2004年12月30日(木) |
Movies−High #5、ザ・キーパー[監禁]、生命(いのち)−希望の贈り物、オーシャンズ12 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『Movies−High #5』 映画のプロを目指す人たち短編作品を集めたニュー・シネマ ・ワークショップの発表会が今年も行われた。この発表会に は一昨年の第3回から招待を受けているが、今年も新作14本 を見せて貰ったので、今回は最初にその紹介と、感想から述 べさせていただきます。 なお、作品はABCの3プログラムに分かれ、僕はB→C→ Aプログラムの順番に見学しましたので、感想もその順で述 べることにします。 「ロールキャベツの作り方」 彼氏の来訪を待ちながら手料理のロールキャベツを作る女性 の物語。元々監督が料理が好きということで、発想は有りが ちかも知れないが、それなりの捻りもあって面白かった。 ただ結末はもう一捻りというか、何か一発、落ちが欲しかっ た感じもする。その後の出演者紹介が洒落ているので見過ご しやすいところだが、やはり映画の結末はちゃんと欲しいも のだ。 この監督には次回作を期待したい。ただし、くれぐれも料理 シリーズにはしないように、次は別のテーマで見てみたい。 「MANEATER in the woods」 人食いの出るという森の奥に住む名刀鍛冶。その森に住む人 食いの正体は…監督は北村龍平が目標らしいが、ストレート な物語で、変に捻る北村作品より好感が持てた。 ただ俳優のせりふ回しが何ともぎこちなく、興を削がれる。 その辺も北村作品に似ているのが気になるところだ。 なお、この作品はDVDで商品化されており、TSUTAYAのレ ンタルで見ることができるようだ。 「鳩と小石」 申し訳ありません。この作品の記憶が飛んでいます。実は数 日前に腰痛を起して、当日は鎮痛剤を飲みながらの出席でし たが、この作品の時に薬効がピークに達したようです。 出だしは良い雰囲気で、同じ石フェチを扱った『恋の門』と の比較もしたかったのですが、申し訳ありません。 「ただ聞く屋」 人の話を聞くだけで金を取る屋台の物語。主人公はそんな商 売を認められず、屋台に文句を言いに行くが…現代の一面を 捉えたような作品で、風刺的な面もあり面白かった。 ただ客の話す内容には、もう少し捻りが欲しかった感じを持 つ。確かに物語の焦点はそこにはないのだが、これでは観客 の興味を保てない恐れがある。 観客へのサーヴィスの気持ちで、ここにも何か工夫を入れて 欲しかったところだ。それと題名は、唯聞くのか、只で聞く のか紛らわしい。僕は最初間違って見ていた。 「たからばこ」 夏休みのある日、たかしは町で同級生のゆかと出会う。彼女 は大事そうにたからばこを抱えていたが…大人の勝手に振り 回される子供たちの姿が、うまく描かれていた。 現代に有りがちな話かも知れないが、うまく捉えている。た だ、恐らくゆかとは夏休み後にはもう会えないのだろうが、 その辺りをもう少し明確にして欲しかった感じは持つ。 もっとウェットな作品にしても良かったのではないかとも思 うが、逆にドライさが良いという見方もあるだろうし、難し いところだ。この作品は、これで良いとは思うが… 「サイヴァイ」 山奥に死体を埋めに来た若者。埋めた直後に別の男が現れ、 男は茸を差し出し、若者はその茸を食べるが…やがて身体に 変調が起こり始める。 非常にそつなく撮られていて、アマチュアの作品としては完 成されていると思うが、背景にあるはずの世界観が見えてこ ず、何か小さくまとまり過ぎているような印象を持つ。 内容的には『マタンゴ』を思い出すが、その見方で言うと有 りがちな話にも見える。自業自得みたいな思想が根底にある ように感じるが、その辺がうまく現れていないと思う。 「Circle Game」 安全圏であるサークルを辿りながら町を駆け抜けるゲーム。 男性の競技者は女性のナビゲーターと共に行動し、彼女の役 割は、ただ次のサークルの位置を指示することだったが… 今まで出会ったことのない男女に、ゲームの中で人の絆が生 まれて行く。異常なシチュエーションの中で、普遍的な物語 が展開する。判り易い物語で、映像も良かった。 でも、何かそこでとどまっている感じで、次に突き抜けて行 くものが感じられない。前の作品とは違った意味で、この作 品も小さくまとまり過ぎているような印象を持った。 「踏み切り」 リストラされたことを母親にも言えない男が、ふと知り合っ た運転手の手引きでインド料理店に行き、自分の殻を破って 行く姿を描く。 こういうことの起きるシチュエーションは理解する。でも、 こんなにうまく行くことがどれだけあるか、という話にもな るし、結局寓話で終ってしまっているような印象を受ける。 それでどうなるという話でもないし、言っても仕方のないこ とを言っているような空しさがある。監督の意図がどこにあ るかは別として、そんなことを感じてしまった。 「コンビニエンス」 日本のコンビニエンスストアの多くが家族経営によっている という。そんなコンビニを経営する家族を描いた作品。 監督自身がコンビニ経営の両親の下で育ったそうで、本作の 制作意図はコンビニを裏側を見せるとしているが、作品では そこに見事なホームドラマを展開してみせている。 何故に父親は安定した職を辞してコンビニ経営を始めたか、 などの物語が、ちょっとしたせりふや小道具から見事に浮き 彫りにされる。 このままコンビニエンスストアの経営者募集のキャンペーン にでも使えそうな、完成された作品だった。 「この窓、むこうがわ」 登校拒否で2階の自室に引きこもっている少女と、その窓に 向かい合う部屋に住む女性。女性は、いつも少女が部屋を見 張ってくれていることで防犯になると感謝していたが… この作品も前の作品と同様、実にコンパクトに見事にまとめ られていた。後半の展開も見事だし、何しろこの作品では、 展開が始まってからの反応の描き方が素晴らしい。 ただの引きこもりの問題だけでなく、何かを成し遂げること の素晴らしさなどもうまく描かれていた。 「暁の花」 短編映画と称されるものの中で、時折見かけるのが、長編の 中の1エピソードを描いたような作品だ。この作品もそのよ うな印象を受けるものだった。 今年はプロの短編もいろいろ見る機会があり、その中にもそ ういう作品はあるのだから、これも一つの表現形式かも知れ ないが、やはり見ていてフラストレーションが起きる。 この作品で言えば、曼珠沙華の根元に埋めた指輪はどうなっ てしまったのかというようなことだ。この作品は、そこまで 描いてこそ完成されるもののような気がする。 「ストロングワールド」 ちょっと過激な若者の生態を描いた作品。無いと思うが、も しかすると有るかもしれない物語が、うまく描かれていた。 ブラジル映画の『シティ・オブ・ゴッド』を思い出した。規 模もレベルもまるで次元が違う話だが、あの作品を日本の風 景に合わせると、こうなるのかも知れない。 写し方にも躍動感があるし、倫理的には不道徳なことを描い ているのに、納得できてしまうところも良かった。この感性 を大事に育てて行って貰いたいものだ。 「ブラボー!」 カメラマンを目指しているが挫折しかかっている若者が、昔 のアルバイト先のペンキ塗りに応援を求められて、自分を取 り戻して行く物語。 有りがちな話だと思うし、今までにも同じような作品は沢山 作られていると思う。でもそれは新人作家にとって登竜門の 様なもので、一度は作っておくべきものかも知れない。 いろいろな実体験に基づいて、それぞれの個人的な青春物語 がある、そんな感じがした。こういう作品が毎年1本ぐらい あると良いなあという感じだった。 「TOILET」 ある日突然、父親が家族をトイレに押し込め、外から鍵を掛 ける。そして母親が、一緒に閉じ込められた息子と娘に向か って驚愕の真実を話し始める。 今回上映された14本の中では、唯一のSF作品。怪奇や未来 感覚の作品は他にもあるが、SFと呼べるのはこの作品だけ だった。 SF作品では、その中で展開する物語がどれだけ納得できる かが勝負になるが、その意味でもしっかりとした作品に思え た。携帯電話を使ったシチュエーションの説明がうまい。 この種の終末ものでは、『ミステリーゾーン』などにも秀作 があったが、そういった作品も勉強して貰って、次の作品に 期待したいところだ。 以上で『Movies−High #5』の紹介を終ります が、初めて出席したときには正直に言ってアマチュア然とし た作品も多かったのに、年々作品の内容も向上し、今では毎 回が楽しみです。今後も期待しています。 以下は、通常通りの試写会で見た作品の紹介です。 『ザ・キーパー[監禁]』“The Keeper” 『XXX』のアーシア・アルジェントと、怪優デニス・ホッ パーの共演で、『スター・トレック/DS9』を手掛けたこ ともあるジェラルド・サンフォードの脚本を、『プロム・ナ イト』のポール・リンチが監督したサスペンス作品。 アルジェントが演じるのはストリップダンサー。ある日、ボ ーイフレンドといたモーテルの部屋が襲われ、ボーイフレン ドは殺害、ぎりぎり難を逃れた彼女は警察に保護される。と ころが、負傷の癒えた彼女を、今度はホッパー扮する警部が 拉致し、自宅に監禁してしまう。 警部の目的は一つ。彼女を更生させようという気持ちからだ ったが、そのやり方は、彼女を地下室の檻に閉じ込め、正し い行いをしたときにポイントを与え、悪いときには奪い、そ のポイントによって彼女に褒美を与えるという過激なもの。 そのやり方に、最初は反発していた彼女だったが、日が経つ 内に、徐々にその生活に慣らされて行く。そして、ポイント が溜まって檻から出ることを許され、階上の部屋でワインを 飲ませてもらうまでになって行くが… 配給会社の宣伝文句は、エロティック・スリラーということ で、監禁だの陵辱だのという言葉が並ぶが、映画の描写は余 り過激なものではない。むしろ真面目に、サスペンスを展開 している感じだ。 また、彼女の行方を捜す若い警官や、警部をストーカーまが いに追い掛けるテレビ番組の女プロデューサーなども登場し て、そこそこ複雑というか、それなりに変化を付けた展開に はなっている。 と言っても、この展開に余りメリハリが感じられず、見終っ て悪い気分ではないが、取り立てて良いというほどの作品で もない。折角のアルジェントとホッパーの共演の割には、ち ょっと中途半端な感じの作品だった。 何かもう一捻りあれば良かったのだが、脚本も演出も、ちょ っと生真面目すぎる感じがした。ホッパーの怪演はさすがだ し、アルジェントのファンなら見ても良いと思うが、それを 楽しめない人には、ちょっと…かも知れない。 なおアルジェントとホッパーは、現在撮影中のジョージ・A ・ロメロ監督による久々のゾンビ映画“Land of the Dead” で再共演しているはずで、その作品も楽しみだ。 『生命(いのち)−希望の贈り物』“生命” 1999年9月21日に台湾南部で発生した大震災を題材としたド キュメンタリー作品。マグニチュード7.3といわれるこの 地震では、台湾全土で2500人以上が死亡したり、行方不明に なっている。 カメラはその被災地の一つ、九扮二山(扮は正しくは人遍) に入る。その被災地の様子にまず息を呑む。ここでは2つの 山が崩れ、家屋9階分の厚さと言われる土砂によって谷間の 村が完全に埋め尽くされている。そしてその下に20数名が行 方不明となっている。 その捜索は重機を使って行われているが、山の姿が変ってし まったために、元の家屋の位置も特定できず、ここと思う場 所を掘り下げ、何も見つからなければ他の場所で同じことを 繰り返すという状態。遺体はおろか何の手掛かりも発見でき ないことの方が多い。 そして偶然に難を逃れた遺族(日本の報道では使えない言葉 だが、そう表現されていた)たちは、被災地の一角に設けら れた貨物コンテナを改造した仮設の住居で寝起きしながら、 家族の痕跡を捜している。カメラはそんな遺族4組7人の姿 を追う。 彼らは、2人の子供を親許に残して日本に出稼ぎに来ていた 夫婦や、多額の借金を背負う父親のため働きに出ていた姉妹 など、いずれも、なぜ自分たちだけが家族と離れて難を逃れ たのか、自責の念に駆られる人たちだ。 阪神淡路の震災から10年が経ち、今年また新潟県中越の大地 震が起きたところだが、この作品では、地震そのものの物理 的な被害を描くのではなく、そこに残された人々の心の被害 を描いている。そこには描かれるべきドラマがある。 しかし、それはただお涙頂戴のドラマではなく、あるときは 監督が声を荒げて叱咤してしまうような事態も登場する。そ してそれは、その人たちが苦しみ抜いた結論であることも理 解できるものなのだ。 遺族という言葉が使われるなどの国民性の違いや、社会環境 の違いなどはあるし、日本の被災地で同じようなことが起き ているかというと、決してそうではないと思うが、描かれる 悲しみは同じように感じられた。 なお一般公開は2005年1月下旬からだが、その前の1月14日 には、監督の呉乙峰を招いての中越地震救援チャリティ試写 会が、新宿紀伊國屋サザンシアターで開催されることになっ ているようだ。 『オーシャンズ12』“Ocean's 12” 1960年作品『オーシャンと11人の仲間』をリメイクした2001 年作品の続編。01年作品からは、敵役のアンディ・ガルシア を含めてメムバー全員が再登場し、今回はさらにキャサリン ・ゼタ=ジョーンズ、ヴァンサン・カッセルらが新登場して いる。 物語は、前作でカジノから強奪した分け前を使って優雅に暮 らす仲間たちに、前作の被害者ベネディクトの手が伸びるこ とから始まる。次々に居場所が突き止められ、ついには、2 週間で全額に利子を付けて返さなければ、命を奪うという宣 告が下される。 しかし前作で得た金の大半はすでに使われた後、やむなくオ ーシャンたちは新たな標的を捜すことになるが…ヨーロッパ で始めた仕事は、ナイト・フォックスと名乗る怪盗に次々に 先を越されてしまう。 さらにオーシャンたちの動きは、ユーロポールの敏腕刑事イ ザベル・ラヒリの知るところとなり、彼女の執拗な追跡も受 けることに…そしてオーシャンたちに絶対のピンチが… 製作は、主演のジョージ・クルーニーと、監督のスティーヴ ン・ソダーバーグが主宰するセクション8。 1960年の作品もラット・パックと呼ばれた当時のシナトラ一 家が集まったものだが、今回のブラッド・ピット、マット・ デイモン、ジュリア・ロバーツらは、差し詰めクルーニー一 家とでも呼べそうな雰囲気だ。 物語自体は、前作のような大仕掛けは余り無く、替って本作 では、ヨーロッパの街角を背景に出演者たちが演技を見せあ う形となっている。その背景はアムステルダムからパリ、モ ンテカルロ、コモ湖、ローマ、シチリア島まで観光旅行の雰 囲気だ。 実際、映画の雰囲気は、クルーニー一家の観光旅行に観客も 相乗りしているという感じで、物語自体もそれほど複雑では ないし、アメリカではクリスマスシーズンをお気楽に楽しみ たいというタイプの作品だろう。 勢揃いの豪華メムバーの顔を見ているだけでも楽しいが、さ らに、このメムバーだけではないスペシャルゲストも登場す るしで、そういったところを楽しみたい作品だ。
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