープス ・ブライド)も公開されるティム・バートン監督の情報で、 ユニヴァーサル傘下のフォーカス・フューチャーズが配給す る“9”と題されたCGIアニメーションの製作を行うこと が発表された。 この作品は、シェーン・アッカーという監督が、今年度の 学生アカデミー賞で受賞を果たした同名の10分の短編作品を 長編化するもので、内容は、人間性が脅威に曝されているパ ラレルワールドを舞台にした超現実的なファンタジー。映像 はCGIではあるもののストップモーションのような感覚で 作られた作品ということだ。まあバートンと言えばストップ モーションのイメージだからこれは好適だろう。 そしてこの長編版の脚本には、『コープス…』を手掛けた パメラ・ペトラーが参加することも発表されている。 またこの発表に当ってバートンからは、「短編作品では、 今までに見た映画の中で最も普通でない10分間を体験した」 というコメントが寄せられている。さらに、「シェーンは、 気が遠くなるほど詳細な想像力と、恐ろしいほど美しく、視 覚だけでなく感情の面でも鮮明な宇宙観を持っている」とも 語られているようだ。 なお、ハリウッド各社がアニメーションに力を入れている 中で、本作はフォーカスからは初の長編アニメーション作品 となるものだが、そこにバートンとは強力な助っ人と言えそ うだ。因にオリジナルの短編作品には、今年度のアカデミー 賞短編部門の候補の資格もあるそうだ。 * * お次は“Friday Night Lights”(プライド/栄光の絆) のピーター・バーグ監督で、1982年にアーノルド・シュワル ツェネッガーが主演した“Conan the Barbarian”(コナン ・ザ・グレート)などの原作者ロバート・E・ハワードの作 品から、“Bran Mak Morn”と題するシリーズを映画化する 計画が、ユニヴァーサルから発表されている。 ハワードは、1906年に生まれ、1936年に死去したアメリカ の作家で、自殺で世を去るまでの最後の10年間に大量の作品 を、主にウィアード・テイルズ誌などのパルプマガジンと呼 ばれる大衆雑誌に発表している。その多くは、『コナン』に 代表される剣と魔法に彩られた冒険小説で、この種の作品の 始祖とも呼ばれている人物だ。 そして計画されている原作は、紀元5、6世紀のイギリス を舞台にした歴史に基づく物語で、ローマ帝国や北方からの 脅威の下、題名にもなっているイギリス最初の王となる主人 公の活躍を描いた物語。架空の世界を背景にした『コナン』 とはちょっと違う傾向の作品のようだが、魔法などのファン タジーの要素も織り込まれていると言われている。 なお、原作はウイアード誌に発表されたもののようだが、 長く忘れられ、1990年代になって再発見されてまとめられた ということだ。そして現在は、5作の完成された小説と詩、 それにハワードが執筆した草稿なども公表されているようだ が、そこからどのような映画化が行われるのか、またシリー ズ化の期待もありそうだ。 一方、1998年の“Very Bad Things”に続いて上記の作品 と、普通の作品を撮ってきたバーグには、初めてのファンタ シー作品ということになるが、「僕は子供の頃からアクショ ン・ファンタシー、特に『コナン』の大ファンで、筋肉や世 界の見方も知っている」と自信を覗かせているようだ。 ただしバーグには、同じユニヴァーサルで、マイクル・マ ン製作による“The Kingdom”という計画が先にあり、それ に続けて本作を希望しているということだ。脚本は、両作と もジョン・ロマノが担当することになっている。因にロマノ は、フィリップ・ロスの原作で、フィル・ノイスが監督する “American Pastoral”という作品の脚色も担当している。 * * アルフォンソ・キュアロンの後を継いだシリーズ第4作の “Harry Potter and the Goblet of Fire”(ハリー・ポッ ターと炎のゴブレット)が今秋公開されるマイク・ニューウ ェル監督の次回作として、今年のアカデミー賞作品賞受賞作 『ミリオンダラー・ベイビー』を手掛けたアル・ルディーの 製作による題名未定の西部劇の計画が発表されている。 この作品は、『ビッグ・ウェンズデー』『コナン・ザ・グ レート』の脚本監督や『地獄の黙示録』の脚色なども手掛け たジョン・ミリウスのオリジナル脚本を映画化するもので、 1910−17年のメキシコ革命直後の時代を背景に、アメリカ原 住民で元海兵隊員の賞金稼ぎの主人公が、アメリカ人の資産 家女性の依頼を受けて、行方不明になった馬を捜すというも の。これだけ読むとロマンティックな話にもなりそうだが、 ミリウスの脚本ということは、かなりハードな大人の物語に なりそうだ。 そしてこの計画は、元々はユニヴァーサルで進められてい たものだが、いろいろな都合で放棄されたもので、それをル ディーが引き継いで実現を目指すということだ。ただしユニ ヴァーサルは権利の一部を残していて、アメリカ国内の配給 権は同社が優先権を持っているようだ。 因に、ミリウスが執筆した元の脚本の題名は、“Wanted: Dead or Alive”と付けられていたもの(ハードそうだ)だ が、この題名は故スティーヴ・マックィーン主演の往年のテ レビシリーズ(拳銃無宿)と同じなので変更が検討されてお り、そのため現在は題名未定ということだ。 * * “The Passion of the Christ”(パッション)で昨年度 全米興行成績で第3位を記録、全世界では6億ドルを稼ぎ出 したメル・ギブスンが再び監督する計画で、“Apocalypto” という作品を今年10月にメキシコで撮影開始、2006年夏に公 開することが発表された。 そしてこの製作では、『パッション』とほぼ同額(2500万 ドル)と言われる経費は全てギブスン主宰のIconが用意し、 完成された作品の配給権のみをオークションに掛けて争奪戦 が行われたもので、アメリカ国内はディズニーが権利を獲得 したようだ。因に、製作は全部自前で配給権のみ契約すると いう方式は、過去にはジョージ・ルーカスが“Star Wars” の前日譚シリーズで行っているだけのものだそうだ。 なお、争奪戦には他に、フォックス、ワーナー、パラマウ ントなどが参加した模様で、実際には公開時に各社が行う宣 伝プロモーションの費用などで争われたようだ。またフォッ クスとワーナーは、さらにギブスンの出演契約なども求めた ようだが、資金の潤沢なギブスンはそれを排し、『身代金』 や『サイン』で組んだことのあるディック・クックが代表を 務めるディズニー社との間で契約を結んだものだ。 ということで、来年の夏にはギブスンの新作が全米公開さ れることになった訳だが、この作品、事前の発表では古代文 明を背景にしたものということで、恐らくは紀元前の古代文 明を描いた作品だろうと言われていた。因に、題名はギリシ ャ語で、「ベールを取る(unveiling)」または「新たな始 まり(new beginning)」という意味なのだそうだ。 ところが実際は、500年前の中米マヤ文明を背景にしたも ので、しかもギブスンが執筆した脚本の始めには、「以下の 台詞は英語では話されない」と記されている。実は『パッシ ョン』も、字幕では判らないが古代アラム語の台詞だったも ので、このやり方はその踏襲ということになるが、それにし ても古代マヤ語とは…。この言語自体は現代のインディオに も引き継がれているとは言うものの、この古代の言語はまだ 完全には解読されていなかったような気もするのだが。 守秘契約が結ばれているということで、作品の具体的な内 容等は一切不明だが、先のクックの発言では、「最近読んだ 脚本の中では、最もオリジナリティに溢れたユニークな内容 の1本で、夏シーズンのスケジュールに入れるのにピッタリ の作品」ということだ。いずれにしても、マヤ文明を扱った 作品は他にもいろいろ企画されているようだが、それらに先 鞭を付ける作品ということにもなりそうだ。 因に、ディズニーの来年夏の公開作品では、“Pirates of the Caribbean”の続編がすでに決定しているものだが、本 作ではそれとは時期をずらした公開が考えられており、実は M・ナイト・シャマラン監督が『シックス・センス』以来、 初めてディズニーを離れて、ワーナーで監督した“Lady in the Water”にぶつけることも狙っているようだ。 * * ブライアン・シンガーの後を継いで“X-Men 3”を撮り始 めたばかりのブレット・ラトナー監督の次回作として、エデ ィ・マーフィ、クリス・ロック共演による題名未定の盗賊も ののコメディ作品が、イマジンで計画されている。 この計画は、イマジンの主宰者で1996年にマーフィ主演の “The Nutty Professer”(ナッティ・プロフェッサー)な どを製作したブライアン・グレイザーが、マーフィと話し合 いを持った中から生まれたもので、労働者階級の主人公2人 が完璧な泥棒計画を思いつくというお話、だたしコメディで 演じられるというものだ。そしてこの計画が、話し合いの直 後にロックに伝えられて共演が実現し、さらにマーフィとロ ックの希望でラトナーの招請が決まったということだ。 なお、脚本はユニヴァーサルで“Accepted”などのコメデ ィを手掛けているアダム・クーパーとビル・コラッジのコン ビに交渉中で、こちらも決まれば、ラトナーが“X-Men 3” の撮影中に完成させるとしている。 ラトナーは、2001年の“Rush Hour 2”の後は、2002年の ハンニバル・レクターが主人公の“Red Dragon”に続いて、 現在はアクション作品の“X-Men 3”と、ちょっと彼本来の イメージとは違う作品が続いている感じだ。しかし今回の計 画が実現すると、ラトナーには久しぶりのバディ(2人組) コメディとなりそうで、もちろんマーフィは、この路線を狙 って今回の起用を希望した訳だが、この起用にはマーフィ以 上にファンの期待も高まりそうだ。 * * またまたシリーズものの計画で、イギリスの作家マーク・ バーネルが1999年から発表している“The Ryythm Section” というシリーズの映画化がニューラインで進められ、その脚 色に原作者のバーネル自身の起用が発表された。 この原作は、全6作になる計画のシリーズで、その第4巻 が今年の秋に発行される予定ということだが、内容は、女性 暗殺者ステファニー・パトリックを主人公にした女性版ジェ イソン・ボーンのようなシリーズと紹介されている。また、 今回映画化が進められている第1巻では、主人公の両親と弟 を巻き込んだ航空機事故の謎を解き明かして行くというもの で、この時点での彼女の立場がどのようなものか不明だが、 かなり陰謀の匂いがするシリーズの開幕のようだ。 そしてこの脚色を、原作者自身が担当することになってい るが、この点についてニューラインの首脳は、「単にシリー ズの立上げというだけでなく、マーク・バーネルという新た な才能を見つけだしたことに興奮する。彼はこの脚色を通じ て、さらに別の普通でない何かを付け加えてくれるだろう」 と彼の才能を評価している。 因に、ジェイソン・ボーンの原作者ロバート・ラドラムは 元ハリウッドの脚本家で、そこからベストセラー作家になっ たものだが、今回のケースはそれとは全く逆に、作家から優 秀な脚本家の誕生が期待されているようだ。まだ監督やキャ スティングも未発表の作品だが、これからの進展を見ていき たい。 * * お次もシリーズで、6月15日付の第89回で紹介した“The Gathering”などの原作者アンソニー・ホロウィッツの作品 “Stormbreaker”の映画化が7月上旬に開始されている。 この作品は、14歳の孤児の少年が、彼の守護者でもあった 叔父の謎の死によって、その叔父が英国情報部MI6の協力 者であったことを知り、彼自身もMI6にリクルートされて 活躍を始めるというティーンスパイもの。“Stormbreaker” はその第1巻で、全6巻のシリーズで発表されている作品と いうことだ。 そして今回の映画化に当っては、マン島のフィルムコミッ ションとイギリスの映画基金が共同で製作費を拠出すること になっていたものだが、これに加えて“The Gathering”も 配給するウェインスタインCo.が北米配給権を契約し、この 時点で相当額の資金が集められたものだ。 それで、この資金に誘われた訳でもないのだろうが、この 撮影には、ソフィー・オコネド、アリシア・シルヴァストー ン、ミッキー・ローク、アンディ・サーキスらのキャスティ ングが集結し、さらにユアン・マクレガーもカメオ出演する ことになっている。 なお主人公のアレックス・ライダーに扮するのは、イギリ スのティーンスターのアレックス・ペティファー。監督は、 ジョフリー・サックス。因にロークが今回の作品の敵役で、 サーキスはその子分だそうだ。 イギリス映画お得意のスパイシリーズとなりそうだが、首 尾よくシリーズ化に向かうのだろうか。 * * 続いてはゲームの映画化の情報で、昨年8月15日付の第69 回で“BloodRayne”の映画化を紹介したウーワ・ボール監督 が、今度は“Dungeon Siege”というヴィデオゲームの映画 化を、カナダのヴァンクーヴァで開始している。 この作品は、題名だけで内容は判りそうな感じだが、ジャ ンルはsword-and-sorceryだそうで、ゲームによくあるパタ ーンの作品と言えそうだ。 ところがこの映画化に、『トランスポーター』のジェイソ ン・ステイザムを始め、『ヘル・ボーイ』のロン・パールマ ン、『スクービー・ドゥー』のマシュー・リラード、『ロー ド・オブ・ザ・リング』のジョン・リス=デイヴィス、『ア ドルフの画集』のリリー・ソビエスキー、『T3』のクリス ティーナ・ロケン、そしてバート・レイノルズという錚々た る顔ぶれが集結し、その後も続々とキャスティングが発表さ れている。 といっても、まあトップスターという顔ぶれではない訳だ が、それにしてもジャンルファンにはたまらない名前が並ん でいるという感じで、これはちょっと面白くなりそうだ。た だし、これだけの人数の配役で、それぞれにちゃんと出番が あるのかどうかも心配になりそうだが、多分いろいろな仕掛 けはしてあるのだろう。 この手の情報を扱っていると、日本で公開されない作品も 数多くあるものだが、この監督の作品ぐらいは何とか日本で も公開の機会を得てほしいものだ。 * * もう1本ゲームの情報で、ソニー・コンピュータ・エンタ ーテインメントが今年3月に発表した“God of War”という ヴィデオゲームの映画化権を、ユニヴァーサルが獲得したこ とが発表された。 このゲームは、ギリシャ神話をベースにしたもので、戦士 クラトスがメデューサやサイクロプス、ヒドラなどの怪物と 戦う姿を追ったもので、プレイヤーはクラトスを指示してパ ンドラの箱を見つけ出し、最後は戦いの神アレスに決戦を挑 むということになるようだ。 そしてこの映画化権を、『スクービー・ドゥー』や『バッ トマン・ビギンズ』などの製作を手掛けたモザイク・メディ アが獲得し、ユニヴァーサルでの製作が契約されたものだ。 なお、モザイクの代表者チャールズ・ローヴェンは、「3 月に初めてゲームをして以来、このゲームの物語性は、大作 映画として製作するに充分な可能性を持つと確信していた」 ということで、脚本家などはこれから選考されるようだが、 過去に同社が手掛けた作品から見ると、相当の規模の作品が 期待できそうだ。 それにしても、なぜソニー・ピクチャーズ製作でないのか は、ちょっと気になるところだ。 * * 久々にアイヴァン・ライトマン監督の情報で、多分2001年 の“Evolution”(エボリューション)以来の新作の予定が 発表された。 この作品は“Super-Ex”と題されているもので、普通の男 性が女性に恋をするのだが、その女性は実はスーパーヒュー マンで、その事実を知ったとき、彼には悪夢としか言いよう のない災難が降りかかってくるというもの。まあ、基本的な 設定は、『奥様は魔女』も似たようなものだが、これがライ トマンの作品だと、災難は本当にとんでもないことになりそ うだ。脚本は『シンプソンズ』のドン・ペイネ。 そしてこの計画で、主演の男性役はルーク・ウィルスンが かなり早くから決まっていたものだが、その相手のスーパー ヒューマンの女性役に、『キル・ビル』のユマ・サーマンの 出演が発表された。 サーマンは、『キル・ビル』で復活の後は、“Be Cool” と、メリル・ストリープ共演のコメディ作品の“Prime”、 さらにニコール・キッドマンの代役で出演したブロードウェ イ・ミュージカルの映画化“The Producers”が12月21日に 全米公開の予定になっているが、まさにスーパーヒューマン ばりの活躍という感じだ。 本作は、秋にニューヨークで撮影の予定になっている。 * * 後は続報をまとめておこう。 7月18日に撮影が開始された“Mission: Impossible 3” で、11月に中国の上海で撮影を行うことが発表され、映画全 体のクライマックスが当地で撮影されることになった。具体 的な内容は例によって厳重に秘密にされているが、この撮影 のために1000万ドルの予算が組まれ、またアジア系アメリカ 人女優のマギーQがキャストに加わっているということだ。 この製作では、当初はベルリンで重要なシーンの撮影が予定 されていたものだが、ベルリン市側の撮影許可が降りず、そ れも撮影遅延の理由とされていた。それに替っての上海市と いうことになりそうだが、噂ではヘリコプター撮影も動員さ れる大掛かりなアクションが展開されることになりそうだ。 もう一つ、2001年12月1日付の第4回などで紹介した岩明 均原作『寄生獣』(英名Parasyte)の映画化で、監督に清水 崇の起用が発表された。清水監督は“The Grudge”に続いて その続編への起用も予定されているが、本作は実写とCGI の合成も想定されるエイリアンものの大掛かりな作品で、ど こまで手腕が発揮できることか。なお脚本は“Aeon Flux” などのフィル・ヘイとマット・マンフレディによるものが用 意されているが、監督の許でさらにリライトが行われるとい うことだ。製作はニューライン。
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