| 2005年03月31日(木) |
リンダ・リンダ・リンダ、フォーガットン、デンジャラス・ビューティー2、リチャード・ニクソン暗殺を企てた男 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『リンダ・リンダ・リンダ』 『リアリズムの宿』の山下敦弘監督による学園青春ドラマ。 山本監督の紹介では、もっと別の作品を上げるべきなのだろ うが、僕はこの作品しか見ていないし、また気に入っている 作品でもあるので、こういう紹介にさせてもらう。 前の作品を見たときにも、何が良いかと言われると、実はよ く判らない感じがあった。でも、何かしら素朴な、本当に映 画の好きな人が作っているのだろうなと感じさせる、そんな 雰囲気が好きな作品だった。 本作もそれは同じ、だから何なのと言われてしまうと身も蓋 もないが、見ている間は楽しいし、多分作っている側も楽し めたのではないかと思わせる、そんな雰囲気が伝わってくる 作品だ。しかも今回は、撮影の体制もかなり大掛かりで、そ の辺も堪能できた。 物語の舞台は高校の学園祭。3日間の学園祭の最終日は、体 育館でのバンド演奏が締めることになっていた。ところがそ の目玉の女子ロックバンドでは、リードギターが授業で突き 指したのを切っ掛けに仲違いが発生、ヴォーカルがいなくな ってしまう。 しかし、残りのメムバーは出演を決意し、演奏曲にはそれか らでも間に合いそうなブルーハーツの楽曲を選ぶ。そして、 相談を続ける彼女たちの前に、次に現れた女子をヴォーカル とすることにしたのだが…ちょうどそこに通りかかったのが 韓国からの留学生だった。 こうして、キーボードから転向した急造のリードギターと、 日本語の覚束ないヴォーカルで、3日間の徹夜の猛特訓が始 まったが… 出演者は、急造ギタリストに、『ローレライ』などの香椎由 宇。留学生を、一昨年の東京国際映画祭で上映された韓国版 『リング』で貞子を演じ、他にはポン・ジュノ監督の『ほえ る犬は噛まない』などに主演しているペ・ドゥナ。 特にペ・ドゥナは、主演者たちの中では実年齢が一番上とい うこともあるし、韓国ですでに主演を張っている実力もある のだろうが、確かに巧くて、ちょっとした細かい描写などに も素晴らしい雰囲気を出していた。 他に、『学校の怪談3』の前田亜季。また、若手女性ミュー ジシャンの関根史織、湯川潮音、山崎優子らが適材適所とい うか、巧い使われ方で良い効果を上げている。 正直に言って、お話は在来りかも知れない。しかしいろいろ あるこの手の学園ものの中では、特に悪いところもないし、 巧くまとめられた作品という感じだった。また本作では、そ こに無理矢理感動を盛り込もうともしていないところも好感 が持てた。 『フォーガットン』“The Forgotten” ジュリアン・モーア、ゲイリー・シニージ共演のサスペンス ドラマ。『フェノミナン』のジェラルド・ディ=ペゴの脚本 を、『愛がこわれるとき』などのジョセフ・ルーベンが監督 した。 主人公の女性は、14ヶ月前、子供だけのキャンプに送り出し た幼い息子を飛行機事故で亡くした。そして、事故から1年 以上が経つ今も悲嘆に暮れ、立ち直れないまま日々を送って いる彼女に、周囲の人たちは息子のことは忘れるように言い 聞かせていた。 そんな彼女に記憶障害の兆候が見え始める。そして彼女が大 切に飾っていた家族3人の写真から息子の姿が消える。それ を夫の細工と信じ込んだ彼女は夫を詰るが、夫は彼女に、妊 娠はしたが流産で、息子は生まれなかったと言い始める。 愛した相手の喪失と、それに関わる記憶の問題は、公開中の 『エターナル・サンシャイン』でも描かれているが、本作は それとちょうど反対の物語で、その点で興味深かった。 というところで、以下はネタばれになります。 実は、この作品のアメリカでのジャンル分けはSFになって いる。つまり、一般の観客には呆気に取られるような展開が この後に待ち構えているのだが、正直に言ってSFファンの 立場からすると、この展開ではちょっと物足りない。 逆にSFにしないでいてくれたほうが、もっと凄いものにな ったのではないかとも思ってしまうが、それは無い物ねだり かな…ただし、そこに盛り込まれたいろいろな仕掛けは、ス カイカムや小型のフライカムを駆使した撮影の見事さもあっ て、素晴らしい迫力で描かれていた。 また、ソニー・イメージワークスでケン・ラルストンが手掛 けたVFXも効果的だった。 例によって日本では、本作はSFとしては売られないことに なっている。それは仕方のないことではあるが、やはりこの ような作品がSF映画として正当に評価されることを希望し たい。僕のサイトを読みに来てくれる人なら、この点は理解 していただけると信じて、あえて記しておく。 『デンジャラス・ビューティー2』 “Miss Congeniality 2: Armed and Fabulous” 2000年に公開されたサンドラ・ブロック主演作の続編。前作 でミスアメリカ・コンテスト爆破計画を、見事な活躍で未遂 に終らせたFBIの潜入捜査官グレイシー・ハートが、今回 はラスヴェガスで凶悪なミスアメリカ誘拐犯に立ち向かう。 物語は、前作からはあまり日時の経っていない時点から始ま る。そして、前作の事件で顔の売れてしまったグレイシーに は、大好きな潜入捜査もままならないという状況。しかも、 事件を切っ掛けに付き合い始めた刑事からは別離を言い渡さ れて、落ち込む一方なのだ。 そこで、上司の勧めもあってFBIの顔としての広報活動に 従事することを決意したグレイシーは、ベテランスタイリス トの指導のもと、見事な容姿に変身。自伝を出版したり、テ レビのトークショウに出演したりと、セレブな生活を始める ことになるが… そんなときラスヴェガスでミスアメリカの誘拐事件が発生。 グレイシーはFBIの顔として現地に赴き、記者会見のスポ ークスパースンを務めることに…しかし彼女自身は、前作で 親友となったミスアメリカの救出作戦に従事したくて仕方が ない。 ところがラスヴェガス本部の捜査員たちは、彼女の存在を煙 たがるばかり、そして… 正直に言ってつまらない作品ではないと思う。しかし何と言 うか、多分やり過ぎで、しかもその整理がうまく付いていな い、そんな感じの作品だ。 例えばニューヨーク本部詰めの主人公が、ラスヴェガスの事 件に派遣される。この状況というのは、ラスヴェガス側に言 わせれば迷惑至極なわけで、現地の捜査担当者との確執が生 じるのは当然のことだ。 ところがこの映画では、その肝心の部分がうまく描けていな いから、単に現地の担当者は主人公の妨害ばかりしている全 くの無能に見えてしまう。他の部分も同じようなもので、脚 本はちゃんとしているのに、何か描き方がずれている、そん な印象を持った。 本作の製作総指揮も務めるサンドラ・ブロックのいいところ を出し切ろうとする努力で、ブロック自身は大車輪の活躍を するのだが、ちょっと空回りの感じは否めない。ただし、そ ういうことは別にすると、いろいろなギャグは結構楽しめる 作品だった。 例えば前作に引き続き登場のウィリアム・シャトナーは、登 場するなり長年の相棒が…という発言。ここでトレッキーな ら、「誰のことだ」と突っ込みたくなる。そんな楽屋落ちも 含めたギャグが満載なのだ。 従って、そういうことが気持ち良く楽しめる人には、それな りに楽しめる作品になっていると思う。まあそういうことが 楽しめない人には、ここは遠慮してもらうことにしよう。 前作はマイクル・ケイン、キャンディス・バーゲンという大 御所2人が出演した作品。これに対して本作には、そんな大 御所は登場しない(ケインは出たがったようだが…)。つま りそんな規模の作品な訳で、映画ファンならその点は認識し て楽しみたいところだ。 『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』 “The Assassination of Richard Nixon” ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ共演で、実話からインスパ イアされた物語という社会派ドラマ。恐らくは優しすぎる性 格が禍して、人生何をやっても失敗続きの男が、追いつめら れた挙げ句に大統領暗殺を決意する。 ペンとワッツの共演は『21グラム』に続くものだが、前作 は、理解はするが内容的にどうにも好きにはなれない作品だ った。それは、ペンがオスカーを獲得した『ミスティックリ バー』も同じで、ペンはどうも僕の性に合わない俳優という 感じになっていた。 そんな心境で見た本作だったが、この作品のペンは前の2作 ほど嫌な感じではなかった。はっきり言って、人生が狂って しまった責任は本人にもあるのだが、映画を見ていて、あの 時代なら仕方なかっただろうと思わせる、そんな親近感も感 じてしまった。 政府が大声で言い続ける政策が、実は口先だけで、全く民間 の役に立っていない。そんな今も変らぬ状況が1970年代にす でに始まっていた。そんなことが明白に描かれる。それは映 画の中ではニクソン批判なのだが、ブッシュに言い換えても 全く違和感がない。 それにこの状況は、今の日本も全く同じな訳で、映画の中の ニクソンは、そのまま小泉と言い換えることもできそうだ。 なおペンは、オスカー受賞作ではクリント・イーストウッド 監督作に出演していたので、多分共和党支持者だと思うのだ が、本作のニクソン批判振り、そしてそれがブッシュにも繋 がるような描き方は、ちょっと意外な感じもした。 なお、映画はウォーターゲート事件の捜査が始まる辺りで終 ってしまうが、実はニクソンが辞任したときに僕はちょうど アメリカにいて、新聞の号外なども手に入れたものだ。そん な時代背景の作品ということでも、親近感が沸いたのかも知 れない。 当時のアメリカのちょっと荒廃しかかった雰囲気も、うまく 描かれていたように感じた。
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