2005年01月31日(月) |
最後の晩餐、クライシス・オブ・アメリカ、レーシング・ストライプス、フレンチなしあわせのみつけ方 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『最後の晩餐』 大石圭原作の『湘南人肉医』(角川ホラー文庫)を、『渋谷 怪談』などの福谷修の脚色、監督で映画化した作品。といっ ても、僕は原作も読んでいないし、監督の前作も見ていない のだが、本作に限って言えば、想いの他、真面目に作られた 佳作とも言える作品だった。 内容は、原作の題名の通りカニバリズムをテーマにしたホラ ー。カニバリズムも、『ハンニバル』のお陰で一般的な用語 になってしまったが、本作では主人公がカニバリズムに走る 過程が、それなりに丁寧に描かれていて面白く見られた。 特に、原作にはないという香港のシーンは、物語の展開上も 良いキーポイントになっているし、映像にも雰囲気があって 上々の仕上がりという感じだ。なおここでは、これ以上の物 語はあえて紹介しないが、脚本は破綻を生じることもなく、 うまくまとめられていた。 また本作では、主演が加藤雅也に匠ひびきというかなり雰囲 気のある顔合せで、他にも、三輪ひとみ、原史奈、前田綾花 といった和製ホラーの常連が脇を固め、さらにキャスト表に は特別出演とあるから海岸のシーンだけのちょい役かと思っ た松方弘樹は、後半かなり重要な役を演じているなど、キャ スティングもよく頑張ったものだ。 ただし作品は、特に映像がスタイリッシュというか、ホラー の割りにはオドロオドロしさが薄い。恐らく監督は、本作で はスタイリッシュに描くのが意図だったと思えるし、元々が 超常現象が出てくるようなお話ではないから、それはそれで 良いのだが… ホラーと銘打つ以上は何か一発、仕掛けが欲しかった感じは 持つ。例えば『スクリーム』のドリュー・バリモアのシーン ように、プロローグの三輪のシーンだけでも、もっとホラー っぽくする、そんなサーヴィスがあっても良かったのではな いかという感じだ。 和製ホラーは、そのショック表現の巧みさでハリウッドリメ イクされるなどの評価を得ているが、本作はそれとは一線を 画した作品で、その点での評価はしたい。ただし、テーマは カニバリズムで、それなりの表現はありますので、観るとき はご注意ください。 公開は、東京は2月12日から渋谷のアップリンクXで行われ るが、このキャスティングでこの出来なら、僕はもっと大き な映画館でも行けるのではないかと感じたものだ。 『クライシス・オブ・アメリカ』 “The Manchurian Candidate” 1962年にジョン・フランケンハイマー監督、フランク・シナ トラ主演で映画化(邦題・影なき狙撃者)されたロバート・ コンドン原作の再映画化。シナトラは生前、本作の再映画化 を希望していたそうで、今回の映画化には娘ティナが製作者 に名を連ねている。 湾岸戦争で生じた英雄的行為。偵察部隊が敵の奇襲に合い、 指揮官の大尉が意識不明、隊は全滅しかかるが、その時一人 の軍曹が反撃を開始、敵を殱滅して、部隊を安全な場所まで 誘導したという。 その軍曹は、帰国後は英雄となり、受賞者1000人に満たない という名誉勲章を受け、血筋もあって政界に進出、ついには 若くして副大統領の座を狙うまでになる。しかし名誉勲章の 推薦状にもサインした大尉は、伝えられる戦闘よりもリアル な悪夢に悩まされていた。 オリジナルは朝鮮戦争だったようだが、リメイクは湾岸戦争 を背景に、さもありそうな物語が展開する。まあ背景はヴィ エトナムでも、パナマでも良かった訳で、今イラクで起きて いてもおかしくはない。こうしてみるとアメリカは、実によ く戦争をしている国だ。 ただ、オリジナルはもっと単純に洗脳の問題を扱っていたは ずだが、そこにインプラントチップのアイデアを持ち込んだ のはちょっとやりすぎの感じもする。現代技術の恐怖を盛り 込みたい気持ちは解かるが、ちょっと絵空事になってしまう 心配が生じた。 もちろんこのような技術が研究されていることは事実なのだ ろうし、ジョナサン・デミ監督が全くの絵空事を描く監督で ないことは承知しているが、普通の観客がこれをどう捉える かは、多少微妙なところだろう。 しかし微妙とは言えこのような問題(conspiracy theory?) を、ここまで大真面目に描けるのも、デミ監督の魅力という ところで、フランケンハイマー監督の跡を継ぐ資格は充分に あると言えそうだ。 なお、オリジナルではアンジェラ・ランズベリーがオスカー 候補になった母親役を、今回はメリル・ストリープが演じて いるが、残念ながら今回は候補にはなれなかったようだ。 『レーシング・ストライプス』“Racing Stripes” 競争馬を目指すシマウマの活躍を描く動物ファンタシー。 主人公は、嵐の夜に事故で混乱したサーカス団に置き去りに されたシマウマの子供。これを保護したのは、ケンタッキー 州で牧場を営むやめもの男。そしてシマウマは、男の一人娘 の手で育てられるが、いつしか丘から見える競馬場で走るこ とを夢見るようになる。 実は男は、何頭もの優秀な競争馬を育てた調教師だったが、 騎手だった妻を競馬中の事故で亡くし、以来調教を止めて、 娘にも乗馬を禁じていた。しかし… これに、『夢見る小豚ベイブ』以来お馴染みとなった動物に 喋らせるCGI技術を使い、気位の高いサラブレッドのいじ めに合ったりして、何度も挫折しそうになる主人公が、大レ ースに挑戦して行く姿を描くものだ。 そして今回は、主人公のシマウマの声を、『エージェント・ コーディ』に主演したフランキー・ムニッズが演じる他、彼 を助ける牧場の動物たちの声を、ダスティン・ホフマン、ウ ーピー・ゴールドバーグ、マイクル・クラーク=ダンカンら が担当して、雰囲気を盛り上げている。 またコメディリリーフ的な蠅のコンビには、テレビでの実績 のあるコメディアンが声を充てていて、かなりどぎついギャ グも飛び出してくる。 サラブレッドとシマウマが本当に競争してどちらが勝つかは 知らないが、ただ走るだけの能力しかないシマウマを競争馬 に仕上げて行く訓練の様子や、また限界まで来ている競技者 を最後に奮い立たせるテクニックなど、それなりに納得でき るシーンもあって楽しめた。 『フレンチなしあわせのみつけ方』 “Ils se marierent et eurent beaucoup d'enfants” 2001年に、実生活の妻である女優シャルロット・ゲインズブ ールを主人公に『僕の妻はシャルロット・ゲインズブール』 を発表した俳優監督のイヴァン・アタルが、再びゲインズブ ールを主演に起用して発表した作品。 といっても本作は、前作の続編という訳ではなく、パリに住 む3人の男性と、その妻や愛人たちが繰り広げる人間模様を スケッチ風に綴ったもの。日本のテレビ風に言えば、トレン ディドラマといった感じの、他愛もない恋愛物語が進むもの だ。 まあ基本的にはそれ以上でも、それ以下でもないもので、フ ランスではベスト10に入る興行を記録しているようだが、観 客にとってはある意味の憧れもあるかも知れないし、その辺 をうまく捉えた作品というところだろう。 ただし、作品にはちょっと仕掛けがあって、ゲインズブール 扮するガブリエルの憧れの男性役で、今年のオスカーに2年 連続で候補になっているハリウッドスターが登場する。彼の 名前なキャスト表にも出てこないが、物語の最後で1枚テロ ップが出るのは面白い。 他に、アタルの演じる夫の母親役でアヌーク・エーメも出演 している。
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