※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずは記者会見の報告で、昨日付の映画紹介でも触れてい るが、11月12日に『ポーラー・エクスプレス』の公開に合せ たトム・ハンクスとロバート・ゼメキスの会見が行われた。 その会見では特に新しい情報はなかったが、質問の中で、 「登場するホーボーのキャラクターについて、1973年公開の 『北国の帝王』を意識したか」という問が出て、ゼメキスか ら、「当然意識しているが、ホーボーというのはアメリカの アイコンの一つで、他にも『怒りの葡萄』等も参考にした」 という答えが返された。なるほどそうかという感じの答えだ が、こういう裏打ちがキャラクターに真実味を出しているこ とを理解できたものだ。 また、パフォーマンス・キャプチャーの今後については、 すでに2作目の“Monster House”の製作に掛かっており、 今後も使える題材があれば、どんどん製作したいとのこと。 技術的にはアニメーションと実写の中間に位置するものと考 えており、アニメーションにはしたくないが、実写では不可 能なものを映画化していきたいということだった。これから も作り続けるということで期待したい。 なお、100年後の映画についてゼメキスは、フィルムはな くなり、全てディジタルになるという意見だったようだ。当 然の答えではあるが。 * * ということで、以下は製作ニュースだが、最初は記者会見 の行われた『ポーラー・エクスプレス』を製作したトム・ハ ンクス主宰プレイトーン社の情報で、同社から、新たな若年 向けファンタシーの計画が発表されている。 作品の題名は“The City of Ember”。ジーン・デュプロ ウという作家の原作を映画化するもので、この原作は、ヤン グアダルト向けの書籍で全米ベストセラーを記録したものだ そうだ。 物語は、大気汚染によって地表での生活が困難となり、人 類は地下に潜って生き長らえている未来の地球を舞台にした もの。その世界で、エムバーと呼ばれる地下都市に住み、地 上に出て各都市を結ぶメッセンジャーになりたいと願う少女 リナ・メイフリーと、防具を着けて地表に出て都市のエネル ギー設備の修繕に従事している少年ドーン・ハローを主人公 にして進められるということだ。 なお物語は、都市のエネルギー供給が減少し始め、設備の 根本的な修理が必要になるが、人々はその知識をすでに失っ てしまっている。そこで、主人公の2人が古代の知識と、彼 らの世界がなぜこうなってしまったかを探る冒険の旅に出る という展開になるようだ。 そしてこの脚色に、『シザーハンズ』やティム・バートン 製作の新作“Corpse Bride”を担当しているキャロライン・ トムプスンが交渉され、さらに監督には、パフォーマンス・ キャプチャーによる第2作の“Monster House”で長編監督 デビューを飾ったジル・ケナンの起用が発表されている。 なお、ケナンは本作で実写監督デビューを果たすとなって いて、つまりこの作品は、パフォーマンス・キャプチャーに よるものではないということだが、VFX多用の作品になる ことは間違いないものだ。 また、原作者のデュプロウは現在本作の続編を執筆中とい うことで、今回6桁半ば($)で結ばれた映画化権の契約金 は、続編に関する分も含まれたものと言われている。つまり シリーズ化の可能性もあるということだ。 * * お次は、ハリウッド映画では珍しいサッカーの話題で、日 本でも人気抜群のデイヴィッド・ベッカムや、ジダン、ラウ ルらが登場するサッカーを題材にした3部作映画が製作され ることになった。 この3部作は、全体が“Goal!”と名付けられたもので、 マイク・ジェフリーズ、エイドリアン・ブッチャーの原案か ら、1991年にアラン・パーカーが監督した『ザ・コミットメ ンツ』のディック・クレメントとイアン・ラフレナイスが脚 本を担当。『ジャッジ・ドレッド』等のダニー・キャノンが 監督する。総製作費は1億ドルで、第1作は2005年1月に撮 影開始されて8月に公開される予定。 物語は、イーストロサンゼルスに育った少年が、サッカー のスキルを発揮して、やがてイギリスの名門ニューカッスル ・ユナイテッドの選手になるというもの。また、最初の2作 はニューカッスル・ユナイテッドとスペインのレアル・マド リードの対抗試合を中心に進められるが、2006年6月に公開 予定の第3作では、同年開催されるドイツワールドカップを 背景にしたものになるということだ。 主演は、『天国の口、終わりの楽園』のディエゴ・ルナ。 同作でもサッカーに興じるシーンがあるが、今回の撮影に向 けてニューカッスルの練習に参加、プロ選手としてのスキル を身に付けているそうだ。FIFA(国際サッカー連盟)の 正式後援も受けた作品で、アメリカでは今一つのサッカー人 気に火を点けたいという思惑もあるようだ。 因に、ベッカムは3部作の全てに出演する契約になってい るということだが、この契約にあたって本人からは「自分は 将来、子供にサッカーを教える仕事をしたいと考えており、 この3部作は世界中の子供たちに前向きなメッセージを送る ものになる」というコメントが出されているそうだ。 また、この3部作の製作では、メル・ギブスン主宰イコン 社のパートナー、ブルース・デイヴィが共同製作に加わって おり、デイヴィは、興行的に難しいとされた『パッション』 を成功に導いたビジネスモデルを活かして、この作品も成功 に導きたいとしている。上記のようにアメリカでは今一つの サッカー人気だが、この映画の成功が注目されるところだ。 * * 来年“Charlie and the Chocolate Factory”(チョコレ ート工場の秘密)の映画化が公開されるロアルド・ダールの 原作で、1970年に発表された“The Fantastic Mr.Fox”(父 さんキツネばんざい)を、ストップモーションアニメーショ ンで映画化する計画が発表された。 この計画は、2001年公開の『ザ・ロイヤル・テネンバウム ズ』などのコメディ作品がアメリカでは高く評価され、ディ ズニー製作の海洋アドヴェンチャー作品“The Life Aquatic With Steve Zissou”が近日公開されるウェス・アンダース ン監督が、元ディズニーのジョー・ロス主宰のレヴォルーシ ョンで進めるもので、両者にとっては初のアニメーション作 品になるようだ。 お話は、人里近くに住むキツネ一家のお父さんと、3人の 農場主とのニワトリを巡る攻防戦を描いたもので、最初のニ ワトリを奪うところから、話がどんどんエスカレートして行 く様子など、ダールらしい機知と多少の毒も含まれた作品。 因に、ダール原作によるストップモーションアニメーショ ン作品では、1996年に公開された『ジャイアント・ピーチ』 (James and the Giant Peach)が有名で、本作はそれに続 く作品になることが期待されるものだが、準備状況は、アン ダーソンと、“Aquatic”でも組んだノア・バウムバックに よる脚本は、これから執筆されるということで、作品の完成 までにはまだ時間が掛かりそうだ。 なお、アンダースンは、ロスがディズニー社々長だった当 時に、アニメーションに適した感覚の持ち主として採用し、 一時はピクサーに籍を置いたこともあるそうだが、本人がア ニメーションを志向せず、実写の監督になっていたそうだ。 しかしディズニーとの契約が切れたところで今回の原作に遭 遇し、この原作はアニメーションの映画化に適していると判 断して、予めダールの遺族から映画化の許可を得た上で、昔 の付き合いのロスに企画を持ち込んだということだ。 従って、アニメーションの製作については本人が熟知して いると思われるが、とは言うものの、特にストップモーショ ンアニメーションは、ディズニーのアニメーター出身だった ティム・バートンですら、『ナイトメア・ビフォア・クリス マス』の企画した際に、直接監督はしなかったというくらい のもので、これをどこまで本気で作れるのか、ちょっと注目 してみたいところだ。 * * 2001年の『ハンニバル』に続いて、2002年に『レッド・ド ラゴン』が映画化された『ハンニバル・レクター』シリーズ の最新作で、来年秋に出版が予定されているトマス・ハリス の新作“Behind the Mask”の映画化計画が、製作者のディ ノ&マーサ・デ・ラウレンティスから発表されている。 その発表によると、この新作は、レクターの若き日を描く もので、リトアニア生まれの少年が、第2次大戦中の悲劇か ら残忍な殺人鬼になって行く姿が描かれている。そして、そ の映画化では、脚本を原作者のハリス自身が執筆し、監督を 『真珠の耳飾りの少女』のピーター・ウェッバーが担当する ということだ。 なお、ハリスは著作への影響を恐れて『羊たちの沈黙』の 映画化を見ることも避けたと言われているが、今回は古くか らの友人であるディノ・デ・ラウレンティスの説得で脚本の 執筆に応じ、その脚本は、一読したウェッバーが直ちに監督 を了承するほどの出来映えだったそうだ。 また、脚本の内容は豊富で、2部作とする可能性もあると いうことで、その場合には、レクター少年がフランスに移住 し、そしてフランスを脱出するまでを第1部とし、その後の アメリカでの行動を第2部とすることになるようだ。 製作者と監督は、近日中にリトアニアとチェコ、フランス でのロケハンを開始し、同時にキャスティングも開始すると いうことだが、今回の主演はさすがにアンソニー・ホプキン スとは行かないもので、レクター役の選考が重要になる。因 に、レクター役には3つの世代の若い俳優が必要ということ だが、成長してホプキンスのような風貌になることも考慮し なければいけないだろうし、ホプキンス並とは行かなくても それなりの存在感も要求される訳で、このキャスティングは 結構大変になりそうだ。 公開は2006年夏。配給権はユニヴァーサルとMGMがシェ アしているということだが、日本はどうなるのだろうか。 * * 007シリーズの次回作への出演拒否が話題になっている ピアーズ・ブロスナンの計画で、1999年に公開された『トー マス・クラウン・アフェアー』の続編に出演することが発表 された。 この作品は、元々は1968年にスティーヴ・マックィーン、 フェイ・ダナウェイ共演、ノーマ・ジュイスン監督で映画化 された『華麗なる賭け』(原題The Thomas Crown Affair) をリメイクしたもので、ブロスナンはこのリメイクの主演と 共に製作も務めていた。そして興行的にも成功したこの作品 には、早い時期から続編が打診されたということだが、ブロ スナン側では当時は続編を作る意志はなかったそうだ。 その理由は、当時は続編にする題材が見つからなかったと いうことだったが、今回はその題材が見つかったようだ。 その続編は、“The Topkapi Affair”と題されているもの で、1964年に公開されたMGM映画『トプカピ』の要素が取 り入れられるというもの。64年作は難攻不落のトルコ・イス タンブールのトプカピ宮殿に所蔵された宝物を、メリナ・メ ルクーリ扮する女盗賊を中心とした一味が大胆不敵な手口で 盗み出すというお話で、共演のピーター・ユスティノフがオ スカーの助演賞を受賞している。 そして今回は、この作品からヒントを得て考えられたもの で、当然トーマス・クラウンが狙うのはトプカピ宮殿の宝物 ということになりそうだが、映画化は、64年作の単なるリメ イクではなく、映画の元となったエリック・アンブラーの原 作“The Light of the Day”にも基づくとされていて、ハー レイ・ペイトンによる新たな脚本が執筆されている。 またこの続編で、主人公は2001年9月11日にNYに居たと いう設定になっており、以後の国際情勢を取り入れた現代化 も行われているということだ。 撮影時期などは未定だが、MGMとしては予定されていた “Bond 21”の替りに、これも期待できる作品を手に入れた ことになりそうだ。 * * 続編の流れで、11月27日に日米同時公開された“Saw”の 続編の計画が発表されている。計画しているのは、オリジナ ルのアメリカ配給を手掛けたライオンズ・ゲイトと、オリジ ナルの製作を担当したツイステッド・ピクチャーズで、計画 では、2005年2月に撮影を開始して、10月28日の全米公開を 目指すということだ。 ただしこの続編では、オリジナルを手掛けた脚本、主演の リー・ワネルと監督のジェームズ・ウォンは製作総指揮の肩 書きになっており、彼らが直接映画に関わるものではない。 つまり、オリジナルのアイデアから、別の脚本家及び監督が 続編を作るということで、ここにプロフェッショナルな脚本 家が入ると、それなりの作品の誕生も期待されるが、オリジ ナルの新鮮な感覚が再現できるかというと、また別の話にな るものだ。 まあ、よく似たケースでは1999年の『ブレア・ウィッチ・ プロジェクト』に対して翌年続編が作られているが、この時 はいろいろ捻りは加えたものの、結局オリジナルの感覚とは 異なるものになってしまって、ファンの賛同は得られなかっ た。今回は、オリジナルのストーリー性がしっかりしている ので、あまり変な捻りを加える必要はないが、どんな続編が 作られるか楽しみだ。 ただし、続編の脚本家も監督もまだ決まっていないという ことで、そんなことで大丈夫かという気はする。 因に、ワネルとウォンの2人には、すでにユニヴァーサル で、“Shhh”というスリラー作品の計画が進行中だそうで、 もはや続編に関われる状態ではなかったようだ。 * * またまたフィリップ・K・ディック原作の映画化で、今回 は1954年4月号のIf誌に発表された“The Golden Man”と いう作品が、“Next”という題名で、リー・タマホリ監督、 ニコラス・ケイジの製作、主演により計画されている。 この作品は、核戦争後の世界を舞台にしたもので、放射能 の影響で誕生したミュータントの男が、超能力によって普通 の人々を支配するようになるが…というお話。ディック本人 の言葉によると、ミュータントという存在が必ずしも恐ろし いものではないけれども、同時に人類とは相容れない存在で あることを描きたかった作品だそうだ。 そしてこの原作から、1990年の『トータル・リコール』を 手掛けたゲイリー・ゴールドマンが脚色を担当している。因 に『トータル・リコール』はダン・オバノンが最初の脚本を 手掛けたものだが、その後幾多の紆余曲折があり、その中に いろいろ登場する脚本家の一人ということだ。 なお、ディックの原作では、1982年の『ブレード・ランナ ー』以降、いろいろなSFアクション映画が製作されている が、特に最近では、フォックス製作の『マイノリティ・リポ ート』、パラマウント製作の『ペイチェック』と各社で大型 予算の大作映画が作られており、この後にも、キアヌ・リー ヴス主演で、ワーナー製作の“A Scanner Darkly”も控えて いる。今回の計画も、その大作路線の一角を担うものという ことで、製作はレヴォルーション。ジョー・ロス主宰の同社 はソニー傘下の会社で、いよいよ大手各社の揃い踏みという 感じになってきたようだ。 * * ヴィデオゲームの映画化の情報で、コナミが発売している ホラーアクション“Silent Hill”を実写で映画化する計画 が発表されている。 この計画は、コナミと、『バイオハザード』を手掛けたプ ロデューサーのサミュエル・ハディダが進めているもので、 すでに脚本を『パルプ・フィクション』のロジャー・アヴェ リーが執筆し、監督を『ジェヴォーダンの獣』のクリストフ ・ガンズが担当することも公表されている。 ゲームのストーリーは、サイレント・ヒルと名付けられた ゴーストタウンと化した町を舞台に、その町に隠された秘密 を探る母親と娘を主人公としたもので、その町で起きる超常 現象などが描かれている。特にアクションというものではな く、謎解きの方に主眼が置かれているようだが、コナミでは すでに3部作としてゲームを発表しているものだ。 そして、このゲームの映画化が進められているもので、今 回の情報ではキャスティングは紹介されていなかったが、撮 影は2005年3月に開始されるということだ。なお、配給はフ ォーカスが担当しているが、フランス圏はハディダが掌握し ており、一方アメリカは未定だそうだ。 因にハディダは、現在トニー・スコット監督の“Domino” という作品を製作中で、一方、2003年1月15日付の第31回で 紹介した“Onimusha”は、準備中ということになっていた。 * * ピュリツァー賞受賞作家で、『スパイダーマン2』の脚本 の第1稿を手掛けたことでも知られるマイクル・シェイボン が、またもやちょっと不思議な作品の脚本に関っている。 今回、シェイボンが脚本を執筆しているのは、“Snow and the Seven”。ディズニー長編アニメーションの第1作『白 雪姫』(Snow White and the Seven Dwarfs)を再話すると いうものだが、ディズニーで進められているこの計画では、 監督を『マトリックス』等のアクションコレオグラファーの ユエン・ウーピンが担当することになっている。 実はこの計画、元々はウーピンが英語作品の第1作として 以前から温めていたもので、以前の題名は“Snow White and the Seven Shao Lin”。オリジナルの脚本は、ジョッシュ ・ハーマンとスコット・エルダーが執筆していたものだ。 つまりこの作品は、『白雪姫』を、少林寺拳法と中国ファ ンタシーの捻りで再話するというカンフー映画なのだが、そ れにしてもこの計画を、ディズニーで実現するというのも気 が利いているし、その脚本をピュリツァー賞作家が手掛ける というのも面白いところだ。 * * 最後に、クライヴ・バーカー主宰の映画プロダクション、 ミッドナイト・ピクチャー・ショウから、未来もののホラー スリラー“Plague”の計画が発表されている。 この作品は、ハル・メイスンバーグとティール・ミントン の脚本から、メイスンバーグが監督するもので、ある日、世 界中の子供たちが原因不明のコーマに陥る。ところがそのま ま成長を続けた子供たちがあるとき目覚め始め、そして両親 を殺戮し始めるというもの。バーカーらしい、かなりすごそ うな内容だが、撮影は2月に開始されるということだ。 また、バーカーの映画作品では、フォックスで自作の短編 を映画化した“Dread”という作品の製作中ということで、 続いてユニヴァーサルで、これも自作の“Tortured Souls” という作品を監督する計画だそうだ。
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