※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 《昨日の続き》 『キングダム・オブ・ヘブン』では12世紀の十字軍の姿を 描いた脚本家のウィリアム・モナハンが、続けて13世紀の冒 険家の生涯を描く計画が発表された。その冒険家の名前は、 マルコ・ポーロ。ヨーロッパ人の東洋観を変えたとまで言わ れる彼が口述した『東方見聞録』に基づいて、24年間に及ぶ ポーロの冒険を、マット・デイモン主演で描く計画だ。 この計画は、元々は『オーシャンズ12』の脚本を手掛けた ジョージ・ノルフィとマイクル・ハケットのコンビが思い付 いたもので、彼らが優先契約を結んでいるワーナーにアイデ アが提出された。それと同時に、モナハンとデイモンにも計 画が提示され、彼らがそれに乗ってきたということで、監督 は未定だが、計画は順調に進んでいるようだ。 因にマルコ・ポーロは、1254年の生まれで、1270年に当時 の中国・元を再訪する宝石商の父親と叔父に伴われて生地の ヴェネチアを出発。74年にはクビライ・カンに謁して任官、 以後中国各地を見聞した後、95年に海路インド洋、黒海を経 て帰国。しかしジェノヴァとの海戦に敗れ、その獄中で『東 方見聞録』を口述したということだ。 この『東方見聞録』には、日本が「黄金の国ジパング」と 紹介されているということで、歴史教科書にも載せられてい るが、その他にも、ポーロが見聞した当時の中国や蒙古の卓 越した科学技術などが紹介され、東の蛮国と思っていた東洋 に対するヨーロッパ人の考えを大幅に変えたというものだ。 なおこの書物の題名は、今回の報道では単に“Travels”と 紹介されており、欧米ではそういう名称で知られているよう だ。 そしてその映画化が、モナハンの脚本で進められる計画だ が、元々モナハンは、アメリカ軍人のウィリアム・イートン がアフリカに渡って、現在のリビアの基礎を築いた王の許で 軍を指揮したという史実に基づく“Tripoli”と題された作 品をリドリー・スコットの監督で進めていたものの、この計 画が製作費の膨張などで実現困難となり、代ってスコットか ら十字軍の物語を依頼されたということで、元々はこういう 異国での冒険が描きたかったようだ。今回はその思いをぶつ けてほしい。 なおモナハンは、現在はリドリー・スコット監督で、映画 製作者のスコット・ルーディンがパラマウントからディズニ ーに移籍後の最初の作品となる、コーマック・マッカーシー 原作による“Blood Meridian”を脚色中で、今回の計画はそ の後になるようだ。 一方、マット・デイモンは、すでに2003年3月1日第34回 で紹介の“The Brothers Grimm”と、2004年6月15日第65回 で紹介の“Syriana”の撮影が完了し、この後には『インフ ァナル・アフェア』のアメリカ版リメイク“The Departed” に出演の他、2002年12月15日の第29回に紹介したロバート・ デ=ニーロ監督の“The Good Shepherd”への出演(主演が 交替になった)も予定されている。また彼自身は、ジェイソ ン・ボーンシリーズの第3作“The Bourne Ultimatum”への 出演も希望しているということで、このラッシュの中で今回 の作品は一体何時実現するのだろうか。 * * 続けてワーナーの話題を後2本で、まずは『アバウト・ア ・ボーイ』などの原作者ニック・ホーンビイの新作“A Long Way Down”の映画化権を獲得したことが発表された。 この映画化は、グラハム・キングとデイヴィッド・ヘイマ ン、それに“Charlie and the Chocolate Factory”の全米 公開が迫っているジョニー・デップの製作で計画されている もので、現時点でデップの映画化への関わりは製作に限定さ れているそうだが、今後、脚本の出来次第で出演もあるかも 知れないというニュアンスのようだ。 因に原作は、イギリスで出版されたばかりで、アメリカで は6月に刊行予定のもののようだが、大晦日に出会い、自分 らの救いを求めて一緒に暮らすようになった4人の男女が、 多難なクリスマスを過ごす姿を描いた作品ということで、以 前の作品でも、人生の困難に直面した人々を軽妙なタッチで 描いてきたホーンビイの期待の新作ということだ。 そしてこの原作についてデップからは、「この本には、今 までに楽しみながら読んだ作品の中では、最も多くの素晴ら しいキャラクターが溢れている。映画化が生み出す可能性は 計り知れない」とのコメントが寄せられていた。 なお、キングとデップは2004年10月15日第73回で紹介した “Shantaran”の計画も、デップの主演作としてワーナーで 進めている。この計画は、ブラッド・ピット、ブラッド・グ レイ、それにジェニファー・アニストン主宰のプランBとの 提携で進められていたものだが、今回の報道にも題名が上が っており、現在も計画は生きているようだ。 * * もう1本ワーナーからは、『マイノリティ・リポート』を 手掛けた脚本家のゲイリー・ゴールドマンが、1959年に出版 されたカート・シオドマク原作のSF作品“Skyport”の映 画化を進めることが発表された。 シオドマクは2000年に亡くなっているが、1902年の生まれ で、小説では1943年に発表した“Donovan's Brain”(ドノ バンの脳髄)が日本にも紹介されている。この作品は1944年 に“The Lady and the Montter”の題名で映画化され、さら に53年と62年にもリメイクが行われているもので、68年には 続編の“Hauser's Memory”(ハウザーの記憶)という小説 も出版されている。 その一方で、シオドマクは主にユニヴァーサルの脚本家と しても有名で、その中の1941年製作“The Wolfman”では、 ウェールズの伝説に基づいて、満月を見ると変身するなどの 基本設定を作り上げた人物とも言われている。 そのシオドマクの“Skyport”という作品は、日本での紹 介の有無は不明だが、衛星軌道上に宇宙都市を建設しようと する科学者たちの姿を描いたもので、ちょうどスペースシャ トルの運行も再開されて、国際宇宙ステーションの建設が進 む今の時期には良い題材と言えそうだ。ただし、ゴールドマ ンは、この原作の中の災害が発生する状況に注目していると いうことで、1974年のワーナー作品『タワーリング・インフ ェルノ』のような作品にしたいと語っているようだ。 映画化には、250本以上の映画化権を管理していると言わ れるIntellectual Properties Worldwide(IPW)という 会社が関係しており、同社の社長が製作を務めるとのこと。 またゴールドマンの脚本では、ニコラス・ケイジ、ジュリア ン・モーア共演で、リー・タマホリが監督する“Next”とい う作品が、この秋の撮影予定でリヴォルーションで進められ ている。 * * 以下は続報で、 まずは、このページの2001年11月1日付第2回で紹介した アルフォンソ・キュアロン監督の“Children of Men”が、 ユニヴァーサル製作、クライヴ・オーウェン主演で実現され ることになった。 この作品は、イギリスの女流作家P・D・ジェイムズの原 作を映画化するもので、人類が子孫を残せなくなった未来を 背景にした物語。この世界で、18歳の地上最年少者の死亡が 報道され、そのショックで人類が混乱する中、20数年ぶりに 妊娠した女性の存在が明らかになる。その女性を巡る物語と いうことで、オーウェンが演じるのは彼女を守る男性の役。 ただし、彼が妊娠の原因ということではないようだ。 因にキュアロンには、先にフォックスから、M・ナイト・ シャマラン監督が降板した後の“Life of Pi”という作品の オファーもあったようだが、長年温めてきた作品との関係で は、さてどうなるだろうか。 一方、オーウェンは、『クローサー』に続いて、アメリカ ではロベルト・ロドリゲス他監督の“Sin City”の公開が始 まっているが、この後には“Derailed”という作品と、ユニ ヴァーサル製作でデンゼル・ワシントン、ジョディ・フォス ター共演のスパイク・リー監督作品“Inside Man”の撮影が 今年の夏に予定されており、今回の作品の撮影が何時になる のかは、ちょっと曖昧なようだ。 * * お次は、2003年12月1日付第52回等で紹介したジェイスン ・レスコー原作“Zoom's Academy for the Super Gifted” の映画化が“Zoom”の題名で進められ、7月に撮影開始され ることになった。 この作品は、元アニメーターの原作者が発表したグラフィ ック・ノヴェルを映画化するもので、以前の紹介ではアダム ・リフキンの脚色を報告したが、その後に『ギャラクシー・ クェスト』等の俳優ティム・アレンが参加して、アレンのア イデアも入れた脚本がデイヴィッド・ブレンバウム、マット ・キャロルらと共に作られている。 そして監督には、オリジナルより評価の高い続編として有 名な“Bill and Ted's Bogus Journey”(ビルとテッドの地 獄旅行)を手掛けたピート・ヒューイットを起用。また出演 者では、アレンが元スーパーヒーロー=キャプテン・ズーム だったが、今は超能力は失ったジャックを演じる他、諜報機 関から派遣された科学者マーシャの役で、『スクリーム』の コートニー・コックスが発表されている。 なお、今のところ子役の発表がないようだが、以前に紹介 されたストーリーでは、超能力を持った子供たちの学校が舞 台で、そこに訳も判らずやってきた少女が主人公となってい た。しかし、それでは余りに“Harry Potter”や“X-Men” と似ている感じがして気になったものだが、その後の脚色に はかなりの時間が掛けられたようで、その辺で少し内容に変 更があるのかも知れない。 映画はコロムビアの配給で、来年公開が予定されている。 * * 続いては、2004年7月1日付第66回で紹介したニューライ ンの製作で、デイヴィッド・ジェロルドの原作による“The Martian Child”の撮影が5月3日に開始された。 物語は、死別した婚約者の息子を引き取って育てることに なったSF作家の主人公が、引き取った義理の息子の異常な 行動に気付き、やがて彼が火星人ではないかと疑い出すとい うもの。これだけでは、唯のちょっとおかしな男の話だが、 原作者が『スター・トレック』等も手掛けたSF作家という ところがミソの作品だ。なお以前の紹介では、『E.T.』と 1989年のロン・ハワード監督作品“Parenthood”(バックマ ン家の人々)を合わせたような作品とも書かれていた。 そしてこの作品は、以前の紹介ではニック・カサヴェテス 監督、ジョン・キューザック主演となっていたが、その後カ サヴェテスは降板した模様で、監督は、キューザック主演の 2002年作“Max”(アドルフの画集)を手掛けたメノ・メイ エスが発表されている。 また出演者では、キューザック扮する作家のエージェント 役でオリヴァー・プラット、火星人と自称する義理の息子役 にボビー・コールマン、それに主人公と関わるソーシャルワ ーカー役で、“Hotel Rwanda”で今年のオスカー助演女優賞 にノミネートされたソフィー・オコネドが共演している。 なお、プラットは今年公開されるキューザック主演のブラ ックコメディ“Ice Harvest”に出演しており、コールマン も今年公開のワーナー作品“Must Love Dogs”でキューザッ クと共演しているということで、つまり監督も含めてキュー ザックとは旧知の人たちで周りを固め、そこにオコネドを招 いたという形のようだ。そのオコネドは、シャーリズ・セロ ン、フランシス・マクドーマンド共演の“Aeon Flux”にも 出演しているが、オスカー候補になって後に結ばれた出演契 約では、本作が最初のものということだ。 * * 最後に、今年2月1日の第80回で紹介したワーナー、パラ マウントの共同製作、デイヴィッド・フィンチャー監督によ る“Zodiac”の配役が固まり出した。 1972年公開の『ダーティハリー』シリーズの大元になった とも言われる、1966−78年にサンフランシスコ地区で発生し た連続殺人事件を描くこの作品は、当時のサンフランシスコ ・クロニクル紙の編集員(連載漫画の執筆者だった)ロバー ト・グレイスミスが1986年に発表し、全米で400万部のベス トセラーになった同名のドキュメントと、2002年に発表した その続編“Zodiac Unmasked: The Identity of America's Most Elusive Serial Killer Revealed”を映画化するもの で、脚色は、『閉ざされた森』のジェイミー・ヴァンダービ ルトが担当している。 そして今回報告された配役では、まず原作者のグレイスミ ス役に、『ドニー・ダーコ』のジェイク・ギレンホール。事 件の捜査に当るサンフランシスコ市警察の主任捜査官役で、 『コラテラル』のマーク・ラファロ。さらに新聞記者役に、 『ゴシカ』のロバート・ダウニーJrというかなり魅力的な顔 ぶれが揃うことになった。 またもう1人、捜査官の同僚役に『ER』のグリーン先生 ことアンソニー・エドワードの出演も発表されている。エド ワードは、『ER』で4度のエミー賞候補に挙げられた他、 最近では『サンダーバード』や『ゴーガットン』等の映画作 品での活躍も目立ってきたところだが、フィンチャー作品へ の出演は良いキャリアになりそうだ。 なお撮影は、8月中旬開始の予定になっている。
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