※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回はこの話題から。 5月19日に全米で公開された“Star Wars: Episode III- Revenge of the Sith”について、日本のマスコミは興行記 録の更新と、自分のことのように浮かれているようだが、そ うなると、いや待てと言いたくなるのがへそ曲がりな自分の 性分で、ちょっとその辺の状況を解説したくなった。 実は今回の興行記録に関して、公開翌週の火曜日5月24日 にVariety紙のウェブサイトに発表された歴代オープニング 記録では、“Episode III”の数字は1億840万ドル。これは “Spider-Man 2”の1億1580万ドル、“Spider-Man”の1億 1480万ドルに及ばず、“Shrek 2”の1億800万ドルを漸くか わして3位に食い込んだに過ぎないものだ。 しかしフォックスは、封切り3日間の興行成績は1億2470 万ドルの新記録と主張しているのだが、では何故このような 違いが出るのかというと、実はVariety紙などで興行記録と して残されるのは、封切り後の最初の週末3日間(Opening Weekend)の記録をいうもので、ここで週末というのは金土 日を指すものなのだ。 これは、アメリカの映画興行が通常金曜日に封切りになる ためなのだが、今回“Episode III”の場合では、封切りが 木曜日であったために初日の数字が加算されず、2−4日目 の合計が記録の対象となってしまったのだ。この記録の採り 方が合理的かどうかは議論の余地があるところだが、現実に そう決められているのだからこれは仕方がない。 つまりこの記録の採り方では、最近の週半ばに封切る方法 が不利であることは間違いないのだが、実は不動の第1位の “Spider-Man 2”は、“Episode III”よりさらに早い水曜 日に封切られたもので、それでこの数字を残していると言う ことは、封切りの方法などに多少のテクニックはあるようだ が、単純に“Spider-Man”の人気の根強さを物語っていると も言えるものだ。 一方、“Episode III”について言えば、初日の5月19日 の1日だけで5000万ドルという途方もない初日の数字が尾を 引いているもので、その後の推移は、1日ごとでは必ずしも “Spider-Man 2”を上回っているものではない。実際にもう 一つの記録として残される1億ドル突破、2億ドル突破の日 数記録では、いずれも3日目と8日目で“Spider-Man 2”と 並んでいるもので、初日の分を差し引くとその間の数字では “Spider-Man”を下回っているとさえ言えるのだ。 さらにこの後の記録では、3億ドル突破の最速が“Return of the King”の22日目で、“Spider-Man 2”は25日目だっ たものだが、今後この記録を抜くことが出来るか否か、これ を抜いたときに初めて、新記録達成と言えることになりそう だが…、その日限の21日目は6月8日となるようだ。 以上、“Star Wars: Episode III-Revenge of the Sith” の興行記録について思うところを書いてみた。なお上記の記 録は、いずれも米国内(カナダを含む)を対象としたもので、 海外分は数字に含まれない。 以下は、いつものように製作ニュースを紹介しよう。 * * まずは続編の情報が、今回はまとまって届いている。 最初は1990年に公開された“Dick Tracy”について、前作 を自らの製作、監督、主演で発表したウォーレン・ベイティ が、その続編を計画していることが報告された。 この情報は、実はベイティが起した裁判によって明らかに なったもので、この裁判では、原作の権利を保有しているト リビュート新聞出版社に対して、ベイティが同作品の映画化 に関する権利を現在も所有していることの確認を求めるとい うもの。そしてこの権利が確認されれば、ベイティは同作の 続編を製作する意向ということだ。 1990年の作品は、ベイティの他にマドンナやアル・パチー ノ、ダスティン・ホフマンらが共演、全米興行では1億ドル を達成して同年の第9位にランクされ、ガイドブックなどの 評価も高いものだったが、ベイティが希望した続編の製作に は配給元のディズニーがOKを出さなかった。この結果、続 編も見込んで準備を行っていたベイティの許には3000万ドル の負債が生じたということだ。しかし今年になって、ディズ ニーは配給に伴ってベイティから譲渡されていた各種の権利 を返却し、ベイティはディズニーの許可なしに続編の製作を できることになった。 そこで最後の関門がトリビュート社となる訳だが、実は同 社とディズニーの間では同原作のアイスショウの上演権がベ イティとは無関係に結ばれており、それとの関係が多少問題 として残っているようだ。このためベイティは裁判に訴えて その権利の所在を確認しようというもので、別段これでこと を構えようというものではない。できれば裁判が早期に決着 して公明正大に続編が作られることを望みたいものだ。 ただ、僕個人の印象としては、前回の映画化は原作コミッ クスに忠実であり過ぎたために、ちょっと予想と違う感じが した。実際僕が予想したは、テレビアニメーションに基づく もので、もっとアクションが多いものと思っていた。しかし 最終的にアメリカでの評価の高さを見ると、やはりアメリカ では原作コミックスの印象が勝っているもので、その点では 僕は自分の評価を変えなければいけないようだ。 続編が公開されたら、今度はそういう見方で見ることにし たいと思う。 * * お次は、“Dogville”に続く“Manderlay”がカンヌ映画 祭で公開されたラース・フォン・トリアー監督のアメリカン トリロジーで、最終話となる第3作“Wasington”(原綴り のまま)の計画が発表され、主人公のグレース役にニコール ・キッドマンが復帰することが報告された。 このシリーズでは、元々は第1作でグレースを演じたキッ ドマンが3作全てに主演することが計画されていた。しかし 第2作の撮影直前にキッドマンは降板を表明し、替って第2 作の主演はブライス・ダラス・ハワードが演じていた。とこ ろが第3作の準備段階でフォン・トリアー監督と話し合った キッドマンは、第3作に再登場することを決意、一方、同様 の話し合いを監督と持ったハワードも出演を希望して、第3 作では2人がグレースの役を分割して演じるということだ。 この3部作は、壁のないセットや暗幕だけの背景など、元 来が極めて実験的な作品ではあるが、これにさらに1人の主 人公を2人の女優が演じるということでは、まさに前代未聞 の実験映画になりそうだ。ただし監督は、この状況を取り入 れるために脚本の執筆にはさらに多くの時間が必要だとして おり、また監督には、来年撮影の別の計画も進行中というこ とで、第3作の撮影は早くて2007年からになるようだ。 * * 続いて、トム・クルーズ主演のシリーズ第3作“Mission: Impossible 3”が7月にイタリアで撮影開始されることが 発表された。 この作品では、昨年の夏に監督がジョー・カーナハンから J・J・エイブラハムズに交替されて、一から計画が再構築 されていたもので、予定より1年近く遅れてようやく撮影開 始となるものだ。 そして今回の発表では、共演者としてジョナサン・リス= メイヤースと、ヒロイン役にミシェル・モナハンの起用が発 表されている。因にリス=メイヤースは、2002年の『ベッカ ムに恋して』に出演しているが、今年のカンヌ映画祭で上映 されたウッディ・アレンの新作“Match Point”にも主演し ているということで、若手の有望株のようだ。 一方、本作では、先に出演が予定されていた女優がすべて キャンセルされたことでも話題になったが、それに替るヒロ イン役のモナハンは、2004年6月15日付第65回で紹介したジ ョージ・クルーニー、マット・デイモン主演の“Syriana” にもヒロイン役で出演しており、こちらも売り出し中の女優 のようだ。 そしてもう1人、共演女優としてミシェル・ヨーの名前が 挙がっている。ヨーは、007にも出演するなどアジアを代 表する女性アクションスターだが、実はディノ・デ=ラウレ ンティスが進めているハンニバル・レクターシリーズの前日 譚“Behind the Mask”にも出演が要請されているそうで、 この2作は撮影時期が重なるためにどちらを取るか苦慮して いるようだ。ただしこの前日譚には、先にコン・リーの名前 も挙がっていたはずだが、その関係はどうなっているのだろ うか。 さらに“M: I 3”に関してでは、トム・クルーズの他に、 前2作に出演した相棒役のヴィング・レームの再登場も予定 されているようだが、物語については完全な秘密主義が守ら れているようだ。 * * 1982年に公開されたマペット主演によるファンタシー作品 “The Dark Crystal”の続編の計画が、ジム・ヘンスン Co. から発表されている。 オリジナルは、当時「マペットショウ」などの脚本を担当 していたデイヴィッド・オデルが執筆した脚本を、マペッツ の創始者ジム・ヘンスンと盟友のフランク・オズの共同監督 で映画化したもので、闇の力で世界を支配していたクリスタ ルを、ジェンとキラという名前の妖精のようなイメージの異 形キャラの主人公2人が封じるというもの。この主人公から 敵怪物までの全てのキャラクターをマペットで演じるという ことでも異色の作品だった。 ただし当時の感覚では、この作品が大人向けなのか、「セ サミ・ストリート」でお馴染みのマペッツの人気を見込んだ 子供向けなのか判然とせず、結局、作品としての評価は高い ものの、興行的にはあまり力を発揮できなかったと記憶して いる。しかし“The Lord of the Rings”が評価を勝ち得た 今の時代なら、前以上の力を発揮できると思われる作品だ。 そして今回計画されている続編は、題名が“The Power of the Dark Crystal”とされているもので、脚本はオリジナ ルを担当したオデルと、アネット・ダフィーという人が執筆 している。お話は、前作のジェンとキラは今や王国のキング とクィーンになっていたが、彼らの王国を再びクリスタルの 力が脅かし始める…というものになるようだ。 監督は未定だが、今年の秋に撮影を開始して、2007年の公 開を目指すとしている。製作は、マペッツが演じる実写と、 CGIの合成で行われるということだ。因に、ジム・ヘンス ン Co.は同年に創立50周年を迎えるのだそうで、本作はその 記念作にしたいとのこと。また、続編の公開後にはテレビ用 のアニメシリーズ化やヴィデオゲームなどへの展開も検討さ れているそうだ。 * * この他の続編の情報では、まずシルヴェスター・スタロー ンの当たり役“Rambo”シリーズを復活させる動きがある。 このシリーズでは、1982年の“First Blood”を第1作と して、1985年に“Rambo: First Blood Part II”、1988年に “Rambo III”の3作が作られているが、このシリーズの権 利は一時ミラマックスが保有して、実は数年前から再開の動 きはあったようだ。しかしミラマックスでは継続の意志をな くしていたものだが、このほど“Blind Horaizon”(2004年 8月31日付紹介)などを手掛けるNuイメージが権利の譲渡を 受け、シリーズの再開を目指すことになったということだ。 因に、再開第1作の題名は“Rambo IV”となるようだが、 この計画ではすでにスタローンが脚本執筆の契約を結んでお り、さすがに主演はしないものの、若い俳優をランボー役に 仕立てて共演はする予定になっている。撮影は、来年1月か らブルガリアで行う計画とのことだ。さらにNuイメージでは 第5作も検討しているそうだ。 続いて“Indiana Jone 4”について、パラマウントから、 先に提出されたジェフ・ネイザンスンの脚本に対して、ジョ ージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグが了承したと の発表があった。また同社では、ハリスン・フォードに対し ても脚本の了承を得る方向で進めているということだが、実 はフォードはまだ脚本を読んでいないということだ。 因にネイザンスンの脚本については、前回の“Rush Hour 3”の記事の中でも紹介したが、まさかこんなに速く動くと は思わなかった。ただし、ここで“Indy 4”の製作が始まる と“Rush Hour 3”の製作に支障を来すことになるのだが、 実はスピルバーグには1972年のミュンヘン・オリンピックの 映画と、リンカーンの伝記映画の計画もあり、このままフォ ードが了承しても直ぐにということにはならないようだ。 もう1本はドリームワークスから、“The Ring 3”の計画 が発表されている。この計画は製作者のウォルター・F・パ ークスが発表したものだが、実は脚本家も決っておらず、ま た製作規模も前2作より縮小して、ナオミ・ワッツの出演も 計画されていないというものだ。つまりケラー母子の物語は 一旦終了して、呪いのヴィデオテープを巡る新たな物語を作 る計画のようだ。 それはそれでいいと思うのだが、『リング』に関しては、 鈴木光司の原作には『らせん』と『ループ』の続編があり、 この内『らせん』は日本版が映画化されたが、『ループ』に ついては到底日本映画のスケールでは無理な作品だった。そ こで『リング』のハリウッド版が決ったときには、なんとか 『ループ』までと思ったものだが、この状況では、その期待 には応えてもらえないのだろうか。 * * 続編の情報はこれくらいにして、以下は通常の製作情報を 紹介しよう。 まずは、これも続編と言えばそんな感じでもあるが、俳優 のジョニー・デップが先日亡くなった作家ハンター・S・ト ムプソン原作の“The Rum Diary”の映画化に乗り出すこと になった。 この計画は、1998年に公開された“Fear and Loathing in Las Vegas”でトムプソン原作に登場する作者自身の役を演 じたデップが、自ら映画化権を獲得して製作を希望していた もので、すでにニック・ノルティやベネチオ・デル・トロら の協力も取り付け、マイクル・トーマスによる脚色も進めら れていた。そして今回は、監督に“The Killing Fields”な どの脚本でも知られるブルース・ロビンソンが決定し、さら に“The Butterfly Effect”を手掛けたフィルム・エンジン の資金提供で製作が進められることになったものだ。 内容は、1950年代末頃のプエルトリコを舞台に、酒浸りの ジャーナリストの生活を綴ったもので、デップが再びこの主 人公に挑戦することになっている。因にデップは、トムプソ ンの死去に当っては葬儀で友人代表としての挨拶をしたり、 これから行われる散骨の儀式にも中心的に行動するなど、作 者との交流の深さを見せているが、残念なのは、彼の生前に この映画化が実現しなかったことだろう。 また監督のロビンソンとも、過去4度のアプローチの末、 ようやく本作の監督に招請できたということで、デップにと っては本望の作品と言えそうだ。 なお、今後のデップの出演作品では、“Charlie and the Chocolate Factory”が7月15日、2004年1月15日付第55回 などで紹介した“The Libertine”が9月16日にそれぞれ全 米公開される他、9月23日には声優を務めたクレイアニメー ション作品“Corpse Bride”の公開も行われる。そして現在 は、“Pirates of the Caribbean”の2本の続編を撮影中だ が、この撮影が終りしだい、今回の“The Rum Diary”の撮 影を開始する意向のようだ。 * * お次は、ホラー専科のジョン・カーペンター監督が、次回 作の企画を映画とビデオゲームの両方で進めていることが発 表された。 この計画は“Psychopath”と題されているもので、物語は 元CIAの捜査官が連続殺人鬼の捜査のために現場に復帰す るが、自らの…というもの。そしてこの計画では、ゲームと 映画の両方の指揮をカーペンターが執るというもので、ゲー ム開発会社のタイタンの手でビデオゲーム化が行われると共 に、カーペンターは『ジェイソンX』のトッド・ファーマー との共作でシナリオを執筆し、自らの監督で映画化を進める ことになっている。 因みにタイタン社は、元々はジョン・ウー監督の下でゲー ム会社を運営していたブラッド・フォックホーヴェンという 人物が独立して興した会社で、この他にもヴィン・ディーゼ ルのプロダクションとも提携するなど、ハリウッドへのアプ ローチを積極的に行っている会社ということだ。 なお、映画監督によるゲーム進出では、先にジョン・ミリ ウス監督もゲーム向けのシナリオの執筆を契約していたが、 さすがに70歳のミリウスはヨーロッパ戦線を舞台にした戦争 ものといわれるそのシナリオを映画化する計画は持っていな かったようだ。従ってゲームと映画の両面で進める計画では カーペンターが先駆者となりそうだ。 * * 最後は短い情報を2つ紹介しよう。 今年10月に“Wallace & Gromit: The Curse of the Were- Rabbit”が公開されるドリームワークスとアアドマン・スタ ジオから、さらに“Crood Awakening”という作品の計画が 発表されている。 この計画は、元モンティ・パイソンで、最近では007や ハリー・ポッターにも登場している俳優のジョン・クリース が原案を提供したもので、原始時代を舞台に穴居人同士の文 化の衝突を描くというもの。実はこれがイギリスとフランス の文化的な衝突からヒントを得ているということで、かなり モンティ・パイソン的な笑いを目指した作品のようだ。 なお、ドリームワークスとアアドマンでは、2006年11月公 開で、アアドマン初のフルCGI長編作品“Flushed Away” の製作も進めており、今回の作品が提携3作目ということに なる。現状では2007年の公開を目指すとされており、毎年秋 にアアドマン作品という路線になりそうだ。 もう一つは、ディズニーからの独立が迫ってきたウェイン スタイン兄弟の情報で、新会社で製作される記念すべき第1 作として“Outlander”という作品の計画が発表された。 この作品は、ハワード・マッケインという監督が、ダーク ・ブラックマンという脚本家と共同で執筆したシナリオを映 画化するもので、ヴァイキング時代の地球に墜落した異星人 の冒険を描くというもの。2002年版“Ghost Ship”などのカ ール・アーバン主演で10月にニュージーランドで撮影開始さ れることになっている。また映画に登場するMoorwenと名付 けられたエイリアンの造形は、“Godzilla”や“I, Robot” を手掛けたアンドレアス・シュミドが担当しているというも のだ。 注目の新会社の第1作ということになりそうだが、それに してもこの題材でスタートとは、かなり先が楽しみな会社に なりそうだ。
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