※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 明けましておめでとうございます。 いよいよこのページも4回目の正月を迎えました。毎度変 りませんが、今年もよろしくお願いいたします。 というところで、新年最初の話題は、ちょっと楽しみなこ の情報から。 ジョニー・デップ主演で、今春の撮影開始が予定されてい る『パイレーツ・オブ・カリビアン』の2本の続編に、チョ ウ・ユンファ出演の情報が流されている。 この情報は、チョウの夫人が中国の新聞に語ったもので、 それによるとオファーされているのは、張保仔という実在し た海賊の役。そしてこの出演交渉のために、ゴア・ヴァビン スキー監督自身が香港に出向いて脚本の検討を行ったという ことで、期待が膨らむところだ。 因にこの海賊は、1800年前後に香港島を拠点に活動してい たというもので、最盛期には3万人以上の部下と270隻以上 の船を保有していたとも言われている。また、彼が財宝を隠 したという洞窟は、現在も香港の観光名所の一つになってお り、この他にも香港島には、彼に因んだ地名が随所に見られ るということだ。 そして張保仔本人は、海賊と言いつつも人望を集め、時の 清朝政府に対抗する勢力の象徴ともなるが、1810年に清朝か ら派遣された香港総督の取った融和策によって投降、その後 は張宝と名を変えて海軍副長官も勤めるなど天寿を全うし、 中国史にも名を留める数少ない香港人の一人として、現在も 人気のある人物だそうだ。 そんな訳で、この張保仔が当時のカリブ海まで出張って行 ったという可能性はほとんど無いものだが、そこはお話とし て楽しみな登場人物になりそうだ。なお、出演交渉は続編の 2本分で行われたとされている。 一方、この続編の撮影に関連しては、ロサンゼルスで総数 7000人という大規模なエキストラの募集も始まっている。 これで募集されているのは、まず海賊役として、18歳から 50歳ぐらいまでの贅肉の無い痩せ形の人物で、特に美しい顔 立ちの必要はなく、歯が欠けていたり、目が虚ろだったり、 連続殺人鬼のような顔立ちが、特に好まれるということだ。 また、長髪で髭が生えていることも必要だが、これらは鬘や メイクで見破れないものはOKとされている。 この他にも、海兵隊員や水兵、町の人々、手足の無い人や 若い娘なども募集されているが、特に海賊の衣装を着けて、 一日中剣を振り回しながら走り回る役に、一番人気が集まる だろうというのが大方の予想のようだ。 撮影場所は、ロサンゼルスと、カリブ海のセントヴィンセ ント島、期間は2月から2006年の始めまでということで、そ の間の日当は118ドルが支払われる。1日約1万2千円で、 しかも期間が1年とは、毎日出番がある訳ではないにしても かなり割りの良い仕事と言えそうだ。しかもその募集人数が 7000人というのだから、これは目茶苦茶大規模な募集という ところだが、大ヒット間違いなしのハリウッド映画ではこの ようなことが平然とできるということだ。 なお、同時に撮影される計画の第2作、第3作には、すで にジョニー・デップと、キーラ・ナイトレー、オーランド・ ブルームの出演が発表され、他に、ジェフリー・ラッシュの 再登場や、さらにスパロー船長の恋人のジプシー女役でサル マ・ハエック、同じく船長の父親役でローリング・ストーン ズのキース・リチャーズらの登場の情報もあり、かなり華や かな作品になりそうだ。 公開は、2006年の夏とクリスマスの予定になっている。 * * お次は、新シリーズ誕生かという情報で、すでに4作品が 映画化されているJack Ryanシリーズの作家トム・クランシ ーが原案を担当し、ヴィデオゲームの形式で発表されている “Splinter Cell”という作品について、その映画化権をパ ラマウントが獲得したことが発表された。 この作品は、“スティルス”アクションと呼ばれるジャン ルで最も成功したゲームの一つと言われるもので、政府機関 のスパイでサム・フィッシャーという名前の主人公が、敵と なる国際的なテロリスト組織の本部に侵入し、その機密など を盗み出すことを目的とするもの。当然、罠や迷路などの仕 掛けられた中を、知性と勇気を持って切り抜けて行く姿を描 いたものということだ。 そしてこのゲームシリーズでは、すでに初編の“Splinter Cell”と、続編の“Splinter Cell: Pandora Tomorrow”の 2作が発表されて全世界で600万本を売り上げ、さらに今年 3月に第3作の“Splinter Cell: Chaos Theory”が発表さ れる予定になっている。 この映画化権を、Jack Ryanシリーズも手掛けるパラマウ ントが獲得したもので、同社では、昨年公開されたザ・ロッ ク主演『ランダウン』などのピーター・バーグ監督と契約し て映画化を進めるとしている。なお、映画の製作にはクラン シーのマネージャーのマイクル・オーヴィッツが当り、バー クとクランシー、それにゲームの出版元の代表を務めるイヴ ・ギージャモウが製作総指揮を担当する。 また契約で、バーグは本作の脚色も担当するが、それには ヴィデオゲーム作家のJ・T・ペティと、ジョン・J・マク ローリンも共同執筆の形で参加するということだ。つまり、 この契約では、バーグとクランシーがかなり隅々まで目を光 らせることになるが、これは以前にJack Ryanの映画化を巡 って、クランシーとパラマウントの間で一時確執が生じたこ とに対する予防策のようだ。 因に、Jack Ryanシリーズの映画化に関しては、2004年の 第61回でも紹介した“Red Rabbit”と、そこからスピンオフ される“Without Remorse”と“Rainbow Six”の計画が進め られているが、この内の“Rainbow Six”は、元々はヴィデ オゲーム形式で発表されたもので、今回の計画がうまく行け ばそちらにも拍車がかかりそうだ。この他にクランシー原作 のゲーム作品では“Ghost Theory”というのもあるようだ。 なおバーグ監督は、マイクル・マンの製作でユニヴァーサ ルが進めている、中東が舞台のスパイアクション作品“The Kingdom”にも起用が発表されている。 * * 今年は『バットマン』、来年には『スーパーマン』と続く ワーナーから、またまたDCコミックス原作のスーパーヒー ロー映画化の計画が発表された。そのスーパーヒーローの名 前は“The Flash”。 “The Flash”は、1939年の年末(日付は1940年1月)に 第1巻が発行されたというから、上記の2シリーズとほとん ど同時期に誕生したシリーズだが、今まで映像化はされてい なかったようだ。因に1938年開始の“Superman”は、Action Comics、1939年開始の“Batman”は、Detective Comicsに 掲載されたものだが、“The Flash”はFlash Comicsという 自らの名前の冠された連載誌に掲載されたものだ。 物語は、本名をジェイ・ガリックという中西部の大学で化 学を学んでいた学生が、深夜一人で行っていた実験中に謎の 液体から分離された蒸気を吸い込んで昏睡、数週間後に目覚 めるが、そのとき彼には、動くことも考えることも普通の人 より数倍早いという能力が備わっていたというもの。 やがて彼は、秘密を知る唯一の人物である同級生のジョア ン・ウィリアムスと結婚し、大学の研究室で光速に関する研 究をしたり、科学警察の研究員や、科学研究所の主任研究員 などの職に就きながら、その能力を正義のために発揮させる ことになる。また彼は、1940年代に設立されたThe Justice Society of Americaの初代議長でもあったということだ。 因に、ガリックがThe Flashとして活動するときのコスチ ュームは、速さの神マーキュリーに準えて、胸に黄色の稲妻 の描かれた真紅のボディシャツと、脇に黄色の線の引かれた 青のタイツ、黄色の羽根の付いたマーキュリーのヘルメット に、黄色の羽根の付いた真紅の短靴というものだ。 そしてこのスーパーヒーローの映画化がワーナーで進めら れることになったもので、今回はその計画に、ニューライン で『ブレイド』シリーズを完結させたばかりのデイヴィッド ・S・ゴイヤーが脚本、製作、監督の契約を結んだことが発 表された。 なおゴイヤーは、撮影中の“Batman Begins”の脚本も担 当しているが、今回の契約は、2004年9月15日付の第71回で 紹介したゴイヤーとワーナーの包括契約に基づくもの、この 契約では最初の公式に発表された計画となるものだ。 また、今回の情報はワーナーから公式に発表されたものだ が、実はウェブサイトでは1月程前からゴイヤーサイドから の情報が流されていた。そこでゴイヤーは、“The Flash” について、「自分の最も好きなキャラクター」と公言してお り、さらにこのスーパーヒーローは特殊な武器などを使用せ ず、ただ動くスピードが速いという特徴だけを持つことにつ いても、「これが最高!」と言っていたということだ。ここ まで言うゴイヤーが、そのアイデアを存分に盛り込んだ脚本 を執筆することを期待したい。 * * 古くは『トロン』や『エイリアン』、最近では『フィフス エレメント』などのコンセプトデザインで知られるフランス のアーチスト、ジャン“メビウス”ジロー原作による3D− CGIアニメーションが香港のスタジオで製作されている。 この作品は、“Thru the Moebius Strip”と題されたもの で、元はHari Kiriという雑誌に発表されたジローの原作か ら、ジム・コックスとポール・ガーツという2人の脚本家が 脚色したもの。内容は遠い未来を背景にしたファミリー・ア ドヴェンチャーと称されており、1人の少年が不思議な巨大 異星人の住む世界を、長く行方不明となっている父親を探し て旅しながら、自分自身の宿命を探る物語ということだ。 そしてこの映画化の計画は、2000年にジロー自身が率いる ロサンゼルスのアーチストチームによって立上げられ、その 後2001年に香港のGDCというスタジオに製作母体が引き渡 されて、すでに映像は完成してポストプロダクションの段階 になっているということだ。 因に監督は、グレン・チャイカという人が担当しており、 また、声の出演者には、マーク・ハミル、『新スター・トレ ック』シリーズのウォーフ役のマイクル・ドーン、ジョナサ ン・テイラー・トーマス、ジーン・シモンズらが参加してい るということだ。 なおこの作品の配給権は、元はセネター・インターナショ ナルが保有していたが、最近ファンタスティック・フィルム スという会社が獲得したことで再び話題となったものだが、 作品はそろそろ完成しているはずで、日本の配給権はどうな っているのだろう。 * * 続いてもアニメーションの話題で、昨日付の映画紹介で掲 載した『火星人メルカーノ』と同じアルゼンチンで200万人 を動員するヒット作が誕生し、その勢いで新たなアニメーシ ョンスタジオが設立されることになっている。 この作品は“Patoruzito”と題されたもので、アルゼンチ ン南部のパタゴニアに住む少年が、題名にもなっている地方 のチーフの座を賭けて闘う姿を描いたもの。元々は75年前に ダンテ・クインターノというアニメーション作家によって創 造されたキャラクターということだが、今回のアニメーショ ンの製作者ジョルジ・ロドリゲスの意見によると「アルゼン チンのミッキーマウスのような存在」だそうだ。 そして今回の作品は、ホセ・ルイス・マッサという監督が アルゼンチン国内の150人のアニメーターを動員して、長編 アニメーションとして完成させたもので、これが200万人の 観客を集める大ヒットを記録したものだ。 そして製作者のロドリゲスは、本作の続編の製作とテレビ シリーズ化、さらにスピンオフの計画を進めているというこ とだが、実は今回の製作ではパタゴニック・フィルムスとい う会社が共同製作しており、この会社が海外の配給権を独占 してしまっていた。このためロドリゲスは、自らの製作配給 会社を設立して、旧来の会社に対抗しようという目論見のよ うだが、続編の権利についてはこの会社との関係がまだ明確 ではないようだ。 因にパタゴニック社は、“Dibu”や“Condor Crux”とい った作品で、すでに7本の長編アニメーションの製作実績が あるということで、アルゼンチンは意外なアニメーションの 製作国だったようだ。 * * この後は、SF映画の情報を3本ほど紹介しておこう。 まずは続報で、2004年6月1日付の第64回で紹介したピア ズ・アンソニー原作の“Xanth”シリーズ第1巻“Spell for Chameleon”の映画化の脚色に、『ウォルター少年と夏の休 日』で脚本監督を手掛けたティム・マッキャンリスの起用が 発表された。 この映画化では、ウォルフガング・ペーターゼンの監督と 共に、『トロイ』の脚本を担当したデイヴィッド・ベニオフ の参加が発表されていたものだが、結局ベニオフは製作だけ を担当することになるようだ。因にマッキャンリスは、SF ファンの賞賛を浴びた『アイアン・ジャイアント』の脚本で も知られるが、その他に“Dancer, Texas Pop.81”という作 品でも再び脚本監督を担当している。 ただし、本作の監督はペーターゼンが変らず担当している もので、配給はワーナーが行う。 * * 以下は新しい情報で、いずれもヒューゴー賞受賞作の映画 化の計画が発表されている。 その1本目はクリフォード・D・シマック原作の1964年の 受賞作“The Way Station”(中継ステーション)の映画化 権を、ピーター・ウィンサーとランディ・サイモンの2人が 主宰するレヴェルストーンというプロダクションが契約し、 ウィンサーの監督で映画化を目指すことになった。 銀河を縦横に巡る物質転送装置による交通機関。その中継 ステーションが地球にも置かれていた。その管理を任される のは南北戦争の退役軍人イノック・ウォーレス。彼の容姿は 30代にしか見えないが、実は100年以上の歳月をそのステー ションを守って生きてきたのだ。しかしそんな彼の秘密が暴 露され、地球壊滅とさらには銀河文明消滅の危機が訪れる。 原作者のシマックは、1930年代から執筆を始め、1950年代 のアメリカSFの絶頂期を支えた作家の一人だが、今まで映 画化の話を聞いたことが無く、今回の情報も意外な感じで受 け取ったものだ。作風は叙情的な描写で知られ、このような 短文の紹介では到底その良さは伝えられないが、今回の計画 が成功して、それに続く動きが出てくることを期待したい。 なお映画化は、サイモン・バリーという脚本家の脚色で行 われることになっている。 * * そしてもう1本は、アーシュラ・K・ルグインの原作で、 1970年にネビュラ賞とのダブルクラウンに輝いた“The Left Hand of Darkness”(闇の左手)が、2001年のアカデミー 賞で主演男優賞など3部門にノミネートされた『クイルズ』 の製作者サンドラ・シュールバーグによって映画化されるこ とが発表された。 物語は、一旦構築された銀河文明が衰退した後の未来を背 景に、忘れられた惑星「冬」で繰り広げられる。そこに再び 銀河文明への参加を呼びかける使者が来訪するが、中世さな がらの文化程度となった人々にその意味を伝えることは至難 の技。それでも使者は、国々を巡って説得を続けるのだが… 1970年代以降のSFの女王と呼ばれたルグインが、最初に 開花した作品と言われる名作で、以前にも何度か映画化の計 画はあったと思うが、今回はついに本格的に動き出しそうな 発表となったものだ。因にルグインの原作では、この発表の 行われた12月13日から2夜連続で、“Earthsea”のテレビ化 がアメリカSci Fiチャンネルにより放送されており、今回の 発表はそのタイミングを図ってのものだったと思われる。 なお、シュールバーグはこの発表に先立ってフォボス・エ ンターテインメントというプロダクションを設立して、今回 の計画もそこを通じての製作となるものだが、このプロダク ションでは、Sci Fiチャンネルで放送予定の“Graveland” という作品も手掛けるなど、プロダクションの名称を考え併 せると、ちょっと面白い動きになりそうだ。 ただし、紹介した受賞作2作品の映画化計画については、 どちらも配給会社が発表されていないが、特に後者は、脚本 監督がなどが決まる内に、契約が結ばれることになるものと 思われる。理解のある配給会社の登場を待ちたいものだ。 * * 最後は続報で、2004年2月1日付の第56回で紹介した実写 CGI合成による“Charlotte's Web”のリメイクで、蜘蛛 と子豚の友達となる農場の娘役としてダコタ・ファニングの 出演が発表された。ファニングは、現在スティーヴン・スピ ルバーグ監督、トム・クルーズ共演の“War of the World” を撮影中だが、それに続けて1月末からオーストラリアで行 われる撮影に参加するようだ。 もう1人女優の話題で、2004年11月15日付の第75回で紹介 したリー・タマホリ監督、ニコラス・ケイジ主演によるフィ リップ・K・ディック原作の映画化“Next”の相手役に、ジ ュリアン・モーアの共演が発表された。ただし、ケイジはそ の前に“Ghost Rider”、またモーアも“Freedomland”とい う作品に出演が決定しており、本作の撮影は、早くて今年の 後半になりそうだ。 なお、ケイジは先日行われた“National Treasure”の来 日記者会見で、中田秀夫監督と清水崇監督の次回作に出たい と叫んでいたが、あれはその後どうなったのだろうか。 * * もう1本、これは直接続報ではないが、2004年10月1日付 第72回で紹介したビーチバレーを題材にした映画の話題に関 連して、今度はソニー傘下のコロムビアから“Bronze God” という計画が発表された。 この計画は、テレビの構成作家を勤めてきたアレックス・ グレゴリーとピーター・ヒュイックという脚本家チームが、 初の映画作品として執筆した脚本に基づくもので、物語は、 ビーチバレーのトーナメント出場を夢見るライフガードの主 人公が、ワイルドカードでの出場権を得るというもの。そし てこの作品に、今年の夏全米公開予定のニコール・キッドマ ン主演によるリメイク版“Bewiched”でダーリン役に扮した ウィル・フェレルの主演が発表されている。 以前に紹介したパラマウントの計画が、その後どうなって いるか不明だが、ビーチバレーは一昨年のアジア大会では日 本人チームが金メダルを獲得するなど、近年日本でも盛んに なってきており、ワールドトーナメントツアーには日本人選 手の登場も期待されるもの。撮影時期などは未発表だが、ち ょっと気になるところだ。
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