※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回はこの話題から。昨年も紹介したアカデミー賞視覚効 果部門の予備候補が発表された。 発表によると、今回のアカデミー賞には、 “The Aviator” “The Day After Tomorrow” “I,Robot” “Harry Potter and the Prisoner of Azkaban” “Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events” “Sky Captain and the World of Tomorrow” “Spider-Man 2” の中から、3本の最終候補が選ばれることになったようだ。 この内、“The Aviator”と“Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events”の2本は日本未公開だが、前者に ついては何度か紹介しているようにハワード・ヒューズの伝 記を映画化したもので、航空機製造会社も率いていたヒュー ズの製造した飛行機などが、無線操縦のミニチュアも使って 映像化されているそうだ。また後者では、ジム・キャリーの スタントシーンなどがディジタルエフェクトで作り上げられ ているということだ。 因に、VFXの製作会社の別では、“The Aviator”“Spi der-Man 2”がソニー・イメージワークス、“The Day After Tomorrow”“I,Robot”がディジタル・ドメイン、“Harry Potter”“Lemony Snicket”がILM、“Sky Captain”は メインの会社なしで13社の共同によるというもの。ただし、 ILMは“Sky Captain”“The Day After Tomorrow”にも 参加しており、また、“The Day After Tomorrow”“Harry Potter”にもそれぞれ複数の会社が参加している。 とはいうものの、基本的には老舗の3社が手掛けた6作+ 13社連合の“Sky Captain”となる訳で、そうなると最終候 補3本に残るのは、案外強力と言われるソニーの2本と、あ と1本はどこに…という展開になるのかどうか。ウェタ制作 の“The Lord of the Rings”が3年連続で獲得した後の最 初のオスカーレースは、かなり混沌としているようだ。 一方、今年は予備候補に残らなかった作品にも注目が集ま っている。特にユニヴァーサルでは、“Van Helsing”“The Bourne Supremacy”“The Chronicles of Riddick”が全滅 したことにショックを隠せないようだが、中でもILMが担 当した“Van Helsing”の落選は問題になりそうだ。また、 ワーナーでは、ソニー・イメージワークスが手掛けた“The Polar Express”の落選が問題になっているようだが、この 作品についてはアニメーション部門でのエントリーも取り沙 汰されており、そちらの動向も気になるところだ。 * * ということで、続いて長編アニメーション作品部門の予備 候補も紹介しようと思ったのだが、前回は前年の11月半ばに 発表された予備候補が、何故か今回はまだ発表がない。 これについて、実は今回、上記の“The Polar Express” の他にも、パラマウントからマリオネットで撮影された映像 に、1駒ずつレンダリングを施したという“Team America: World Police”もエントリーを表明するなど、境界作品のエ ントリーが相次いでいる。そしてこれらの境界作品について は、前々回に“Stuart Little 2”の予備選出を見送ったこ とが問題にされたこともあり、アカデミーがアニメーション の変貌への対応に苦慮しているという感じもするところだ。 なお、今回の長編アニメーション部門には、ドリームワー クスの“Shrek 2”“Shark Tale”、ディズニー=ピクサー の“The Incredibles”の3大CGIアニメーションが有力 視されているが、この他にも、セル/2Dアニメーションで は、ディズニーの“Home on the Range”、パラマウントの “Sponge Bob Square Pants Movie”などもエントリーされ ている。また、日本作品でドリームワークスの子会社が配給 した“Ghost in the Shell 2: Innocence”と、韓国製作で “Sky Blue”というセル+CGI+実写の合成による作品も エントリーされているようだ。 因に、2004年にアメリカで公開された長編アニメーション 作品は全部で16本だったそうで、これは16本の閾値を超えな かったということで、最終候補は3本となるようだ。そして その最終候補は、他の部門と合わせて1月25日に発表され、 受賞式は2月27日に予定されている。 * * 以下は、いつものように製作ニュースを紹介しよう。とい っても、新年早々はまだニュースがあまり無いので、落ち穂 拾いのような情報から。 まずは、前々回の第77回に噂として紹介したブライアン・ シンガー監督による新“Superman”のレックス・ルーサー役 に、既報通りケヴィン・スペイシーの配役が正式に発表され た。この配役については以前にも紹介したように、大作映画 への出演を渋るスペイシーに対して、『ユージュアルサスペ クツ』で1995年度のオスカー助演賞をもたらしたシンガー監 督が直々に口説いていたもののようだが、元々この役柄は、 1971年度のオスカー受賞者のジーン・ハックマンがその受賞 の後に演じていたものであり、全く役に不足はないところ。 スペイシーにも、その跡を継ぐ演技を期待したいものだ。 そして主な配役ではもう一人、デイリープラネット新聞社 でのクラーク・ケントの先輩記者ロイス・レーン役に、ケイ ト・ボスワースの起用が発表された。この役には、11月1日 付の第74回で別の候補者を紹介したが、実は昨年12月31日付 の映画紹介に掲載した『ビヨンドTHEシー』で、ボスワース はスペイシー扮するボビー・ダーリンの結婚相手サンドラ・ ディー役を演じており、どうやらこの映画を見たシンガーが 急遽起用を決めたということのようだ。ただし、ボスワース は1983年生まれで、まだ22歳。ちょっと若いのが気になると ころだが、上記の作品でも16歳から20代後半までを見事に演 じていたから、まず心配はいらないだろう。 ということで、配役も決って撮影は3月3日にシドニーで 開始されることになるようだ。 * * お次も続報で、2004年12月1日付の第76回で紹介したウォ シャウスキー兄弟の新作“V for Vendetta”の主演の一人と して、ナタリー・ポートマンへの出演交渉が最終段階に入っ ていることが公表された。 ポートマンは、年末に全米公開されたマイク・ニコルズ監 督作品“Closer”での演技によって、ゴールデン・グローブ 助演女優賞にノミネートされているが、今年の夏には“Star Wars-Episode III: Revenge of the Sith”の公開も控えて いて、今一番注目の女優というところだ。そして今回の作品 は、以前の紹介でも報告したように、“Episode III”の第 1助監督も務めたジェームズ・マクティーグが監督デビュー を果たすもので、その繋がりでも最適な女優の起用というこ とになりそうだ。 また今回の発表に関連して、作品の内容も多少詳しく紹介 されていたが、それによると物語は、以前に紹介したように 第2次世界大戦でドイツが勝利したという歴史を持つ世界を 背景に、現在より少し未来のイギリスを舞台にしている。そ してこの世界で、Vと名乗る謎の人物によって秘密警察から 救出、若しくは誘拐されたヒロインが、ナチスのもたらした 全体主義国家を打倒するためのゲリラに変身して行く姿を描 くということだ。 さらに今回の起用に関して、製作者のジョール・シルヴァ からは、「ポートマンは、現役の女優の中で最も素晴らしい 天賦の資質を与えられた演技者であり、彼女がこの作品にも たらすであろう素晴らしい才能には、興奮を禁じえない」と 期待のコメントも発表されている。撮影は3月第1週にベル リンで開始され、公開は今年の11月に予定されている。 そう言えば、11月1日付の第74回の記事でポートマンは、 ロイス・レーン役の有力候補の一人だったものだが、これで ちょうどよく配役が決まったという感じだ。ただしポートマ ンは、現在はイスラエル出身のエイモス・ギタイ監督による “Free Zone”という作品の撮影に入っており、3月までに この作品の撮影を完了することが必要になるようだ。 * * 続いては、前回の情報が2000年の3月ということなので、 このページで紹介するの初めてになるようだが、イギリスの SF作家ジョン・クリストファーが1960年代後半に発表した ジュヴナイル向けの3部作“The Tripods Trilogy”の映画 化が、ディズニー傘下タッチストーンの製作で、“Buffalo Soldiers”(戦争のはじめかた)のグレゴール・ジョーダン 監督によって進められることが発表された。 この計画については、キネマ旬報では2000年の5月上旬号 などで紹介しているが、1970年にコーネル・ワイルド監督で 映画化された“No Blade of Grass”(最後の脱出)の原作 “The Death of Grass”(草の死)の作者として記憶される クリストファーが、1967〜68年に発表した“The White Moun tains”(鋼鉄の巨人)“The City of Gold and Lead”(銀 河の征服者)“The Pool of Fire”(もえる黄金都市)の3 部作を映画化するもの。 その内容は、21世紀の時代背景で、Tripodと呼ばれる異星 人に征服されて数年を経た地球が舞台。そこで15歳になると 異星人に絶対服従するチップを頭に埋め込まれる直前の少年 が真実に気づき、2人の友人と共に異星人への反抗を始める というお話。典型的なジュヴナイルという感じの作品だが、 出版当時の評価はかなり高かったということだ。 そしてこの映画化権を1997年にディズニーが獲得し、『ナ チュラル・ボーン・キラー』などの製作者ドン・マーフィを 指名して、2000年の時点では、当時『ツイスター』の続編な どもオファーされていたダーレン・レムケという脚本家が脚 色を担当することが発表されたものだ。しかし、その後にレ ムケは降板し、さらにこの計画にはテリー・ヘイズという脚 本家も参加したが、結局当時は映画化に至らなかった。 その計画が復活したもので、今回はオーストラリア出身の ジョーダンが、脚本のリライトと監督も契約したことが発表 されている。なお、上記の監督作品については、2004年11月 31日付の映画紹介に掲載しているが、2001年に完成していな がら2003年まで公開できなかったという曰く付きの作品。し かし公開には手間取ったものの、評論家からは極めて高い評 価を受けたものだ。また、この作品のアメリカ配給は、ディ ズニー傘下のミラマックスが手掛けていた。 この他に、ジョーダン監督は、オーストラリアの伝説の無 法者を描いて昨年公開された“Ned Kelly”という作品でも 評価されているようだが、これらの2作はどちらも反体制的 な主人公を描いているように見える。一方、クリストファー の原作には、集団主義に対して個人主義を擁護しようとする 底流があるとの見方がされているようで、このような原作の 思想と、監督の資質との相性はどうなのだろうか。 因に、製作者のマーフィは、『鉄腕アトム』のアメリカ版 の製作も進めている。また脚本家のレムケは、当時紹介され ていた企画はどれも実現しなかったが、今年2月に全米公開 される予定のサム・ライミ製作のホラー作品“Boogyman”の 脚本に名前を連ねているようだ。 * * 2004年7月1日付第66回で紹介したマーヴェルコミックス 原作“Sub-Mariner”の映画化に、新たな動きが出てきた。 この計画では、前回はクリス・コロンバスの監督で、ユニ ヴァーサルが進めていることを報告したが、実は、当時はま だ製作が正式に決定されたものではなかった。その計画に今 回は、元ユニヴァーサルの製作担当重役から、独立して傘下 の製作プロダクションを経営しているケヴィン・マイシャー が製作者として参加することが発表され、7月頃の撮影開始 に向けて準備が進められることになったということだ。 脚本は、前回報告したように『ロード・トゥ・パーディシ ョン』のデイヴィッド・セルフが執筆し、セルフは製作総指 揮も担当する。一方、製作は上記のマイシャーとマーヴェル コミックスのアヴィ・アラド、それにコロンバスが担当。そ してコロンバスが、2002年の『ハリー・ポッターと秘密の部 屋』以来の監督復帰を果たす計画になっているものだ。 なお、前回の記事では“Sub-Mariner”の主人公ナモーを “Fantastic Four”のサブキャラクターのように書いてしま ったが、元々このキャラクターは1939年に発刊されたMarvel Comicsの第1号に登場したマーヴェル最初のスーパーヒー ローの一人と呼ばれているもので、“Fantastic Four”のコ ミックスがスタートする1961年以前に誕生していたものだ。 しかし1950年代に一度姿を消し、その後“Fantastic Four” のサブキャラクターとして復活したということで、前回の記 事を少し修正しておきたい。 また“Sub-Mariner”は、1960年代の半ば頃にマーヴェル のキャラクターを揃えたシリーズの一篇としてTVカートゥ ーン化もされており、この時代にファンになった人も多いと いうことだ。1959年生まれのコロンバスは、案外この当時の ファンなのかも知れない。 なお、今回製作に加わったマイシャーは、先にニコール・ キッドマン、ショーン・ペン共演の“The Interpreter”な どの製作を手掛けている。 * * コミックスの次はグラフィックノヴェルの映画化で、『X −メン』や『スーパーマン』の原作を担当したこともあるジ ョー・ケイシーが執筆した“Full Moon Fever”という未出 版のグラフィックノヴェルの映画化が、レニー・ハーリンの 監督で進められることになった。 この作品は、そう遠くない未来、人類初の月の裏側に設置 された基地を舞台に、その修理のために派遣された作業員の グループが、そこに居るのが自分たちだけではないことに気 付くというもの。実はそこには、飢えた狼男の群れも居たと いうのだが…そこから先は、映画の公開をお楽しみにという ところだ。 なおこの計画で、製作はエイドリアン・アスカリエとダニ エル・アルターという2人が担当しているが、この計画につ いては、昨年の夏に開催されたコミックコンヴェンションの 会場でケイシーがアスカリエに計画を持ち掛け、その後にア ルターとハーリンが参加したということだ。しかし製作者た ちは、『エイリアン3』や1999年の『ディープ・ブルー』を 手掛けたハーリンこそ、この計画にベストフィットの監督と 考えているようだ。 因に、アルターは2002年7月15日付の第20回で紹介したサ ム・ライミ監督の“30 Days of Night”をライヴァル作品と 考えているようだが、その計画についてもハーリンがベスト と思っているそうだ。また、アスカリエは、ジョン・ウー監 督、ドウェイン“ザ・ロック”ジョンスン主演で、2006年に ユニヴァーサルから公開が予定されているヴィデオゲームの 映画化“Spy Hunter”の製作も担当している人物で、今回の 作品については、映画化と同時にヴィデオゲーム化の計画も 立てているということだ。 ただしこの計画は、現状では製作会社が決まっていないも ので、これから原作の映画化権と、ハーリンの監督をセット にして、各社への売り込みが行われることになるようだ。な お、ケイシーは映画化の脚本も担当することになっている。 * * 『チャーリーズ・エンジェル』のMcG監督が主宰するプ ロダクション=ワンダーランド・サウンド&ヴィジョンが、 エンドゲームというプロダクションとの共同製作で、“Stay Alive”というホラー映画の計画を進めている。 この計画は、ブレット・ベルとマシュー・ピーターマンが 執筆した脚本を、ベルの監督で映画化するもので、内容は、 ニューオーリンズに住む10代の少年が、オンラインのホラー ゲームで遊んでいる内に、ゲームの中のキャラクターが死ぬ とそのプレーヤーも死ぬという事実に気付くもの。ゲームで キャラクターが死ぬことに慣れている世代には、かなり衝撃 的なお話になりそうだ。 と言ってもこれだけでは、ただのティーンズホラーで終り そうな企画だったのだが、この映画化に際して、映画に登場 するホラーゲームのデザインやゲーム中のエフェクトの制作 を、アメリカン・マッギーが担当することが発表された。 アメリカン・マッギーについては、2002年1月15日付の第 7回や2004年2月1日付の第56回で映画化の計画を紹介した “American McGee's Alice”“American McGee's Oz”など の原作ゲームを制作したゲームクリエーターで、以前にも紹 介したようにアメリカを代表するゲームクリエーターの一人 と言われている人物。そんなクリエーターの参加が、映画に どのような影響を及ぼすか、結果が楽しみだ。 なお製作は、エンドゲーム側が資金を調達して、3月にニ ューオーリンズで撮影開始の予定ということだが、実は配給 会社が未定。ワンダーランドはソニーと優先契約を結んでい るが、本作に関しては決定していないとのことだ。 因に、ベルとピーターマンのコンビは、ゲイル・アン=ハ ード主宰のワルハラとディジタル・ドメインの共同製作で、 ユニヴァーサルが配給するスパイスリラー“Mercury”や、 ワーナー製作の子供向けアクション“Ignition”、ディズニ ーでジョナサン・フレイクスが監督する“Illusion”などの 脚本も手掛けているようだ。 そう言えば、“American McGee's Alice”の脚本は、『チ ャーリーズ・エンジェル』のジョン・オーガストが担当して いたもので、その辺の関係で今回の企画が実現した気がしな いでもない。それにしても、“Alice”と“Oz”の計画はど うなってしまったのだろう。 * * 最後にちょっと面白い話題で、アメリカ・フロリダ州オー ランドのウォルト・ディズニー・ワールドのアトラクション “Pirates of the Caribbean”にジャック・スパロー船長が 登場することになるようだ。 昨年夏の大ヒット作『パイレーツ・オブ・カリビアン』が ディズニーランドのアトラクションからインスパイアされた 作品であることは有名だが、その後にアトラクションを訪れ た観客からは、スパロー船長はどこにいるのだ?という声が 多く聞かれたということだ。 そこでディズニー側が、アトラクションの中にオーディオ アニマトロクスによる船長を登場させることにしたもので、 その姿はジョニー・デップの風貌を模したものであることは もちろん、その声もデップが吹き込むことになっている。ま た、リニューアルされた“Pirates of the Caribbean 2”の オープニングには、デップ本人がテープカットに訪れる計画 もあるようだ。 今のところスパロー船長の登場は、ディズニーワールドの アトラクションだけの計画ということだが、できることなら 東京ディズニーランドの『カリブの海賊』にも登場させても らいたいものだ。
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